大畑駅(おこばえき)とは、九州は肥薩線の秘境駅の1つである。
もしかして:大畑駅跡(おおはたえきあと) - 青森県に存在する下北交通大畑線の駅(2021年現在廃駅)。駅舎はバスの出張所として活用され、ホームや車庫設備は有志によって動態の気動車3両とともに保存されている。
概要
特徴・歴史
JR九州管内、肥薩線の駅の一つ。熊本県人吉市にある。秘境駅の一つとして鉄道ファンや九州観光において有名なスポットであり、1996年(平成8年)3月から運航を開始した観光列車「いさぶろう・しんぺい」も停車する。無人駅となっており、駅舎は木造で建設されている。[1]
また、駅付近の斜面は梅園となっており、駅舎北側には桜も植えられているため、2月下旬~春頃には花見スポットとなっている。[2]
1909年(明治42年)11月21日、大畑駅は信号所として開設され、同年12月26日に旅客駅に昇格。旅客扱いを開始した。
当時の肥薩線は、開通当初から1972年(昭和47年)3月まで蒸気機関車で運用されていたため、大畑駅は給水駅として重要視されていた。その当時の遺構である給水塔が現在でも残っている。また、乗客が利用していた水盤(手洗い場)も残っている。これは駅前後でトンネルが続き、すすで手が汚れてしまうため、それを洗い流すために使われていたとされる。[3]
2020年7月に発生した豪雨の影響により肥薩線が不通となったため、2022年現在は営業休止中となっている。
大畑ループ線・・・日本初、そして日本唯一のループ橋・スイッチバックが共存する駅
この駅が有名である理由は秘境駅であること以外にもう一つ理由がある。それは、日本ではあまり見られないループ線やスイッチバック線が隣接しているからである。人吉~大畑駅間にあるこのループ区間は、通称「大畑ループ線」と呼ばれており、さらにループ線内にスイッチバック線があるのは日本中くまなく探してもここだけしかない大変珍しい構造となっている。
なぜ、このような形状の線路設備ができたか。人吉観光サイト「@舎ひとよし」にある資料によると、大畑駅周辺は、肥薩線[4]建設において最も難所となった地点で、勾配差を緩和するために、まずはループ線が計画された。しかし、このループ線の勾配度は30.3パーミル(1000mの推進に対して30.3m駆け上がるほどの坂道)と、当時運行していた蒸気機関車ではギリギリ登ることができる坂道となっていた。このため、休憩基地のような車両を一時留置できる駅、信号所が設ける必要があった。しかし、山のど真ん中に作られたループ線のため、平坦な土地を確保することは至難の業であった。そこで、ループ線内にスイッチバックを作り、その中に駅を建設するという大胆かつ珍しい手法をとり、(人吉方面から)ループ線→スイッチバック(1回目)→スイッチバック(2回目)というルートで建設されたのであった。そして、2回目のスイッチバック部分の脇に駅舎とホームが建設された。[5]
現在では、鉄道の電力化が進み、肥薩線では蒸気機関車から気動車へと車両運用が変更され、このような急勾配でも簡単に登れるようになった。また、トンネル掘削技術、土木技術も進化したため、このような複合構造は以降建設されなかった。これにより、日本初にして日本唯一となるスイッチバックと複合したループ線、「大畑ループ線」とスイッチバック内に建設された「大畑駅」は誕生したのである。[6]
駅舎の名刺・・・駅舎に名刺を貼ると出世するジンクスがある駅
大畑駅で一際目立つものはループ線とスイッチバックのほかにもう1つある。それは、駅舎の壁にビッシリと貼られた数々の名刺。これは全て駅の訪問者が貼った名刺である。いつ頃から始まった風習なのかは一切不明だが、この駅には「駅舎に名刺を貼ると出世する」というジンクスがある。[7]
聖地巡礼地として・・・アニメ「夏目友人帳」第7話に登場する駅舎のモデル
大畑駅は、アニメ「夏目友人帳」シリーズの聖地の一つとしても知られ、第一シーズンの第7話「子狐のぼうし」に登場する駅舎のモデルとされている。駅には巡礼ノートなどが設置されている。なお、他にも人吉市内にはモデルとされる建物や風景が各地に点在し、聖地巡礼としてファンが実際に訪れたりしている。[8]
囲炉裏キュイジーヌLOOP・・・えっ、こんなところにフレンチレストラン!?
2018年(平成30年)9月8日、駅開業109年を迎えた大畑駅内にまさかの施設が誕生した。
かつて保線詰所として使用された建物をリノベーションして開業したのは「囲炉裏キュイジーヌLOOP」、以前東京の「銀座レ・ザンジュ」という高級フレンチレストランで腕を振るっていたシェフがオーナーを務めるフレンチレストランである。[9]
なぜ、こんな秘境駅と呼ばれる場所にフレンチレストランが出来たか。交通関連のニュースを中心に配信する「乗りものニュース」によると、一般社団法人NOTE(ノオト)が主催する古民家プロジェクトの一環として推進されたもので、このプロジェクトはJR九州と人吉市、地元銀行と連携し、歴史的建築物を活用して地域を活性化しようという趣旨のプロジェクトである。これと並行して、隣駅である矢岳駅でも旧駅長官舎をリノベーションして、2019年4月に古民家ホテルをオープンする予定である。ちなみにNOTEは、これ以前に丹波篠山でも同プロジェクトを展開している。[10]
このフレンチレストランでは、定休日である毎週水曜日を除いてランチ営業とカフェ営業を行っており、人吉球磨産の旬の食材を使ったフレンチコースが楽しめる。なお、食べに行く際は事前に公式サイト掲載の電話番号から予約が必要となる。[11]
ちなみに、秘境駅の中に作られたため、誰も食べに来る人はいない・・・かと思いきや、オープンして約3か月で大畑駅を訪れる人がオープン前の約30人から約100人規模に倍増する快挙となり、駅の維持美化活動している地元住民グループの農産物直売所の売り上げが伸びる効果をもたらしている。[12]
2022年現在はコロナ禍ならびに豪雨の影響により営業休止中となっている。
営業案内
隣の駅
八代・人吉方面 | 吉松・隼人方面 | |
人吉駅 | 大畑駅 (当記事) |
矢岳駅 (肥薩線最高地点駅) |
関連動画
関連商品
関連チャンネル
関連コミュニティ
関連項目
- 観光スポットおよび祭り・イベントの一覧
- 熊本県 / 人吉市
- 鉄道 / JR九州 / 肥薩線
- 秘境駅
- 駅名一覧
- いさぶろう・しんぺい
- スイッチバック / ループ線
- 真幸駅・・・肥薩線のもう一つのスイッチバック駅
- フレンチ / レストラン
- 夏目友人帳
- 聖地の一覧
関連リンク・参考サイト
- 熊本県公式サイト
- 人吉市公式サイト
- 五感、ひびく、観動旅 もっと、もーーっと! くまもっと。(熊本県公式観光サイト)
- @舎ひとよし(人吉市観光サイト)
- JR九州公式サイト
- CLASSIC RAILWAY HOTEL 人吉琢磨
- 乗りものニュース
- 一般社団法人NOTE(ノオト)
脚注
- *のんびりローカル線 肥薩線の旅 駅を訪ねて~大畑駅~ (@舎ひとよし)
- *人吉梅園 (るるぶ.com)
- *1と同上
- *当時は鹿児島本線として建設された
- *1と同上
- *1と同上
- *JR九州Webパンフレット「JR KYUSHU TRAINS 極上の列車旅 はやとの風/いさぶろう・しんぺい」7ページより (JR九州)
- *『夏目友人帳』の聖地巡礼!熊本県人吉球磨地方に行ってきました! (にじめん[ニコニコニュース掲載])
- *囲炉裏キュイジーヌLOOP (CLASSIC RAILWAY HOTEL 人吉琢磨サイトページ)
- *秘境駅にフレンチレストラン開業 その目的とは ループ×スイッチバックの大畑駅(写真16枚) (乗りものニュース)
- *9と同上
- *大畑駅のレストラン快走 昼食時満席、無人駅に活気 JR肥薩線の旧保線詰所を改装 (熊本日日新聞)
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