概要
明治40年から昭和73年までの帝都東京を舞台とした約100年の物語。東京破壊を目論む魔人「加藤保憲」と、東京と加藤に関わる人々を軸とした伝奇小説。実在の人物も数多く登場し、大幅に脚色されている。
五芒星の白手袋をはめ、陸軍将校の軍服をまとった魔術師である加藤保憲。
東京を舞台に東西の能力者により繰り広げられるサイキックバトル。オカルトと科学が融合した全開な設定は後発の作品に大きな影響を与えた。
1985~1989年に本編が発表されて500万部を超えるベストセラーとなり、作者である荒俣宏はこの作品のヒットによる印税で1億4000万円もの借金(本の購入代金)を返済したという伝説がある。
かなり昔の作品だが、1995年初版の文庫新装版は新品でも手に入り易く、現在では電子書籍でも配信されている。
本編は過去に何度か映像化され、1988年に「帝都物語」、1989年に「帝都大戦」として公開された。
1991年にはOVA化。また高橋葉介と藤原カムイにより漫画化もされている。
篇名 | No. | 新装版 | 年代 | 関わる出来事 |
神霊篇 | 1 | 第壱番 | 明治40~41年 | |
魔都(バビロン)篇 | 2 | 明治42~大正12年 | ||
大震災(カタストロフイ)篇 | 3 | 第弐番 | 大正12~15年 | 関東大震災 |
龍動篇 | 4 | 昭和1~2年 | 東京地下鉄開通 | |
魔王編 | 5 | 第参番 | 昭和10~11年 | 二・二六事件 |
戦争(ウォーズ)篇 | 11 | 昭和20年 | 太平洋戦争末期 | |
大東亜篇 | 12 | 第四番 | 昭和20年 | 満州国崩壊 |
不死鳥編 | 6 | 昭和20~23年 | 終戦~復興 | |
百鬼夜行篇 | 7 | 第伍番 | 昭和20年後半~44年 | 安保闘争 |
未来宮篇 | 8 | 昭和69~70年 | 架空の未来 | |
喪神篇 | 9 | 第六番 | 昭和73年 | |
復活篇 | 10 | 昭和73年 |
戦争編・大東亜篇はノベルズ・旧文庫版において復活篇の後に追加されている。新装版刊行にあたって時間軸通りに再編された。大東亜篇は東京ではなく、満州国の帝都である新京が舞台となっている。
映画「帝都物語」は神霊~龍動篇、「帝都大戦」は戦争篇をもとにしている。
OVAは神霊~龍動篇を魔都・震災・龍動・菩薩篇として再構成したもの。
登場人物
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加藤保憲
東京と並んで物語の主人公ともいえる存在。登場時は帝国陸軍少尉。日本のみならず大陸の術にも通暁し、様々な魔術を弄して帝都破壊に暗躍する魔人。邪悪ではあるが、ダンディで人間味もあるダークヒーローである。映画で演じた嶋田久作があまりにもはまっていた為、作者が原作に手を加えて外見を嶋田版加藤の方に似せたという逸話がある。またOVAでも同キャラクターの声優を務めた。映画「妖怪大戦争」でもスピンオフ的に登場しており、豊川悦司が演じている。
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平将門
関東の独立を企て、朝廷に謀反した平安時代の豪族。戦いに敗れて斬首される。首塚は大蔵省敷地内に存在する。死しては東京を守護する大地霊になったというが、その真意は窺い知れない。
- 安倍晴明
平安時代の大陰陽師。子孫の土御門家は宮廷魔術師として明治まで続く。作中での加藤保憲のパーソナルマークともいうべきドーマンセーマン(五芒星)の印は芦屋道満(ドーマン)と安倍晴明(セーマン)に由来するという。本編には直接登場しない。
主要人物
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辰宮洋一郎
大蔵省官僚。由佳理の兄。僅かながら依童の力を持つ。官吏としては有能で熱意もあるが、故あって女嫌いで家族を顧みないワーカーホリックな人物。辰宮家は加藤保憲に続く準主人公的な役割を担う一家として設定され。スパンが長く、人の出入りが激しい本作品において多くの篇に登場して重要な役割を果たした。
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辰宮由佳理
洋一郎の妹。強力な依童の力をもち、その力と身柄を加藤に狙われる。愛らしい女性だが、ある理由によりブラコン、ヤンデレの気がある。
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辰宮恵子
旧姓は目方。平将門の末裔の神女(みこ)。辰宮家を守護し加藤保憲に対決する為に洋一郎のもとへ嫁ぐ。
勇敢かつ慈愛深い女性で多くの人々に慕われる。加藤保憲にとっても特別な存在であり、彼女に対してツンデレ愛憎めいた感情を抱いていた。
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辰宮雪子
由佳理の娘。母譲りの力を持つ、同じく加藤に目を付けられており、その出生には重大な秘密が隠されている。占いが得意。複雑な家庭から若い頃はやさぐれていた。
- 鳴滝純一
理学士。洋一郎の旧友で、由佳理に恋慕を抱いている。かつては好青年であったが、由佳理に執着したことから晩年は怪人物に変貌を遂げた。
神霊・魔都篇
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幸田露伴
文豪。文人ながら豪傑で加藤とガチでバトルもできる。寺田寅彦と共に加藤保憲の最初の宿敵となった。
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寺田寅彦
物理学者。「天災は忘れた頃にやってくる」の元ネタの発言者。露伴が武闘派なら、こちらは知性派で加藤保憲の布石を潰していく形で対抗する。
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渋沢栄一
子爵。日本資本主義の父と呼ばれる近代日本経済界の重鎮。東京改造化計画のひとつとして各界の俊英を集め、秘密会議を主催する。加藤保憲、寺田寅彦、織田完之も参加者の面子。
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織田完之
元維新志士。明治では官吏・史学家・活動家としても知られ、平将門の復権活動を行った。碑文協会の設立者でもある。
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平井保昌
土御門家の老陰陽師。優れた術者で、特に奇門遁甲の術に長じる。辰宮由佳理を守るべく加藤保憲を迎え撃つ。
- カール・ハウスホーファー
ドイツ軍参謀本部将官。日本に駐在している時に加藤保憲と知り合い交友を結んだ。
ドイツ地政学の権威で東洋神秘学にも造形が深い。息子アルブレヒトが魔王編に登場している。
大震災・龍動篇
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黒田茂丸
報徳社に籍を置く風水師。辰宮恵子と共に加藤保憲と戦う。術者としての力量もあり宝剣の使い手。
別作品「シム・フースイ」では孫の黒田龍人が登場。主人公となっており祖父と同じく風水師。
- 西村真琴
人造人間「学天則」の製作者。ロボット畑の人間ではなく本来は生物学者。映画「帝都物語」では実子の西村晃(2代目水戸黄門の俳優)が演じた。
魔王・戦争編
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中島莞爾
陸軍軍人。辰宮雪子の実直な恋人。二・二六事件に参加して刑死したと思われていたが…。
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北一輝
日蓮主義の革命思想家。強力なシャーマン。民間人ながら青年将校たちを指導し、二・二六事件での思想・霊的な首謀を行う。史実でも魔王の異名をもっていた。
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石原莞爾
陸軍大佐。参謀本部作戦課長。満州事変の首謀者の一人。二・二六事件の鎮圧にあたる。北一輝とは違い、
日蓮主義を哲学とする合理的な軍略家。
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甘粕正彦
元陸軍軍人。憲兵から満州国のフィクサーに転身。ニヒリストであり、各勢力の間で複雑怪奇な行動を見せる。加藤保憲とも旧知。
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大谷光瑞
西本願寺の法主。政治家・探検家としても有名。法主に相応しい力を持つ異相の美丈夫。大戦末期に連合側の首脳の呪殺を企てる。
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中村雄昂
大谷光瑞の寵童で側近。映画「帝都大戦」では主人公格として加藤保憲と戦う。
- トマーゾ
メソニック協会の幹部のイタリア人。目・耳・口に障害があるが「世界の眼(オクルス・ムンディ)」という宝石を舌に鎮座させ、超能力を操る齢130才以上の怪人。半生を描いた外伝が本篇に付随している。
大東亜・不死鳥編
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出島弘子
満州映画の女優。辰宮恵子と面影が似る。過去の苦い思い出から、自身を死に損ねた亡霊と称する。
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大川周明
霊能力を持つファシスト。A級戦犯としてスガモプリズンの囚人となる。史実での発狂はある者の仕業とされる。
- 三島由紀夫
本名平岡公威。大蔵省の官僚、後に小説家・政治活動家となる。辰宮洋一郎に似ており、またある人物の霊に取り憑かれている、辰宮雪子と因縁深い人物。
百鬼鬼行・未来宮篇
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辻政信
元陸軍軍人。戦犯としての起訴から巧みに逃れてベストセラー作家・政治家に転身する。道士としての顔も持ち、悪名高いカニバリズムは加藤の伝授によるものとされる。諸説ある最期も独自の解釈によって描写される。
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セルゲイ・ドルジェフ
目からビームも出る世界最強レベルの邪視の使い手。中東、東南アジアの民族解放闘争に暗躍し、日本の全共闘運動に参戦すべく来日する。
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大沢美千代
ある人物が転生した女性。目方(に復姓した辰宮)恵子に後継者として迎えられる。
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鳴滝二美子
鳴滝純一の養女。曾孫ほどに年は離れている。親子の仲は良いが、故に養父の行いに心を痛めている。ある人物の生まれ変わり。
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団宗治
托銀事務センター電算室の次長、大沢美代子の上司。目方恵子の知人。オカルトにも造形が深く、コンピューターも駆使して美千代に協力する。
- 角川春樹
角川書店の社長から、奈須香宇宙大神宮(破滅教)の大宮司となる。霊能力があり自身を紫微大帝と称する。宝剣の使い手。
喪神・復活篇
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外伝的作品
映画・漫画
関連項目
- 東京BABYLON
- サクラ大戦
- ベガ(ストリートファイター)
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