大地讃頌とは、『混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「土の歌」』の第七楽章の楽曲である。
「大地賛頌」は誤記である。
概要
元来は混声合唱とオーケストラ用に1962年に作曲されたが、1970年にピアノ伴奏版が作られる。
今日ではこの編成が最も広く知られており、中高の卒業式において定番となっている。
吹奏楽伴奏版、女声合唱
とピアノ版、男声合唱
とピアノ版も存在する。
過去、PE'Zによって演奏されJASRACの使用許諾を得た上で「極月−KIWAMARIZUKI」に収録されていたが、作曲者の佐藤眞よりアレンジが編曲権及び同一性保持権を侵害するとして、CDの販売停止を求められた。これに対し、販売元の東芝EMIは自主的に『大地讃頌』とアルバム『極月-KIWAMARIZUKI-』を出荷停止とすることを決定した(後述)。
「土の歌」
「土の歌」の詞は、広島出身の詩人・大木惇夫が、反戦・反原爆の立場で書いたものである。
第一楽章~第六楽章にかけて、土の恵みへの感謝、その土に死の灰を降らせる人間の愚かさ、天災の怖ろしさ、大地や反戦への祈りが歌いあげられ、終曲として「大地讃頌」が歌われる。
全曲通して聴く、または歌うと、「大地讃頌」に込められた祈りの重さに気づくだろう。
カバー曲収録CD回収事件
2003年に、ジャズグループのPE'Zが『大地讃頌』をジャズアレンジしたバージョンをまずシングルCDで、続いてアルバムを東芝EMIから発売した。このアレンジはPE'Zの『大地讃頌』への深いリスペクトから生まれたもので、CDの発売に際しても、『大地讃頌』の著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)へのCD収録に関する権利処理は当然行っていた。
ここで不幸が発生した。JASRACは原曲をそのまま演奏して、それをCDに収録することを許諾する権利(録音権)は管理しているが、楽曲をアレンジする権利(翻案権)は管理していないのである。つまり、楽曲をアレンジするに際しては、作曲者へアレンジを行ってよいか確認が必要となる。しかし、CDの発売に際して、東芝EMIは確認を取っていなかった。
ここで「東芝EMIがけしからん」というのは、やや短絡的である。音楽業界では、少なくともこの当時までは、JASRACに録音権使用料を支払ってしまえばアレンジについて直接確認を取るという業界慣行はなかったし、逆に無断アレンジに対して抗議をする、差し止めをするというアクションを行うこともなかった(レコードやCDとして発売された音源を無断でサンプリングして使用する、というケースは全く別。音源=原盤権に関するものとは全く異なる話であることに注意してほしい)。理屈としては単純で、アレンジをしていようがいまいが、楽曲として使用されれば著作権使用料が入ってくるのだから断る理由もないし、JASRACに録音権使用料を払ってさえくれれば無断で行われたからといって文句をつける筋合いもなかったのだ(アレンジの許諾に追加で許諾料を徴収するという慣行もない)。東芝EMIとしては、アレンジに際して許諾を取らなければならない、という発想は、一担当者の過失ですらなく、そもそも制作サイド全体になかっただろうと思われる。
しかし、大地讃頌の作詞者作曲者である佐藤眞氏は、これ以前にも大地讃頌のアレンジを一切認めていない人だった。CDが発売されることを知った佐藤氏は発売前に取りやめるよう注意し、発売後に販売停止と演奏禁止を求める仮処分申請を裁判所に行ったのである。
東芝EMI側は、当初は闘う姿勢を見せた。それはそうである。上記の業界慣行もさることながら(それまでも演奏・録音についてJASRACが定める使用料を支払ってきたのも上記の通り)、ジャズグループのPE'Zが大地讃頌を歌うに際して、アレンジをしないということはありえない。もしジャズグループに歌ってほしくないなら著作権をJASRACに管理させなければいいのであって(ネットでは何かと批判の的になるJASRACだが、万人に対して公平な条件で公平な許諾を行うという意味では、音楽の利用者サイドからは便利この上ない存在なのである。これが個人の管理だと、気に入らない奴には許諾しない、法外な条件を出す、そもそも問い合わせに応じないなど管理者のやりたい放題になる。利用者と権利者どちらのサイドに立つかはバランスの問題で絶対の世界はないのだが)、JASRACに管理をさせておいてジャズグループに歌うな、というのはややバランスを欠く。もし大地讃頌が作曲家個人の管理であれば、当然作曲家本人に確認して、そこで断られたわけだから、そもそもこんな問題は生じなかったのである。
しかし、そもそもはPE'Z自身が「曲へのリスペクト」として制作したアレンジである。PE'Zが「作曲者を不愉快な気持ちにさせてしまうのは」と言い分を認めたことで東芝EMIもCDを自主回収し、これによって仮処分申請も取り下げられた。
この事件があった後、市販されている大地讃頌の楽譜には「男性合唱とピアノによる演奏では、この編曲版のみを使用していただきたい」との断り書きがされるようになった。また、CDのアレンジ版制作に際しては、カバー申請を行うことが一般的になった。
ピコカキコ
大地讃頌 | ![]() |
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