平和ボケとは、戦後日本政治のうち、国際関係において、リベラル派・ハト派の外交姿勢を揶揄したり、非武装中立を非難する意味合いをもって使われる言葉である。
概要
いつごろから誰が使いだしたかは不明なものの、広く一般に通用する言葉である。国際関係論、国際政治学においては、外交と軍事、安全保障に就いて、主に二つの立場を採る。それは、一つは現実主義と言われる立場である。これは、国際政治は、無政府状態から始まっており(つまり、世界中を拘束する世界政府は存在しないということ)、国家と国家の利益が衝突し合う場と理解し、国家の背景には軍事力が不可欠と考える。もう一つは、理想主義ないしはリベラリズムと呼ばれる立場である。こちらは、国際政治は共に希求する道義、人権、平和主義が存在するという立場である。これを推し進めれば、世界政府になる。
そして、このうち、理想主義派ないしはリベラル派に向けられる言葉が平和ボケである。
特に、戦後日本政治は、日本国憲法前文と日本国憲法第9条に象徴されるような、国際協調主義・平和主義が、広く学問としても政治的勢力としても共有される状態が続いてきた。それを許したのは、冷戦構造という状況と日本がアメリカ合衆国一国に依存して、安全保障を構築し、核の傘や在日米軍による実力が存在したという現実主義的側面もある。
ただし、日本側も吉田茂が採った軽武装・経済主義(吉田路線)によって、戦前のように強権的な国益重視、大東亜共栄圏構築といった覇権主義を免れた面もあるといえる。この場合、どこまでを理想主義的と捉えるかにもよるが、経済主義はリベラリズムも肯定する国際秩序の要因である。つまり、戦後国際秩序の維持にとって、自由貿易体制・経済的交流が役立っているという認識である。
ただし、現代は、再び地域覇権主義・保護主義が台頭し、経済主義自身もまた現実主義的な立場と理想主義的立場に分裂しているとも言えるので、必ずしも非軍事的だから平和主義とも言えなくなっている。
現実主義者も平和ボケ?
必ずしも普及しているとは言えないが、親米保守を平和ボケと揶揄することもある。これは、戦後日本の平和が保たれたのはアメリカ合衆国のおかげ、という主張を一旦カッコに入れる主張である。つまり、過度にアメリカ合衆国並びに日米安全保障条約を信用しすぎることにより、日米同盟に引きずられて、アメリカ軍の世界戦略に巻き込まれてしまうのではないか(同盟国の罠)、日本がアメリカ軍との共同軍事行動を進めると、日本の“平和主義”が崩れて、実際に日本国の平和に資してきた外交政策が採りづらくなるのではないか(例えば、中東でのアラブ諸国との協調路線、アジアでの日中友好路線)ということである。
ただし、外交政策・軍事を定量的に測る事は難しく、一定程度イデオロギー的にならざるをえないところもあり、一般的な現実主義と理想主義の論争から免れているとは言えない。
罵倒語として
学問・政治思想として揶揄する場合もあるが、勿論言葉の組み合わせとして、“ボケ”が入っている以上は、単なる罵倒語として機能する。この場合、パヨク、左翼、ヘタレなどと同義である。
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平和ボケだと揶揄された例
平和ボケだと非難する例
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関連項目
- ハト派 - 鳩は平和の象徴であるので、国際協調主義として使われる。対義語はタカ派。
- 国際政治
- 国際連合/国際連盟 - 世界政府を目指すものとして設立された国際組織。ただし、必ずしも“世界政府”とは言いづらく、加盟国同士の利害が衝突する場ともなっている。
- 戦争/平和
- 戦後レジーム
- 政治
- 右翼/左翼
- イラク日本人人質事件 - イラク戦争大規模戦闘終結宣言後の間もないころ、人質事件が多発していた時に、日本人が誘拐された際に、自己責任と同じく、この言葉が浴びせられた。
- ウルトラマン症候群 - 平和ボケを例えたもの
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