『太陽の牙ダグラム』とは、日本サンライズ制作の地球を遠く離れた殖民惑星デロイア星の独立戦争を描いた人型兵器(コンバットアーマー / CBアーマー / Combat Armor)が登場する、SF・未来政治フィクションアニメである。
題名の「太陽の牙」は主人公の所属する反政府ゲリラコマンドチームの名称である。
鉄の腕は萎え、鉄の脚は力を失い埋もれた砲は二度と火を噴く事はない。
鉄の戦士は死んだのだ。
狼も死んだ、獅子も死んだ。
心に牙を持つ者は、全て逝ってしまった...
概要
物語の主題は、地球に搾取されている殖民惑星デロイアを独立させたいゲリラ側と、資源確保のために現状維持したい地球側の対立である。政治家、軍人、ゲリラ、民間人がそれぞれの思惑で行動し時代のうねりを作っていく群像劇である。今時のアニメと違って出てくるのはその地位相当のおっさんばかりである。オヤジ萌えにはたまらない。少年少女も出てくるが出番の多い脇役である。
玩具会社がスポンサーであったため、戦闘は主にコンバットアーマーと呼ばれるロボットで行われる。当時人気の『機動戦士ガンダム』から始まったリアルロボット路線をさらに推し進め、リアルさを出すために戦闘ヘリや輸送用トレーラなどのメカも多数登場する。作中にはビーム兵器は登場しない。ゆっくり進むビームはリアルに見えないからだ。代わりにリニアガン(他のSF作品ではレールガンとも呼ばれる)を使用する。
玩具のヒットにより(後述)、予定より延長され全75話と言う大作になった。映画化もされたが到底一本にまとめられる長さではないのでドキュメンタリーという形式をとった(『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』)。
「視聴率は良くなかった」とする向きもあるが、日本サンライズのオリジナル作品としては『無敵ロボトライダーG7』に次ぐ第二位であり、むしろ良かったと言える。番組開始から半年間、裏番組として人気アニメの『六神合体ゴッドマーズ』(日本テレビ)が放送されていたことを考えれば、大健闘と言えよう。ゴッドマーズはその後三十分前倒しとなるのだが、ダグラムはそれ以前に五分前倒しになっていたので、五分間被ってしまうという悩ましい事態がその後もしばらく続くこととなった(当時のアニメにはアバンタイトルがなかったため、ダグラムの暗~いOPとCMを見ずにゴッドマーズをギリギリまで見るという回避策がとられた)。
音楽はウルトラセブンなどの作曲で有名な冬木透。その寂しげなBGMは決して喜びだけではない独立運動を描き、名場面を更に心に刻ませる。
リアルロボットアニメブーム
アニメ本編のストーリーはあまりにも難解で、メインターゲット層である子供には容易に理解出来るような作品ではなかった。だが、タカラの発売したプラモデルにはガンプラでは飽き足らない当時のプラモ少年(青年)が飛びつき、記録的な大ヒット商品となる。その結果、一年間の放映予定が延長され全75話という大長編となったのである。
これに危機感を抱いたのが、ガンプラを展開していたバンダイである。ダグラムの翌年に放映開始された『戦闘メカ ザブングル』では、主役ロボのザブングルこそもうひとつのメインスポンサーであるクローバーの意向によりスーパーロボット的な風貌となったが、それ以外の脇役ロボはミリタリー的なデザインを取り入れ、プラモデルのパッケージもまるでタミヤのスケールモデルのようなデザインとなった。
また、同時期に1/100スケールのガンプラの成型色を変え、デカールを同梱させた「リアルタイプ」というシリーズも展開していた。
ただこのブームも徐々に沈静化し、ダグラムの後番組である『装甲騎兵ボトムズ』はほどほどのヒットに終わっている。
物語の始まり
地球は七つの自治州とそれをまとめる連邦政府から成っている。デロイアの歴史は地球人の移民から始まったが、殖民惑星として地球から搾取され続けていた。デロイア人は地球に対して大きな不満反感を持っていたが発言力も戦力もない。そこにデロイア人であるが地球側の軍人フォン・シュタインが独立のため上官を射殺したことから歴史は動き出す。しかしクーデターは元々筋書きのあったもので、デロイアは独立ではなく表向きには八番目の自治州へ、フォン・シュタインが代表となり実質的に地球側の傀儡政権となった。ここから真の独立運動が始まる。
主な登場人物
ドナン・カシム
地球連邦評議会議長。地球側の代表として、最大多数のためには多少の犠牲はやむを得ないと言う考えから、デロイアの独立を阻止しようとする。独立は時期尚早とも言ったり、ゲリラ側の考えも理解しており、決して独裁者的な人物ではない。重い持病のため物語の決着を見ずに他界。彼の死もストーリーの流れに大きく影響する。
ヘルムート・J・ラコック
ドナンの補佐官。秘書みたいなもの。地球人。若いが政治的野心丸出しの男で手段を選ばない。ドナン曰く「有能だが徳がない」。物語後半では弁務官に就き実質地球側のトップとなり、デロイアを我が物にする。しかし、そういう人間にはそれ相応のラストが待っているのである。
フォン・シュタイン
デロイア人だが連邦軍の第八軍の大佐。地球の士官学校を出て長く暮らしていたため思想的には極めて地球寄り。偽りのクーデターを画策してデロイア州政府代表となる。しかしラコックと対立しデロイアのために行動を起こしたところで事故死。ここは名場面のひとつである。
デビッド・サマリン
ゲリラ側の指導者。歴史学者で作中では博士と呼ばれる。ドナン・カシムとは反対に少数の声も聞くと言う姿勢、年長者としての重みのある言葉が若いゲリラ達の尊敬を集めた。デロイアの完全な独立を目指すが、事務レベルという名の政治的駆け引きに負け、志半ばに倒れる。
ヘシ・カルメル
ゲリラ側の穏健派指導者。強硬なサマリン派と対立し名ばかりの独立と引き換えに地球側の要求を飲んだが、その弱腰な部分を突かれ、結果的にラコックに利用されただけであった。しかしラストのゲリラ達の武装解除に関しては連邦軍と全面戦争も持さない覚悟を見せた。単にキレただけかもしれないが。
ジャッキー・ザルツェフ
連邦軍少佐。有能な軍人でゲリラ側にかなりの損害を与えた。しかし誤解からフォン・シュタインと対立し軍刑務所送りになるところをゲリラに救出される。以後はゲリラ側の参謀としてその能力を発揮するも、停戦後に政治的取引のため逮捕された。停戦を知らせに来たサマリンの言うに言われぬ事情を察して自らその身を差し出す。
コール・デスタン
かつてはゲリラのリーダー的存在。そのころは理想に燃える、きれいなデスタンだった。ただ頑固で理想だけでヘタレな性格も災いし他のゲリラ達と水が合わず活動からは離れてしまった。その後は情報屋としてラコックのパシリ的存在となる。その情報が元になり独立運動の生ぬるい決着となった。最終回では物語を終結させる役回りをしている。奈落の底へ落ちていく象徴的存在。
ディック・ラルターフ
ジャーナリスト。民間人なのでゲリラ側、自治政府側ともに出入りできる。かなりゲリラ寄りの取材をする。フォン・シュタインのクーデターを始めから仕組まれたものであることを感づいていた。独立運動の影の功労者とも言える。
レーク・ボイド
カシム家の娘と結婚。優秀で真面目な軍人であるが行政官となる。その優しい性格が災いし政治家としての甘さを指摘され、デロイア人反乱兵の説得に失敗して失脚。野心を持たない政治家は大成しない見本のような人。でもいい人だよ。
ナナシ
ゲリラの一員だが謎の多い人物。名前も年齢も不明。おそらくデロイア人。いつも上半身裸。北極ポートでも防寒着を着なかった。「~だなっす」を始め独特のしゃべり方をする。ゲリラ達のムードメーカーであり、暗くなりがちな作品のムードメーカーでもある。
クリン・カシム
ドナンの息子だが偉大な父に反発した家出少年。ゲリラの仲間になる。主役メカダグラムを奪還したのを機にパイロットとなったが、頑丈で高性能すぎるダグラムがなければ序盤で死んでいただろう。地球人だがサマリンから地球人とデロイア人が対等に付き合えることの証としてダグラムを託された。いらない子だろ。
コンバットアーマー・ダグラム
本作品に登場する10mクラスの人型陸戦兵器・コンバットアーマーのひとつ。磁気ガス星雲Xネブラにより地球型のコンピュータ誘導兵器が役に立たなくなるというデロイアの特殊環境に対応した初の「Xネブラ対応型コンバットアーマー」。デロイアゲリラが持てる科学的研究成果を注ぎ込み、対コンバットアーマー戦を念頭に入れて開発された。
リニアガン・リニアカノンなど強力な火力装備を施されているほか、構造は過酷な環境での継続運用や分解整備に適し、装甲もケタ外れの硬さを持つ対リニアガン装甲を採用、気密装備・腕力・脚力・跳躍力などの能力も非常に高く、単機で地球連邦軍を向こうに回して戦うにふさわしい性能を誇る。だが皮肉なことに、ダグラムのパーツの7割は水面下で供給された地球メーカー製の部品である。
関連動画
関連リンク
40周年記念企画
関連項目
- 11
- 0pt