大地讃頌とは、中学生から一般まで幅広く歌われる合唱曲である。
大地賛頌は誤記である。大地讃領に至ってはそもそも読みが違うだろ。
概要
作詞:大木惇夫、作曲:佐藤眞、主調:ロ長調、グランディオーソ:4/4拍子
後述の「土の歌」第七楽章として作曲され、元来は管弦楽版で原調はニ長調であった。プロ向けだからね! 1970年にピアノ伴奏版が作られ、併せて減2度下げる移調がおこなわれた。その後、当楽章(ピアノ伴奏版)が中学校クラス向け合唱曲集に頻繁に掲載・演奏されるようになり、当楽章のみが突出した知名度を持つにいたる。中学校・高等学校の校内コンクールの定番曲であるほか、卒業式における定番曲となっている地域もある。
吹奏楽伴奏版、女声合唱とピアノ版、男声合唱とピアノ版も存在する。
「土の歌」
混声合唱とオーケストラのためのカンタータとして、1962年に作曲された。全七楽章。
「土の歌」の詞は、広島出身の詩人・大木惇夫が、反戦・反原爆の立場で書いたものである。
第一楽章~第六楽章にかけて、土の恵みへの感謝、その土に死の灰を降らせる人間の愚かさ、天災の怖ろしさ、大地や反戦への祈りが歌いあげられ、終曲として「大地讃頌」が歌われる。全曲通して聴く、または歌うと、「大地讃頌」に込められた祈りの重さに気づくだろう。
作曲者による複数回の改訂がおこなわれており、現在流通する楽譜は2009年改訂版である。
カバー曲収録CD回収事件
2003年に、ジャズグループ「PE'Z」が「大地讃頌」をジャズアレンジしたうえで演奏し、日本音楽著作権協会(JASRAC)の使用許諾を得た上でCDシングルならびにアルバム『極月−KIWAMARIZUKI』に収録、東芝EMI(当時)より販売した。これについて作曲者の佐藤眞より、アレンジが編曲権及び同一性保持権を侵害するとして、CDの販売停止を求められた。これをうけて、東芝EMIは自主的にシングル『大地讃頌』とアルバム『極月-KIWAMARIZUKI-』を出荷停止・回収した。
発端
PE'Zには前提として「大地讃頌」への深いリスペクトがあり、その上でアレンジ・演奏をおこなっている。CDの発売に際しても、「大地讃頌」の著作権を管理するJASRACへのCD収録に関する権利処理は当然行っていた。しかしJASRACは原曲をそのまま演奏して、それをCDに収録することを許諾する権利(録音権)は管理しているが、楽曲をアレンジする権利(翻案権)は管理していない。つまり、楽曲をアレンジするに際しては、作曲者へアレンジを行ってよいか確認が必要となるのであるが、東芝EMIはCDの発売に際して、作曲者に確認を取っていなかった。
ここで『東芝EMIはけしからん』というのは、やや短絡的である。というのも少なくともこの当時までは、JASRACに録音権使用料を支払ってしまえばアレンジについて直接確認を取るという業界慣行が無かったためである。また作曲者も無断アレンジに対して抗議をする、差し止めをするというアクションを行うこともなかった[1]。理屈としては単純で、アレンジをしていようがいまいが、楽曲として使用されることで著作権使用料が入ってくるのだから断る理由もないし、JASRACに録音権使用料を払ってさえくれれば無断で行われたからといって文句をつける筋合いもなかったのだ(アレンジの許諾に追加で許諾料を徴収するという慣行もない)。東芝EMIとしては、アレンジに際して許諾を取らなければならない、という発想はそもそも制作サイドには無かっただろうと思われる。
齟齬
作曲者である佐藤眞氏は、これ以前にも「大地讃頌」に限らず、アレンジを一切認めていない人だった。もっともこれは佐藤氏に限った話とは言い難い。前述の「アレンジに関する業界慣行」は、少なくとも合唱演奏においては逆に一切考慮の外にあった。合唱演奏においては、楽譜を「解釈」して演奏することは認められても、楽譜を許可なく「アレンジ(改変)」することはありえなかったのである。コンクールなど演奏時間に制限がある場合、楽曲の一部をカットして演奏する事があるが、その際も必ず作曲者にお伺いを立てるのが、「合唱演奏における業界慣行」である。このように「楽曲へのアレンジに対する認識」に齟齬が生じていることを、接点の乏しい当事者同士が把握していなかったのである。CDが発売されることを知った佐藤氏は発売前に取りやめるよう注意し、発売後に販売停止と演奏禁止を求める仮処分申請を裁判所に行ったのである。
決着
東芝EMI側は、当初は闘う姿勢を見せた。前述の業界慣行もさることながら(それまでも演奏・録音についてJASRACが定める使用料を支払ってきたのも上記の通り)、ジャズグループのPE'Zが「大地讃頌」を歌うに際して、アレンジをしないということはありえない。もしジャズグループに歌ってほしくないなら著作権をJASRACに管理させなければいいのであって[2]、JASRACに管理をさせておいてジャズグループに歌うな、というのはややバランスを欠く。もし「大地讃頌」が作曲家個人の管理であれば、当然作曲家本人に確認して、そこで断られたわけだから、そもそもこんな問題は生じなかったのである。
しかし、そもそもはPE'Z自身が『曲へのリスペクト』として制作したアレンジである。PE'Zが『作曲者を不愉快な気持ちにさせてしまうのは』と言い分を認めたことで東芝EMIもCDを自主回収し、これによって仮処分申請も取り下げられた。
影響
事件後、市販されている「大地讃頌」の楽譜には「男声合唱とピアノによる演奏では、この編曲版のみを使用していただきたい」との断り書きがされるようになった。また、CDのアレンジ版制作に際しては、カバー申請を行うことが一般的になった。
ピコカキコ
大地讃頌 |
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関連項目
脚注
- *レコードやCDとして発売された音源を無断でサンプリングして使用する、というケースは全く別。音源=原盤権に関するものとは全く異なる話であることに注意してほしい。
- *ネットでは何かと批判の的になるJASRACだが、万人に対して公平な条件で公平な許諾を行うという意味では、音楽の利用者サイドからは便利この上ない存在なのである。これが個人の管理だと、気に入らない奴には許諾しない、法外な条件を出す、そもそも問い合わせに応じないなど管理者のやりたい放題になる。利用者と権利者どちらのサイドに立つかはバランスの問題で絶対の世界はないのだが。
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