曖昧さ回避
弟切草(おとぎりそう)とは
この記事では2.について解説する。
概要
「弟切草」とは、チュンソフトが1992年3月7日にスーパーファミコンで発売したサウンドノベルゲームである。
なお「サウンドノベル」はチュンソフトの登録商標となっており、同様の他社作品においては「ビジュアルノベル」「ノベルゲーム」と呼ばれる事が多い。
1999年3月25日、映像・新シナリオ・新システムを追加してリメイクした「弟切草 蘇生篇」がプレイステーションでリリースされた。またゲームアーカイブスにおいても配信されている。
脚本と監修に、脚本家・長坂秀佳を起用。
数々のショッキングな演出で、みんなのトラウマと化したゲームでもある。
システム
アドベンチャーゲームのシステムは、大きく分けて二つの方式が存在する。
- コマンド選択方式
あらかじめ決まったコマンドが用意されており、場面場面でそのコマンドから選択する。
例:「ポートピア連続殺人事件(※ファミコン版)」、「オホーツクに消ゆ」など - 選択肢分岐展開方式
ストーリーを読み進め、特定の場面になると選択肢が現れ、その選択によってストーリーが分岐する。
かつては「コマンド選択方式」がほとんどだったが、本作以降はその演出度の高さから「選択肢分岐展開方式」が一ジャンルを築き上げるに至った。
本作においては、最初はせいぜい二択程度で特定のルートしか選べない。クリア後周回する事で選択肢が増えてストーリーが分岐する為、やり込み要素は大きい。
但し、選んだ選択肢によってはそれまでの展開とつじつまが合わなくなる場合がある。これは純粋にその時選んだ選択肢によって分岐するため。さっきまで怪物に追いかけられていたのに唐突に家族の歓迎会を受けるなどは日常茶飯事である。
今では常識となったテキストのスキップ&巻き戻し機能やフローチャート確認も存在しない。グラフィック回収?そんなの最初からないよ。
このように、サウンドノベル黎明期ならではの粗削りな作りを実感できる。
一定のストーリーをクリアすると、セーブデータのしおりがピンク色に変わり、やたらエッチなストーリーが読める。これは「ピンクのしおり」と呼ばれ、後のサウンドノベルシリーズにおいてもほぼお約束となった。
発売当時はこのピンクのしおりの画面を撮影してチュンソフトに送ると、開発陣による同人誌が送られてきたそうな。
ストーリー
主人公と奈美はデートを楽しんだ帰り道、山道を公平の運転する車で移動していた。
助手席でうたた寝していた奈美がふと目覚めると、道の脇には黄色い小さな花が幾つも咲いている。あれは弟切草だと公平は告げ、その花にまつわる恐ろしくも悲しい由来を聞かせるのだった。
そうこうしている間に下り坂に入り、車はスピードが出始める。ブレーキを踏み込んだ主人公だったが、何故かブレーキがきかず、車は狂ったように速度を上げていく。道端の木に突っ込んでどうにか停止するが、直後に落雷が木を直撃。二人の目の前で、車は真っ二つになった木の下敷きになってしまった。
立ち往生してしまった二人は仕方なく荷物を持ち出し、そぼ降る雨の中、懐中電灯を頼りに山道を歩き出す。そんな二人の目の前に、庭一面に弟切草が咲いている、古びた大きな洋館が現れたのだった。
のっぴきならない事情もあり、二人は館へと足を踏み入れる。
登場人物
- 主人公
- SFC版ではデフォルトネームなし。PS版では「公平(こうへい)」という名前で、変更可能。
恋人の奈美とデートに出かけた帰り、車の不調から事故を起こしてしまう。
弟切草の謂れの他にも、精神医学や猟奇殺人に関する知識があるなど、意外と博識。
小説・映画では「松平公平」となっている。 - 奈美(なみ)
- 主人公の恋人。主人公に対する呼び方はランダムで変わる。
呼び捨てや「〇〇くん」「〇〇さん」は普通だが、「〇〇殿」というシリアスブレイカーなものも。
わがままな所もあるが、天真爛漫な一面もある憎めない性格。主人公曰く、笑顔が特徴的。迷い込んだ洋館で、自らに関わるある重大な秘密を知る事になる。
小説・映画では「菊島奈美」となっている。 - ナオミ
- 洋館の住人。ストーリーによっては孤独から心を病んだ狂女だったり、心優しいお姉さんだったり、恋に恋する乙女だったりと様々。
小説では「有栖川直美」、映画では「階沢直美」となっている。 - 直樹(なおき)
- ナオミの弟。ストーリーによっては病弱な少年だったり、食欲の権化だったりと様々。
小説では公平の弟になっている。
弟切草について
「弟を切る草」という不吉な名前には、ある一つの伝説に由来する。
江戸時代の本草書『和漢三才図会』に記された伝説は以下の通り。
平安時代、花山院の御代のこと。
京で鷹匠を生業としていた晴頼(はるより)という男は、鷹の世話に関しては誰にも負けないほどの知識を持っていた。
鷹が怪我をしても、彼は何処からか薬草を持ってきては怪我をすぐに治してしまう。人々は薬草について教えを乞うたが、晴頼は決して教えなかった。
この晴頼には弟がおり、とても仲の良い兄弟だったが、ある時弟はうっかりと口を滑らせ、薬草の秘密を他人に漏らしてしまう。
これを知った兄は激怒して刀を抜き、弟を斬り殺してしまった。その時に飛び散った血しぶきが薬草の葉につき、黒い点として残ったという。
しかしこの弟のお陰で傷の妙薬である薬草が人々に知られる事となり、「弟切草」と呼ばれるようになった。
ゲーム中で、弟切草の花言葉は「復讐」とされており、物語に大きく関わっている。
……が、実際の花言葉は「秘密」「恨み」となっているので、ドヤ顔で説明すると恥ずかしい事になる。いずれにしても良い意味ではないが。
一方、その薬効はかなり高いとされている。
異名に「チドメグサ」とあるように、民間療法では切り傷や打ち身には葉の絞り汁を塗る。また煎じた汁で湿布をするのも効果があるという。
その他にも、煮詰めてお茶にすると月経不順や鎮痛への効果が見込めるという。またゲーム中でも主人公が言及しているように、弟切草を漬けこんだ酒は、外用にも健康酒にもなる。
セイヨウオトギリソウの名で知られるハーブ、セントジョーンズワートにも薬効があるとされ、西洋では鎮痛や抗炎症、抗うつに用いられている。
ただし多くの薬物と相互作用があり、飲み合わせによっては薬物の効果を減衰させてしまう事が確認されているので注意が必要である。またハーブ全般に言える事だが、妊婦が摂取するのはダメ、絶対。
※効果には個人差があります。使用に際してはよく調べましょう※
メディアミックス
小説版
1999年4月10日に発売。ストーリーはゲームとは似て非なるオリジナル。
主人公は大ヒットゲーム「弟切草」の脚本家となっており、主人公や奈美の元恋人も登場。
作者・長坂秀佳の「彼岸花」「寄生木」と三部作になっており、更に「彼岸花」から始まる「死人花」「幽霊花」とも関連がある。
映画版
2001年1月27日に公開。原作は小説版だが、展開は異なる。奈美を奥菜恵が演じている。
映像はデジタル処理されており、ゲーム画面を意識した演出がされているが、若干チープさが否めないのが難点。ただし雰囲気があるシーンも多い。
監督によると、当初はマルチエンディングになることを想定していたらしい。評価はお察しください。でも嫌いじゃないよ。
関連動画
SFC版
PS版
関連商品
関連項目
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