少年探偵団とは、江戸川乱歩の児童向け作品『少年探偵団シリーズ』に登場する架空の団体。主人公達の所属する組織として、敵役である怪人二十面相と戦いを繰り広げた。
概要
1936年に「少年俱楽部」で連載が始まった『怪人二十面相』の終盤で結成され、戦争を挟んで1962年の最終作『超人二コラ』まで活躍した。団長は日本を代表する「名探偵」明智小五郎の探偵助手の「小林少年」こと小林芳雄。メンバーも殆ど全員が少年少女だけで、子供向け探偵小説を代表する組織として探偵役の明智小五郎と共に大きな人気を博した。反面登場初期はプロット作りを苦手とする江戸川乱歩らしく団員の設定が固まっておらず入れ替わりが激しかった。
シリーズ第一作『怪人二十面相』の終盤で、明智小五郎が二十面相に攫われてしまった際に依頼人の次男である羽柴壮二少年に提案され、小林少年を団長として10人ほどの少年少女で結成された。結成当初は10人ほどの組織だったが、後に20人以上まで団員が増えている。
団員はおそろいの「BDバッジ」の他懐中電灯や望遠鏡などの「七つ道具」、更にはデリンジャーのような小型の拳銃まで持ち、単独でもある程度二十面相やその部下に相対することが出来る。
「探偵団」と名乗るものの当初は推理パートは後見人である明智小五郎が担当していたため専ら事件の切っ掛けになる噂話や事件が起きてからの情報集めが主任務だったが、後半になるにつれて怪人二十面相との直接対決にも団員たちが関わるようになっていき、ストーリー上で明智小五郎よりも目立つことが多くなっていった。
「少年探偵団」という分かりやすいネーミングや所属する団員それぞれにに個性を持たせやすい設定など、後に発表された子供向けの探偵小説や漫画の多くに似たような組織が登場するようになった他、成年向け作品においても登場する少年少女により結成され「○○探偵団」のような名前が見られることもあるなど、多くの作家に参考にされ、探偵小説や探偵漫画のジャンルに大きな影響を残した。東野圭吾の『浪花少年探偵団』や太田忠司の『新宿少年探偵団』等の作品名の他『名探偵コナン』には小学生により結成された「少年探偵団」という名前の団体がそのまま登場している。珍しいところでは劇団の名前になっていたこともあった。
探偵団団員
- 小林芳雄
- 少年探偵団団長にして「名探偵」明智小五郎の探偵助手。特技は女装。
- シリーズ一作目の『怪人二十面相』終盤で壮二から提案され、怪人二十面相に対抗するために探偵団を結成。以降企みを挫くために団員たちと怪人二十面相に挑む。通称「小林少年」。
- 大戦後は戦災孤児の浮浪児たちを集め、「チンピラ別動隊」を組織した。
- 詳しくは個別記事を参照→小林芳雄。
- 羽柴壮二
- シリーズ第一作『怪人二十面相』で二十面相に狙われた家の子供として登場。作中後半で明智小五郎の助手として活動していた小林少年に自身の探偵団を結成することを提案し、その1人目のメンバーとなった。しかし結成の切っ掛けになった重要人物にもかかわらず、次作の『少年探偵団』に登場した後は再登場しなくなってしまった。
- 野呂一平
- 才気溢れるメンバーの中では比較的おとなしめで「のろまなノロちゃん」と呼ばれることもある癒し系マスコット枠。読者からは感情移入しやすいのび太枠としても重宝され、中盤以降はほぼレギュラー枠として井上君と共に定着した。
- 井上一郎
- 大柄で度胸もあるパワーキャラ。野呂君とは何かと対比されていることが多い。
- 父親が元ボクサーで、本人もボクシングを習っている。
- 花崎マユミ
- 『妖人ゴング』から登場。少年探偵団の数少ない女性隊員。明智の姪[1]で、高校卒業後に明智探偵事務所で働き始めた。団員の中では年長者で、お姉さん的な立ち位置。
- 父はかつて二十面相を法廷で追い詰めた名うての検事であり、二十面相とは因縁がある。
- 実際は少年探偵団シリーズの大ヒットにより少年向け作品であるにもかかわらず「少女クラブ」でも連載が決まったことにより乱歩によって急遽作られたキャラクター。そのせいなのか他の団員に輪をかけて設定が安定せず、高校卒業後のはずが17歳になった描写があったりする。またそもそも文代は『魔術師』の時点で兄弟姉妹がいないことが明らかになっているので、登場時点での明智の姪という設定も矛盾している。
- 「少女クラブ」で連載されていた作品には準主役として登場しているが、連載が無くなってからは事務所で留守番していることが多くなっていった。
- 淡谷スミ子
- 明智小五郎の助手として活躍するマユミにあこがれ、自分も少女探偵になりたいと志願した。
- トシコとは同じ中学の同級生。
- 森下トシコ
- スミ子と同じくマユミに探偵になりたいと志願してきた少女。
- 中学1年生。
- ポケット小僧
- 太平洋戦争後初となる作品『青銅の魔人』から登場する。戦災孤児の浮浪児を集めて結成された「チンピラ別動隊」のメンバーの1人。ポケット小僧という名前は「ポケットに入りそうなほど小柄だ」という所から来た渾名で、本名は最後まで明らかになることは無かった。その小柄さからか二十面相のアジトへの潜入を任され、度々探偵団が二十面相の企みを暴く原動力となった。
- ポケット小僧自身は別動隊として動いていたため、小林少年以外の団員とはさほど親密にはならなかった。
少年探偵団の協力者
- 明智小五郎
- 数々の難事件を解決して名声を得た日本を代表する名探偵。助手である小林少年と少年探偵団と共に「大怪盗」怪人二十面相と対決する。
- これまでの探偵人生で得た知識や経験、武力は日本一とも言われ、二十面相に匹敵する変装技術も併せて何度も二十面相を捕縛しては脱獄して勝負を挑んで来る二十面相と戦う。
- 詳しくは個別記事へ→明智小五郎
- 明智文代
- 明智小五郎の妻にして助手。明智からは探偵としても優秀だと語られている。
- 本編中は専ら事務所に残っているが、シリーズ中盤からは「高地療養に行っている」という理由で本編にも登場しなくなった。
- 中村善四郎
- 明智小五郎、少年探偵団と共に怪人二十面相を追いかける警察官。階級は警部。
- 「明智小五郎の助手」という肩書のせいなのか小林少年や探偵団を邪険に扱ったりせず情報を共有してくれる話の分かる刑事。
傘下組織
- チンピラ別動隊
- 戦後上野公園で浮浪児として暮らしていた孤児たちを集めて小林少年が組織した別動隊。
- 主に団員が動けない夜間や二十面相に近い危険な任務を遂行する。
- 少年探偵団の団員は育ちのいい中流階級以上の子供が大半であったため、お互いに接触しなくてもいいように小林少年によって別動隊とされた。
- 出発点が浮浪児の集団であったこともあり、二十面相から賄賂を贈られて嘘の情報を流してしまった隊員もいた。日本が戦災から復興してくると探偵団とは逆に徐々に数を減らし、50年代後半には5人ほどまで人数が減っている。
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関連項目
脚注
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