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概要
江戸っ子の「我慢」を扱った落語。文字で見るより実際に聞いた方が面白い。短いので聞いてみては？
話の流れ
通りかかった友人が唸ってたので訳を聞いたところ灸を据えに行っていたらしい。
「この灸はな、凄まじく熱いんで評判なんだよ。気の弱い奴は一つ据えただけで『ギャー』なんて天井を突き破るほどなんだと。」
余りにも熱いので怖気ずく人もいるがそれでも効くと評判で店の前には長蛇の列。番号札制になっていた。
「俺が貰った番号が『への36番』、行列のドンケツだ。余りにも時間がかかるんで帰ろうと思ったら綺麗なお嬢さんが来て『ねぇ、私と代わって下さいませんか』なんて言うんだ、大方先客が熱がってるんで心配になったんだろうな。『ようござんす』と喜んで代わりましたとも。早速店に入ると店員に『熱いが大丈夫か？』と聞かれたがこちとら江戸っ子だい、そんな挑発買わねぇ訳ねぇだろう。さぁ据えてくれと怒鳴ったんだ。そしたら今度は『灸を36箇所に据えますから時間がかかります』なんてぬかしおるんだい。こちとら江戸っ子だ、時間がかかるのは大嫌いだから『全部いっぺんに据えろ』ったんだよ。そしたら店員が真に受けてホントにやりやがったんだよ。一つで飛び上がるような熱さの灸だろ？身体中から煙が上がってきて不動明王みたいになっちまった。が、ここで逃げたらカチカチ山の狸だ。我慢して唸ってたら店に居た奴らがみんな寄ってきてな、感心しやがるんだよ。その中にさっき俺と順番を取り替えたお嬢さんがいてさ、俺の顔見てポーッとなってるんだ。『マァ、逞しいお人ね、お嫁になるならこんな人と…』なんて思ってたりしないかと…」
なんて言う体のない惚気（ノロケ）話を聞かされて呼び込んだ男は面白くない。
「たかだか灸ぐらいで威張るな！」
と言い奥から艾（もぐさ）を持って来て腕に山盛りに積み上げ点火した…
オチ（ネタバレ注意）
上項の続き。
点火して最初の方は
「活火山だよこりゃ。見てろ、今に火が回って来っから」
と余裕だったが、段々と火勢が強まり煙が上がると、男は脂汗を流しつつ歯を食いしばるようになってきた。
「灸ぐらいで威張るな、石川五右衛門なんざ油で茹でられたのに平気で辞世の句を詠んでいたぞ。『石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ』ってな…八百屋のお七なんて十五歳で火炙り（ひあぶり）だぞ…それに比べりゃこんな…お七…五右衛門…ギャァ！」
とうとう我慢が出来なくなった男は艾を払落し、「五右衛門…」と唸っている。
友人が意地悪く
「五右衛門がどーしたって？」
と聞くと男は
「…さぞ熱かったろう」
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関連項目
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