広河隆一(ひろかわりゅういち 1943年9月5日-)とは、日本のフォトジャーナリスト、政治活動家。
概要
人権派フォトジャーナリストとして知られ、中東を中心に戦場での人権、特に女性たちや子どもたちの人権、性暴力や性被害、そして原発問題などを中心に扱ってきた。
フォトジャーナリズム誌「DAYS JAPAN」の編集長を務め、同紙を発行する株式会社デイズジャパンの代表取締役を務めていた。
報道写真家として国内外で評価があり、氏を半生を描いたドキュメンタリー映画が製作されたこともあるが、あろうことか2018年12月、複数の女性に対し性暴力をふるっていたことが報じられ、手にしていた名声が地に落ちてしまった。
略歴
- 1943年に中国の天津で生まれる。2歳の時に大阪に引き揚げ、高校卒業後は早稲田大学教育学部に進学。そこで出会ったブント(共産主義者同盟)系の団体の活動に加わっていたと言われている。
- 卒業後は内定を蹴ってイスラエルに渡航、キブツ(共産主義的な共同生活形態)に加わる。しかしそこで目にしたパレスチナ人の村の廃墟を見て、憧れていたイスラエルが行っていたパレスチナ人への過酷な迫害や人権侵害を知る。その後次第に反シオニズム団体に接近し、現地で写真展を開催したのちに帰国。中東諸国を中心に取材する中東ジャーナリストとして取材活動を始める。
- 1982年にレバノンを取材した際の、キリスト教徒によるパレスチナ難民の虐殺に関する取材でよみうり写真大賞を受賞。翌年、同じ写真でIOJ国際報道写真展大賞の金賞を受賞。
- 立教大学で非常勤講師を務めながら、のちに編集長に就くDAYS JAPANに寄稿しはじめる。この頃からチェルノブイリに関する取材を行うようになり、NHKや日本テレビなどで報道番組の製作に携わる。
- 2002年、日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)を設立し、代表に就任。
- 2003年、廃刊していたDAYS JAPANを再創刊するために会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任。
- 2004年、同紙を再創刊し編集長に就任。
- その後も一貫して反シオニスト、反原発のスタンスで世界中で取材を行い、たびたび講演会を開いている。東日本大震災のあとはNPO法人沖縄・球美の里を立ち上げ、福島の子供たちを沖縄の久米島で保養させるプロジェクトを始める。
- 2015年、自身のジャーナリスト、政治活動家としての半生を描いたドキュメンタリー映画をリリース。
- 2018年12月、文春砲を打たれる。複数の女性をレイプしていたことを告発され、本人も大筋でそれを認める。同月中に自身が代表や理事長(名誉理事長などを含む)を務めていた複数の団体を解任される。
- 週刊文春が性暴力・セクハラを報じる前月の2018年11月、一般財団法人「日本フォトジャーナリズム協会」を設立。設立当初は代表理事に広河隆一、理事や評議員は広河隆一の妻やデイズジャパン役員らが務め、広河隆一の個人組織の性格が強かった。文春報道後は役員の総入れ替えを実施したが、”広河色”なのは変わっていない。[1]
評価
世界的人権派ジャーナリストとしての氏の評価は国内外を問わず広く認められていて、またチェルノブイリ子ども基金に代表される原発被害者への直接的な救済活動でも評価が高い。
だからこそ2018年に発覚したスキャンダルは衝撃を持って伝えられ、氏の手によって性被害を受けた女性らの記事は瞬く間に拡散、氏のクビ以外にも写真展中止などの影響が出た。氏は#MeToo運動を支援していたのだが、女性の権利を訴える一方で立場の弱い女性の人権を蹂躙していたことが明るみになったのだ。
- 1982年 - よみうり写真大賞(第一次レバノン戦争)
- 1983年 - IOJ国際報道写真大賞 金賞(同上)
- 1989年 - 講談社出版文化賞 写真賞(チェルノブイリ原発事故、およびスリーマイル島原発事故)
- 1990年 - 日本ジャーナリストクラブ賞
- 1993年 - 産経児童出版文化賞(チェルノブイリ原発事故)
- 1998年 - 日本ジャーナリスト会議特別賞
- 1999年 - 平和協同ジャーナリスト基金賞(チェルノブイリ原発事故)
- 2001年 - ベラルーシ国家栄誉勲章(チェルノブイリ子ども基金の功績)
- 2002年 - 石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞 公共奉仕部門(パレスチナ問題)
- 2003年 - 土門拳賞(パレスチナ問題、チェルノブイリ原発事故)
- 2010年 - 日本写真家協会賞(DAYS JAPAN再創刊)
- 2010年 - 自由報道協会賞
- 2010年 - 日本ジャーナリスト会議賞
- 2011年 - ウクライナ有功勲章
セクハラ
週刊文春は2007年から2017年頃にかけて、デイズジャパン(DAYS JAPAN)編集部に出入りしていた女性7人が性行為やヌード写真の撮影などを要求されたという証言を掲載していた。[2]
週刊文春2019年1月3・10日号の記事を受けて広河隆一はデイズジャパンの代表取締役を解任、NPO法人沖縄・球美の里についても名誉理事長を解任された。[3]
なお、広河隆一と関係のあったNGO「ヒューマンライツ・ナウ」は声明を出したが、広河隆一の行為については「知らなかった」のに「被害者の一部から事前に相談を受けていた」というよくわからない内容になっている。[4] ※その後「記事が掲載される直前に相談を受けた」に変更された。
デイズジャパンの検証委員会の報告書によると、広河隆一がデイズジャパンを経営していたほぼ全期間にかけてセクハラやパワハラを行なっていたと指摘。パワハラについては相当数の関係者が「ほぼ全員が日常的に被害者だった」と証言している。[5]
デイズジャパンは2020年3月に破産申請を行なっている。[6]
関連動画
関連コミュニティ
関連リンク
- 『伊藤和子氏のヒューマンライツ・ナウ。ホームページの活動記録から広河隆一がらみの活動記録を削除』とネットユーザの指摘→翌日『【お知らせ】広河隆一氏に関する報道について | ヒューマンライツ・ナウ』を掲載
2018.12.28
- 広河氏の「性暴力」が10年も放置された理由——セクハラを見えなくする力
2019.1.9
- 広河隆一氏に「2週間毎晩襲われた」新たな女性が性被害を告発
2019.1.30
関連項目
脚注
- *“性暴力”広河隆一氏が設立した“人権団体” 大物写真家たちはなぜ守ろうとするのか
2020.4.28
- *広河隆一氏、『DAYS JAPAN』の社長解任。性暴力疑惑の報道を受けて謝罪「傷つけた認識に欠けていた」
2018.12.26
- *広河隆一氏からのコメント 世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌DAYS JAPAN
2018.12.26
- *【お知らせ】広河隆一氏に関する報道について | ヒューマンライツ・ナウ
2018.12.27
- *広河隆一氏によるセクハラ被害“卑劣な実像”をデイズジャパンが公表 20代女性が圧倒的多数、拒否想定しない強引さ
2019.12.28
- *広河隆一氏が元発行人「デイズジャパン」破産申請 性暴力などの損害賠償で
2020.3.23
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