岸辺露伴は動かないとは、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」を題材とした短編ストーリーである。
概要
ジョジョの奇妙な冒険・第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するキャラクター・岸辺露伴をストーリーテラーとした、短編(読み切り)漫画である。これらの作品において、露伴は主人公ではなくナビゲーターという立場を取っているため、「動かない」というタイトルには『岸辺露伴は語り部であって、主人公ではありませんよ』という意味が込められている。
ストーリー(原作)を岸辺露伴が、作画を荒木飛呂彦が担当した、という構成も大きな特徴。
2018年現在、「~エピソード#16:懺悔室~」「~エピソード#02:六壁坂~」「~エピソード#05:富豪村~」「~エピソード#06:密漁海岸~」「~エピソード#04:望月家のお月見~」「~エピソード#07:月曜日-天気雨~」「~エピソード#09:D・N・A~」「~エピソード#10:ザ・ラン~」の8タイトルが発表されている。
また、岸辺露伴が出演している作品には「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」「岸辺露伴 グッチへ行く」などといったタイトルもあるが、こちらは岸辺露伴が主人公のスピンオフ作品として扱われている。
また、ウルトラジャンプの付録冊子として別作者が手掛ける短編小説集も発表されている。
2013年11月19日には、「岸辺露伴 グッチへ行く」を含めた5種類のエピソードが収録された単行本が発売。長年待望され続けていた単行本の刊行によって、リアルタイムでジャンプを買い逃した人も全てのエピソードが読めるようになった。
2016年、TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」Blu-ray&DVDの全13巻購入特典として、「岸辺露伴は動かない~エピソード#05:富豪村~」がOVA化される事が発表された。
2018年7月19日には第2巻発売。さらに「岸辺露伴は動かない~エピソード#02:六壁坂~」のOVA同梱版も発売。
2020年3月25日には「~エピソード#16:懺悔室~」「~エピソード#10:ザ・ラン~」の2エピソードを含む新作OVAが発売。
ストーリー
岸辺露伴は動かない ~エピソード#16:懺悔室~
1997年にジャンプへ掲載された、「岸辺露伴は動かない」の題を冠した最初の短編作品。
後の1999年には単行本として収録された。
参照→「死刑執行中脱獄進行中」
岸辺露伴は動かない ~エピソード#02:六壁坂~
上記の「懺悔室」発表から10年後の2007年に、新規に発表された読み切り作品。
「ジャンプスクエア」2008年1月号に掲載された。
作者・荒木に曰く『最初の「懺悔室」のエピソードをシリーズ化して何作品か描いてみたいという発想が既にあり、ジャンプスクエアから短編ストーリーの依頼が来た際にこのストーリーを「第2弾」として描くことにした』とのこと。
なお、雑誌掲載時はエピソード番号が振られなかったが、単行本化の際にエピソード#02と修正された。
作品中の時系列は現実の掲載時期と合わせ、「懺悔室」から約8年後の2007年となっている。
本作の岸辺露伴は、妖怪伝説の取材の為だけに山を6つ買収し、その土地に持ち上がっていたリゾート計画を潰すも計画の頓挫に伴い地価が暴落し破産した結果、家も財産も失い広瀬康一の家に居候している。そこへ編集担当の貝森が作品の打ち合わせに訪れた際、露伴に原稿料の前借りを相談され呆気にとられるが、露伴は「六壁坂の妖怪は今も存在する」と告げ、数年前に発生した事件と露伴の身に起こった奇妙な出来事を語りだす。
ちなみに本作の冒頭では、小林玉美と音石明らしき男が2人、露伴にサインを求めるシーンがあるが、彼らが玉美及び音石と同一人物なのかは不明。玉美(らしき男)は露伴とはまるで初対面のような口を利いているが、ギターを持った男は「音石」と名乗っているので恐らくは両者とも本人だろう。
また、同じく冒頭で露伴が「『るろうに剣心』単行本を全部売っ払った」と発言している件に関して、「るろ剣」作者・和月伸宏は『天国への扉が開いた気がした』とコメントしている。ちなみに和月はジョジョのファンでもあり、自身の作品『武装錬金』でも主人公・武藤カズキは岸辺露伴のファンであるという設定を付けている。
岸辺露伴は動かない ~エピソード#05:富豪村~
短編漫画の第3弾。週刊少年ジャンプ・2012年45号に掲載されたストーリー。「ジョジョの奇妙な冒険」25周年記念と原画展(ジョジョ展)開催記念として掲載されたストーリーである。荒木が週刊少年ジャンプに漫画を掲載するのは2004年のスティール・ボール・ラン(ウルトラジャンプへ移籍する前)以来およそ8年ぶりとなった。
作中の時系列は上記の「六壁坂」と同じく2007年だが、「六壁坂」よりも後の話である。
そのため、露伴は前作に引き続き絶賛破産中だが、漫画編集者・泉京香と打ち合わせの折に「別荘を買わないか」と提案される。露伴は勿論反対するが、別荘を購入するのは泉で、購入するまでの過程を取材してアイデアとすればいいのでは、と言われた事で露伴は彼女の付き添いとして別荘の購入に同行する。
その別荘地は送電線さえも引かれていない山奥の土地だが、そこに立っている別荘は11軒全てが豪邸であり、しかも所有者全てが世界でも有数の大富豪となったらしいが・・・
岸辺露伴は動かない ~エピソード#06:密漁海岸~
短編漫画の第4弾。週刊少年ジャンプ・2013年10月46号に掲載されたストーリー。
イタリアンシェフのトニオ・トラサルディーから「生涯最高の料理のため、日本にしか存在しない食材・クロアワビの密漁を手助けしてもらいたい」と話を持ち掛けられる露伴。そしてトニオが独自に調べ上げた「杜王町の密漁の歴史」を元に、アワビを誰にも気づかれず取りに行ける方法がある、と告げるトニオ。
何かキナ臭いものを感じつつも、満月の夜にトニオへ同行する露伴だったが・・・
作中の時系列については不明。(エピソード5(2007年)以降?)
また、第4部主人公である仗助の家系とは別に「東方家」なる地主の家系が登場するが、第8部の東方家とも繋がりがあるのだろうか。
岸辺露伴は動かない ~エピソード#04:望月家のお月見~
短編漫画の第5弾。電子書籍「少年ジャンプ+」にて配信されたストーリー(2014年9月22日現在、公式ホームページにて無料配信されている)。
岸辺露伴の近所の家族、望月家(仮名)は毎年「中秋の名月」に家族全員で「お月見」をする風習がある。それは望月家の先祖は全員「中秋の名月」に何らかの事故で死亡しており、逆に家族でお月見をすれば100歳も長生きできる運命にある一族だからである。
そんな一家の2014年9月8日の「中秋の名月」、家族の外出を禁止して始まるお月見のエピソード。
今作では冒頭に岸辺露伴と、トニオ・トラサルディーらしき人物が出る以外、「ジョジョの奇妙な冒険」の人物は一切出てこない。まさしく「岸辺露伴は動かない」エピソードだろう。
岸部露伴は動かない ~エピソード#07:月曜日-天気雨~
短編漫画の第6弾。ジャンプスクエア2016年1月号に掲載された。「六壁坂」から実に8年ぶりにジャンプスクエアに発表された新作。
ある雨の日の杜王町。編集者との打ち合わせのためS市市内に向かおうと駅に着いた岸辺露伴だが、歩きスマホで前方不注意な人と駅構内で度々ぶつかる。最初は憤ってたものの、あまりにも周囲にスマホに夢中な人が多すぎる事に違和感を覚える。その中の一人である男に問い質すが、その最中に歩きスマホにぶつかって露伴は線路に落ちてしまう。これはいったい何者の攻撃なのか・・・?
作中の時系列は明かされていないが、最近問題になっている歩きスマホをもとに構想を練られたのは間違いないだろう。
余談だが、ジャンプスクエアの電子書籍が紙の雑誌と同時に販売開始となったのだが、スマートフォンで購読した読者は「ゾッ」としただろう。
岸辺露伴は動かない ~エピソード#09 : D・N・A~
短編漫画の第7弾。別冊マーガレット2017年9月号に掲載。実写映画公開記念としてなんと少女漫画雑誌に掲載という意欲的な挑戦。この号の裏表紙は丸ごと「岸辺露伴は動かない」仕様。荒木飛呂彦が別マに掲載させるのは2013年の創刊50周年記念に「俺物語!!」のイラストを寄稿して以来。
岸辺露伴はある日、山岸由花子から、由花子の母親と付き合いのある女性「片平真依」の娘に起こる奇妙な現象の解明を依頼される。片平真依は新婚直後に夫を自動車事故で亡くし、それ以来、夫以外の男性を好きになる事が出来ず、再婚は出来なくても子供だけは欲しかったことから「精子バンク」の提供を受けて娘の「真央(3さい)」を授かった。
しかし娘は普通の日本語でなく「逆さから読んだ言葉」しかしゃべらず、歩くとき音もたてず立っている足元がじっとりと濡れ、そしておしりから「シッポ」が生えてきた。そのシッポを他人に触られると全身の皮膚が周囲の背景に対して保護色化する。
露伴は観戦しようとしていた野球の試合を気にしながらも、真央ちゃんを「治して普通」にして欲しいと依頼され、「ヘブンズ・ドアー」で真央ちゃんを本にする・・・
本作では「ダイヤモンドは砕けない」に登場した「山岸由花子」が登場する。露伴はわざと名前を覚えていないような素振りで由花子と接し、相変わらず仲は良好とは言えなさそう。また、いつの間にか露伴が野球ファンになっており、杜王町を拠点とする「晴天バーディーズ」の先発投手やグッズの売り切れなどを気にしているが、球団名「晴天バーディーズ」及び先発投手のアー君こと「岩切厚徳」は第8部ジョジョリオンに登場している。そして、本作では岸辺露伴の名台詞が久しぶりに発せられることになる。
岸辺露伴は動かない ~エピソード#10 : ザ・ラン~
短編漫画の第8弾。週刊少年ジャンプ2018年13号にジャンプ創刊50周年記念読切として掲載。「密漁海岸」以来5年ぶりにジャンプに荒木飛呂彦の漫画が掲載されることとなった。
漫画家の命ともいえる右手を全治4週間の骨折をした岸辺露伴。この骨折やそのいきさつとなるエピソードは自分の性格に非があると、今回ばかりは心から反省していると露伴は語る。
杜王町に住む青年「橋本陽馬(21)」は原宿に遊びに来た際、モデル・プロダクションにスカウトされ、雑誌に写真が載ったり小さい役で映画にも出られた。そしてスカウトの担当者のアドバイスを受け、杜王グランドホテル八階のスポーツジムに通って肉体を鍛え始めた。ストイックに筋肉を鍛えその成果を見せ始める肉体。だがトレーニングのための行動は逸脱し始め、彼女のマンションに居座ってトレーニングしたり彼女の財布から抜き取った金でプロテインを購入したり、やがてエスカレートして…
同じスポーツジムに通っている岸辺露伴とは、些細な会話で知り合った人物であり、ジムの2台のトレッドミルで最高速度時速25㎞まで加速したら1台のリモコンを先に奪って自分のマシンを緊急停止させるゲームを行った。勝負は一度露伴が勝っているが、橋本陽馬から再戦を申し込まれる。しかし前回のゲームでは露伴がリモコンのテーブルを一度叩いて自分の方に倒れるよう有利にしていたために、橋本陽馬の執念に火をつけていたのだった。
余談ではあるが、今回のエピソードでは、岸辺露伴が漫画家である故に「前鋸筋」まで鍛え上げている橋本陽馬の筋肉を褒めるシーンがあるが、同号に掲載された「HUNTER×HUNTER」第375話では、念能力の存在を認めようとしないウェルゲーにビスケット=クルーガーが本来の筋骨隆々とした姿を見せて証明するが、ウェルゲーがなんとビスケの鍛えられた筋肉に惚れ込むシーンがあったという奇跡的なシンクロが起こった。
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関連項目
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