夜神月(やがみ ライト)とは、漫画『DEATH NOTE』の主人公である。
テレビアニメ版の声は宮野真守。実写の配役は、映画版が藤原竜也、ミュージカル版が浦井健治・柿澤勇人、テレビドラマ版が窪田正孝(幼少時は石川樹)。アメリカの実写映画では名前がライト・ターナーに変更され、Nat Wolff(ナット・ウルフ)が演じ、島崎信長が日本語吹替を担当。
概要
高校の全国模試で1位を取り、後に東応大学(現実世界の東京大学に相当)へ首席入学するほどの頭脳を持つ。また、中学のテニス全国大会で二度優勝するほどスポーツも万能。
作中人物や原作者、アニメファンブックなどに「イケメン」「特に整った顔」「端整な顔立ち」などと評されるようにかなりの美形で、原作者によると当時の山ピーこと山下智久のルックスをイメージして作画をしてもらったとか…。また、社交性に優れることもあって非常にモテる。
全てにおいて並外れたスペックの持ち主だが、それゆえに退屈な高校生活を送っており、犯罪が後を絶たない腐った世の中に絶望していた。そんな折、他者をルールに則って殺害できる死神のノート「DEATH NOTE」を偶然拾ったことで世界を変革する使命感に目覚め、次第に狂気的な青年へと変貌していく。
原作開始時点では高校生だが、その後、大学に入学。大学院(書類上)を経て、第二部に社会人となり警察庁へ入庁。情報通信局・情報管理課の技官となる。
ノートの所有者となってからは死神界のルールにより、特定時期を除いて死神リュークが常に憑りついている。おやつのリンゴを与える他、2人でマリオゴルフを楽しんでいるらしい(ゲーム名が出るのは原作のみ)。
性格とその変貌
ノート入手前は、人間愛・家族愛・世界愛を持ち合わせていた正義感の強い好青年で、原作者曰く「本当にいい子」だったという。原作者がインタビューで「ノートを手にする前の月なら、純粋な気持ちで『僕の目を見てくれ!』というんでしょうね。」と発言している。しかし、ノート入手後は、他者への見下しや自己顕示欲が増大していき、表面上は穏やかな優等生を演じつつ、裏ではドス黒い思念を巡らせるという激しい二面性が生まれていく。
原作者からは13巻などで元々、やはりどこか歪んでいたこと、負けず嫌いかつ自惚れしている、(内心では)周りを見下している、女性は感情的なので好きになることはないという考えの持ち主とは指摘されており、キラになる素質はあったとも解釈できる。ちなみに既に1話の時点で、リュークにそんなことしたら性格悪いのお前だけになるぞと突っ込まれている。
生まれながらにして家柄も良く、容姿端麗、文武両道の彼は自分の優秀さに絶対的な自信があり、他人に迷惑をかける悪人や、人の幸せを奪う者たちが許せないという元々の性格もあり、その性質がデスノートの力と、自己顕示欲も重なって歪んだ正義に変化したともいえる。
ノートを使い始め、キラになってからは表向きの性格は優しく家族想いの好青年、内面の性格は非常にプライドが高い傲慢な腹黒と化した。どんなにリスクが高い策でも実行に移す度胸と、それを成功させるという自信を持っている。反面、自身と同等の頭脳を持つLの登場以降は(L曰く自分にそっくりな)負けず嫌いで幼稚な性格、煽り耐性がないという内面が露呈していく。
女性を見下す節も多々見られ、学生時代は計画に利用するだけの目的で複数の彼女をキープしていた。自分への好意も「扱いやすい女」「女なんて簡単なもんだ」「女を殴りたいと本気で思ったのは生まれて初めてだ」「まったく女というのは…」などとしか思っていない。原作者からは直々に「彼は女性を好きにならない、なぜなら見下しているから。」と言われている。ヨツバ編ではフェミニスト的な一面も見せたが、根本では女性を見下しているため、どちらかと言うとレディーファースト精神に基づいて女性に優しくしていたと思われる。
時には歪んだ正義感を優先するあまり善人すら犠牲にする冷酷さを持つ。本人やL曰くいざとなったら家族すらも殺すつもりでいるが、原作者によると「家族や人間への愛情はあり、友達も多い」。肉親を殺す必要性に迫られた際も(保身優先かつ散々葛藤した末に「殺したら自分が疑われる」という考えから)最後まで殺さなかった。
作中の流れ
高校の授業中に落下するノートを目撃し、『馬鹿らしい不幸の手紙のような類のジョークグッズ』だと思いつつ持ち帰る。その後二度の検証によりノートの効果を確信し、死神のリュークと出会う。
ノートの能力と天才的な頭脳、整った容姿、優れた人心掌握術、抜群の演技力を駆使し、凶悪犯罪者を意図的に同じ死因(心臓麻痺)で大量に殺害。世間に心臓麻痺で人を殺せる者、俗称「キラ(KIRA)」の存在を認知させ、新世界の神になろうと企むが、探偵Lの挑発や居場所の指摘を受け、Lを敵と認定し「正義」をかけた戦いを始める。
Lと敵対することで段々と傲慢な性格に変わっていき、凶悪犯罪者だけではなく、Lなどのキラに歯向かう者や、キラにとって将来の邪魔・障害になる者も容赦なく殺害対象としていった。特にLとの勝負に区切りをつけた第二部以降は、たとえ協力的な人物でも、不要となれば足がつかないよう容赦なく殺害している。
単独で活動していた時は最後まで確証を握らせなかったキラこと月だが、終盤にはその慢心する性格と殺してきた人たちが仇となり、ニアに確たる証拠を突き付けられる。最期は、普段のスマートな振る舞いからは想像できないほど見苦しく、みっともないあがきを見せ、血と泥にまみれ散々命乞いした末、リュークのデスノートにより心臓麻痺で絶命する。
セリフ
- 世の中に知らしめるんだ…正義の裁きをくだす者がいるって事を!
- そして僕は 新世界の神となる
- えっと…すみません、受付の人は皆同じに見えてしまって
- 駄目だこいつ…早くなんとかしないと…
- 勝った 計画通り
- ニア 僕の勝ちだ
- そうだ 僕がキラだ
- 言ってもわからぬ馬鹿ばかり…
- 馬鹿野郎ーっ!!松田 誰を撃ってる!?ふざけるなーっ!!
- うわーーーっ死にたくない!!逝きたくないーーー!!
- ち ちくしょう………… (作中および人生最後の言葉)
その他
- 名前がLの本名とリンクしているが、綴りが異なり(Lightとliet)設定的にもおそらく無関係。
- 原作者曰く「主人公とはいえ多くの人間を殺す凶悪犯罪者であるため、現実に存在する人と名前が被らないよう月と書いてライトと読む名前にした」。この傾向は主に犯罪者やノート使用者にもみられる。
- 現代の日本では常用漢字にない読みや当て字を用いた特殊な名前を「キラキラネーム」と呼ぶ。この作品のキラや夜神月が由来との説もあるが、詳しい経緯や関連性は不明瞭。
- 前述通り、原作者の大場つぐみ・作画の小畑健の両名から明確に「悪」と定義されている。その死に顔は少年誌の主役と思えないほど凄惨で、「が…ま…」の人の綺麗で緩やかなものとは対照的。ただしアニメオリジナル展開では死に際に見苦しく逃亡を図った末、なぜか彼と酷似した綺麗な表情で死ぬ。
- 「最後は月が報いを受けて死ぬ」という展開は最初から決められており、原作では2010年の1月28日に命日を迎えた(アニメ版は2013年の1月28日)。連載当時の実際の年月だと数年先の未来の出来事であった。
- 「過去話をしない」という作者のスタンスから、回想など第1話以前の月の姿が描かれることは最後まで一切なかった。スタンス上他の人物も同様ではあるが、話の流れで語られた弥海砂、例外の魅上照、スピンオフで描かれたLなどと違い本当に最後まで何もなかった。少年漫画の主人公としては異色中の異色である。
実写映画
デスノート(前編)
2006年6月に公開された前編。最初から大学生に変更されたほか、性格も原作より冷徹で、家族の名前を書くことを躊躇せず、恋人の秋野詩織ですら利用するために平気で殺害している。
the Last name
2006年11月公開の後編。原作の第二部に当たるが、ヨツバ関連まるごと削除や高田清美との関係、Lが死ぬ経緯やクライマックスなどが大幅に異なる。藤原の(ぼそっとした)「計画通り」が登場。
L change the WorLd
2008年に公開された、Lが主役のスピンオフ映画。映像出演のみでセリフはない。
Ligth up the NEW world
2016年公開の通称LNW。「the Last name」の10年後(2016年)を舞台に、原作にあったノートの「6冊ルール」を主軸にしたオリジナルストーリー。死後のため、やはり映像や音声の出演のみ。
Death Note(アメリカの実写映画)
2017年に配信開始した、Netflixオリジナル映画。登場人物の名前が英語に変更されたため、夜神月も「ライト・ターナー」という名になっている。
テレビアニメ版
実写映画前編に引き続き、2006年7月から2007年6月まで1年間放送。基本的には原作に忠実だが、本編に影響しない程度に(主に第二部の)細かいシーンが省略・削除されたり、Lが死ぬ25話「沈黙」の月とLのオリジナル展開追加、ヨツバ編での月に始末された者の場面追加などがある。
月の最期の流れも異なり、倉庫で捕まった魅上が自殺することで周囲がそれに気を取られ、その隙に倉庫から逃走を試みるようになっている。だがやはりリュークに見放されてしまい、ノートに名前を書かれ心臓麻痺で一人孤独に死亡した。
凄惨な表情で死亡した原作とは違い、命乞いせず落ち着いた表情で人知れず死亡し、月の死をもって物語も終了する。
テレビドラマ版
2015年7月から9月に日本テレビ系列で放送された実写ドラマでは、
- ノートを拾う時点で大学生
- 東大に入るような天才でも女性を惑わす程の美形でもない凡人
- 一人称が僕ではなく俺
- アイドルユニット「イチゴBERRY」の熱烈なファン(所謂ドルヲタ)
- 元々極端に影の薄かった母・幸子が故人にされる
など原作の月とは設定が大幅に異なる。メディアミックスで既に原作展開が使い潰された状況下、内容の大幅変更は必然だったとはいえ(月に限った事ではないが)作品の根底を揺るがす大胆すぎる改変は原作ファンの間で大きな物議を醸した。特に人形にされたメロとか。
杉並経済大学に通い公務員就職を目指す大学生。居酒屋でアルバイトする傍らイチゴBERRYのライブへ赴くなど、原作よりずっと人間臭さが目立つ。特にミサミサこと弥海砂のファン。
あるとき、高校時代のいじめっこ不良・佐古田がバイト先に現れ、直後に月は偶然DEATH NOTEと書かれたノートを拾う。月は佐古田から友人を守るため半信半疑で佐古田の名前を書くが、ノートの力は本物で本当に殺害してしまう。自らの行為を悔やみ一度はノートを手放すも、佐古田の死を喜ぶ周囲の人間が多かった事に加え、父・総一郎が凶悪犯罪に巻き込まれるなど数々のきっかけから原作同様、凶悪犯罪者に裁きを下すようになる。
幼くして母を亡くし、その死に目に総一郎が来なかった事が起因となり、良くも悪くも「普通」を求める青年として育つが、原作同様、内には総一郎譲りの正義感を抱いている。テレビ越しのLの挑発に対し「犯罪がなくならないからキラが生まれた」と激昂したシーンからも取れるように、原作月とは違い犯罪者を裁くキラという存在を尊んでおり、それを守るために打倒Lを決意する。しかし物語が進むにつれて脚本の都合で目的と手段が逆転し始め、Lが死亡した事をきっかけに原作同様「新世界の神」を目指し始める。
凡人設定ゆえ危なっかしい行動が目立ち、窮地に立たされるたびに海砂や魅上の助けを借りて切り抜けていくが、それらはあくまで「運がよかった」だけ。L殺害には成功したものの、死を見越して行動していたLに結果的に敗北し、倉庫で追い詰められ、月逮捕を妨害しようとした魅上の放火で警察の救出が阻害されてしまう。最後の手段としてリュークと死神の目の取引をするも時すでに遅く、最期はノートごと焼死した。リュークに対して命乞いやルール破りを命じたりはしなかったためか、リュークに殺される最期では無く、リュークが去る際のセリフも他媒体とは微妙に異なっている。
なお月を演じた窪田は原作の大ファンであり、本作の主演に抜擢された事でアニメ版・映画版を何度も見直して役作りをしており劇中でリスペクトしている。特に激昂するシーンのドスの利いた声音、最終回の松田に撃たれた際の言い回しは一聴の価値がある。
余談だが、「凡人がデスノートを手にしたらどうなるか?」というテーマは既に2本の読切漫画版で描かれており(鏡太郎、Cキラ)、原作のニアも「まともな人間なら最初の一度以来、二度とノートは使わないだろう」と発言している。しかし、ドラマ版の場合は上記のような強いきっかけがあった上での展開であるため、一般人でもきっかけがあれば誰でもキラになりうる、という一つの例と言えるかも知れない。
関連動画
関連静画
関連コミュニティ
関連項目
- DEATH NOTE
- リューク
- 夜神総一郎
- L(DEATH NOTE)
- ニア
- 弥海砂
- 魅上照
- 高田清美
- 渋井丸拓男(シブタク)
- 駄目だこいつ…早くなんとかしないと…
- 計画通り
- 新世界の神
- キラゲーム
- 宮野真守
- 藤原竜也
- 窪田正孝
- 死神
- 警察官の一覧
- 新世界の神ごっこ
- 松田バカヤロウシリーズ
親記事
子記事
兄弟記事
- 28
- 0pt