寄合酒(よりあいざけ)とは、古典落語である。江戸と上方、どちらでも多く演じられる。上方落語として誕生し、原典は『醒睡笑』とされるが、元は子供同士の邪気のない失敗噺だった。
与太連中の失敗をオムニバス化した単純明快な噺であり、聞く方も演じる方も初心者向けとされ、手習いの者が覚えることが多い。このような系統では他に『道具屋』『蜘蛛駕籠』などがある。
なお、もともとは前半は寄合酒、後半は別の演目である『ん廻し』(田楽喰い)であったが、今日では前後半のつながりがあまりないので別々の演目として分けられることが普通であり、しかも後半の『ん廻し』(田楽喰い)はさほど江戸落語では演じられていない。
概要
やもめ衆が集まって酒宴を開くことにした。しかし、連中はみんな無理を吹っかけて、酒だけに飽き足らず、材料となる鰹節、鯛、棒鱈や数の子、葱、山芋などを盗んだり、二束三文で仕入れてきたりしてしまう(この手口の阿漕さもこの噺の面白みだが、ここは省略)。それでも、材料が揃ったからみんなで鍋をしようと提案する。だが、そこはやもめ連中、料理などからっきし、それでも役割分担で調理を始めることにした。
しかし、連中は失敗ばかり(以下は失敗のバリエーション)
- 鯛を捌いていた男 → 赤犬(茶柴のこと)がうるさく吠えるので、大将が「尻尾を喰らわせろ(攻撃しろ)」と嗾けたら、鯛の尾を食らわせ、今度は「まだ吠える」といえば「頭を喰らわせろ」と告げられ、頭を食わせ、挙げ句に「胴を喰らわせろ」と言ったものだから、鯛の身まで犬に食らわせてしまい、犬は出ていったが、結局鯛全部を犬に食われてしまう。
- 数の子を調理していた男 → 数の子を煮てしまい、固くなってしまう(数の子は塩水で揉まないといけない)。
- 葱を調理していた男 → 塩で揉んでしまい、すっかりしなびてしまう(上方のみ)
- 棒鱈を調理していた男 → 細かく微塵切りにしてしまい、すっかりグズグズに
- 山芋を切っていた男 → 山芋を糠漬けに漬けてしまう(江戸のみ)
- かんてき(七輪)を扇いでた男 → 火の種も入れず、ひたすら炭を扇ぎ続けていた
皆の失敗を見届け、大将は最後の砦、ダシを取っていた男のところへ行く。彼は「準備ができた」と豪語するが、よく見るとダシ殻しかない。「ダシはどうした?」と質問すると、しれっと「要らないと思って捨てた」と言う。しかも、もう使わないと思って行水に使ったというので「さっきの湯で鍋作りましょうか」と答えるので、大将は呆れ果ててしまう。
とうとう酒しか残っていないが、燗をしていた男がへべれけになっている。大将が訳を聞くと「二杯だけ毒味した」と答えるのだ。どうせお猪口じゃなくて湯飲みでも使ったんだろうと尋ねると、男は丼鉢二杯の酒を呑んでしまい、せっかくの酒もほとんどなくなってしまった。
※その後は味噌汁を拵えようとする展開もあるようだが普通はダシか酒あたりで、「おなじみの寄合酒の一席でございます」などと締めることが多い(よくある、収拾がつかなくなったところでお開きにするパターン。ほかに『宿替い』など)。
なお、時間の都合で端折ることも多く、噺の辻褄が合ってない(調達した食材が調理に使われていない)こともあるが、そこに突っ込んではいけない。
関連動画
関連項目
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