家庭の幸福とは、太宰治の文学作品である。1948年に発表された。
文学のジャンルとしては随筆にあたる。途中から、短編小説が挿入されている。
作者の逝去から70年が経って著作権が消滅しているので、青空文庫やAmazon・Kindle版にて無料で読むことができる。
概要
太宰治は1946年11月に東京の三鷹へ戻った。1947年の9~11月頃に奥さんがラジオを購入したので、太宰もラジオ番組を聞くことになった。その中の1つに、日本政府の官僚と民衆が問答をする「街頭録音」という番組があった。
その中で、食ってかかる民衆に対してヘラヘラと笑いながら答える官僚の態度に太宰は憤怒し逆上し、極度の憎悪を感じ、悔し泣きに泣いた。
あの官僚のヘラヘラした態度はいったいどこから出てきたのか・・・その考察をしたのが本作品である。
その考察中において、太宰治の鋭い人間観察がユーモア溢れる軽妙な語り口に載せられて披露されている。途中からは幸福な役人を主人公とした短編小説が挿入されている。
豆知識
本作品には「父母に孝、兄弟には友ならず、朋友は相信ぜず」と書かれてあるが、これは教育勅語の「父母に孝、兄弟に友、朋友相信じ(父母を敬い、兄弟仲良くし、友達同士信じ合う)」をもじったものである。官僚の中の一部には出世のことばかり考えて仕事を優先し、兄弟や友達との付き合いを後回しにするものがいるが、それを皮肉っている。
ラジオを購入した時期は娘が7歳になった秋、と書いてある。津島園子は1941年6月生まれなので、1947年9月~11月頃のことであろう。7歳というのは数え7歳という意味。
千円ほどでラジオを購入した、とある。「千円は太宰治の一晩の飲み代にも及ばない」という作品中の一言もある。このサイトで1947年の千円を2017年の貨幣価値に換算すると、18,611円になる。
太宰治は二重回しを外行きの服として着ていた。Pixiv百科事典の当該記事の最後尾に「太宰治が愛用していた」との記述がある。
カストリとは、終戦直後の執筆当時に出回っていた粗悪な密造焼酎。
本作品の中盤以降は短編小説になっている。その主人公の子供2人は幸いにも丸々と太った、と書いてある。現代の価値基準からすると「丸々と太る」というのは好ましくない気がするが、終戦直後は食糧難でガリガリに痩せ細った子供も多く、丸々と太るというのは幸福の象徴であった。
本作品中の短編小説の主人公は三鷹町の役場の戸籍係という設定である。三鷹には太宰治の家がある。
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