大陸移動説とは、地球上の大陸が移動しているとする学説である。
概要
地球上の大陸が少しずつ移動しているとする学説。1912年にドイツの気象学者であったヴェーゲナー(ウェゲナー)が提唱し、当初は批判も多かったものの、1970年代以降は広く受け入れられた理論となった。現在では、人工衛星による測定で年間数cm程度大陸が移動していることが実証されている。
稀に地動説とごっちゃにされるが、地動説は地球と太陽・その他の惑星の動き方の関係を指すもので、大陸移動説は地球表面の大陸の移動を指す。
ヴェーゲナーの大陸移動説
大陸同士をくっつけるとパズルのピースのように組み合わさることは、フランシス・ベーコンなど、遅くとも16世紀ごろには気づいた人がいた。この時点では大陸移動説に発展はしなかったが、のちにヴェーゲナーが地図を見ていると山脈や海岸線など大陸同士がぴったりはまる箇所があることに気付き、大陸移動説を考え出した。
19世紀ごろになると、海を隔てた別の大陸に同じ生物の化石が見られることが判明した。「大陸同士を結ぶ陸地があった(陸橋説)」「地球が収縮し、陸地が沈降して海ができた(地球収縮説)」などの説があった中、気象学者のヴェーゲナーが「1つの大きな陸地『パンゲア』が分裂して移動した」とする大陸移動説を唱えた。
根拠として、化石に加えて離れた大陸同士の地質、過去の気候や氷河の分布、現在の生物分布を調べ、海を挟んで共通する点があることを見出していた。このように、大陸が移動した状況証拠については揃っていた。また、アイソスタシーの原理により、陸橋が沈んで海になることはない(大陸を構成する物質は海底を構成する物質より軽いため沈むことができない)とし、陸橋説を否定した。
しかし、ヴェーゲナーは「大陸を動かす原動力」についてはうまく説明できなかった。ヴェーゲナーは離極力(地球の遠心力)と潮汐力を原動力として想定したが、確かな根拠はなかった。また、当時の技術では測量の精度が低く、大陸が実際に動いていることを測定し証明するのも難しかった。さらに、「高い山脈の地層に海生生物の化石が存在する」等の、大陸の水平方向のみの移動では矛盾する事象についてもうまく説明できなかった。このため、多くの学者から批判にさらされた。
1930年のグリーンランド探検の際にヴェーゲナーが遭難死し、以降はドイツもナチスの時代に突入してしまい、大陸移動説は停滞した。
1950年代以降の進展
1950年代になると、岩石等の残留磁化によって過去の地磁気の状況を復元しようとする古地磁気学が生まれた。これによって過去の地磁気の方向を調べると、大陸ごとに異なる変化の軌跡をたどっていることが判明し、地磁気から過去の位置を復元するとヴェーゲナーが提唱した過去の大陸図に近いものになった。
その後、地磁気の調査結果などから海嶺を中心にして海底が拡大してきたとする「海洋底拡大説」が生まれた。その原理についても、1960年代にマントルの流れに沿って地球を覆う「プレート」が動くことによるものとして説明する「プレートテクトニクス」が提唱されたことで、結果として大陸移動の原理も説明できるようになった。
関連動画
関連項目
- 地球
- 地球科学
- 火星 … 地球のような地殻変動がなかったため冷えた惑星になったとする説がある。
- タイタン、エウロパ … 木星や土星の衛星の中には氷の大陸が潮汐力により地殻変動のような現象を起こしているとみられているものがある。
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