この記事は新約とある魔術の禁書目録の重大なネタバレが含まれています。 了承した方のみ自己責任で突っ走ってください。 |
幻想殺し(イマジンブレイカー)とは、ライトノベル『とある魔術の禁書目録』に登場する能力である。
概要
『とある魔術の禁書目録』の主人公「上条当麻」の右手に宿る謎の力。
触れた物が異能と判断されるのであれば、例えそれが何であろうと打ち消すという力を持つ。学園都市内の身体検査(システムスキャン)では幻想殺しの力が検知されないため、レベル0と認識されている。区分としては一応『原石』に該当するのだとか。
学園都市内で幻想殺しを知っているのは統括理事会のメンバーや上条の周囲、そして「先代の幻想殺し」を使用した経験がある学園都市の統括理事長である魔術師アレイスター=クロウリー。
但し、原石系能力であることや幼少時の上条を取材したマスコミによる軽率な行為などにより、彼に何かしら特殊な力が働いている事実は魔術サイド・科学サイド問わず、容易に知ることが出来てしまう。そのためか、科学サイドは敢えて厳重に保護せず、表向きはレベル0のぱっとしない学生として扱っている。
効果・対象
効果はいたってシンプルで「触った異能の力を打ち消す」というもの。
しかし触ればいいという反面、逆に言えば触ることができなければ全く意味を成さない。
効果の具体例を挙げると魔術で生み出された炎、超能力で生み出された電撃などは、右手で触れれば強弱や大きさに関わらず消滅する(力場が地続きであれば更に効率的に)。ゴーレムに触れればゴーレムの構成を崩壊させる。爆弾なども、その起爆と爆発効果が能力に依存するものであれば消せる。しかし、異能の力が一切使われていない銃器や、何の変哲も無いパンチ等は当然無効化出来ないし、異能の力の余波で飛んで来たコンクリートの破片等も打ち消すことはできない。前述の爆弾なども当然、科学的に作られたものであれば適用されない。
原作本編で直接描写されたことはないが、御坂美琴のレールガンも打ち消せるらしい。これについては超能力で発生してる電磁誘導を打ち消せば、それによって作用してた加速もキャンセル可能とする解釈が存在する一方で、ローレンツ力が働くのは発射の瞬間のみであり、その後は慣性の法則に従って射出される為、副次的な現象には効果を発揮しないとする両方の解釈が存在する。
龍脈、地脈などの惑星を循環するエネルギーに対しても効果を発揮する。ただし、幻想殺しはあくまで「調和の取れた破壊」(異能の力を不自然に高められていないレベルまで引き戻す)を行うため、地脈や龍脈などが正常に運行している場合には効果は発動しない。これは人の『魂』といったエネルギーに対しても同様である。なお、『魔術』も生命力を変換したエネルギーではあるが、こちらに対しては個々の魔術に加え、『天使の力(テレズマ)』も打ち消す事が出来る。
また、天罰、回復魔術、空間移動など「上条当麻」を対象とする異能は、テレポートのために触れる手などが右手に接触していなくても善悪関係なく打ち消す。ただし対象が「脳」など右手を含まない特定の部位であれば効果は発揮される。
効果範囲は右手首より先のみ。これで触れた物が異能ならば打ち消すことが可能。
しかし、エネルギーや規模が莫大であるほか、起点を絶たないと消滅しないモノや永続的に発生する力に対しては処理が追い付かず力負けすることもある。
特に持続性・連続性があり多種の属性を含んでいるらしい『竜王の殺息』に至っては、効果を個々に消し続けなければならない上エネルギーも莫大で処理が追いつかないという二重苦であったため、幻想殺しの力が真っ向から打ち負けていた。相性最悪である。しかし物語が進むに連れて、この処理落ちを利用し異能の力を掴んだり逸したりする技術を会得した。
他にも『女王艦隊』のように、区画分離がされている対象は一度で全てを消すのは不可能だし、『御使堕し』のような広域に渡って展開されている現象には対処のしようがない。
霊装の類は、「元から存在していた物質に、後発的に霊的効果を付与したもの」の場合はその効果のみを打ち消し、物質は残る。材質そのものが霊的効果を帯びたもので形成された神具などは、そのものを消滅させるに至る。恐ろしい遺物キラーである。インデックスの歩く教会を破壊したことが最も顕著。
さらにインデックスによると、上条は幻想殺しのせいで自身の運気を打ち消しているらしく、彼が不幸である一因を作っているとのこと。
実際、後述するコラボ作品の一つで「因果・運命」さえも無効化してしまっているが、新約15巻では上条の記憶の有無から「本当に幻想殺しを持っているから不幸なのか」と疑問視されている。
幻想殺しの正体
先代の幻想殺し
オッレルス曰く、時代・神話の転換期にはいつも幻想殺しと同質の力が出現していた。
それらは時に「壁画」の形として触れた者の悪病を払い、ある時には英傑達の「武器」として、またある時には「洞窟」の形で試練として存在した。
これらが同じ力なのか、そもそも何故そんな力が存在するのかはさておき、幻想殺しが宿り主(器)を変えるという特徴を持つのは確かである。
例えば。現実にも存在した近代西洋最大の魔術結社『黄金夜明』の時代。
ヘルメス学や薔薇十字などの遺伝子を重ね、近代西洋魔術の礎を作った『黄金夜明』の終焉、つまり史実に記された結社の分裂はまさに「魔術史のターニングポイント」と呼べる。
この時代に、幻想殺しは『ブライスロードの秘宝』として姿を現した。
突き刺さっていたのはたった一本の矢であった。
ただし素材は鉄でも木でもない。濁った色のワックスを固めたような何か。先端が歪な五つ又に分かれた、何かを掴もうとする掌のような……。
『鏃は骨、矢羽は革、本体の矢柄は蝋……それもまた、血肉が蝋と化した屍蝋』
つまり。
それこそが。『幻想殺し。とある聖者の右手を素材に製造された究極の追儺霊装。元は召喚失敗の際に退却せぬ者を魔法陣の向こうへ追い返すために用意されていた秘中の秘となる兵器です』
『黄金夜明』時代の形状は「矢」。
それは人体の加工品で鏃は骨、矢羽は革、全体は血肉が蝋と化した屍蝋で構成され、鏃はまるで何かを掴もうとする掌のような形状をしていた。
ミナ=メイザースが言うには「とある聖者の右手を素材に製造された究極の追儺霊装」。異なる世界からの召喚失敗の際、退却せぬ者を追い返す力であった。
ブライスロードの秘宝は『黄金夜明』の魔術師同士の派閥争い、史実上の『ブライスロードの戦い』において、アレイスター=クロウリーが持ち出して使用。サミュエル=リデル=マグレガー=メイザースとウィリアム=ウィン=ウェストコットを始末する際に用いられた。
秘宝はメイザースとクロウリーの戦闘の最中に破壊されたが、後の時代で「上条当麻の右手」に同じ能力が宿る事になる。
クロウリーはこれを予期しており、上条を活躍(成長?)させるためだけに学園都市を作った。
秘宝にはもう一つ、魔術法則が支配する「位相」の軋轢から生じた火花(運命)を避ける役割がある。だが位相の軋轢から生じた運命は、クロウリーの娘「リリス」にも死という形で押し寄せてしまう。
→アレイスター=クロウリー
世界の基準点
魔神のなり損ないであるオッレルス曰く「全ての魔術師たちの怯えと願いが集約したもの」。
魔神によって歪められた世界を正すための「世界の基準点」とでも言うべき力。
君の右手の長さを、重さを、温度を、それぞれ計測していく事で全てを歪め過ぎた者は、元あった世界がどんなものだったのかを思いだせる。それは命綱となり、あまりに方向性を曲げ過ぎてしまった世界を、いつでも元に戻す事が出来るようになる
ただ、確かにこう言える。君のその右手は、『世界の基準点』として機能する、とね
新約とある魔術の禁書目録5巻 オッレルスの発言を一部抜粋
魔術を極めて神となった魔術師『魔神』は、「無限」の力を以て世界全体を歪める事ができる。
魔神が支配する世界は1+1の答えが3となり、地面に落ちる筈の林檎は空に向かって落下し、生死の概念は曖昧となって死者は当前のように生き返る。
このように既存の法則は破壊され、そもそも常識が成り立たなくなる。
しかし、歪んだ世界には必ず弊害が生じる。だから全てを歪める魔神達は無意識下でこう願った。世界を元の形に戻す際に足掛かりとなる「不変的な存在」があれば、「バックアップ」のような力があればいいのではないか、と。
その魔神達が無意識下で抱える夢・願い・怯えが、『幻想殺し』となって顕れたのである。
実際とあるシリーズの世界は魔神によって大きく歪められており、新約9巻で「オティヌス」が何度も世界改変を行っていた事が判明している。
事象の中心(神浄?)
真正の魔神たちは、神格・魔術師としての視点から「どうして上条当麻に幻想殺しが宿ったのか」を部分的に語っている。
僧正:
むしろ、お主は最初から世界を見渡す採点者じゃった。その歯車たる儂ら『魔神』を想定した存在じゃった。故にそうした『それ以下』の局面でも振り回されずに問題解決に尽力してきた。そちらのほうが正しい。幻想殺しなどお主の本質の付属物でしかない。というより、全世界の魔術師の願いがさまよっている内に、お主の本質へ吸い寄せられた結果に過ぎん。言ってみれば、つまらぬ横槍じゃな。
神浄の討魔とは右手の力に付けられたものではなく、お主自身に付けられた名であろう?であれば事象の中心は過去のレコードでも右手に宿る力でもなく、お主そのものにあると見るべきじゃ。
ネフテュス:
全ての魔術師の夢は、神浄の討魔という真名の持ち主、その魂の輝きに惹かれて吸い寄せられたと今でも信じている。新約とある魔術の禁書目録 13巻・14巻 魔神の発言を抜粋
幻想殺しの正体は魔術師の願いの集積体であって、器を変える幻想殺しが上条の右手に宿ったのも、上条の「本質」に吸い寄せられた結果でしかない。
魔神やクロウリーは「事象の中心は上条にある」と述べ、上条には幻想殺しに選ばれるだけの理由が隠されているという。詳細不明だが、それこそが彼の真名(まな)「神浄の討魔」であるらしい。
魔神「僧正」曰く、魔神が世界をどう導くか定める「採点者」が上条との事らしい。
ただし、オティヌスは科学(下記のテレマ教を参照)が絡む事も示唆しているので、採点者云々は魔神の主観的な見方だと思われる。
テレマ教との関係
テレマは魔術師アレイスター=クロウリーが創始した実在する宗教・近代魔術思想である。
そして学園都市も科学サイドも、全てはテレマのカモフラージュに過ぎなかった。
私の持論は、『法の書』の完成と共に十字教術式の時代は終わった、というものでね。実際、君は良い所まで行っていたと思うよ。『神上』という着眼点も含めてね。
オシリスの時代……つまり十字教単一支配下の法則ではなく、その先のホルスの時代をフォーマットに定めていれば、私と似たような地点を目指していたかもしれないな
君のやろうとしていた事は、基幹となっていたフォーマットそのものが古すぎたという事を除けば、私のプランと似通っていた。
異形の力で満たされた神殿を用意し、その中で右腕の力を精練し、その力でもって位相そのものの厚みを再調整し、結果として世界を変ずる思想。学園都市というある種の力を封入された小世界とどう違う?君は、自らの行動を別の視点で捉え直すだけで良い。それだけで、あの力の本質を理解できていたはずだ。
……たかが十字教程度で、あの右手や幻想殺し……そして『神浄』を説明しようと考えた事。それ自体が、君の失敗だ
とある魔術の禁書目録22巻 アレイスター=クロウリーの発言より抜粋
クロウリー曰く、幻想殺しの正体および『神浄』は十字教程度の尺度では説明できない。その在り方を完全な形で説明できるのが「テレマ教」の概念である。
現実に存在する「テレマ教」において、人は3つの時代(アイオーン)で区分される。
- イシスの時代
キリスト教(十字教)成立前の原始宗教、多神教の時代 - オシリスの時代
キリスト教(十字教)単一支配下の神に隷属する時代 - ホルスの時代
キリスト教(十字教)の支配が消滅した1904年以降、人間が真の意志に目覚めて神となる時代
クロウリーは史実通り、1904年に高次元存在「エイワス」と接触。最初の妻であるローズ・ケリーの体を借りたエイワスから伝え聞いた内容を、ある一冊の本に纏めた。つまり「法の書」、今までの時代が終わるという魔道書の原典であった。
以降、魔術を憎むクロウリーは魔術を排除する為にテレマ神秘主義=科学(偽装)を主張する。
右方のフィアンマが着地点に定めていた「神上」は、クロウリー的には旧時代の神に囚われた「オシリスの時代」の古いフォーマットでしかない。ただ、そのテレマ要素を除けばフィアンマの目的はクロウリーの計画、あるいは『神浄』の正体に近かったらしい。
- 右方のフィアンマ
異形の力で満たされた神殿「ベツレヘムの星」を用意
その中で右腕の力「聖なる右」を精錬
その力で位相の厚みを調整し世界を作り変える - アレイスター=クロウリー
超能力で満ちた小世界、形を変えたテレマ僧院「学園都市」を用意
その中で上条当麻に宿る何かの力の成長を促す
学園都市は上条を活躍させる為だけに用意された舞台であった。超能力があるのも、治安が悪いのも、悲劇が起こりやすいのも、全ては上条が基準となっていた
最終的に世界を変ずる?(土御門元春は6巻で人工的な天界を作ると予想している)
オティヌス曰く、クロウリーは全ての「位相」を排除し、エイワスが佇む「科学の世界」(純粋なる物理法則の世界)を直接操作することを目論んでいるらしい。
上条当麻、そして幻想殺しはクロウリーの計画に関わる存在でも特に重要なファクターであるらしく、学園都市の創設から続く「事象の中心」は上条だと言っても過言ではないだろう。
テレマ的な考察
テレマには「ハディート」という名の神格がいる。
ハディートは右・悪魔祓い・未顕現・全存在の中心点など、幻想殺しと類似する要素が多く、幻想殺しもしくは竜王の顎の正体ではないかと旧約禁書の頃から予想されている。
実際、〈ALの書〉には上記の情報の他にも「神浄」や上条の外殻の色と一致してしまう色の情報があるし、ハディトとの別名「クンダリーニ」──人間の体内で眠り、チャクラをこじ開け上昇する蛇──など、数々の共通点も存在する。
テッラが知っていた事とは?
オッレルス曰く、『神の右席』左方のテッラは、自身の類まれな魔術と研究により、幻想殺しの正体を知る為に最も近かった人材らしい。
左方のテッラが扱う魔術は「神の子が人の手で処刑された矛盾」を基にし、万物の順位を変更することにより単純な上下関係を作るという理論である。だが、その理論・研究は極めて冒涜的に映る。
冒涜と言えば獣666(マスターテリオン)ことアレイスター=クロウリーだが、クロウリーは旧来の魔術思想を卑下し、人が真なる目覚めを果たして神や全てと合一・調和を為す「テレマ思想」を提唱した。
そのテレマ思想は、本作でもクロウリーの計画の一つ「神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの」に見て取れるのではないだろうか。
中の人(竜王の顎)
幻想殺しが上条当麻の右手に宿っている事を、何らかの形で確約してる謎の存在。幻想殺しと上条の謎に一層深みを与えている存在である。ファンからの愛称は中の人、中条さん。
初出は第2巻「吸血殺し編」と思われる。ただし実際に存在が確定したのは後述する22巻の戦闘である。
アウレオルス=イザード戦において、切断された右腕から『竜王の顎(ドラゴンストライク)』と呼ばれる存在が現出している。これはアウレオルスの『黄金練成』で生み出されたイメージだと思われていたが、上条は自身の右腕から事細かに竜の顎が生えるイメージに疑問を抱き、アウレオルスとは無関係なのではないか?と推測していた。
そしてこれも後述するが、『竜王の顎』の姿をした存在が『とある科学の超電磁砲』に登場したことで、アウレオルスが原作ファンからヘタ錬扱いされることはほぼなくなった。
22巻 第三次世界大戦において
第三次世界大戦の終局、上条は『神の右席』右方のフィアンマに右腕を切断される。
フィアンマは『サーシャ=クロイツェフ』と『禁書目録』を手中に収め、『幻想殺し』を最後のピースとして『聖なる右』を完成させ、『神上』へ至った。
フィアンマは既に用済みの上条を消すために惑星を消し飛ばし、十字教のあらゆる神話を再現できる程の莫大な力を振るったが、上条の肩口(切断面)から現出した『何か』によって弾き飛ばされている。
さらに神上へと至ったフィアンマすら圧倒し、彼の力が見劣りする程の莫大な力が切断面から現出しかけた。
上条はその『何か』に語りかけ現出を拒絶。上条の意思で現れたさらに別の力が『何か』を食い潰し、莫大な力の余波と共に右腕が再生。幻想殺しの力は切断された腕からは失われ、再生した右腕に再び宿ったのである。
22巻では衝撃的な展開が続く中、際立った異常性を放つ上条サイドの展開、特に「中の人」の存在は上条当麻が平凡な高校生でない事を確定させてしまった。
…『テメェ』がどこの誰かなんて知らねぇ。
…『テメェ』が何をやろうとしていたのかも知った事じゃねぇ。
ただ…ここでは黙ってろ。こいつは俺が片付ける。
新約4-9巻 VSオティヌス
バゲージシティの戦闘で『魔神』であるオティヌスに敗北し、彼女に右腕が握り潰されてしまった際も、潰された右腕の断面から謎の力が現れた。しかし、この力はオティヌスによって簡単に握り潰されている。
この時点でのオティヌスは『無限の可能性』に縛られていたが、逆を言えばこの時点でも半々の確率で誰にだって勝てるようなギャンブル性の高い状態にある。上条は自身が誇る不幸を遺憾なく発揮して二度も敗北しているのだが、中の存在も『正の50%』に傾いて潰されたのかは謎に包まれていた。
なお後述の新約14、15巻にてオティヌス戦と上里戦の中の人は別物に変質している可能性も語られている。
オティヌスは助けに来たオッレルスとフィアンマの活躍で、無事撃退するに至ったのだが、オッレルスによるとオティヌスに切断された右腕は切断面がグシャグシャになっており、とても縫合出来る状態ではなかった様子。しかし右腕は上条が激痛で気絶している間に自力で修繕していた。フィアンマは「今代の幻想殺しとして定着している証拠」「幻想殺しは上条の右手である事で意味を成す」とも言っている。
新約9巻、上条は回数にして万単位、あるいは億以上殺されているのだが、中の人は出てこなかった(一応、オティヌスとの直接戦闘の際に何かの力が出現しかけた描写はあるのだが…)。
“くたばった” とされる幾千億もの世界において、「右腕が切り離されなかったのか」は不明である。これに関しては本当になかったのかもしれないし、肩から腕が離れた世界があってもオティヌスがすぐさまリセットして未然に終わった、という説がある。
ちなみにオティヌスとの直接対決にて判明している『上条当麻の死因』を本文から抜粋すると「ひしゃげ、切断され、叩き潰され、引き裂かれ、爆散され、散り散りになった」らしいので、右腕が切断されなかったとは考え難い。いずれにせよ切り離された明確な描写がない事からも憶測の域に留まっている。
とある科学の超電磁砲 第59話 VS暴走した御坂美琴 Phase5.3
大覇星祭二日目の戦闘で暴走した御坂美琴が生み出した『謎の球体』。その発動を阻止し御坂美琴を救うべく、謎の球体に立ち向かった上条当麻であったが、球体の前に幻想殺しは相殺すら出来ずに腕ごと千切り飛ばされてしまう。だが、千切れた右腕の断面から『竜王の顎』が八匹現れ、『謎の球体』を食いちぎり御坂美琴を開放した。
わずか数コマの出来事であり、すぐに姿を消したこともあってか『竜王の顎』を出現させた上条当麻自身や御坂美琴は直後のシーンでも『竜王の顎』に気付いた素振りは見せなかった。一方で上条当麻と共闘した削板軍覇は『竜王の顎』を視認していたらしく、「ドラゴンが出るとはスゲェ能力(こんじょう)だ」という独り言を最後に残している。
戦後には上条当麻の右手が旧約22巻と同様に再生していたりだとか、軍覇曰く『別世界から来た理解できない物』という『謎の球体』や、戦いの跡に現れた『謎の金属』など、他にも数多くの根底に関わるであろう謎が増えた回であったが、幻想殺しとは別の話題となる為にここでは控えておく。
今回の話の中で、削板軍覇の発言により『竜王の顎』という姿もアウレオルスの想像物ではなかったという事実が判明した。一方で『八匹出現する』『上条当麻は無意識』といった『竜王の顎』の謎も新たに追加され、外伝作品でありながらまさかの展開に読者を大いに驚かせる結果となった。
同範囲がアニメ化された『とある科学の超電磁砲T』でも当然登場。
特筆すべき点は漫画では白黒だった竜達に色が付いた事と、作画の参考用に設定された各竜の能力が明かされた事だろう。
設定の開示がされたのは原作漫画の担当編集のTwitterにて。以下にその内容を記す。
- 初代
旧約2巻で出たのと同じ竜。解呪と精神攻撃が得意。噛まれると最悪記憶を破壊されてしまう危険があるという。アウレオルスの記憶喪失もこれによるものだと思われる。 - 盲目
アニメにおける色は黒。色の通り暗黒属性らしい。こちらも強い精神作用を持っており、近づいた相手を恐怖や混乱状態に陥れる。 - 単眼
アニメにおける色は青。雨風を呼ぶ水属性。毒の概念を煮詰めたような牙を持っており、噛まれた生物は死ぬか死ぬより非道い体験をすることになる。 - 四つ目
アニメにおける色は緑。夢と現実の境を曖昧にする幻覚催眠能力。不在金属も砕く美声音波の歌い手でもあるらしい。 - 骸炎
アニメにおける色は赤。竜骨から炎が吹き出している火属性のアンデッドドラゴン。生命力そのものを焼くようなエナジードレインめいたダメージを与えて来る。 - 氷晶
アニメにおける色は水色。星そのもののような強靭さを持つとにかく硬いドラゴン。氷のブレスを吐く。 - 槍頭
アニメにおける色は金色。派手なドラゴン。身体から雷撃を撒き散らし口からレーザーブレスを吐く。 - 天使
アニメにおける色は白。頭に天使の羽を戴く神々しいドラゴン。現在原作漫画の方で美琴と交戦中のため、属性と能力は秘密との事だった。しかし作中での描写から推察するに「物質の塩化」と「魅了」というのが読者の中では有力。
以上のように随分と個性的なメンツが右腕の中に住んでいる事が分かった。
新約14-15巻 VS上里翔流
「幻想殺しは大したことなかった」「……幻想殺しの『奥』に、もう一つあったとはね……」
「こいつは……本当に、『前のヤツ』と同じもんなのか……???」
新約14巻における上里翔流との対決で右腕を抉られて敗北濃厚だったが、中の存在が上里を負かした。
新約15巻で上条はオティヌス戦と同じ力ではないと推測していた。
また、オティヌスはその正体について大方の予想はついているらしく、木原加群(ベルシ)がいれば自身の予想に確信を与えられたとも言っている。木原加群は「命や魂の価値」の研究に手を染めた科学者でもあるのだが、生前の彼がどんな情報を掴んでいたのかは不明。
新約18巻 VS聖守護天使エイワス、アレイスター=クロウリー
「ははっ!! 多少は成長しているようだがまだまだ青いな。しかも純度も甘い。どこぞで寄り道でもしてきたのかねアレイスターッ!?」
新約18巻のエイワス、アレイスター戦で出現したがエイワスにたった2行で潰された。
しかし、成長ってやはり上条さんじゃなくて中の人のことなのだろうか…。
神浄の討魔
1巻から神裂が「神浄の討魔ですか、良い真名です」と謎の発言があったが、鎌池はコミックガイドで神裂の意趣ではなく「設定」として存在する事を示唆していた。実際、14巻あとがきでも神上と神浄が対比されているし、22巻本文でもクロウリーの計画と関連する事が述べられている。
新約22巻 - 赤黒い何か
新約22巻リバース - 神浄の討魔
新約22巻でコロンゾンの「Magick」(クロウリー流の魔術)で粉々にされた上条。クロウリーの治療で何とか回復したものの、「ホルスの時代」の先を行くコロンゾンのダメージは覆せなかった。結局は右腕の損失を放置した為に「赤黒い三角形・平面の集合体」が次々と泡のように吹き出し、蛇行してラインを形作っていく。曰く、その存在はかつて美琴がどこかで見たものとも違うらしい。
新約22巻ラストでコロンゾンに再度腕を切られて出現。クイーンブリタニア号を破壊した。
新約22巻リバースで、この存在と同一かは不明だが右腕から出た何かが「神浄の討魔」「ドラゴン」と呼ばれる何かに姿形を変えた。
この存在は上条の姿と失った記憶を持ち、ふとインデックスを優しく見つめたり、キスを迫ったり(原作の上条は元々インデックスを女性として意識していたフシが有る)、記憶できない食蜂の事をきちんと記憶・認識していた。
そして聖守護天使エイワスの称号の一つと同じ、ドラゴンの本質的姿を持っていた。
魔術的記憶
史実のアレイスター・クロウリーは前世の記憶、すなわち魔術的記憶の発掘を推奨した。
クロウリーは月の子「アンク・アフ・ナ・コンス」や、かの魔術師「エリファス・レヴィ」の生まれ変わりを自称し、その記憶の一部を鮮明に引き継いだという。ネットでも読める〈法の書〉の注釈ではアンク・アフ・ナ・コンスの著名を名乗っている事は確認できるので、一度目を通してほしい。
前世すなわち魂の記憶を辿る思想は大昔からカバラが提唱していたが、前世は魂に保管され、記憶は人の内在する神に還るという。
アンナ=シュプレンゲルはどういう意図か、新約22巻リバースでこの思想を引用している。
パナケア仮説
錬金術、すなわち近代科学の礎である「賢者の石」の生成過程で生まれたパナケイアという世界を癒す薬。
オティヌスは幻想殺しを「世界を癒やす薬」と思った。
話はシンプルで、かのエリファス・レヴィも重用した「マクロな宇宙はミクロな人体とリンクする」という法則を、パナケイアの仕様にも適用すればいい。
薔薇十字はヘルメス学・錬金術を駆使して世界を救おうとしたという。それと同じで、幻想殺しは世界を救うためにある(それが異物を刈り取るにせよ)。
…というオティヌスの考察だが、これは本人が答えに行き詰まっているので保留状態である。
「自己」
薔薇十字団は君主制度を破り、哲学者の治める国を作ろうとした。
それと同じく、アンナ=シュプレンゲルは神浄に「旧いサナギを破って新たな自己を想像・獲得する」事を期待していたらしい。
そしてこれ、実はあのカブトムシやアニメ版の映画に登場する三澤紗千香ボイスのあの子にだって同じ事が言えてしまう。考察勢の間では、いまカブトムシが熱い!
あと史実だと聖守護天使は人間に内在する霊的守護者「高次の自己」とも呼ばれている。聖守護天使エイワスの本作での異名はドラゴンである。さて、どういうことだろうか。
コラボ作品での描写
幻想殺しは世界の法則で説明不可能な力であれば打ち消せるのだが、到底ありえない現象が「物理法則」として当然のように存在する異世界においても能力は発動する。
例えばセルフコラボ小説『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』では、北欧神話系の並行世界の法則で説明できる力も同じように打ち消していた(北欧神話ベースの力と判定されているらしい)。
セルフコラボ小説『合コンSS』では、『未踏召喚://ブラッドサイン』のヒロイン「白き女王」が世界を消滅させているのだが、幻想殺しは機能しておらず上条も普通に消滅してしまった。流石に世界の組成を削り取るレベルの攻撃には機能しなかったのか、未踏級の「白」が神格級より上位の法則だからなのかは謎。
『電脳戦機バーチャロン』とのコラボ小説『とある魔術の電脳戦機』(禁書VO)では、テムジンの拳に幻想殺しの能力を伝達させて戦った。小説の後日談にあたるゲーム版禁書VOでも同じ戦い方をしている。
ちなみにテムジンは万能機であり格闘オンリーの機体というわけではない。上条もスライプナー(複合兵装)を状況に応じて使い分けている。
『スーパーロボット大戦X-Ω』では禁書VO名義で参戦。兵士にかけられた「ギアス」の力を無効化していた。
関連動画
関連項目
- とある魔術の禁書目録
- 上条当麻
- その幻想をぶち殺す!! / ゲンコロ
- 理想送り
- アレイスター=クロウリー
- 魔神(とある魔術の禁書目録)
- 魔術(とある魔術の禁書目録)
- とある魔術の禁書目録の関連項目一覧
- ○○殺しの一覧
- C3ヨーヨーデザイン・イマジンブレイカー
外部リンク
ニコ百だけでは情報に偏りがあるため、他の記事も読むと理解が深まるかもしれない。
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