弧度法(circular measure)とは、角度を表す方法のひとつである。
概要
角度を表すのに、よく使われているのが度数法(degree measure)である。
直角を90°と表すのは、度数法による表記である。しかし、この90°という表記に疑問を抱いたことはないだろうか。なぜ直角に90という数があてられているのか、という疑問である。度数法の起源は諸説あるが、人間本位とも言える度数法は不自然であると考える人もいることだろう。
そこで考え出されたのが弧度法である。弧度法は、その角度を中心角とする扇形の弧の長さと半径の長さの比で表されるものである。わかりやすく言うと、度数法の数字を180で割ってπを掛けたものである。これによって直角はπ/2と表される。単位はラジアン(radian)だが、数学では通常書かない。物理学では[rad]と書くこともある。
「1周」が2π=6.28…、つまり無理数という究極に中途半端な数で表されるイメージがあるため、初学者にはとっつきづらいと思うかもしれない。しかし、角度とは「1周に対する割合」が本質なので、πを掛けるといくつになるかは考えなくてよいケースが多い。
つまり、「半周=1π」であると覚えれば、それを3等分したπ/3は1/6周である。「半分に切ったパイ(食べ物)」を連想するとわかりやすいか。
そもそも「半円」が1単位なのが直感的でない、という場合、2π=τと置くことにより、ラジアンを使った計算がより直感的になる。例えば、1周を4等分した角度である1直角はτ/4ラジアンである。→τ(数学定数)
弧度法のメリット
角度を「比率」という視点で扱うことで「半径何個分だけ円周上を進んだか」で表すことができるようになるので、数式で表したときに余分な定数を掛けなくて済むのが最大のメリットといえる。
円周の長さは半径をrとすると「2πr」で表されるが、これは1周が2πラジアンだからであり、弧の長さは角度(ラジアン)をθとすると「θr」という極めてシンプルな式で表すことができる。
円の面積は「πr²」で表されるが、これも扇形を1周、つまり2πラジアン回ったときの値なので、面積は「θr²/2」で表される。例えば、半径1、中心角1ラジアンの扇形の面積は1/2ということになる。
角度を扱う代表的な関数である三角関数を、級数などの数値計算で求めるときにも同じようなことがいえる。例えば、xを弧度法で表し、sin(x)をマクローリン展開すれば
sin(x)=x-x³/3!+x⁵/5!-x⁷/7!+ …
となり、xの値がそのまま使える。さらに、上式でx≪1のとき、
sin(x)≒x
という近似式も使える。
多くのプログラミング言語で三角関数に与える引数の角度がラジアンになっているのもこのためである。
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ラジアン分度器というものがいちおうあるが、上述のようにπをかけた値がいくつであるかは角度の本質ではないので、測った値をExcelに入力するのでもなければ実用的とは言いがたい。
関連項目
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