山風短とは、バジリスク~甲賀忍法帖~、Y十M ~柳生忍法帖~といった山田風太郎作品を漫画化したせがわまさきが描く山田風太郎の短編を漫画化したものである。月刊ヤングマガジンにて連載。既刊四巻。
第一幕 くノ一紅騎兵
慶長4年(1599年)春、天下分け目の関ヶ原の前年、天下に名を知られた上杉家の豪傑たちは傾城屋、扇屋の奥座敷で扇屋の養女を愛でていた。養女の名は陽炎、大谷家を浪人したさる人物の娘であった。
そこに直江山城守兼続にお願いがあるという者が乱入する。その人物は明智の流れをくむものにて上杉家に奉公したいと言うが真の目的は傾城屋に出入りした豪傑たちの顔ぶれを直に見るためで、その正体は本田佐渡守(徳川方)のスパイであった。
その事を指摘された男は陽炎を人質に取り逃げようとするが陽炎は男を簡単に投げ飛ばして昏倒させてしまう。陽炎の正体とは…?
登場人物
- 千坂対馬守景親…通称千坂民部。上杉謙信の頃よりの重臣の一人。
- 前田穀蔵院咄然斎…前田慶次郎利益の後身。戦国BASARAの前田慶次、花の慶次 -雲のかなたに-の前田慶次と同一人物である。
- 上泉泰綱…通称上泉主水。新陰流開祖上泉信綱の一族で剣名高き人。
- 岡野左内…大きな経済力と武力に優れたキリシタン武将。蒲生家から上杉家に仕官する。
- 車丹波守猛虎…剛力無双と鉄砲の達人として知られた豪傑。佐竹家から上杉家に仕官する。
- 直江山城守兼続…上杉家家老。家康が日本で恐ろしい人間を五人あげろと言われたら必ずその中に入ると言われたほどの人物。
- 上杉景勝…謙信が生涯不犯であったために甥である景勝が跡を継いだ。剛勇に溢れた人物であるが、崇拝してやまぬ叔父謙信の女嫌いの習性をかたく受け継いだために、若いころ武田家から迎えた奥方はあるが45歳になっても子はいない。
第二幕 剣鬼喇嘛仏(ラマぶつ)
慶長17年(1612年)、舟島での佐々木小次郎との試合に勝った宮本武蔵はその帰りの船上で長岡与五郎興秋という人物と対面する。船頭に船を避けるように言うが与五郎の船はわざと武蔵の船の方に寄せてくる。
与五郎は武蔵と戦うためにやってきたのであり、戦いが避けられぬとわかった武蔵は受けて立つこととした。船上での剣戟の結果、海に落とされた与五郎は武蔵の強さを身をもって味わうことになる。武蔵は木彫りの仏像を与五郎に投げてよこし、去るが、この海での出来事を誰も知らない。
大坂の役が始まる二年ほど前の出来事である。
半月後、与五郎は徳川への人質として江戸に旅立つことになるが“いましばしなにとぞ剣の道を学びたく”という意味の書き置きを残して江戸入り寸前その姿を消してしまう。
まさに前代未聞の椿事であった。
登場人物
- 宮本武蔵…戦って生涯負けなし、二天一流の開祖である。本作ではつかみ所のない性格として描かれている。
- 長岡与五郎興秋…豊前小倉40万石の大名細川忠興の次男である。次男ゆえ細川の旧姓長岡を名乗ったが先年わけあって長男忠隆が廃嫡されたので今は事実上細川家の跡継ぎであった。その母細川ガラシャの美貌を受け継ぎながら、武勇に聞こえたその父忠興でさえ眉をひそめるほどの恐ろしい剣法好きであった。
第三幕 青春探偵団 <砂の城>
初出『全國学園新聞』昭和32年11月24日~33年3月2日。
『霧ガ城高校殺人クラブ』名前は大げさだが何のことはない要するに『探偵小説愛好会』なのである。活動内容は最近読んだ探偵小説の批評や新しい殺人トリックの考案、意地の悪い先生や寮の舎監にしっぺ返しをする妙案など。
その年の夏休み、女優「高城千鳥」が鼻岬村にて静養していると新聞で読んだ面々はメンバーの一人、早助の実家に泊まることに決めた。
鼻岬村で海水浴をして遊ぶことに決めたメンバーの女性陣は砂遊びで砂の城を作っていただけなのになぜかチンピラたちに絡まれてしまう。一触即発のところを男性陣に助けられたが、チンピラたちはなぜかその場所に執着を見せる…。
登場人物
霧ガ城高校殺人クラブのメンバー
その他
第四幕 忍者枯葉塔九郎
奥州盛岡藩に仕えていた剣士・筧隼人は国家老南部修理の息女、お圭とともに盛岡藩から駆け落ち同然に逐電し、鳥取藩まで一年仕官の口を求めて漂白していたが、戦国の世と違い、少々剣の腕が立つ程度では召抱える藩はどこにもなかった。
放浪の途中、何度か安扶持の口はあったが気位の高い性格のお圭はそれをよしとしなかった。
そんな二人が鳥取藩にやってきたのは、鳥取藩主池田因幡守が武芸好きで、近々御前試合を開催し、その成績によって数名の家臣を召抱えるという話を聞いたからである。
しかし御前試合の出場者は多く、気後れした筧隼人は気位の高い美しい妻が一生の足枷のように思われてきたため鳥取に妻を捨ててゆく決心をした。お圭に遊女屋に身を売ってくれと頼み、金さえ受け取ったら後はそのまま鳥取から雲を霞と逐電するつもりであった。
そんな筧隼人の前に枯葉塔九郎という人物が現れ、お圭を売ってくれと持ちかけられる。
登場人物
- 筧隼人…剣法に秀で、野心に燃える若者。身分違いのお圭と恋に落ち、故郷を捨て自分の活躍できる新天地を探す旅に出た。
- お圭…隼人の妻。盛岡藩国家老の娘であり、藩内でも評判の美女であったが、駆け落ち同然で隼人と国を出ることに。
- 枯葉塔九郎…出自も目的も一切不明という謎の忍者。その容貌は醜怪だが、浮かぶ表情には奇妙な人懐こさがある。
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