外なる神(the Outer Gods)とは、クトゥルフ神話に存在する宇宙の起源、またはそれよりも前から存在する神々の名前である。神話内において最高の神格であり、原理・真理そのものとされている。
小説作品における蕃神に近い用語であるものの、完全に一致する用語ではない。
概要
宇宙創造、下手をしたらビッグバンの前から存在していた神々、もしくはビッグバンそのものかもしれない人の想像することができる次元を超えた存在と考えられている。
宇宙を統べる神、宇宙の原理・法則の具現化とされている。
彼らは肉体を持たない超自然的存在や純粋なエネルギーの塊、原理や法則、概念そのものであることが多いといわれ、我々が想像するところの神に近いといえる。この辺りは人間からすれば神のような力を持つ旧支配者(the Great Old Ones)と呼ばれる存在の多くが生物的で物理的な制約を受ける点と対照的である。
基本的に姿の描写は形をもって顕現した際のものであり、その形を「本質」と捉えることは誤りではないがやや不正確。ただし、本体となる無定形の怪物の姿を持つとも言われている。
一般に最高神とされるのは魔王アザトース(Azathoth)、ナンバー2または共同支配者とされるのは副王ヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)であり、この二柱が万物を含有する全能神であるとされている(ただし、宇宙論の観点からヨグ=ソトースを最高神とする作品や論評も一部存在する)。諸説あるものの、アザトースは万物の創造や破壊が可能な宇宙の中心である一方、ヨグ=ソトースは万物の知識を宿す全知の存在で全時空に隣接した神であると説明されることがある。
また、多くの旧支配者を産み落とした豊穣の女神シュブ=ニグラス(Shub-Niggurath)や、アザトースの兄弟とされることもある自存の源ウボ=サスラ(Ubbo-Sathla)が主要な外なる神として挙げられるほか、外なる神の使者たるニャルラトテップ(Nyarlathotep)もクトゥルフ神話大系において重要な位置を占めている。ここから発展し、アザトース・ヨグ=ソトース・シュブ=ニグラス、もしくはアザトース・ヨグ=ソトース・ニャルラトテップをクトゥルフ神話の三位一体と捉える解釈も存在する。
それらの神々に加えて、クラーク・アシュトン・スミスの創作したイクナグンニスススズ(Ycnágnnisssz)やサクサクルース(Cxaxukluth)といった多くの神格の先祖となる外なる神が存在している。
その他、ル=クトゥ(Lu-Kthu)、ムランドスとムリルソーリオン(Mlandoth and Mril Thorion)やヌギル=コーラス(Ngyr-Khorath)といったクトゥルフ神話から派生したル=クトゥ神話大系、クトゥルフ神話と隣接するムランドス神話大系の外なる神も近年ではクトゥルフ神話大系と融和していることが多く、クトゥルフ神話の世界観を拡張している。
かのクトゥルフですら外なる神の匂いすら感じ取れないとされる作品もあることからも分かるが、基本的に旧支配者すら歯牙にかけないほどの強大な力を持つ。ここでの「力」とは直接的な戦闘力だけでなく、宇宙全体への権能や外なる神自身の性質も含んだ包括的な意味合いである。
ただし、ニャルラトテップの天敵でありヤマンソと互角の力を持つクトゥグア(Cthugha)、ニャルラトテップの従姉妹とされるマイノグーラ(Mynoghra)など、旧支配者という区分でありながら特定の外なる神とされる神格と争っている存在や外なる神に近しい存在もいる。その他、黙示録の獣(The Beast of the Apocalypse)のように主要な外なる神に匹敵する神格と設定される例や、ミゼーア(Mh'ithrha)のように厳密な外なる神の定義には当てはまらないものの、ヨグ=ソトースと争い続けているという規格外の力を持つが故に外なる神として扱われる例もある。
また、クトゥルフやハスター、ツァトゥグァも(マイナーな設定にはなるが)作品によっては一部の外なる神に匹敵する権能を備えているとされることがある(クトゥルフは作品によっては邪神の王とされていることもある)。
外なる神の多くは心や魂、人格を持たない無定形の存在であるとされているが、人類から見れば悪意を持っているように見えるという。唯一明確に人格を持つニャルラトホテプが彼ら(特にアザトース)の使者、意志の権限として要望を叶えているという設定を考慮するとこれも頷けるか。また、外なる神には意識や感情、目的らしきものが見られることがあるため、ただの概念や現象というわけではなく、一柱の神としての独自性は持ち合わせているといえる。
外なる神が自ら人間に干渉することはほとんどなく、そもそも人間の存在すら認知していない場合が多いといわれている。ただし、前述の通りニャルラトホテプは例外であり、自由に世界中を飛び回り人間に干渉して恐怖や混乱を撒き散らしている。
その他の外なる神も狂った人間によって召喚される場合がある。ネクロノミコン(Necronomicon)などの魔道書を用いて召喚されることが多く、召喚された後には(短時間現れただけでも)災厄と破滅が残るという。直接召喚されずとも、外なる神が少し行動したり覚醒したりしただけで宇宙各地の生物の生命や精神に多大な影響を及ぼすという。
旧支配者は各種族にとってより身近な存在であり、旧支配者自身も各種族に干渉することが多いために外なる神よりも組織だって信仰される傾向が強く、逆に外なる神は狂った個人に信仰される傾向が強いという。
このように、外なる神や外なる神から産み落とされた旧支配者たち、そしてその眷属らや崇拝者がクトゥルフ神話を狂気に染めているのである。
人智の及ばぬ存在。その断片を少しでも覗き込むことは実に危険なことである。
旧神との関係性
旧神の設定が採用される作品においては、外なる神も旧支配者同様に宇宙的善とされる旧神とは対立関係にあるとされる(この場合、外なる神は宇宙的悪の存在とされる)ほか、旧支配者同様旧神によって創造されたとする設定もある。
一方、外なる神と旧神を所謂通念上の神と見做し宇宙の在り方を巡って争っている(いわば同格の存在)という設定、逆にアザトースが旧神を創造したとする設定も存在する。
グノーシス主義に基づいてクトゥルフ神話の世界観、特に旧神と外なる神/旧支配者を解釈する作品も存在している。
例えば、リチャード・L・ティアニーの作品ではアザトースをデミウルゴス、旧神をアルコーンに相当する存在であり、邪悪な宇宙を創造しその秩序を守る冷酷な支配者と設定している。逆に、彼らに叛旗を翻して自由を求める存在がヨグ=ソトースをはじめとした旧支配者(ただし、旧支配者が人類に友好的ということではない)であると設定している。[1]
注意
外なる神という分類自体はクトゥルフ神話TRPGにおいて用いられることが多い設定であり、小説群で用いられることは少ない(近年の小説作品でしばしばみられる程度)。故に、クトゥルフ神話TRPG以外では外なる神というグループそのものがなく、邪神とされる神格が全員旧支配者で括られる場合が多い。
そういった背景から、クトゥルフ神話TRPGの基準で考えれば外なる神に属すると思われるが、そもそもクトゥルフ神話TRPGに出ていないため、出演作品の分類に基づき旧支配者として記載されているといったこともある(先述のマイノグーラはこの例)。
また、原作における描写や設定揺れの関係上、どちらに属するか微妙なラインの存在もおり、その影響でクトゥルフ神話TRPG内でも版によって外なる神と旧支配者どちらに属するか違うといった例(ヒュドラや7版サプリメントのアブホースが該当)、どちらの可能性もあるとしている例(7版のイブ=ツトゥルやイドラが該当)がある。
その他、ニャルラトホテプは定義上外なる神とされているものの、旧支配者の定義の方が近いのではないかとする意見も存在する。
外なる神という分類を話題に出す際にはこのような背景を知っておくと誤解や食い違いを予防できるので、ぜひ頭の隅に入れておいていただきたい。
また、このような区別自体を好まないファンもいるため、TRPG以外のクトゥルフ神話作品について話す際にこの用語を使う場合はその点も気をつけるとよい。
主な外なる神
A
- アブホース、アブホート、アブホス(Abhoth) ※旧支配者とされる場合もある
- アイエブガンシャル(Aiueb Gnshal) →下級の異形の神たち
- アレシア(Aletheia) →アレシア(クトゥルフ神話)
- 古きもの(Ancient Ones) →古きもの(クトゥルフ神話)
- アザトース、アザトホース、アザトホート、アザトート、アザゾース(Azathoth)
- アズホーラ=タ(Azhorra-Tha)
B
- ブアー=ゾク(B'ar-Zok)
- 星からの暗黒(Blackness From the Stars) →下級の異形の神たち
C
- 雲怪物(Clound-Thing) →下級の異形の神たち
- 稲妻エネルギーの塊(Crackling Energy Mass) →下級の異形の神たち
- クタルパ(C'thalpa)
- サクサクルース(Cxaxukluth, Ksaksa-Kluth)
D
G
H
I
K
L
- ルー=クトゥ、ル=クトゥ(Lu-Kthu, Lew-Kthew) ※クトゥルフ神話に隣接するル=クトゥ神話の主神たちを産んだ存在
- 光明の透明体(Luminous Transparency) →下級の異形の神たち
M
- ミゼーア(Mh'ithrha) ※厳密には外なる神ではないが、外なる神に匹敵する力を持つためここに分類される。
- ムランドスとムリルソーリオン(Mlandoth and Mril Thorion) ※クトゥルフ神話の影響を受けたムランドス神話の創造神で、概ねアザトースとウボ=サスラに相当する
- 膿の母(Mother of Pus) →下級の異形の神たち
N
- 名もなき霧(The Nameless Mist)
- ヌギル=コーラス、ンギル=コーラス(Ngyr-Khorath) ※ムランドスとムリルソーリオンによって生み出された破壊神
- 夜なるもの(The Night)
- ノス=イディク(Noth-Yidik)
- ニャルラトテップ、ナイアルラトホテップ、ニャルラトホテプ、ナイアーラソテップ、ナイアーラトテップ、ニャルラトホテップ(Nyarlathotep)
- ニクテリオス(Nyctelios)
- ニィ=ラカス(Ny-Rakath)
O
R
S
- シャビス=カ(Shabbith-Ka) →下級の異形の神たち
- きらめく液体(Shimmering Liquid) →下級の異形の神たち
- シュブ=ニグラス、シュブ・ニググラトフ、シャブ=ニグラース、シュブ=ニグラート、シャブ=ニグラス、シュブ=ニグラト(Shub-Niggurath)
- ドールの歌い手(Singer of Dhol) →下級の異形の神たち
- ソトース(Sothoth) ※アザトースに仕えている神で、ヨグ=ソトースも含めた外なる神や旧支配者の創造主と言われているが、実在するかどうか疑われている
- 星の母(Star Mother) →異形の神の幼生
- サクナース(Suc'Naath) →下級の異形の神たち
T
U
X
Y
- イクナグンニスススズ(Ycnágnnisssz)
- イホウンデー(Yhoundeh) ※旧支配者または旧神(地球本来の神々)であるとされる場合が多い
- イブ=スティトル、イブ=ツトゥル(Yibb-Tsll) ※旧支配者である可能性もあるとされる
- イドラ、イースラ、イー・ト・ラー(Yidhra, Yeethra, Yee-Tho-Rah) ※旧支配者である可能性もあるとされる
- イグラス(Yiggrath)
- ヨグ=ソトース、ヨグ=ソトホース、ヨグ=ソホトート、ヨグ=ソトート、ヨグ=ソトホート(Yog-Sothoth)
- ヨマグンソ、ヤマンソ、イォマグヌット(Yomagn'tho)
小区分
- 異形の神の幼生(Larva of the Outer Gods) ※個体毎の名前については割愛
- 下級の異形の神たち(Lesser Other Gods) ※個体毎の名前については割愛
番外:外なる神に類するとされる存在
- ヌール(N'h'll) ※ムランドスすら逃れられない全てにとっての虚無とされる。神や存在という区分に当てはまるのかは不明
- イド・ナク(Yidh Nak) ※宇宙の母で、巨大爆発によってイド・ナクからムランドスとムリルソーリオンが生み出されたとされる。神や存在という区分に当てはまるのかは不明
- 偶然(Chance)
- 運命(Fate)
→ペガーナの神々が作り出されるゲームを行っていた二柱
- ドロザンド(Dorozhand)
- ゴシュム(Gothum)
- グリムボル(Grimbol)
- フウドラザイ(Hoodrazai)
- インザナ(Inzana)
- キブ(Kib)
- リンパン=タン(Limpang-Tung)
- モサアン(Mosahn)
- ムング(Mung)
- ルウン(Roon)
- シラーミ(Sirami)
- シシュ(Sish)
- スリッド(Slid)
- トレハゴボル(Trehagobol)
- ウンボロドム(Umborodom)
- ヨハルネト=ラハイ(Yoharneth-Lahai)
- ユム(Yum)
- ゼエボル(Zeebol)
→ペガーナの神々のうち「ちいさき神々」とされる神々。TRPGではおそらく外なる神であるとされている
- アラクセス(Araxes)
- エイメス(Eimes)
- グリバウン(Gribaun)
- ハバニア(Habaniah)
- ヒッシュ(Hish)
- ホビト(Hobith)
- ハイラグリオン(Hyraglion)
- インガジ(Ingazi)
- ジャビム(Jabim)
- キルウルウグング(Kilooloogung)
- ミンド(Mindo)
- ピツウ(Pitsu)
- セガストリオン(Segastrion)
- トリブウギイ(Triboogie)
- ウムブウル(Umbool)
- ウウウン(Wohoon)
- ヨオ(Yo)
- ザドラス(Zadres)
- ザネス(Zanes)
- ザムビブウ(Zumbiboo)
→ペガーナの神々のうち「千の地神」とされる神々。TRPGではおそらく下級の異形の神たちであるとされている
- アムルンド(Amurund)
- アスグール(Asgool)
- ガゾ(Gazo)
- 緑の神(God of the greenness)
- 白の神(God of the whiteness)
- イニャーニ(Inyani)
- カイナシュ(Kynash)
- ロ(Lo)
- 朝のザイ(Morning Zai)
- マイナルティテップ(Mynarthitep) ※ニャルラトテップの名前の由来の1つとも
- ムシュ(Mush)
- ラーム(Rham)
- ローグ(Rhoog)
- シーナス(Sheenath)
- シュール=ヌガノス(Sheol Nugganoth)
- シロ(Shilo)
- シモノ・カニ(Shimono Kani)
- ショ(Sho)
- スクン(Skun)
- スリグ(Slig)
- タルン(Tarn)
- トロダス(Trodath)
- ヤルニ・ザイ(Yarni Zai)
- ユシュ(Yush)
→ペガーナの神々のうち、「古き神々」とされる神々。TRPGではおそらく下級の異形の神であるとされている
- ハ(Ha)
- スニャルグ(Snyrg)
- ヤ(Ya)
→ペガーナの神々に成りすまそうとした悪霊たち
関連項目
脚注
- *なお、ギッタのシモンシリーズの主人公シモン・マグスとヒロインのヘレンがアザトースの宇宙に飛び込んだアイオーンに相当する人物である。また、旧支配者の眷属や従者は人類に対して友好的な場合がある。例えば、本作ではイエス・キリストはヨグ=ソトースの息子とされるが、イエスとその関係者は(その方法は一般的感覚からは受け入れ難いものであるが)彼らなりに人類を救おうと行動しているために善意的であると評されていたり、深きものの大賢者が人類愛に溢れた人物であったり、ダゴン教団が主人公たちを助けたりといった一幕がある。
親記事
子記事
- アザトース
- アブホス
- アレシア(クトゥルフ神話)
- 異形の神の幼生
- ウボ=サスラ
- 下級の異形の神たち
- クタルパ
- サクサクルース
- シュブ=ニグラス
- ダオロス
- デンドラ
- ドローム=アヴィスタ
- ナイアルラトホテップ
- ヨグ=ソトース
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