小椋しおとは、マンガ・アニメ「ノブナガン」の登場キャラクターである。CV:武藤志織
小椋しお「"CV"ってどの空母!?」
織田信長のE遺伝子を受け継ぐ。AUウェポンは巨大な機関銃でノブナガンと自ら呼称している。そのほうがカッコイイとのこと。織田信長の三段撃ちとはまるで違う立体的三段撃ちが必殺技である。
(織田信長「俺の知ってる三段撃ちと違う」 小椋しお「是非に及ばず!」)
当初は極普通(と言えるか微妙だが)の女子高生だったが、修学旅行先の台湾での「進化侵略体」の侵略を受け、彼女の運命は大きく変わることとなる。
射撃型ホルダーとして超国家組織DOGOOの第二小隊において遠距離攻撃任務を任されることが多いが、織田信長に触発されたかのように、「是非もなし!」と突撃厨近接攻撃タイプになりがちである。ただ、こういった機転が利き、大胆不敵な戦略が、時には所属する第二小隊どころかDOGOOの危機を救う場面も多い。話数が進むごとに成長していき11話では自ら作戦を立案、決行しかなり頭角を現している。
同所属のアダム・ミューアヘッド(コードネームは「口先切り裂きジャック」)に最初は対抗心を燃やすも最近は恋心を抱いている様子。ツンデレ?劇中は2回ほど「急に歌うよ」ではなく「急に踊るよ」とスタイリッシュ敦盛を演じた。
日常では集団行動は苦手で人付き合い初級者。そして寝坊やら遅刻の常習犯らしい。浅尾かおるは数少ない彼女の親友。通常時の必殺技は「155mm小椋しおガン」(威力:絶大) 威力のほどは9話で明らかになる。
生粋のミリオタ(ミリタリーオタク:軍事オタク女子)。
まぁ、この辺りは本編やら公式サイトでも見たら分かるので、折角なので本記事では小椋しおのミリヲタぶりをずら~っと解説する。
一部ストーリーの核心に触れる記述があります。また、あまり小椋しおと関係ない記述もあります。 |
生粋のミリオタ
自部屋は各種AFV(装甲戦闘車両)、軍用航空機などのミリタリープラモデルにモデルガン、軍用ヘルメットなどで溢れている。部屋の内装も迷彩パターンである。もちろん壁には軍用機ポスター(軍用航空管制関連のものもあり)、書棚には軍事雑誌や書籍を収納済み(こりゃ「軍事研究」に「丸」とか絶対読んでるわ・・・) 秋山優花里垂涎の部屋である。(秋山殿の部屋はWW2時のAFV関連で埋め尽くされているので、それ以外が好きかは不明)
教科書変わりにAFV雑誌を熟読、軍用航空機雑誌は一人飯の友である。
中華民国国軍編
第1話、修学旅行で台湾(中華民国)に向かう小椋しお達。クラスメートは台湾での修学旅行でわいわい騒ぐ。一方、小椋しおは集団行動が苦手なためか一人でそれなりに台湾での自由行動を満喫していた。ここで浅尾かおると親交を深めることになる。そんななか小椋しおはふと空を見上げる。そして2機の飛行機を見つける。ここで、2機の飛行機が編隊飛行する軍用機であることを一瞬で悟った、小椋しおは即座に機種の判別を行う。
小椋しおはF-CK-1経国戦闘機[1]と判別。台湾空軍はF-16、F-CK-1、ミラージュ2000、F-5E/F戦闘機にAT-3練習機などを保有しており、特にF-16とF-CK-1は機体形状が類似している(航空自衛隊のF-2支援戦闘機に近い。また設計開発においてもF-2のそれにやや近い。)にも関わらず、一瞬でF-CK-1経国戦闘機と判別する。
その後、F-CK-1はミサイル攻撃を敢行。そう、「進化侵略体」が台湾への侵攻を開始していたのだ。辺り一面は一瞬にして炎に包まれ、人々の悲鳴が轟く阿鼻叫喚の地獄絵図に。さらに、台湾陸軍の戦車が吹き飛ばされ小椋しおの周辺に落下する・・・。
その惨劇を前に小椋しおは・・・ 「M60A3・・・!」と戦車の名称を口ずさむ。(気になるとこ、そこかよ!)
そして、小椋しおは「・・・じゃない、CM11・・・!勇虎だ!」[2]と自らの過ちに気づく。(兵器の誤認はミリオタにとっては死活問題である)
CM11戦車が砲撃するも、進化侵略体に有効打を与えられないことに「105mmライフル砲だよ!?」と105mmライフル砲が通用しないことに驚いている。[3](驚くとこ、そこかよ!)
ちなみに、台湾陸軍のCM11はアメリカ製のM60A3を自国で改修したもの。M60A3の車体にM48A5の砲塔を搭載しているので、見た目はかなり似ている。さらに同陸軍は通常のM60A3も運用している他、M48A3を近代化改修したCM12という戦車すら運用しているのに、小椋しおは一瞬で判別。
中華民国国軍の装備(特にM48/60パットン戦車の派生型と魔改造型)を一瞬で見分けるなど、並のミリオタでは困難である。E遺伝子を受け継ぐに相応しい存在といえよう。多分
自衛隊保有機、C-130派生型編
DOGOOに入隊したのち同基地に移動、ハンヴィーHMMWV(高機動多用途装甲車)の出迎えを受け大感激。もちろんジープとかハマーとは言わない。細かいが、こだわりがあるのだろう。[4]ちゃんとハンヴィーと呼称している。(ハマーは民間SUV。ハンヴィーは高機動多用途装甲車を指す)
その後アヌシュによる訓練を受ける。アヌシュのコードネーム「ロバート・キャパ」を知ると一瞬で「あ、戦場カメラマンの!」(キャパはスペイン内戦から第一次インドシナ戦争と1930~50年の5つもの戦場をカメラに収めた人物)と戦場カメラマンについても詳しい事がわかる。
訓練に明け暮れるも基地内では通信機器が使用不可であることを知り、「ケータイもメールも無いなんてありえん」と憤慨、夜に基地内の通信設備を見つけるべく散策する。(無論、軍事基地の通信設備がどんな形でどこにあるのかは彼女にとっては恐らく常識なので迷わず直行している)
そこで、航空機格納庫を発見する。そして「ケータイやメール」以上に重要なモノが彼女の目を奪った。[5]そう、航空自衛隊の保有するE-767早期警戒管制機(AWACS)である。これは、あらゆる航空機などの空中目標の探知・分析や友軍航空機の航空指揮管制を任意の地点で飛行しながら出来る機体だ。文字通り、空飛ぶレーダーサイトに管制塔である。こちらも米空軍のE-3セントリーやロシア空軍のA-50メインステイなど存在するがこれらは四発機(エンジンが四つある)なので、双発機であるE-767の判別はまぁ容易である。とはいえ、暗闇で一瞬で判別することは困難と言える。
しかし、この時は「E-767早期警戒機!」と凡ミスをしている。これだとAWACSが管制能力が低い小型のE-2Cなどの早期警戒機(AEW)になってしまう。早期警戒するのとこれに加えて空中管制を行うのとはかなりの差異がある。ただ、オーストラリア軍などで運用予定のボーイング737 AEW&Cという、どっちともとれる機種もあるので、間違いとは言い切れない。ただし、AEWをAWACSと呼称するのは基本的に誤りなので注意して頂きたい。(補足するとテロップではちゃんと「早期警戒管制機」となっている)
次に発見したのが海上自衛隊の保有するUS-2救難飛行艇である。これはUS-1Aの後継機で2007年より運用が開始された新鋭機。救難飛行艇は海上での救難活動や飛行場を有しない離島などに素早く物資や人員を運搬可能な飛行艇だ。ランディングギア(主脚)も装備しているので陸上基地でも運用可能。もちろんUS-1AとUS-2を判別することなど小椋しおにとっては造作も無い。(歩くAWACSか貴官は)
2000年より運用開始の比較的メジャーなE-767よりも、US-2は新鋭機で生産機数は3機だけだからなのか実物を見て小椋しおは大喜びである。早速、写メを撮り始める。(本来の目的など、最新鋭救難飛行艇の前ではどうでもいいのだ!「US-2>>超えられない壁>>ケータイやメール」)
小椋しお「テンション上がる~!」
(自衛隊基地などで催される、航空祭やら基地祭でも撮影は可能だが、小椋しおのように近くで撮る「接写」をすると自衛官に注意されるので真似しちゃだめよ)
その後、基地所属のパイロットなど基地関係者らと遭遇。小椋しおは基地関係者らに大人気な様子。フィリピンの軍人さんからバナナを貰ったりしている。日本人も居るようで、納豆を強く推されている。 その次に小椋しおの目に飛び込んだのは・・・
C-130輸送機ではなく、HC-130戦闘救難捜索機、いや、SC-130捜索救難機・・・でもなく「WC-130J気象観測機」であった。ちなみに、これらは前述のCM11のように全部見た目はほぼ一緒。
HC-130及びSC-130は捜索救難を行う機種で、HC-130に関しては戦時下においても捜索救難が行えるようになっている。ヘリコプターへの空中給油能力がある機種もある。こっちはHC-130Pコンバットキング。純粋な空中給油機型のバリエーションとしてはKC-130が有名。戦闘救難捜索型の内、特殊作戦に用いるMC-130コンバットシャドウも存在する。SC-130に発展型は存在していないが、対潜哨戒機として同機を運用できるとか何とか。
とにかく多い。Wikipediaを見るとその派生シリーズにびっくりすること請け合いである。(ここで、みんな大好きAC-130とか言わないあたり渋い。てか、どうやって判別してるんだ。航空アビオニクスの匂いでも分かるのか)
しかもWC-130Jの主任務たる気象観測、通称「ハリケーン・ハンター」という呼称も熟知。気象衛星では観測不可能な熱帯低気圧の内部の気圧や風速を文字通り飛び込んで観測するという危険だが特に航空機にとっては重要な任務であることも承知の上である。ガンシップ以上に重要な機体なのである。これには小椋しお感涙である。そしてスリスリとWC-130Jに頬ずりである。(小椋しお、そこ代わってくれ![6])
ところで、E-767にUS-2、そしてWC-130Jという3機種は文字通り、早期警戒から空中管制、偵察哨戒から救難及び捜索、気象観測を行えるという戦闘機以上に有力な組み合わせの装備である。DOGOOはよく分かってるじゃないか。無論、小椋しおもその辺りは熟知してることであろう。よって、C-130の中でも輸送機や対地攻撃機ではなく殆ど正答に近い捜索救難機と推測したものと思われる。
沿海域戦闘艦、次世代型駆逐艦編
陸の兵器、空の兵器とくれば次は海の兵器だ。小椋しおは海の幸戦闘艦艇も大好きなのだ。
第5話(五ノ銃)ではDOGOO保有らしき沿海域戦闘艦(LCS)「LCS-2 インディペンデンス」を一目見てうっとりしている。沿海域戦闘艦とは沿岸海域戦闘を主眼としたネットワーク中心戦(NCW)の概念に基づいた小型でありながら高度な統合作戦を可能にするC4Iに代表される戦術情報システムを搭載予定のニッチな最新水上戦闘艦であり、そのうち目に止まったのが「インディペンデンス」である。それでいてフランス海軍の仏伊共同の汎用フリゲート開発計画(FREMM計画)に基づく最新鋭対潜駆逐艦「アキテーヌ級」も無視しない優しさを持っている。
「インディペンデンス」は三胴船(トリマラン)構造でこれは水面と接する船体が三つあるもの。これにより、優れたキャパシティを簡単に有することが可能。「インディペンデンス」はトリマラン構造により広大なヘリコプター甲板を有しその運用能力も高い。沿海域戦闘艦には「LCS-1 フリーダム」も存在するがこちらは単胴船(モノハル)構造なので見分けるのは比較的簡単ではある。
米仏製艦艇とかまたマニアックな艦隊構成である。ちなみに、「インディペンデンス」と「アキテーヌ」は構想上C4Iシステムを通じて高度な連携が可能で共同交戦能力に則った統合作戦も実践可能である。(まぁ米仏海軍のそれは想定してないし、念入りな共同訓練は必要だが)
さらに、この組み合わせはNCW構想で企図される艦隊運用のそれに近い。(一例として『ハイローミックス』を挙げるなら排水量2,500トンと小型の「インディペンデンス」と排水量5,800トンと中型の「アキテーヌ」を用いることで柔軟かつ高効率でコストパフォーマンスも優秀な軍事作戦行動が期待出来る)
よく分かってんじゃないか、DOGOO。進化侵略体に通常兵器は効果が無いのでこういった通常装備はE遺伝子ホルダーのバックアップとするドクトリンを有する模様。空母打撃群なんて持ったら維持運営費がたまったもんじゃないし。
小椋しおが沿海域戦闘艦及び次世代型駆逐艦についての見識を披露するシーンである。
大日本帝国海軍編
ミリオタによくあるのが、現用兵器は詳しいが第二次世界大戦中の兵器はよく分からないというもの(またはその逆)
だが、小椋しおに抜かりはない。第7話(七ノ銃)においては進化侵略体が大和型戦艦に侵食しこれを復活させてしまう。そして、米海軍第3空母打撃群を襲う!「ソナーもMAD(磁気異常探知装置機のこと)も効かない!」と慌てふためく同艦隊の先行を務めるアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ハルゼー DDG-97」[7]の眼前で浮上し、これに衝突し撃沈してしまう。空母打撃群は総力を上げてこれを攻撃するも、まるで歯が立たない。謎の大和型戦艦はアメリカ本土上陸攻撃に向けパナマ運河への侵攻を開始した。
アメリカ軍はついに核攻撃を検討し、第二小隊には緊張が走る。ディスプレイに映しだされた進化侵略体を前に一同はどう対策を練り、またなぜ進化侵略体がこのような侵攻手段をとるのか、対応や考察に頭を悩ませていた・・・。無論、小椋しおもこれを慎重に観察し・・・
小椋しお「・・・」
「あ、これ<大和>じゃなくて<武蔵>ですよ!対空火器の数が少ないし、防楯(シールド)も付いてなくて・・・」
(いや、それは気にするところか・・・?)
武蔵はレイテ沖海戦時に対空火器強化の一環として両舷の15.5cm三連装砲を撤去し、12.7cm連装高角砲用の砲座を設置するも肝心の高角砲増設が間に合わず、25mm三連装機銃の増設に留まったことが知られている。この際、既存の高角砲の爆風避けの防楯(シールド)すら間に合わなかった。他には対空噴進砲(対空ロケット砲)を装備していたという説や砲座には機銃すら装備していなかったという説もあるが史料不足で憶測の域を出ていない。小椋しおは「少数の対空火器と防楯非装備説」を支持している模様。これらは書籍や詳報にて知られているが、いきなり朽ち果てて、進化侵略体に侵食された大和型戦艦の上空映像だけで一瞬で判断するというのは並大抵のことではない。小椋しおが大日本帝国海軍にも詳しい事がわかるシーンだ。これを受けてかDOGOO側も「ムサシ・ワンダー」と呼称している。(ワンダーってなんだ・・・)[8]
さらに、パナマ運河通行制限幅いわゆる「パナマックス」についても熟知しており、通行可能な全幅(約33m)、そして大和型戦艦の全幅が38.9mであることも知っていることだろう。ただ、戦後のパナマ運河の拡張工事については知らない様子。ちなみに、モンタナ級大型戦艦用に新閘門建設計画も第二次世界大戦中に存在したがそれについて知っているかは不明。
武蔵の司令塔装甲が最大500mm厚であることも知っており、そして、艦橋構造物のうちどこが司令塔かなのかも把握済みである。第7話での対進化侵略体戦術はこのような膨大な知識量に裏打ちされていると言っても過言ではない。そして作戦遂行に万全を期すべく武蔵の各種データの開示を同小隊のガリ子らに強く要求した。(多分、ただ武蔵の構造が見たいだけ)
もちろん、武蔵への畏敬の念を忘れていはいない。彼女は戦艦武蔵は無論、大日本帝国海軍の悲壮な最期も知っているのだ・・・。武蔵への核攻撃など言語道断と積極的に行動し、自ら引導を渡そうとしていた。クロスロード作戦[9]の二の舞いは許せなかったのだろうか。(と言いつつ、「武蔵が復活してパナマ運河を狙うなんてこだわり過ぎでしょ!パナマ運河を進む武蔵、観てみたい」といった謎の感動も覚えている。仮想戦記の読み過ぎである)
小椋しお「おやすみなさい。ゆっくり眠りなさい・・・」
ところで、伊四〇〇型潜水艦及び特殊攻撃機「晴嵐」も略符号M6Aとセットで存じ上げている。また、本潜水艦及び艦載機の企図する米本土攻撃作戦構想のうち、パナマ運河攻撃構想も知っている様子。
ちなみに(というか当然)、現用アメリカ海軍についても造詣が深い。ニミッツ級航空母艦の7番艦「ジョン・C・ステニス CVN-74 」の全長も知っているし、航空甲板上を走り回って感動している。ただ、残念なことに通常兵器は無用だからか(作画が面倒だからか)露天駐機している航空機や牽引車や電源車などの航空機用補助車両の類も見当たらない。新世紀エヴァンゲリオン第8話の相田ケンスケの一件と比べてやや寂しいね。
第5話の沿海域戦闘艦や7話の空母打撃群の見た目やドクトリンのカッコよさには個人差があり、大抵、今回登場した超弩級戦艦「武蔵」に感動するタイプはこういう沿海域戦闘艦だの汎用フリゲート艦には興味を示さないが、小椋しおのストライク・ゾーンはかなり広い様子。(歩くジェーン海軍年鑑か、貴官は)
A1じゃダメなんです。M1A2じゃないと編
さて、小椋しおだが何も兵器の名前を知っているだけでは無い。兵器は数多くのメカニズム、システムをもってその威力を最大限に発揮するのだ。小椋しおはこの辺も熟知。そして、ついに自ら対進化侵略体作戦に打って出た。
第11話(十一ノ銃)において小椋しおは「ストーンフォレスト作戦」を立案し決行する。作戦名の元ネタは後述。この作戦の要がアメリカ陸軍の保有するM1エイブラムズ[10]戦車だ。それもA2じゃないとダメらしい。これをかき集めることを要請。以下はなんか半ばM1エイブラムズに戦車装甲・砲弾の記事と化している感もあるが、小椋しおのセリフを説明する必要があるのでご了承頂きたい。ヘブン状態の小椋しおを止めることは不可能だし・・・
小椋しお
「 まず(エイブラムズに)搭載されたIVISを使えばポッドから送られてくる(進化侵略体の)足の位置データを全車がリアルタイムで共有できるからです」
お、おう。
IVISとは"Inter Vehicular Information System"の略称で「車両間情報システム」のことである。要は射撃に関するデータは無論、各種データを車両間で共有可能なシステムの一つでM1A2より導入された。戦術情報システムを介し戦車内の大型ディスプレイにその情報が出力され一個戦車大隊58両間で共有可能となっている。C4Iシステムの一種。陸自の10式戦車はこれを最大限念頭に置いて設計開発された。劇中では、ポッドから送られる進化侵略体の脚部の3D映像データを全車で共有している。
小椋しお
「POS/NAVと繋がったFCSは的までの距離と角度を瞬時に計算するし・・・」
せやな。
POS/NAVとは"Positioning/Navigation"の略称で「自己位置測定/航法装置」のことである。簡単に言うと自分の位置と相手の位置の詳細をすぐに教えてくれる便利な機械である。元は艦船用及び航空機用の慣性航法装置(INS)を発展させ車載化したもの。
また射撃時においては、目標と自車との距離及び角度を瞬時に計算し、常時FCS("Fire Control System"の略で「火器管制装置」)に出力される。FCSは兵器が高度な射撃を可能にするための装置でWW2ぐらいから存在している一般的な装備。
だが、POS/NAVがこのFCSにより有用な情報(諸元)を与えることにより、より凄い射撃が可能なのだ。具体的にはポッドからの情報がPOS/NAVを介して最新の射撃データとして常にFCSに出力され、精密射撃が可能。
M1A2には水平/垂直2軸のスタビライザーは無論、GPTTS-LOS「砲手用熱線映像主照準装置」も装備済みで精密射撃が可能。一応、GPTTS-LOSはA1も装備しているがスタビライザーは1軸である。小椋しおがA2を推すのはM1A2を積載した艦の動揺という本来は想定外の事態に対応するためであろう。多少の揺れはM1A2の精密射撃に影響を及ぼさない。
一応、ダメ出しされたM1A1は簡易デジタル型であるM1A1Dにおいて最新のデジタル情報通信データリンクシステムであるFBCB2が搭載されたが、小椋しおご所望のIVISやPOS/NAVは未装備である。また、M1A2SEPという発展型も存在しているが、そこまでは要求しなかった様子。他にも戦車長用の便利アイテムCITVとか一杯あるが詳述しだすと小椋しおの記事というかマジでM1エイブラムズの記事になるのでこの辺りで。基本的に「ストーンフォレスト作戦」に必要とされるシステムのみを小椋しおは語っている感じである。こういった一連の装備は車両用電子装置システム(ヴェトロニクス)と呼称される。
ところで、M1A2は装備にもよるが車重62~67トンである。(最新型のM1A2SEPは70トン超とする資料もある)これをひゅうが型護衛艦に満載して射撃させられるかは不明。物理的に不可能ではないが、ヘリコプター護衛艦にかなり無理をさせているのは事実。[11]帝国海軍の阿賀野型軽巡洋艦の主砲である15.2cm連装砲の重量が一基72トンなので「ひゅうが」にこれを大量に盛り込む感じだろうか。一番頑張ったのは「ひゅうが」だと思うんだ・・・。恐らく装甲貫徹力以外なら陸自の10式戦車でも結構いけるし車重も44トンと多少軽いのでこっちではダメだったのだろうか。[12]
小椋しお
「そして!120mm滑腔砲から撃ち出されるM829、APFSDS弾!初速は1,650m毎秒!弾の侵徹力を表すL/D値は30以上!!」
まだ語るのか。
APFSDS弾は個別に単語記事があるのでさっくり説明するが、徹甲弾の一種である。M1エイブラムズはM829シリーズをAPFSDS弾として装備している。小椋しお曰く「(砲口)初速は1,650m毎秒」とのことなので最新型の砲口初速1,700m毎秒のM829E3ではなくA1かA2だと思われる。
L/D値(L/D比とも)とは砲弾の長さ"Length"と直径"Diamater"の比を表すもので、要は砲弾の細長さ。基本この数値が多いほど侵徹力(砲弾が装甲を貫通出来る能力)は高い。小椋しおの仰るとおり、陸上自衛隊の90式戦車やドイツ連邦陸軍のレオパルト2A5[13]は22程度である。ただ、APFSDS弾の記事に詳しいが、多ければ優秀とは限らない。砲弾が着弾時の衝撃で変形する(弾芯が折損するなど)恐れがある。
小椋しお「2km離れた厚さ710mmの防弾鋼鉄を抜いたってデータもあるし・・・」
ずっと小椋しおのターン!
その通り。しかし、厳密には防弾鋼鉄より「均質圧延装甲鋼板」の方が的確。または「防弾鋼板」を言い間違えたのかもしれない。M1エイブラムズは厚さ710mmの均質圧延装甲鋼板(防弾鋼板)を距離2,000m地点、水平(90度)の条件で貫徹しており、そのデータを開示している。陸上自衛隊の10式戦車は同条件で548mm~650mmの防弾鋼板を貫徹可能とされている。ところで、均質圧延装甲とは合金を圧延し熱処理し、全体を均質にした装甲のこと。第二次世界大戦中から用いられた最もポピュラーな装甲。ちなみに、現用戦車(MBT)は複合装甲など文字通り「矛盾の世界」を地で行ってるのでその装甲は均質圧延装甲鋼板とは全く違う次元である。複数の特殊素材を用いた幾重もの装甲が強靭な防弾能力を戦車に与えている。その詳細は軍事機密レベルともされている。
均質圧延装甲鋼板は原語である"Rolled Homogeneous Armour"を略したRHAと称されることが多く、よく「RHA換算で◯◯mm相当の貫徹力」など装甲貫徹力の表現に用いられる。
長くなったが、「ストーンフォレスト作戦」では、こういった兵器の能力が大きくその作戦遂行において有効活用されていることが分かる。
でも、ちょっとM1A2の実物を見たかったというのもあるのかも・・・
なぜAPFSDS弾を選ぶのか?
このままでは「装甲」の記事になりそうなので、話を小椋しおに戻そう。小椋しおは何故APFSDS弾に拘るのか?
小椋しお「この威力がイイ!」
・・・だけではない。
M1エイブラムズの運用のする砲弾は通常2種類。一つはM829 APFSDS弾でもう一つは「多目的成形炸薬榴弾(HEAT-MP)」M830である。後者はHEAT弾の一種。個別の単語記事に詳しいが、この砲弾では進化侵略体にストーンフォレスト作戦上、有効ではない。この砲弾は砲口初速が遅く、着弾後のモンロー/ノイマン効果による強力な圧力で装甲を貫徹する。簡単にいうと着弾したらめり込むのではなく砲弾が炸裂しダメージを与えるといった感じなので、進化侵略体の外皮を押し込んで内部の地雷型を自爆させるという戦略が取れない。そもそもHEAT弾は小椋しお司令の言う「膨大な運動エネルギー云々」は関係無いので最終的に徹甲弾であるAPFSDS弾を選択せざるをえないのだ。
よくアニメや映画に出てくるAPFSDS弾だが今回、ようやくその役目を買われて出演した感じである。
ついにミリオタから最も効果的な作戦を立案し実行する司令ポジションに至った小椋しお。彼女の軍事への造形の深さと知識がこの作戦を成就させたのである。M1エイブラムズの戦車兵さんからAFV雑誌にサインを頼むなどミリオタとしての本質も忘れていない。
戦車マニアならば「ガールズ&パンツァー」の秋山優花里が有名だが、彼女は砲声で使用している戦車砲を把握出来るほどのレベル。アニメなどで兵器スペックを戦闘下で語るキャラならば、マンガ/アニメ「ジパング」の柳一信・一等海曹(柳一曹)が挙げられる。柳一曹はリアルタイムで兵器スペックを解説するキャラだったりする。小椋しお以前にもこういうキャラは結構居たようだ。
民間機、船舶に興味はない?
ここまで列記するともう、軍事に関して小椋しおに知らないことはない、と言えそうだが、興味深い一面もある。そう、このキャラクター、民間機や商用機にほとんど興味を示さない。
1話では修学旅行に向かうなか旅客機で一人ワクワクしているのだが、航空機ファンなら垂涎クラスの「フラップ」「スラット」「エルロン」といった各種航空機用飛行装置に興味を示さない。窓際で着陸時に外を見るのだが、航空機最大の見せ場である着陸時の各種飛行装置の動きに目もくれない。(何故だ・・・編者ならここで写真を取りたい衝動を抑えるのに必死なのに)3話でも、ハンヴィーには興奮していたが、乗ってきた旅客機はスルーだった。(C-17グローブマスターⅢ戦術/戦略輸送機なら話は別なのか)
また、第二小隊の保有する、アグスタウェストランドAW609らしきティルトローター機に全く興味が無い様子。(何故だ しかも、これだけテロップなし・・・) これはV-22オスプレイとはちょっと違うかなり小型の民間や商社向けの機体なのである。軍用機ではないし、軍の運用予定はない。民間機はお断りなのか・・・
DOGOO旗艦「クレイトン・フォレスター(C・フォレスター)」も見てくれからして軍艦なのだが、何故か、小椋しおのお眼鏡にはかなわない。「インディペンデンス」「アキテーヌ」には感動しているのに。後述になるが、「C・フォレスター」のモデルが高速双胴輸送船「HSV-2 スウィフト」で同船は元は民間船だからだろうか。
小椋しおは何でも知ってそうなのだが・・・
何 で も は 知 ら な い わ よ 。 軍 事 に つ い て だ け。
といったところか。また、CH-53かMH-53らしき軍用大型輸送ヘリにも興味を示さない。ただ、この辺りはアダム・ミューアヘッドとの絡みで珍しく乙女化しているのでそれどころではないのか、それとも回転翼機には興味ないという可能性があるのかまでは不明である。
まぁ、流石に登場する兵器類全てを小椋しおが詳述していたら、もう何のアニメか分かないレベルになるのでその辺は仕方ないかも。11話では「ひゅうが」について特に感想なかったし。
特撮オタ・その他
ここまで来たら特撮映画好きでほぼ決定である。それも恐らく、怪獣や巨大ヒーローではなく自衛隊とか防衛軍とかそういうのに燃える方。第2話(二ノ銃)では、「まるで映画みたいで信じられない」というクラスメートの浅尾かおるに
そして、内容的にだいたいあってる。ただ、その後浅尾かおるに「いや、ハリウッド映画とかの・・・」と答えられて赤面。ハリウッド映画にも「世界侵略:ロサンゼルス決戦」とか「バトルシップ」とか一杯あるのだが・・・。版権的な問題でもあったのか。また、いわゆるゴジラ映画派(多分、平成VSシリーズ派)なのかガメラ映画派なのかは不明。ただ、ノブナガンの世界観はガメラ映画のそれに近いのでそっちを連想したものと思われる。
第8話(八ノ銃)の次回予告では「ガメラ」を鑑賞した浅尾かおるの「ナイフみたいな怪獣とかイカみたいな宇宙人が出て面白かったよ~」との感想に「ちょっと違うよ・・・浅尾さん・・・」と回答。ガメラシリーズにはゴジラシリーズと同じく、「昭和版」「平成版」が存在しており、浅尾かおるが昭和版と平成版をごっちゃにしていたことに対して違うといったのか(宇宙人は平成版に登場しない)、平成版の自衛隊全面協力(特に空自)という魅力への言及がなかったことへの不満かは不明。
真実は小椋しおのみぞ知る・・・
ストーンフォレスト作戦
第11話では9人のE遺伝子ホルダーが人類を守るというフレーズに恐らく「サイボーグ009」を連想し恍惚としている。自分が名づけた作戦名「ストーンフォレスト」はサイボーグ009の原作者である石ノ森章太郎氏に引っ掛けた感じもある。劇中、自分の立ち位置が「ハインリヒみたい!」と喜んでいるが、元ネタは同作品の登場人物「004=アルベルト・ハインリヒ」かと思われる。事実、攻撃パターンや能力など類似点も多い。
ところで、現実世界で「ストーンフォレスト作戦」という軍事作戦は意外なことに実在しない、少なくとも記録上は。類似しているものに、「ストーン・エイジ作戦」がある。1942年のイギリス軍によるマルタ島増援作戦で、石器時代を意味している。
軍事作戦の作戦名は基本的に命名規則が特に定められておらず、「ミッキーマウス作戦」という作戦をドイツSS武装親衛隊が立案したこともある。1944年のハンガリー指導者子息誘拐作戦。命名の由来は不明だが、小椋しおみたいなノリで決めた可能性もあるっちゃある。
ノブナガンは通常兵器に効く?効かない?
「ノブナガン」作中において、よく話題に登るのが7話と8話に関する『矛盾』である。7話において小椋しおはDOGOO特殊班のフランソワ・ヴィドックから突入用に戦艦武蔵(ムサシ・ワンダー)に穴を空けて欲しいとの要望に「AUウェポンは、進化侵略体にのみ有効で、戦艦などの装甲板には殆ど効果が無いはずでは・・・?」と明言。しかし、次の8話ではAUウェポンであるノブナガンの射撃をもって、DOGOO旗艦「C・フォレスター」の船体を一部抉っている。これは一見、設定が矛盾しているようにみえる。
だが、実は矛盾点は存在しない。なぜなら「C・フォレスター」のモデルである高速双胴輸送船「HSV-2 スウィフト」は元は民間船で船体は総アルミ製である。さらに満載排水量は1,668トンとかなりの小型艦である。(武蔵の1/42。というかWW2の駆逐艦より小さい)ついでに言うと、アルミの塊でもなく軽量化のため船体構造にアルミを一部用いている程度。
対して武蔵はVH甲鉄(ヴィッカース式硬化甲鉄:戦艦長門以降の特殊鋼で、窒素を用いて表面を硬化させている)、これを司令塔には最大500ミリ厚を装甲として採用している。こっちは文字通り特殊鋼の塊と言っても差し支えない。
要は小椋しおは「ノブナガンで戦艦武蔵の装甲をぶち抜くなんて、無理無理無理!」と言っており、ヴィドックはこれに対し「ぶち抜くのはアメリカ海軍の対艦ミサイル攻撃に任せるから、対艦ミサイルを無力化する表面の進化侵略体をどうにかして」と要求しているのだが、ヴィドックさんが詳しい説明を「ね?」で済ましている感がある。
実際は、ノブナガンで進化侵略体を排除して、その後アメリカ海軍による対艦ミサイル飽和集中攻撃を行っている。武蔵と言えど、流石に対艦ミサイルの飽和集中攻撃は想定していなのでこれには耐えられない。結果、突入用の穴が空いた。精密攻撃はガリ子が着弾観測を行い、戦術情報システムを通してアメリカ海軍に攻撃地点の指示を行ったものと思われる。(流石はガリ子だ!データリンクもお手の物である)
「C・フォレスター」は紙装甲というか、そもそもが戦闘用じゃないので装甲などない。これが破壊出来ないのであれば、進化侵略体は適当な簡単な遮蔽物に隠れればノブナガンを無力化出来ることになってしまう。「C・フォレスター」はヘリコプター甲板を有しており、過荷重に耐えられるように再設計されたので頑丈かとおもいきや、運用するAW609は重量4.7トン(最大7.6トン)とかなりの軽量機(同じティルトローター機であるオスプレイは最低15トン。通常は22トン)であり、そこまで過荷重に耐えられるよう強靭な構造にする必要はない。[14]
ティルトローター機の代名詞的存在であるオスプレイでなくAW609が登場するのはこういう事情がありそうだ。ちなみに、「HSV-2 スウィフト」でオスプレイをそのまま運用すると下手したら甲板が痛む。海自の「おおすみ型輸送艦」は大型ヘリ専用の発着スポットを用意している。そのため、発着スポットに関しては比較的頑丈な作りになっているらしい。
よって、これに関しては作中の描写に矛盾点はほぼ無い。つーか、小椋しおが「C・フォレスター」と「武蔵」の違いの説明すれば結構、誤解も生まなかった思うのだが、元は民間船の「C・フォレスター」にはやっぱり興味無かったのか・・・。軍民の差異に厳しい小椋しおであった。
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関連項目
小椋しおの言及した兵器類で記事があるもの
脚注
- *テロップではF-CK1と表記。経国はチンクオ(チンクォ)と読む。台湾空軍の国産防衛戦闘機(IDF)である。
- *CM-11勇虎。「ヨンフー」と読む。しかし、劇中では「ユーフー」と読んでいる様だ。
- *ちなみに、複数もの105mm砲の実弾射撃音を至近距離で生身で受けて耐えられる人間は居ない。小椋しおは冷静に解説するのみである。すでにE遺伝子持ってるんじゃないか?
- *例えば、アウトブレイク・カンパニーの主人公「加納慎一」もちゃんと陸自の軽装甲機動車をちゃんとLAV(ラヴ:軽装甲車)と呼称している。
- *劇中だと、見向きもせずに走り抜ける途中で気づく。ミリオタも極めると兵器を感じることは可能。(編者談)
- *基地祭などではロープ類により地上展示機の内最新鋭機に関しては近づけない事が多い。基本的に新鋭軍用機にスリスリすることは異性にスリスリする事より遥かに困難である。速攻、自衛官に注意されます。
- *テロップ表記に基づくが、アーレイ・バーク級というより登場時の作画はサプライ級高速戦闘支援艦に近い
作画頑張れ。 - *OVA版『青の6号』には「ナガトワンダー」が登場するのでこれのオマージュ説あり。また、DOGOO旗艦「クレイトン・フォレスター」の元ネタが『宇宙戦争(1953)』の同名の登場キャラクターだったりする。
- *1946年、アメリカがビキニ環礁において行った一連の核実験。日独米の戦闘艦艇が実験に供された。中でも戦艦長門は有名である。
- *原音を表記する際「エイブラムス」とすることが多いが、「エイブラムズ」表記も多い。本記事では「エイブラムズ」としている。
- *射撃自体は戦車砲の駐退機の存在により護衛艦に負担は掛からないが、問題は履帯(キャタピラ)でゴム履帯に換装しないと甲板が大変なことになる。
- *実戦経験や地理的即応性の観点も加味して小椋しおがM1A2を選択した可能性がある。だが、「ひゅうが」が選ばれたのは劇中でも明らかになっていない模様。ワスプ級強襲揚陸艦じゃ駄目なのか・・・
- *劇中では「レオパルト」としか言っていないのでレオパルト1の場合は105mmライフル砲となりL/D値は10程度。イスラエル製のM413 APFSDSを用いれば20となるらしい。が、22を超えることはないとされている。
- *劇中に登場するCH-53大型ヘリも自重15トンの大型機だがこれは「アレックス・ローガン」また空母「ジョン・C・ステニス」などにおいて運用されており、「C・フォレスター」で同機を運用するシーンはない。
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