奇面組とは、新沢基栄のギャグ漫画『3年奇面組』『ハイスクール!奇面組』及び『フラッシュ!奇面組』作中の主人公・一堂零を中心とした五人組のことを指す。
当記事においては前述の漫画3作品についても記述する。
名物集団「奇面組」について
概要
「個性の追求」をモットーとする変な顔(奇面)の五人組。進級しても進学しても常に「10組」に在籍する。落第するほど成績が悪く、遅刻の常習犯であり、しばしば授業を中断させたり…とクラスや校内を騒がす問題集団とみなされているが、一方でワケがわからないけどすごいこともやる名物集団ともみなされている。零以外は顔立ちゆえに誹謗されることが多く、目立たぬよう振る舞っていたらしい。零との出会いによって自分の異相も「個性」と開き直った目覚めたことで、零をリーダーとして一緒に行動するようになった。
舞台である「一応中学校→一応高校」には他のクラス等にも五人組の名物集団が複数存在するが、後述のようにメンバーに年齢差がある唯一の名物集団。当初は割と普通の頭身であったが、ギャグキャラらしく次第に頭身が縮んだり変身したり、果ては自分たちの異相を必殺技と化した「奇面フラッシュ」という技を放ったりと、人間離れした行動をするようになる。作中ではこうしたふるまいを「変態」と呼んでいて、性癖上の変態を意味しない。
メンバー
- 一堂零 (声:千葉繁)
- 「まゆなし」の零。おもちゃ屋「おもちゃの一堂」の息子。父・琢石、妹・霧と生活中。母・直利は零が8歳の時に病死している。中3を2回落第した劣等生だが、人間離れした身体能力を持ち、特技は頭身変化、筋肉大移動、おどろきしぱた、「やっぱり今の~なし!」など数知れない。奇面組の精神的かつ思想的支柱としてメンバーの信頼も厚い。
人間離れした顔をイメージしたはずだが、後にリアルで「そっくり」と言われていた芸能人が2人居たことが当人の談話で発覚した(辻本茂雄、土田晃之)。作者曰く、キャラは加藤茶のイメージだったらしいのだが。一方で唯のように「凛々しい」と評する見方もある。 - ちなみに『北斗の拳』のレイが一堂零のパロディであるという俗説があったが、同作原作者により否定されている(おそらく奇面組に北斗の拳のケンシロウのパロディキャラが出たことから、そのお返しであったという説が生まれた)。
- 冷越豪 (声:玄田哲章)
- 「まなこ」の豪。両親が蒸発したため、親戚の酒屋「冷越酒店」で長く居候の身。やはり学力はなく中3を2回落第。プロレス好きであり無類の酒好き。豪快に見えて意外にセコい面もある。零に対しても容赦ない暴力的ツッコミ役であるが、リーダーとしての零には一目も二目も置いている。名前は「レッツゴー」に由来。
- 出瀬潔 (声:二又一成)
- 「むき歯」の潔。銭湯「がんばりまっし湯」の息子。スケベでジジくさい。スカートめくりを特技とし、同級生の女の子はもちろん、男湯に来た5歳の女の子を見て鼻血を出すなど、スケベっぷりを発揮。ただ卑猥にならないようにはしている。これでもメンバー中一番の常識人(しかし中3は2回落第)で名前のとおり出席だけは良いことがとりえ。
- 大間仁 (声:龍田直樹)
- 「えびす」の仁。ケーキ屋「大間ケーキ店」の息子。中学は1回落第で零・豪・潔より1つ年下。よく言えばのんびり、悪く言えば怠け者。大食漢で腹が減ると弱気になるが、限度を超えると見境が無くなるほど凶暴になる一面も。趣味は食べる事と休む事と寝る事。
- 物星大 (声:塩沢兼人)
- 「おちょぼ口」の大。本屋「物星書店」の息子。中学は1回落第で零・豪・潔より1つ年下。彼女もとい彼は乙女チックな性格。ひ弱、泣き虫で料理や裁縫が得意など女性より女らしい所が目立つ一方、時に男らしい面が出ることも……?
- 原作ではいわゆるオカマ口調を一切使っておらず、アニメ化の際作者が提示した設定資料にも「『わよ』『わね』などの女ことばまでいきません」とわざわざ注釈が入るほどであったが、演じた塩沢がアドリブでオカマ口調を混ぜることがあった。作者から指摘があったものの、違和感もさほどなかったかストップがかかることはなかったという。
ギャグ漫画「奇面組」について
概要
奇面組を中心に、河川唯と宇留千絵をはじめとする多数の個性的な人物、集団が学校生活を中心とした日常の中で騒動を巻き起こすドタバタギャグ漫画。作者のデビュー読切作『3年奇面組参上』が好評を博したことから連載が企画された。『3年奇面組』は中学時代、『ハイスクール!奇面組』は高校時代(及び完結直前はエピローグ的にその後)を描き、高校へ移行したことに伴って改題したもので、実質的には同一作品。週刊少年ジャンプにて1980年10月~1987年7月まで連載され、2シリーズ全240話。『フラッシュ!奇面組』は『3年~ハイスクール!』のある種セルフリメイクで、月刊少年ガンガンにて2001年~2005年まで連載されたが、休載の末に未完となってしまった。
1話完結を基本としながらも、運動会や修学旅行などの大きな学校行事のほか、『ハイスクール!…』で度々登場した奇面組が助っ人として部活動の試合に参加する「クラブ挑戦シリーズ」など、複数回にまたがる事もある。ウルトラマンの世界を奇面組に置き換えた「ワラトルマン」シリーズ(「ウルトラ編」)なども時折挟み込まれたほか、すべてを4コマ短編で構成するなどした話もある。
他の登場人物
- 河川唯 (声:高橋美紀)
- 本作のヒロイン。父は売れない画家、母は病弱ゆえ家事もこなす真面目でしっかり者。学業もスポーツも優秀で名前通り「かわゆい」ルックスを持つ。原作では中学2年の時に一応中学校に転校してきた。個性のない周囲に飽きと違和感を感じていたところ、当初は上級生だった奇面組に出会い、自らが求めていた強烈な個性の持ち主達に魅かれ行動を共にするようになる。『3年…』の頃は授業中にトイレに行くクセがあったり、奇面組と一緒になってはしゃぐなど変わった所も持ち合わせていたが、高校生になると落ち着いたのか正統派ヒロインとなっていった。
- 宇留千絵 (声:松井菜桜子)
- もう一人のヒロイン(?)で、花屋「フラワーショップうる」の娘。朗らかな性格で転校生だった唯の親友になる。元々は無邪気に奇面組に付いて行く唯を抑える役であったが、話が進むにつれてドジでおっちょこちょいでお調子者なキャラクターから千絵の方がギャグに絡む存在となり、奇面組に振り回されたりおちょくられても逆襲するほどのたくましいキャラに成長。中学生の頃は髪を下ろしていたが高校進学を機に髪型をポニーテールに変えている。
- 名物集団「腕組」
- 9組所属でスポーツ万能集団。リーダーは雲堂塊(声:堀内賢雄)。塊がやたらと奇面組をライバル視し張り合ったため、出番が多かった。落第1回。
- 名物集団「番組」
- 4組所属の不良集団。リーダーは似蛭田妖(声:大塚芳忠)。ケンカが強く怖い連中…のはずが、ギャグ漫画故かしだいに丸くなっていった。落第2回。
- 名物集団「色男組」
- 3組所属のイケメン集団。リーダーは切出翔(声:難波圭一)。ひたすら女の子にモテたがり、当初は唯を巡って奇面組と対立していた。落第1回。
- 名物集団「御女組」
- 7組所属のスケ番集団。リーダーは天野邪子(声:井上瑶)。早退常習犯だったため、遅刻常習犯の奇面組との接点が乏しかった。落第2回。
- 春曲鈍 (声:古谷徹)
- 零の幼なじみでライバル的存在。やぶにらみの目をもつ異相の主。しゃべりが若干舌足らず。存在感・人気が結構あったにも関わらず他のキャラと絡ませにくく、出番が少なかった。落第3回で零達より更に1学年下(漫画版)。
経緯
作者はギャグマンガの登場人物が歳を取らないことに違和感があったといい、1980年第41号より開始された『3年…』は河川唯と宇留千絵が中学2年生、奇面組らは中学3年生の設定でスタートする。翌年1981年春は奇面組はじめ3年生の大半の主要キャラは揃って受験失敗&留年して全員が同級生となる。1982年春の高校進学と同時に『ハイスクール!…』へ移行。作者は大学進学を描くつもりはなく高校卒業までの3年間で終わらせる構想だったというが、「人気があるうちは継続を」との編集部の要請に加え、1985年10月からアニメがスタートすることも反映し連載継続となり、1985年春以降は「作者がタイムマシンに乗って1年前に戻る」という設定で高校3年の話を重複しないように繰り返す形となる。
しかし1986年秋頃から作者の古くからの持病である腰痛が極度に悪化、連載継続も危うい状況が続いた末、1987年にはついに2週の休載を余儀なくされる。そこで改めて編集部と協議が行われた結果、完結のための3話に単行本(ジャンプコミックス最終第20巻)への収録上必要な2話を加えた残り5話で終了とすることが決定、1987年第30号への掲載をもって7年近くに渡った連載に幕を閉じた。
2000年前後に80年代の復刻ブームが起こり、その中で奇面組の存在もクローズアップされ、新作『帰ってきたハイスクール!奇面組』を発表したり図鑑的な書籍が発刊された。これを受け、2001年より『フラッシュ!…』として改めて奇面組の連載が始まった。後述の「物語がループしている」ことを実現させたかのように、『3年~ハイスクール!』の時間軸を守っており、唯・千絵は既に奇面組たちと出会って、中学3年生に進級、一方奇面組ら名物集団が留年で同学年となったところからスタートする。その後一応高校に進学する流れも同じだが、受験や進学の話は『3年~ハイスクール!』の話をベースとするも、設定の変更を反映して書き直されている。また、当時のままではあまりに時代遅れになっていた一部キャラクターの髪型や制服のスタイルなどは変えられた。しかし、こちらも腰痛で臨時休載が多くなり、2005年6月号での掲載を最後に中断、未完となった。
最終回
古い作品であるがゆえに何故か原作の最終回が夢オチな作品としてだけ知られている。完結にあたって高校卒業後を描いた最後の3話は、アニメ化の際に作者が提示した初回脚本の原案により制作されたアニメ第1話より着想を得て、あらかじめ用意していたものであった。しかし、ハッピーエンドを確定させたような流れから突如、唯・千絵が中学2年で奇面組達にも出会っていない『3年…』第1話の最初の場面に戻るという結末に、夢オチと取った読者からの抗議が当時も実際に寄せられたという。
作者は2000年に発売された雑誌「帰ってきたハイスクール!奇面組」の中で最終回の結末が「悪いふうに取られてしまった」とインタビューに答えており、後年発売された愛蔵版と文庫版の最終回の最終コマには『3年…』の第1話に戻ることを示唆した描写が書き加えられている。これにより物語はループしており、奇面組の世界は永遠に終わらないという見解がある。余談だが、前述の雑誌出版の際に使用された原稿が紛失されるトラブルが発生している(作品自体は印刷データが残されていたため復元され、後年出版の単行本に掲載された)。
アニメ版「奇面組」について
概要
1985年10月12日~1987年9月26日にフジテレビ系列毎週土曜19:30~20:00の枠でアニメ化された(全86回)。アニメ化に際し、タイトルは当初から『ハイスクール!奇面組』ながら、キャラクターの関係性を描く関係上、主要メンバーが全員中学3年生で同級生という設定に変更された形でスタート(制服の色や髪色、名前など他にも原作と異なる部分は細々とある)。「バレーボールワールドカップ中継」による約1か月の中断があることが当初から決まっていたことから、中断前の5回で中学3年生編を放送し、中断を挟んでから高校1年生編となる。以降は原作の方針同様に時間の進行に合わせて進級。このため高校1年生の話は4か月のみとなり、1986年春から高校2年生、1987年春からは高校3年生となってその秋で番組は終了しており、整合性が取れていた。
アニメは『3年』『ハイスクール!』の原作の並びは考慮せず、概ね季節に合わせた作品が放映されており、1回の放送で2話、もしくはCMまたぎの1話という形式で放送された。原作では修学旅行やスポーツ大会など5~6回にまたいだシリーズものも1話にまとめられるなどしたことから、徐々に原作からアニメに起こせる話が不足する状況となった模様で、連載とアニメ放映が並行していた時期は、作者も原作に1話完結作品を増やして対応したと原作単行本のコメントに記していたほか、放送終盤を中心にアニメオリジナルの話も作られた。また、原作ベースでも話の一部がアレンジされているものもあり、原作では作者がストレートに書くと照れるからという理由で大半で匂わせる程度にしていた、ラブコメ調の演出がより強めに出される傾向もあった。最終回は完全オリジナルで原作とは全く異なるストーリーである。
当時フジテレビで平日夕方に放送されていたバラエティー番組『夕やけニャンニャン』から生まれたおニャン子クラブのメンバー高井麻巳子と岩井由紀子が『うしろゆびさされ組』を結成し主題歌を担当。こちらも人気を博した。ユニット解散の際には2人が本人役として本作にゲスト出演している。その後は生稲晃子・工藤静香・斉藤満喜子による『うしろ髪引かれ隊』が引き継いだ。
追記
- 個性的な脇役を多く演じることで知られ、「主役は演じたくない」とまで公言している千葉繁が主人公の一堂零役を演じた稀有な作品であるが、後年のインタビューでの本人の証言によると当初は冷越豪役でのオファーだったはずが、いつの間にか零役にすり替わっていたという。
- 本放送終了後も地上波やCSで再放送が行われており、地上波再放送の常連作品となっていた地域もあった模様。ただし、本作品はCMの入るタイミングや、次回予告がエンディングテーマの最後にテロップで行われるだけなど変則的な部分があったことから、特に地上波の再放送の際にはそのままでは時間枠に収まらないために一部がカットされて放送されていたケースが多かった。
- 当時のフジ系土曜19時台はバラエティー、クイズ、アニメと試行錯誤するも番組が長続きしない枠になっていた。このため、前番組は1時間枠であったのを30分番組2本の枠に見直し、19時台前半にクイズバラエティー「所さんのただものではない!」、後半に本番組を配する編成に変更。プロ野球巨人戦中継やTBS系の「クイズダービー」といった強力な裏番組が並んでいた時代ながら、本番組の2年間の平均視聴率は19.2%、最高視聴率は24.3%を記録した(なお、「所さんの~」は1991年9月まで6年続いたのち、再び1時間枠に切り替え、大ヒットとなった「たけし・逸見の平成教育委員会」へと繋いでいる)。
関連作品
1986年の「東映まんがまつり」でアニメ映画化されたほか、同年にはセガ・マークIIIでTVゲーム化され、翌年には家庭用パソコンのMSX2に移植されている。また、2000年には「SIMPLEキャラクター2000シリーズ」でプレイステーションのテーブルホッケーゲームのキャラクターとなっている。
一方、2017年、2018年には舞台劇として上演されている。
関連動画
アニメ
漫画
ゲーム
手描きMAD
関連項目
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