「巨神ゴーグ」(GIANT GORG)とは、安彦良和が原作・監督・ストーリーボード・キャラクターデザイン・メインメカデザイン・作画監督を手がけた日本サンライズ(現:サンライズ)制作の世界名作劇場ロボットアニメ作品であり、1984年4月5日~9月27日にかけてテレビ東京系列で毎週木曜19:00~19:30に放送されたTVアニメ作品である。全26話。
「ゴーグ・・・?そうか、ゴーグっていうのか・・・。」 |
概要
「巨神ゴーグ」は、活動的なイメージを強調した半ズボンスタイルの少年「田神 悠宇」と、穏やかなる青いロボット「ゴーグ」との交流と、地図から消された島「オウストラル」を舞台にした冒険譚である。
所謂ロボットアニメに分類される本作だが、
といったお約束がまったく存在せず、
- 悠宇はゴーグを操縦しない(お願いはする)。ゴーグ自身も自分の判断で従って行動する。
- 毎回やられメカが登場しない。そもそも戦闘シーン自体が全話通して少ない。
- ゴーグは武器を装備していない。基本的に徒手空拳で戦う。(空も飛べない)
- 敵側の主要人物も最終的には田神悠宇の味方になる。
- 最終目標は敵を倒すことではなく、オウストラル島の秘密を解き明かす冒険物語
といった内容で原作の安彦良和が少年時の原点である冒険小説を描き出した事から、非常にストーリー性を重視した作風で、ロボットアニメと言うよりも世界名作劇場の列に並べたいと思えてしまう日本ロボットアニメ作品の中でも特筆すべき作品である。
※「ゴーグ」の登場も第4話終盤から(ヒーローは遅れてやってくる)
また、本作を語る上でかかせない点として当時いや現在でも最高峰と言えるアニメーションクオリティがある。
これは、当時すでにアニメ業界でトップの実力者で本作の原作・監督・キャラクターデザイン・メインメカデザインを務めた「安彦良和」が
「テレビに見切りをつける前に1シリーズくらいまともなものをやりたかったということなんです。テレビには、いろいろな制約が多すぎるし、不愉快な思いもしてきてますからね。ただ、たいしたものを作ってないのに、「やーめた」なんて言い方はできないので、「まあまあ、あれくらいの作品を作ったのならよかろう」といわれるものをやっておきたかったわけです。これで、テレビアニメは卒業というようなものをね。」
(アニメージュ 1984年7月号インタビュー記事 ※「青い巨神」ページより引用)
と「TVアニメーション制作からの卒業作品」と位置づけていた事や、番組枠の確保等の諸般の事情(「装甲騎兵ボトムズ」が終わるまで待ってくれというテレビ東京の要望。事実、放送枠は異なるものの、ボトムズ終了の2週間後より放送開始)により放送開始が半年遅れた事から第1話放送時に最終話を制作していた前代未聞な進行により、全26話中の24話分の作画監督を安彦良和自身が務め、他2話も実力者の土器手司が担当した事や、仕事が速くてクオリティも高い事に定評のある脚本家「辻真先」や、映画版クラッシャージョウの監督を務めた「鹿島典夫」、後に安彦良和原作の映画「アリオン」の監督を務めた「浜津守」らチートといわざるをえない制作陣が参加している為で、集結した最高のスタッフの手により、
といった「(いくつもの幸運が重なる必要はあるが)時間があればTV放映用でもこんなにすごいものがつくれます」と言う見本の様なクオリティの高さを実現している。
安彦「一番あったのは、テレビシリーズを1本、まんべんなく自分の手を汚したものとして作りたかったということです。たとえば作監といっても、月2本やれば目一杯です。ぼくは決して人より手が遅いとは思わない。むしろ早いですよ。もちろん顔だけを直すという方法なら別でしょうが。一応全カット“なんとか”というレベルまで引き上げる作監作業ならこのペースが限界です。結果としてふつうのテレビシリーズだと、自分がノータッチの作品が半分はできてしまう、これが残念でしょうがなかったんです。 だから『ゴーグ』は月2本のペースで原画がインしてアップするまでに13か月かけて作りました。ふつうの倍の時間ですね。 」
(アニメージュ 1984年7月号インタビュー記事 ※「青い巨神」ページより引用)
また、制作陣・制作期間以外の奇跡の高クオリティの要員の一つには、制作側の管理を放置する事に定評のあるタカラトミ-(当時タカラ)がスポンサーだった事も考えられる。実際にタカラから自由にやって良いといわれた安彦良和により、あえて玩具を売る為のロボットアニメ的に売れる要素がまったく無い内容になっており、そういった自由さも本作のオリジナリティの土台もひとつと言える。
だがしかし、当時最高のスタッフによって最高のクオリティで制作された本作は、サンライズのロボットアニメの中でもマイナーな部類である事は否めない。
その最大の要因は、前記の通り玩具を売る事を考えていない為、固定武装一切無し&華麗なバンクによる必殺技無し&空が飛べず移動は徒歩なゴーグには、ロボットアニメの主人公ロボに必要な華々しさが無く、そもそもゴーグ自身の最大の売りが「頑丈さ」なゆえに、地味ロボといわざるをえない為である。(最初は金色ボディになる予定だったらしい)
※主人公を守る存在である事から「頑丈さ」に定評がある事はまったく問題がないはずなのだが・・・
他のロボットやメカもストーリー上必要最低限しか登場しない為、商品としての盛り上がりにも欠けたところがあり、当時の子供達を振り向かせる事は難い事は容易に想像できる。
※現在では、DVD-BOXの発売等、映像作品としてのクオリティについて評価されてきていると思われる。
クオリティよりも作品数な状態になっている昨今の日本アニメの状況に対して、1980年代に「巨神ゴーグ」の様な作品があったことを記憶していただければ幸いである。
冒険の旅
「悠宇、おまえは覚えているか?」との亡き父の問いと、オウストラル島の秘密を解明する為に父の友人のウェイブ兄妹、そして「船長」と名のる男と共に、少年「田神悠宇」は冒険の旅へと自ら歩みだした。
オウストラル島に眠るとされる超古代のテクノロジーを独占せんとする巨大複合企業「GAIL」や、ギャング団「クーガー・コネクション」の追跡を振り切って島に上陸した田神悠宇だったが、悪魔の階段と呼ばれる溶岩橋にて正体不明の存在に襲われ危機に陥った。
絶体絶命の時、青く巨大なロボットが現れて敵を撃退し、田神悠宇の危機を救う。
島民から「神の使い」と崇められ、「ゴーグ」と呼ばれている巨人と共に田神悠宇は、島に眠る異星文明の遺跡や異星人との邂逅、そして「ゴーグ」に託された思いを知り、たくましく成長していった。
青き巨神「ゴーグ」
本作の主役の一人である、異星人によって3万年前に造られた人型ロボット。
「ゴーグ」と言う名は、基本的に会話能力を持たず「GOOOORG」と鳴いてる様な音声を発する事からつけられたもので、正式名称は「ドークスガーディアン・レベル21ゼノンタイプ」。全高:13.5メートル、重量:12.5トン。
3万年前にオウストラル島に降り立ち、地球人の娘と恋に落ちた為に異星人の仲間達の下を離れたマシウスを護衛する為に野に下ったゼノンが元々の搭乗者で、ゼノンが死の間際に指示した「マシウスとその子孫を守る」という命令を、ゼノン亡き後忠実に遂行しており、マシウスの血を引く地球上ただ一人の子孫である田神悠宇を守る為に公式チートな頑丈さと格闘能力を発揮する。
その性能は、物語後半に登場した他のガーディアンや、ゼノンの兄マノンが操るガーディアンとの戦いでもたった一人で戦い抜く等、非常に高い性能をもっている事が描写されている他、安彦良和自ら「ゴーグは無敵」と公式チート発言をしており、特にその頑丈さには定評がある。
- 本編中、正面からの攻撃や、不意打ちの攻撃ですら傷を負う描写が無い。
- 装甲に継ぎ目が無い。さらに動かなければ関節部分すらも硬化する。
- ザコガーディアンに大穴をあけるパルスランチャーの直撃をうけても平気。
- パルスランチャー2門を要するマノンのガーディアンに対して格闘戦に持ち込んで勝利。
といった内容で作中に表現されている。
弱点としては、
といった点はあるものの、作中最強の存在である事は揺るがない。まさに「気は優しくて力持ち」な奴である。
田神悠宇と仲間達
田神悠宇(たがみ・ゆう) CV:田中真弓 |
ドリス・ウェイブ CV:雨宮一美 |
トム・ウェイブ CV:山田俊司/キートン山田 |
アルゴス |
船長 CV:今西正男 |
アロイ CV:向殿あさみ |
サラ (CV:佐々木優子) |
トメニク CV:立木文彦 |
ホツ・マツア CV:大久保正信 |
- ◆キャリアビーグル
- GAILの新型水陸両用戦車。アロイが強奪して以降、田神悠宇一行の脚兼住居となる。
175ミリカノン砲等装備も充実しており、戦闘能力は高いはずだが、1両のみでの運用なのとゴーグがチートな為に目立たない。
全長は18メートルだが、内部はダンガードAのコクピット並みに広い。
GAIL/クーガー・コネクション
オウストラルに眠る超古代テクノロジー独占の為に暗躍する組織。
ロッド・バルボア CV:池田秀一 |
ロイ・バルボア CV:藤本譲 |
レイディ・リンクス CV:高島雅羅 |
デヴィ CV:亀井三郎 |
- ◆ダイナソア
- GAIL製の4足歩行するオレンジ色の巨大土木建築機械。所謂多脚ロボット。
建設機械なのでクレーンがついているが、砲台で武装してもいる。
ゴーグと相撲格闘戦をした結果、綺麗にひっくりかえされた。
オウストラルに眠る異星人
3万年前にオウストラルに降り立った異星人達。
(作中ではマノン以外は死亡しているか冬眠装置で眠っている。そして火山噴火による悲劇が・・・)
マノン CV:郡司みつお |
ゼノン CV:島田敏 |
マシウス・デ・ル・マドゥ |
マノンタイプ |
ラブルガーディアン |
くらげメカ |
キャスト
|
GAIL |
クーガー・コネクション | |
異星人 | |
スタッフ
企画・制作 | 日本サンライズ(現:サンライズ) |
原案 | 矢立肇 |
原作 | 安彦良和 |
監督 | 安彦良和 |
キャラクターデザイン | 安彦良和 |
作画監督 | 安彦良和、土器手司 |
ストーリーボード(絵コンテ) | 安彦良和、鹿島典夫、浜津守、小鹿英吉、吉永尚之、菊池一仁 |
演出 | 鹿島典夫、浜津守、小鹿英吉、菊池一仁 |
脚本 | 辻真先、塚本裕美子 |
メカニカルデザイン | 佐藤元、永野護 |
美術 | 金子英俊 |
音響 | 千葉耕市 |
音楽 | 萩田光雄 |
プロデューサー | 吉井孝幸 |
主題歌
オープニング | ||
「輝く瞳 <BRIGHT EYES>」 (※歌詞) |
歌 | TAKU |
作詞 | 康珍化 | |
作曲 | 鈴木キサブロー | |
編曲 | 萩田光雄 | |
エンディング | ||
「BELIEVE IN ME,BELIEVE IN YOU <君を信じてる>」 | 歌 | STEAVE |
作詞 | 康珍化 | |
作曲 | 鈴木キサブロー | |
編曲 | 萩田光雄 |
放映リスト
話数 | 初回放送日 | サブタイトル | 脚本 | ストーリーボード | 演出 | 作画監督 |
第1話 | 1984/4/5 | ニューヨークサスペンス | 辻真先 | 安彦良和 | 浜津守 | 安彦良和 |
第2話 | 1984/4/12 | 西へ・・・ | 辻真先 | 鹿島典夫 | 鹿島典夫 | 安彦良和 |
第3話 | 1984/4/19 | 嵐の船出 | 塚本裕美子 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第4話 | 1984/4/26 | 出会い | 塚本裕美子 | 安彦良和 | 小鹿英吉 | 安彦良和 |
第5話 | 1984/5/3 | 神のいる島 | 塚本裕美子 | 鹿島典夫 | 鹿島典夫 | 安彦良和 |
第6話 | 1984/5/10 | ゴーグの秘密 | 辻真先 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第7話 | 1984/5/17 | 海坊主の砦 | 辻真先 | 小鹿英吉 | 小鹿英吉 | 安彦良和 |
第8話 | 1984/5/24 | ガイルの縦穴 | 塚本裕美子 | 鹿島典夫 | 浜津守 | 安彦良和 |
第9話 | 1984/5/31 | 闇の中へ | 塚本裕美子 | 吉永尚之 | 菊池一仁 | 安彦良和 |
第10話 | 1984/6/7 | ダーク・ベイ | 辻真先 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第11話 | 1984/6/14 | 光に向かって | 辻真先 | 小鹿英吉 | 小鹿英吉 | 安彦良和 |
第12話 | 1984/6/21 | グリーンマット | 塚本裕美子 | 菊池一仁 | 菊池一仁 | 安彦良和 |
第13話 | 1984/6/28 | レイディ・リンクス | 塚本裕美子 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第14話 | 1984/7/5 | わかれ道 | 辻真先 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第15話 | 1984/7/12 | 旅の終わり | 辻真先 | 菊池一仁 | 菊池一仁 | 土器手司 |
第16話 | 1984/7/19 | 時の扉 | 塚本裕美子 | 鹿島典夫 | 浜津守 | 安彦良和 |
第17話 | 1984/7/26 | ひきがね | 塚本裕美子 | 小鹿英吉 | 小鹿英吉 | 安彦良和 |
第18話 | 1984/8/2 | 迷宮に眠る | 辻真先 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第19話 | 1984/8/9 | 脱出、そして | 辻真先 | 菊池一仁 | 菊池一仁 | 安彦良和 |
第20話 | 1984/8/16 | とらわれの巨神 | 塚本裕美子 | 鹿島典夫 | 浜津守 | 安彦良和 |
第21話 | 1984/8/23 | タウンパニック | 塚本裕美子 | 小鹿英吉 | 小鹿英吉 | 安彦良和 |
第22話 | 1984/8/30 | 報復の足音 | 辻真先 | 菊池一仁 | 菊池一仁 | 安彦良和 |
第23話 | 1984/9/6 | オウストラル消去指令 | 塚本裕美子 | 小鹿英吉 | 小鹿英吉 | 土器手司 |
第24話 | 1984/9/13 | 火の山へふたたび | 塚本裕美子 | 浜津守 | 浜津守 | 安彦良和 |
第25話 | 1984/9/20 | 遠い絆 | 辻真先 | 菊池一仁 | 菊池一仁 | 安彦良和 |
第26話 | 1984/9/27 | 光る島 | 辻真先 | 鹿島典夫 | 浜津守 | 安彦良和 |
関連動画
関連項目
- 安彦良和
- 土器手司
- 佐藤元
- 永野護
- 田中真弓
- サンライズ
- 魔神英雄伝ワタル(同じサンライズで、同じ田中真弓が主演しているアニメ)
- ブレイブサーガ
- サンライズ英雄譚
- ロボロボカンパニー
- コミックボンボン
- アイアン・ジャイアント
- アニメ作品一覧
関連リンク
「きっとまたあえるよ、ゴーグ。今にみんな、間違ったことに気づいてくれるから。」
- 13
- 0pt