多摩川スカイブリッジとは、川崎市の殿町(キングスカイフロント)と羽田空港を結ぶ多摩川にかかる橋のことである。
概要
2022年3月12日に開通した複合ラーメン構造の橋。
橋梁部の長さ674.55m、幅員は渡河部17.3m・取付部21.3m、設計速度60km/h、車道2車線と歩道・自転車専用レーンを有する。注意点として自転車を除く軽車両と50cc未満の原動機付自転車は通行出来ない。橋梁部の外灯は欄干に内蔵されており一般的な高いポール状の照明灯などの構造物が無く非常にフラットな外観を持つ。
この橋は完成時点に於いて多摩川で最も河口寄りの橋梁となった。
事業費は橋梁部が約260億円(東京都と川崎市の折半)、川崎市側取付部分が約40億円(川崎市負担)の合計約300億円である。
2022年4月1日、川崎鶴見臨港バスが当橋経由のバス路線2系統を運行開始。
経路は京急空港線・東京モノレールの天空橋駅~京急大師線大師橋駅間と天空橋駅~浮島バスターミナル間の2つ。いずれも多摩川スカイブリッジを渡り研究開発拠点「殿町キングスカイフロント」を経由する。
完成までの経緯
川崎市臨海部と羽田空港は直線距離的には近いが間に多摩川があるため双方のアクセスが良くなかった。多摩川を渡るには有料道路の首都高速湾岸線の多摩川トンネルを使うか川の上流にある大師橋を経由して再び下流側へ向かう遠回りコースを選ぶかという不便さを強いられてきた。
このため2004年頃より「羽田空港神奈川口構想」が持ち上がり始めた。当初は川崎市の対岸である大田区側の理解が得られず遅々として構想は進まなかった。
事態が大きく動き出したのは2011年に神奈川県・横浜市・川崎市による「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」が国から特区の指定を受けてからである。2014年9月には国、東京都、大田区、川崎市等で構成する羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会が設置され様々な検討が行われた。
殿町エリア(キングスカイフロント)には既にANAケータリングサービス、ヨドバシカメラ・アッセンブリーセンター、ジョンソン・エンド・ジョンソン インスティテュート(東京サイエンスセンター)があったが、空・陸・海への主要アクセスポイントが整っているこの場所に国内外のライフサイエンス研究施設を誘致し国際競争力のある一大研究拠点を創出、その重要インフラとして羽田空港と殿町を結ぶ橋梁を建設するという構想の一貫として「(仮称)羽田連絡道路」(後の多摩川スカイブリッジ)が進められることになった。
また国家戦略特区・国際戦略総合特区・特定都市再生緊急整備地域に指定されたエリアであるため規制緩和・財政支援・税制支援等で様々な企業や研究機関にとっての進出メリットも大きい。
2017年9月30日に川崎市川崎区殿町にて「(仮称)羽田連絡道路起工式」が執り行われた。主な参加者は主催者側として川崎市長、東京都副知事。来賓として神奈川県知事、大田区長、川崎市議会議長、東京都議会環境建設委員会副委員長、国土交通省関東地方整備局副局長、ヨドバシカメラ代表取締役、五洋建設代表取締役社長など総勢200名でであった。
そしてついに工事が始まった。設計、施工は五洋・日立造船・不動テトラ・横河・本間・高田共同企業体である。
しかし、順調に工事が進んだわけではなかった。当初は完成を2020年東京五輪に間に合わせる予定だったものの、天候による中断や河口部の土砂堆積などにより2019年8月頃に「2020年度内の開通」へ変更された。更に令和元年東日本台風(2019年台風19号)で橋梁部に土砂堆積が発生、作業船が近づけなくなってしまった。そのため新たに浚渫工事を行うことになり更に完成が遅れる原因となった。完成時期は改めて2021年度末(つまり2022年3月頃)に設定された。
完成まで約1年後に控えた2021年1月、川崎市の公式ウェブサイト等で橋名募集告知が掲載された。橋の名前には2つの条件が設定されていた。それは、「橋」または「ブリッジ」を入れる事と羽田空港・殿町をつなぐ新しい橋としてふさわしいものである事とされた。
かくして応募は締め切られ応募総数8,498件の中より、検討委員会の選定により2021年7月8日「多摩川スカイブリッジ」(Tamagawa Sky Bridge)と発表された。
なお、検討委員会は国や東京都、川崎市など事業に係る行政機関や地元で構成されている。
以下に応募数上位20位を示す。表記は応募数順である。
応募数順位 | 名 称 |
---|---|
1 | スカイブリッジ |
2 | ウイングリバーブリッジ |
3 | キングスカイブリッジ |
4 | 羽田スカイブリッジ |
5 | リバーウイングブリッジ |
6 | 羽川橋 |
7 | ウイングブリッジ |
8 | 川崎スカイブリッジ |
9 | スカイゲートブリッジ |
10 | スカイウイングブリッジ |
11 | 未来橋 |
12 | 多摩川スカイブリッジ |
13 | 羽田橋 |
14 | キングウイングブリッジ |
15 | 殿羽橋 |
16 | 羽殿橋 |
17 | ブルースカイブリッジ |
18 | スカイリバーブリッジ |
19 | 羽田ブリッジ |
20 | 大空橋 |
応募名称の上位20位に「スカイブリッジ」を含むものが6案あったことがうかがえる。
個別の応募件数公表はないものの川崎市長の記者会見にてトップの「スカイブリッジ」は212件、「多摩川スカイブリッジ」は57件だったと言及されている。
開通まで2週間後に控えた2022年2月26日(土)、市民開放型のウォーキングイベントが開催された。申込不要で現地の受付にて検温ならびに手指消毒を行うことで参加可能であった。開催時間は10時~15時30分(閉場16時)で最終的には約16,000人が参加した。
2022年3月12日10時、開通式が行われた。本来であれば東京都と合同の式典になる予定であったが新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた規模の小さい川崎市独自の式典となった。
同日15時。多摩川スカイブリッジが開通した。
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関連項目
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