契約更改とは、企業や団体が個人との契約を改めて行うことである。
主にプロスポーツ選手の契約、特にプロ野球選手と球団との契約に対して呼ばれることが多く、本記事では主にこちらについて記述する。
概要
プロ野球選手は球団の社員ではなく個人事業主であり、球団と通常1年の契約を結んでいる。シーズン終了後、成績などに応じてその選手と球団との契約内容を見直し、改めて契約を結ぶ行為を指す。
おもにオフシーズン(11月~12月)に行われる。活躍した選手はそれに応じて年俸が上がり、活躍できなかった選手はそれに応じて年俸が下がる。飛躍した年俸の安い若手選手が大幅昇給を勝ち取ったり、不振にあえいだ高給取りのベテランが大幅減額を食らったりと悲喜こもごものドラマがあり、主力選手の契約更改はオフシーズンの一大イベントである。
契約更改は原則として選手本人が球団事務所や会社オフィスに赴き、交渉として球団の重役と直接顔を合わせて行われる。選手が契約内容に同意すれば契約の締結が行われるが、納得いかず一度の交渉で契約締結とならなかった場合は複数回にわたって交渉が行われることになる。これを『保留』という。保留した場合、再度交渉の場を設けることになり、金額面や待遇面で歩み寄りが見られる場合があるが、保留を重ねると契約成立までの時間が長引くことになり、年を越したりすることもある。2月になっても契約できていない場合は球団主催の春季キャンプに自費で参加することになる。ごく稀に何らかの理由でシーズン開幕後になっても契約更改が為されていない場合、その選手は契約更改が済むまで支配下登録選手として公示されず、試合に出ることはできない[1]。
大概は選手の希望の年俸額と球団の提示した年俸額に差がある場合にこういった事態になるが、特に毎年契約更改がすんなり行かない選手に対して「守銭奴」「銭闘員」などと揶揄されることもある。金銭面での交渉については「銭闘」の記事が(ネタ要素強めだが)詳しいので参照されたい。また交渉の場は選手が重役と直接対話ができる貴重な機会であるため、選手によっては球団の体制について意見を出したり、待遇の改善を訴えたりなど契約内容以外の話し合いが行われることもある。そのため、更改の必要がない複数年契約の選手も交渉の場に姿を現し、球団側と話し合いを持つのが通例である。
交渉後にはマスコミからの取材を通じて契約内容を会見することが多い。契約書には翌年の年俸額が記載されていると思われるが、正確な金額を公表する選手は極めて稀であるため、マスコミは選手への質問を通じて推定金額を予測して記事や番組で報道する。なおこの推定金額はほぼアテにならないことが多くの選手から証言されており、今江敏晃は2006年オフの契約更改にて「推定金額とズレている」として正確な金額を公表するなど基本的には参考程度にしかならないものと思われる。
ちなみにゲームや漫画などのフィクションで「契約更改の場で解雇(自由契約)を告げられる」シーンが見られることがあるが、実際に解雇される際は「戦力外通告」として事前に連絡があるため、このようなことは現実にはほぼ見られない。
契約更改でよく出てくる単語
(五十音順)
- 減額制限
前年度の年俸から減額できる制限の金額。元の年俸が1億円未満は25%、元の年俸が1億円を超える場合は40%が制限となる。減額制限を超える年俸を提示する場合、契約交渉とは別にあらかじめ選手の了承を得なくてはならず、選手がこれに了承しない場合は自由契約となることができる。基本的に制限超え提示を飲んで残留する選手が多いため「制限の意味がない」と言われることがあるが、2015年オフの坂口智隆や2019年オフの嶋基宏のように、減額制限超えを飲まずに自由契約となり、他球団へ移籍する例もときどきある。 - 代理人
選手の代わりに契約更改の交渉に出席する人のこと。NPBの野球規約では弁護士資格を持つもののみ代理人にできるとされている。 - 出来高(インゼンティブ)
年俸とは別に、特定の成績や条件を達成することで得られる報酬を含んだ契約のこと。 - 年俸調停
契約がまとまらない際に第三者である年俸調停委員会が契約内容を決定すること。選手がNPBに申請できる。しかし年俸調停に至るまで話し合いがこじれることは稀であり、1970年代から制度としては存在するが、過去に7回しか行われていない。選手が申請してもNPB側が差し戻すこともある。 - 複数年契約
通常1年である契約期間を2年以上とする契約のこと。基本的に契約年数の間は年俸は上下しない。選手としては単年契約による戦力外の心配がなく、球団としては移籍の心配がないなどメリットもあるが、契約によってはケガや不振などで成績を残せなくても年俸を下げられず戦力外にもできないという問題も発生する可能性がある。ちなみにNPBの最長記録は(公表されたもので)7年契約。
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関連項目
脚注
- *2019年オフに埼玉西武ライオンズの多和田真三郎が自律神経失調症による不整脈のため病状回復まで契約更改が保留されることになり、2020年の開幕後である7月30日に支配下登録選手として公示された例がある。
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