座間9遺体事件(ざま9いたいじけん)とは、2017年8月~10月にかけて発生した連続殺人事件である。「座間9人殺害事件」等とも呼ばれる。
※この項目は残酷な場面を含みますので閲覧の際はご注意ください。
概要
自殺願望のある女性とtwitterで知り合い、心中するという名目で誘い出すと強姦殺人を犯し、遺体をバラバラにして捨てた猟奇連続殺人事件。SNSを悪用するという新時代の犯罪事件で、twitter等各社は対応に動くことになる。
犯人
この事件の犯人・白石隆浩は1990年10月9日生まれ。神奈川県座間市で育ち、離婚で母と妹が家を出た以外は特に事件やトラブルもなく成長して就職したが、2011年に勤めていたスーパーを退職すると職を転々とするようになり、2017年に女性を売春に斡旋する仕事をしていたところを職業安定法違反で逮捕され、懲役1年2か月執行、猶予3年の判決が下った。以降は職に就かず、同じ年の3月頃からtwitterで「首吊り士」など複数のアカウントを名乗って、自殺願望のある女性を探すと念入りに交流を深め、「一緒に死のう」等と心中に誘うような言葉を投稿していた。
その一方、遺体解体に使うノコギリを購入したり、遺体の遺棄方法を考えたりと殺人計画を練っていった。
連続殺人
8月22日、白石は座間市の緑ヶ丘という地域にあるアパートに入居したが、物件の下見や契約の時点で既に1人目の犠牲者と行動を共にしていた。そして入居翌日から早くもアパートで殺人事件が開始される。殺害方法は酒に酔わせるなどして意識をなくしたところで、手足を結束バンドで縛り、ロフトから結んだロープを垂らして首吊り殺人を行うというものであった。
- 第1の殺人:2017年8月23日ごろ、犠牲者は21歳女性。アパート入居の際に一定額の貯蓄が必要とされたので彼女が約50万円を払っていたが、それを踏み倒す目的も兼ねて強姦の上に殺害し現金を強奪。
- 第2の殺人:2017年8月28日ごろ、犠牲者は15歳女子高生。強姦、殺害、現金強奪。
- 第3の殺人:2017年8月30日ごろ、犠牲者は20歳男性。第1の事件の被害者の恋人で、事件発覚を防ぐため殺害。
- 第4の殺人:2017年9月16日ごろ、犠牲者は19歳女子大生。強姦、殺害、現金強奪。
- 第5の殺人:2017年9月24日ごろ、犠牲者は26歳女性。上に同じ。
- 第6の殺人:2017年9月28日ごろ、犠牲者は17歳の女子高生。上に同じ。
- 第7の殺人:2017年9月30日ごろ、犠牲者は17歳の女子高生。上に同じ。
- 第8の殺人:2017年10月18日ごろ、犠牲者は25歳の女性。上に同じ。
- 第9の殺人:2017年10月23日ごろ、犠牲者は23歳の女性。上に同じ。
殺害した後は浴室で遺体をバラバラに解体し、密封容器に入れて、離れたゴミ捨て場に捨てた。だが頭部など処分できない遺体もあり、事件発覚時点で9人の頭部と遺体の一部が見つかることになる。また、このような連続殺人事件を起こしている最中に、別の女性と交際している。
警察は第6の事件で家族が捜索願を出したことで動き始め、彼女の携帯電話の電波を最後にキャッチしたのが緑ヶ丘である事が判明した。埼玉県警でも同様の経緯で動いて緑ヶ丘にいた事が分かり、神奈川県警・福島県警・埼玉県警が事件調査の為に動き出した。自殺を実行しそうな山奥などを探したが、的外れに終わった。
9番目の犠牲者の兄は10月24日、警視庁高尾署に捜索届を出しながら、妹の特徴などをtwitterに投稿していた。白石とtwitterで交流していた女性がこれを偶然発見すると、兄に白石の情報を提供し、警察とも相談した上でおとり捜査が行われることになった。
10月30日、女性が白石をJR町田駅に誘った上で「行けなくなった」と連絡。そこを見張っていた警察官が白石を尾行してアパートの場所を突き止めた。既に異臭が漏れ出ている部屋に突入すると、遺体の一部が入ったクーラーボックスなどの箱8つが見つかり、翌10月31日、白石は死体遺棄の容疑で逮捕された。室内からは遺留品が多数発見された。なお箱の1つは空っぽで、おとりを担った女性の遺体を入れるつもりだった事がのちに判明する。
逮捕後
2017年11月から2018年3月にかけて、主に殺人、死体損壊、死体遺棄の容疑で白石は再逮捕された。
目を覆いたくなる狂気的な殺人事件であったが、精神鑑定の結果は正常とされ刑事責任能力が認定されたため、強盗・強制性交等殺人、死体損壊、死体遺棄の罪状で白石は起訴された。
(※強制性交等罪という言葉は聞き慣れない方もいるかと思われるが、かつての強姦罪である。強姦罪が男性のみを罪の対象としていたのに対し、女性が相手の動きを封じるなどして共犯に及んだり、女性が男性を襲う可能性もあるとして2017年に改められた)
起訴されると白石はマスコミとの接見が可能になり、事件について語る代わりに金銭を要求するようになる。金銭を渡した者もいれば断った者もいた。白石曰く「しばらく生活に困らないくらい」の金を得たという。週刊誌記者に対しては「殺人の理由はお金と性欲」などと発言しており、とにかくお金と性行為に対する執着心は非常に強かった。
裁判が始まるが、犠牲者が多く、証拠も多かったため、それらの整理・準備に時間がかかり、起訴から約1年経った2020年9月30日にようやく初公判が開かれた。白石は起訴の内容を認めた。だが弁護人は「犠牲者が死を望んでおり、白石と相手が了承した承諾殺人罪である」「心神喪失・心身衰弱の可能性がある」と反論した。しかし白石は裁判で争うつもりは全くなく(弁護人が一方的に争う方向にしたとのこと)第4回公判で被告人質問が行われると、白石は「殺害の承諾は無かった」「継続的に強姦し金を奪おうと考えていた」と弁護人の主張を否定する発言をした。第21回公判では精神鑑定の結果責任能力が認められた他、白石は「2人目までは罪悪感があったが、それ以降は罪の意識が軽くなった」と発言している。遺族に対する謝罪などは最後まで一切なかった。
2020年12月15日、検察の求刑通り白石隆浩に死刑を言い渡した。弁護人が控訴するが白石が取り下げたため、死刑が確定した。
2022年9月現在、白石は死刑囚として刑務所に収監されている。
SNSへの影響
twitterを駆使することで、見ず知らずの相手とコンタクトを取り自殺を促すというのはそれまで一般的に考えられていない事態だった。同じく、twitter上で自殺の意志を仄めかす人物がいることも表沙汰となった。このため2017年以降、twitterはそうした自殺に関する発言を禁ずる方針をとるようになった。
関連項目
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