契約社員とは、有期の労働契約を結んで雇用者に直接雇用される労働者である。
概要
契約社員は、有期の労働契約を結んで雇用者に直接雇用される労働者であり、いわゆる非正規雇用の一形態である。
非常勤社員や嘱託社員、準社員と呼ばれることもあるが、法律的には契約社員という呼び方はなく、正社員との違いは明確には規定されていない。また、アルバイトやパートも有期労働契約の場合は、契約社員と見なされることもある。
契約社員は業務の指揮命令をする者と賃金を支払う者が同一である直接雇用であるのに対し、派遣社員は業務の指揮命令をする者と賃金を支払う者が別個である間接雇用である。契約社員は勤務先から賃金を支払われつつ勤務先の指揮命令を受ける。派遣社員は人材派遣会社から賃金を支払われつつ派遣先企業の指揮命令を受ける。
期間の決まっているプロジェクト等で人員確保のため一時的に契約される場合、勤務地を限定されていることが多く、転勤などの心配も少ない。しかし、企業側が人件費節約のために利用する側面が強く、非正規雇用労働者の増加問題により、派遣社員等と合わせて近年大きく注目されている。
有期労働契約と更新
「有期労働契約」は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなる。
労働基準法の第14条では、1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて最長で3年までと定められている。ただし、高度専門職および満60歳以上の人は、例外として5年を上限とする労働契約を結ぶことができる。俗に「嘱託社員」と呼ばれる労働形態は主にこちらを指すことが多い。
期間満了で契約を終了した場合、双方に異議の申し出がない場合は自動更新となる。また、労働契約法第16条に基づき、契約期間中は解雇と同等の理由がなければ、使用者側から契約を打ち切ることはできない。
一方、民法628条により、やむを得ない事由があるときは労働者側から契約を終了できるが、その場合は損害賠償を求められることもある。
問題点
契約社員の利点と欠点
労働期間が決まっているため、契約社員は通常、役職に就くことも転勤を命じられることもない。気軽さを求める人にはメリットになるが、反面、責任を負う機会が減るため、正社員との待遇差が発生しやすいというデメリットもある。
また、有期契約による労働の不安定さ等により、ローンが組みづらい等人生設計のしづらさが契約社員のストレスともなっている。
社会保険
契約社員は社会保険に入りづらいとされているが、契約社員と正社員とでは法律的な違いは何もない。そのため、社会保険の被保険者資格は労働時間などの加入条件を満たせば強制適用となり、たとえ企業と労働者の間で社会保険に加入しない合意があった場合でも、加入しなければ違法となる。
同一労働同一賃金
「同じ仕事に従事する労働者は皆、同じ水準の賃金が支払われるべきだ」という考え方であり、国際労働機関(ILO)等では、基本的人権のひとつとされている。しかし、日本国内の正規雇用と非正規雇用との間には、明確な待遇差が存在し、この問題は顕在化している。
不安定な雇用形態などとともに、契約社員や派遣社員が「貧困の巣窟、ワーキングプアなどを生み出す格差社会の元凶」の原因の一つとされることもある。2018年6月29日、働き方改革関連法が成立し、安倍内閣は正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差の改善に対して取り組む姿勢を示し、2018年12月28日、厚生労働省は 「同一労働同一賃金ガイドライン」を作成し公表している。2020年4月からはさらに徹底されることになっている。
無期転換
2013年4月1日の労働契約法の改正に伴い、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者からの申請により、無期労働契約に転換できるようになった。その際、労働者は申し込みをするだけでよく、雇用主はこれを断ることができない。また、対象の労働者は、いつでも何度でも申し込みを行うことができる。
契約社員の場合は、3年の契約期間満了の際に、再度3年間の期間で契約更新された場合には、その時点で5年を超えることが確定するため、自動的に無期転換申込権が発生することになる。2018年4月1日に施行後5年を経過し、初めて「無期契約社員」が誕生した。しかし、無期契約社員はあくまで正社員ではないので待遇差の改善にはならない。そのため無期転換を行う際には注意が必要である。
退職金裁判
契約社員に退職金なし 「不合理格差」 東京高裁 支払い命じる
東京メトロの売店で勤務していた契約社員が、正社員と同じように働いていたのに、賃金や手当に差があるのは不当だと訴えた裁判で、東京高等裁判所は、退職金などで不合理な格差があると認め、会社に対し支払いを命じる判決を言い渡しました。弁護士によりますと、正社員との格差をめぐって退職金の支払いを命じた判決は初めてだということです。
これに対し、「契約社員にも退職金を認める画期的な判決」と、多方面から支持する声が相次いだ。
関連項目
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