墜落世界(CRASH WORLD)とは、日本製TRPGシステムである。
概要
デザイナーは齋藤高吉(現在は冒険企画局所属)。制作Killmark Games。
Wikipediaの齋藤高吉氏のページ(*2013年10月8日閲覧)によると2003年の作品となっているが、2000年代初頭のTRPG関係サイト掲示板での告知記録などを探るに、2002年に同人イベントで頒布されたのが初出か。当時は齋藤高吉氏は「鴻」という名義で活動していた。
サプリメントとして「正面衝突」と「頭蓋粉砕」が存在する。
空から宇宙船が墜ちてくる世界「墜落世界」が舞台。プレイヤーは墜落してきた宇宙船から様々な物資を回収する「墜落船回収業者(スカベンジャー)」となって借金を返せなかったり死んだりする。
非常にデッドリーなバランスな上、あえてランダム性を強くしたゲームデザインな為、突発的にパーティーが全滅する事が頻繁に起きる。むしろPCがゴミクズのように死んでいく様を楽しむのが正しい態度かもしれない。
グロテスクでナンセンスな雰囲気が横溢しており、とても癖が強く人を選ぶが、波長が合う人間にとっては非常に楽しめるシステムである。
世界観
いったいここがどこなのか知る者はいない。地球という星のことはぼんやりとした知識があるが、どうやらここは地球ではないらしい。宇宙船から情報を得ようにも、それぞれ矛盾していたり明らかにありえなかったりするから結局判らない。判っているのは、毎日毎日途切れもせずに宇宙船が降ってくるという事だけ。だから、ここは墜落世界と呼ばれている。
宇宙船は焦点山をめがけて墜ちてくる。とはいえ乗組員も黙って墜落する訳ではないし、気象条件などの影響をうけたりするので、実際の落着点は焦点山を中心としたおよそ半径30kmの土地に分散する。この墜落地帯の外縁部をぐるりと囲むように作られているのが壁街だ。墜落地帯は水浸しで、宇宙船が墜落する衝撃で津波が起きたりするため高い壁の中で人々は暮らしている。壁街の外側は延々と荒野が広がっている。その先に何があるかは誰も知らない。
この世界は放射性物質と化学物質と毒電波とその他諸々で汚染尽くされており、生物は一切生息していない。唯一人類だけはなんとかしぶとく生き残っている。
その為墜落世界で生産出来る物資はごくわずかで、墜落船から回収する物資に大きく依存している。墜落船からの物資回収を請け負うのが、墜落船回収業者である。
墜落地帯はいつ頭上から宇宙船が降ってくるかわからない上、凶暴な遊牧民やカルト信者、アトミック武道の功夫を積む機会を求める核武僧などがうろついている。幸運にも墜落船に辿り着いても生き残ったセキュリティや乗組員(彼らはこの世界に墜ちてくる際世界線を越える衝撃のため大抵発狂している)を突破しなければ目当てのお宝は手に入らない。そんな明日をも知れぬ日々を繰り返すことすら出来ずにのたれ死ぬのが回収業者の日常である。
ゲームの流れ
まずはじめに、プレイヤーパーティーは墜落船回収会社を設立し、その社員であるプレイヤーキャラクターを作成する。(国家を運営する迷宮キングダムに似ていると言えば似ている)。この時まず間違いなく借金を背負う事になる為、この借金を返済する事が当面のゲーム目的となる。
パーティーはまず墜落船の回収権利を購入し(当然借金)、墜落地帯へと出発する。なお、この時GMは墜落船の選択肢を複数用意する事が望ましい。回収権の値段は期待できる回収物と危険度によって上下する。明らかに死亡フラグな格安物件か、ペイできるか怪しい高額品しか売られていない場合が多い。回収権利を購入せずにモグリの業者として墜落船に向かう事もできるが、恐怖の経済制裁部隊に襲われる事を覚悟しなければならなくなる。
ともかく墜落地帯へと繰り出した後はランダムイベントと戦いながら墜落船へと向かう。これがまた厄介な代物で、12分の1の確率で空から降ってきた墜落船に押しつぶされてパーティが壊滅したりする。因みに筆者は十回近くサンプルシナリオをプレイしているが、一度として墜落船に辿りつけた事がない。
もっとも、バッドイベントばかりではなくお宝に遭遇することもある。場合によっては、目標金額を達成して墜落船に行く事無く帰還出来たりする。
墜落船に辿りついたらようやく本番である。スクェアで構成されたマップを探索するダンジョンハックを行い、十分な成果を得るか撤退せざるを得なくなったら帰還する。当然、帰路で何らかのアクシデントに遭遇すればそれまでの成果はふいになるので、ゆめゆめ油断すべきではない。
生きて帰ったら、持ちかえったお宝を売り払って当面の経費を払って経験点処理をして終了である。
PC
墜落世界のPCは種族/クラス制である。この二つを組み合わせることによってキャラクターを作成する。
種族
墜落世界の人類には幾つか種族が存在する。これは、この世界の住人は墜落船の生き残りの子孫である(らしい)ので、元々いた世界の特徴を引き継いでいるからである。なお、墜落世界に存在する種族はことごとくミュータントである。
科族
墜落世界における支配階級。もちろんPCは何らかの理由で特権を失っている。様々な(疑似)科学体系の信奉者であり、対立する科学体系の研究者との舌戦を繰り広げ徹底的に否定し合うことを生業にしている。交渉と鑑定にボーナスが付き、特殊技能として判別不能アイテム一つを確実に鑑定する事が出来る。このシステムには荷重制限があり、持ちかえるアイテムの取捨選択は非常に重要である為、アイテムの価値を鑑定できる能力は非常に重要。
街族
墜落世界における一般大衆。基本的には労働者だが、仕事はほぼ存在しないので大抵配給品に頼って暮らしている。一応働かなくても生きては行ける社会システムではあるが、配給食のみでの生活を送った場合平均寿命は1500週程度しかないという劣悪極まる環境の為一攫千金を夢見て回収業者になる者も多い。若干他種族より荷物を多く持てるほか、成功の度合いを高める特殊技能を持つ。
擬人
墜落世界における新参者。巨大な墜落船に積まれていた大機母という生産プラントから発生した機械人間の種族で、なんだかんだで墜落世界の中で一定の地歩を築いている。大機母は墜落世界の過酷な環境の為機能を低下させており、最近生産される擬人には粗悪なモノが多い。防御力に優れ、指定したアイテムを肉体の一部として使用する事が出来る。
欠族
墜落世界における魔法使い。肉体をあえて欠損させる事によってその部分の制御を司っていた脳の容量を空け、代わりに超能力を発現させる技術を持った一族。元々は科族の一部だったが、彼らからは異端視されている。感覚能力に優れ、特殊能力を他種族より一つ多く持つことが出来る。
人畜
墜落世界における家畜。この世界において生息できる種族は人類しかなく、したがって我々の世界で動植物が担っている役割はすべて、遺伝子操作された人類であるところのこの人畜がはたしている。さらには工業製品としても扱われたりする。簡単に言ってしまえば家畜人ヤプーのヤプー。種類は多岐にわたり、腕時計から食糧まで様々な人畜が存在する。比較的平均的人類に近いものが労働力として回収業者に購入されたりする。他種族よりもタフなのが特長。
獣族
墜落世界におけるアウトサイダー。壁街ではなく、墜落地帯に生きる事を選んだ者たち。いつ宇宙船が降ってくるかわからない土地で、人畜を用いた遊牧生活を送っている。祖霊信仰を基本とした独特の宗教観を持つ。汚染耐性が高く、本来はランダムである特殊能力をある程度自由に選択できる。
役職
回収業者の社員であるPC達はなんらかの役職を担当する。一般的なRPGにおけるクラスや職業に相当。
技術部
いわゆるスカウト。探索やトラップの解除などを得意とする。パーティーの生存に大きく関わる為、技術部員が行動不能になった段階で撤退判断がなされる場合も多い。
経理部
一般的なRPGで当てはまる職業はない。移動力に優れる為、(借金の返済期限など)タイムリミットが迫っている場合一番貴重な品を経理部員に持たせ一人で帰らせるという事をしたりする。そして大抵帰りつけずに死ぬ。
厚生部
いわゆるヒーラー。ただし、初期作成の厚生部員は大抵回復能力を持たない。他の役職より生き残りやすい為、結果的に回復アイテムを使う機会が多いと言うだけである。
資材部
いわゆるセージ。アイテムの鑑定を担当する為、この役職になったPLのダイス運が悪いとガラクタなのかお宝なのか分からないアイテムを抱えて途方に暮れる羽目になる。
渉外部
こちらもセージだろうか。交渉能力が高いが、そもそも対話可能なNPCと出会う事が珍しかったりする。なぜかHPの伸びが一番高いので、敵味方不明の存在と出会った時、交渉能力よりも「とりあえず一撃では死なないだろう」という理由で接触を任されたりする。なお、「ロールに従っているだけ」という言い訳で口プロレスをしすぎるとGMの殺意を買うのでほどほどにするようルルブに書かれているので肝に銘じる事。
保安部
いわゆるファイター。敵が出たら前に出ろ。それ以外ではすっこんでろ。という大変端的なアドバイスがルールブックには記載されている。ただし、脳筋が推奨されている訳ではなく、脳味噌と集中力は戦闘の為にとっておけ、ということ。
種族と役職の組み合わせとランダムに決定される変異(いわゆるミュータント能力)、それにアイテムを購入する事でキャラクターは完成する。慣れれば10分もかからずに作成出来るが、それでも「PCが生きていた時間がPC作成にかかった時間より短かったぜHAHAHA!」という事態が往々にしておきたりするのがこのシステムである。
墜落船
このシステムのメインディッシュであるダンジョン。多様な世界線から宇宙船が降ってくるという世界観の為、GMの設定次第で雰囲気は様々。チャートによって簡単に作成でき、また、そのチャートの自作も推奨されている為、ネット上に有志が作った墜落船セットが存在する。
ルールブックに記載されているのは、チープなスペオペ風の星風世界、ウェルズ風の侵略世界、そしてサイバーパンク風の械塵世界。
関連動画
関連項目
関連リンク
- killmark games・・・シート類やFAQ
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