好色とは、アイドルはトイレに行かないである。行かないったら行かないのだ。
そんな事をいきなり言われても何がなんだか判らない方の為の概容
『好色』は芥川龍之介の中編小説。いわゆる王朝物の一作で、『平中物語』に取材している。
それがなぜ前述の結論に至るかは、下記のあらすじを読んで頂きたい。
あらすじ
名うてのドン・ファン平貞文(平中)は恋において失敗したことはないという程の恋愛上手だった。しかし、今回彼が見初めた美女、侍従はどうしてもなびかない。押しても引いても彼の事を歯牙にもかけぬそのつれなさに、ついに平中はこの恋を諦める。だが諦めようと思っても諦められないのが恋というもの。叶わぬとおもうと尚更募る恋しさに苛まれた平中は、このままでは死んでしまうと恐怖する。どうにかして侍従を諦めようと思案した平中はやがて名案を思いつく。
そうだ、ウンコを見ればいいのだ!
いくら侍従といえどもウンコは臭く醜い筈。侍従のウンコを見れば幻滅し百年の恋も醒めるだろう。そう考えた平中は侍従のおまるを運んでいる侍女を襲い、おまるを奪い取る。そして勢い込んでその蓋をあけると、ああ、そこにはなんと芳しい香りを立ち昇らせて水に浮かぶ香木があった。侍従が平中の企みを予測し、おまるの中身をすり替えていたのだ。
それを見た平中は一声「侍従!お前は俺を殺したぞ!」と叫ぶと、ぱったりと倒れ伏せ死んでしまったのであった……
解説
と、まあ、大変突っ込み所満載な作品である。
とはいえ、一見バカバカしい内容ではあるが色々と示唆に富んでいる。
作中で平中の友人たちが彼の事を評する際「平中は女自身ではなく、自分の中で理想化したその女に恋するのだ。だから実際恋が成就してみると満足できずすぐに別れてしまう」というような事をいう。また、平中が死ぬ際侍従の姿を思い浮かべるのだがその姿は「何時か髪も豊かになれば、顔も殆玉のように変わっていた事は事実である」(本文より引用)というように、現実の彼女とはかけ離れたものであった。
つまり、女性を偶像化して自分の理想を投影すると言うある種の男性心理を、アイドルという概念が生まれる半世紀以上前、いや、原典に至っては1000年以上前から正確に描写していたのである。
これを作者の先見性と見るか、男が1000年前から進歩していない証左と見るかは読者諸兄の判断に任せたい。
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関連項目
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