弾薬(Ammunition / Ammo)とは、銃器に用いる弾丸(bullet)装薬(powder)を合わせた呼び方。比喩的に消耗品全般、または現金を指すスラングとしても用いられる。発射装置は含めない。
※広義の弾薬は銃火器に限らずミサイルやロケット弾、爆弾、砲弾、手榴弾等も含まれる。
現代の小火器では一体化されて実包(カートリッジ)となっていることが通常である。本稿で主に小火器用の物について記述する。
概要
冒頭の通り、弾丸、装薬を薬莢に収め、撃発用の雷管を取り付けたものである。
弾丸(弾頭)
装薬の燃焼ガスの圧力により発射される物体、主に金属製である。訓練用などで木製やプラスチックのものが用いられることもある。材質としては比重の大きい鉛がよく用いられるが、鉛の表面に銅合金(ギルディング・メタル)で被覆することが多い。特に軍用には完全に被覆した(フル・メタル・ジャケット)の弾丸のみが用いられる。その他の金属としては鉄、アルミ、タングステンなどが用いられる。
鉛は重金属としての毒性が高いため、野生動物の鉛汚染を防ぐ観点から、近年では狩猟用に鉛の弾丸を使うことを規制する動きもある。
銃器の威力とはすなわち弾丸が命中したときの破壊力であるため、弾丸には命中したときの変形や破砕、横転運動などによって生物組織を破壊する能力を高める各種の工夫が施されていることが多い。
薬莢
弾丸、装薬(火薬)、雷管を収めるための筒。初期には紙でできていたが、耐久性があり、機械的な装填にも耐える金属製が登場してからは、ショットシェル以外は金属製が使われるようになった。
展延性に優れ適度な強度を持つ真鍮が最適の素材とされるが、重量軽減の目的ではアルミ、強度確保の目的ではステンレス、低コスト・省資源化の為には軟鉄も用いられる。最近ではプラスチックを用いる研究も行われている。
一時期アサルトライフル用にケースレス(薬莢を持たない)弾薬も開発されていたが、技術的課題とコスト面の問題から断念された。また、一部の戦車砲などには薬莢が装薬とともに燃焼する焼尽薬莢が用いられている。
一部の漫画・アニメ・ゲームといったフィクションで誤解されているが
弾丸に薬莢がついたまま飛んでいくことは無い(薬莢は別に排出される)ため要注意。
※仮にそれを発射する場合、弾薬自体が実用性を無視したサイズや反動になってしまう
装薬
弾丸を発射する為の火薬。長い銃身で比較的ゆっくり弾丸を加速させる小銃弾では、粒子が大きく燃焼速度の遅い火薬を、短い銃身で短時間で弾丸を加速させる拳銃弾では、粒子が細かく燃焼速度の速い火薬を用いる。短銃身の銃からライフル弾を撃つなど、銃と弾薬の組み合わせが最適でない場合、エネルギーのロスが大きく威力を十分発揮できないことが多い。
基本的に量が多いほど威力(初速)は上昇すると言えるが、同じ銃(銃身)から同じ弾丸を発射する場合、一定以上は弾丸が銃口にたどり着くまでに燃焼しきる事が出来ないため、いかに強装の弾薬でも装填量は限られる場合が多い。
雷管
衝撃により点火が可能な火薬が詰められており、撃針(ファイアリング・ピン)で叩く事で撃発し、装薬に点火する。現代では薬莢底部の中央に雷管が装着されているセンターファイア・カートリッジが一般的だが、.22LR弾など薬莢の底にリムが付いている弾薬では、リムに点火用火薬を詰め、リムを叩くことで激発する構造(リムファイア)になっている場合もある。リムファイアカートリッジは一般的に安価だが、不発率がセンターファイアより高めである。
弾薬の寸法、規格
弾薬はそれぞれ一定の寸法で生産されているが、それらは主に
の二つの方法で表記される。
例えば、
といった形である。
ちなみに7.62mm×51弾のように書いても、7.62×51弾というように書いても特に問題は無いとされる。口径表記では1口径=0.01インチ=約0.254mm換算が基本であるが、大概の銃にはライフリングが刻まれており、その山谷のどこをして弾丸の直径とするかで表記に多少のブレがある。
なお、寸法は寸法であって規格ではない。例えば、5.56mmNATO普通弾「SS109」は、寸法上では他の5.56×45mm弾薬と変わらないのだが、SS109に対応していない銃器では弾丸の仕様や装薬の質の問題で、最悪銃器の破損の恐れがあるほど仕様に差がある。 同じ寸法であるから同じ弾と考えるのは間違いなのである。
弾薬の種類
タイプ | サイズ | 説明 |
---|---|---|
小銃弾 ライフル弾 |
5.45x39mm 5.56x45mm 7.62x39mm 7.62x51mm 12.7x99mm |
その名の通り小銃に使用する弾薬。口径の3~4倍の長さの全長を持つ細長い弾丸に、それを低速の物でも700m/sを超える速度まで加速させられる装薬を組み合わせた物。初速が早いため、威力と射程に優れる。 現代では連射を前提としたアサルトライフルに使用するため、小口径高速弾が先進国では多く用いられている。 |
拳銃弾 | .22口径 .38口径 .44口径 .45口径 .50口径 |
その名の通り拳銃や短機関銃に使用する弾薬である。.22口径(約5.6mm)から.50口径(約12.7mm)を超えるようなものまで様々なものが存在するが、軍用として用いられるのは38口径(約9mm)ないし.45口径(約11.4mm)のクラスがほとんどである。これらの軍用拳銃弾薬はは小銃弾と比べると大きく弾丸は重いが、弾速は高速の物でも400m/s程度である。 拳銃という小型の制御し辛い銃器で、短く弾丸の加速量が限られる銃身から発射しなければならない為、このようなバランスになっている。 |
ショットシェル | 12番 | 散弾銃用の弾薬。金属性の薬莢底部に装薬とワッズ(気密性を高め弾丸を押し出す台)、弾丸を収め、プラスティック製の筒で覆った構造をしている。かつてはプラスチックの代わりに防水紙が用いられた。 主に狩猟用として広く用いられてきたが、軍事用・治安維持任務用として対人用にも用いられる。主に多数の弾丸が詰まった散弾が使われるが、単体の弾丸が装填されたスラッグ弾、近年では小型の榴弾・催涙ガス弾・各種の非致死性弾等も開発されている。 ショットシェルには番(ゲージ)という独特の口径表記が用いられる。12番のものが世界的に最も広く普及している。 |
ハンドロード弾 | 弾薬は主にメーカーの工場で生産されるが、特殊用途やユーザーの求める性能を実現する為に手作業で生産された物はこう呼ばれる。 | |
リロード弾 | 一旦使用した薬莢のプライマーを交換し、装薬と弾丸を装着し再生した物。手作業で作られるのでハンドロード弾の一種とも呼べるが、区別されて呼ばれる場合が多い。当然薬莢代がかからない為、新しく弾を購入するより割安に製作する事が出来るが、機材への初期投資やノウハウを必要とする為、自分で作る場合必ずしもお得と言うわけではない。 また、もうひとつの意味として「リゾート地の(特に日本人向け)射撃体験場で使用している粗悪な弾」という使い方をされる場合も。薬莢の材質によっては再利用できないこともある。 |
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空砲 | 弾丸が装着されておらず、ライフルグレネードの発射や訓練で使用される弾薬。自動式の銃器の場合、銃身の蓋となる弾丸が無く十分な反動やガス圧が得られず、正常に動作しない場合がある為、使用の際は専用アタッチメントを装着する。銃器の動作形式によってはアタッチメントありでも動作しない物もある。 また、創作作品ではこれで人を殺したように見せかけるトリックや、空砲だから助かったというような場面が登場する場合もあるが、実際は(装薬量にも因るが)アタッチメント無しでは遠距離から人に危害を加える事が可能なレベルの強力な衝撃波が生じる。 |
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亜音速弾 | 発射された弾丸の速度が音速(約340m/秒)を超えない弾薬。「サブソニック弾」とも。超音速で物体が移動する際に発生するソニックブームによる騒音が無い為、サプレッサー/サイレンサー(減音器/消音機)の効果を発揮するにはこのような弾薬を使用する必要がある。 音速を超える小銃弾や9mmパラベラム弾等の場合特に音速を超えないように調整した物を指すが、.45ACP弾や9mmマカロフ弾等は通常の弾薬でも音速を超える事はない亜音速弾である。 同種の通常弾と比較し初速が劣るため、弾道特性の変化、有効射程が短くなるといったデメリットがあり、長距離の射撃では特に不利となる。 |
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非致死性弾 | 暴徒を鎮圧する際や、重要な情報を持った目標を生け捕りにする為に使用される弾薬。 非致死性という書き方には後述の通り語弊はあるが、ここでは便宜のためこの書き方にする。 ゴムやプラスティックでできた、射程が短く人体に侵入する事は出来ない弾丸を発射したり、散弾銃やグレネードランチャーから大型の鉄球入りの袋やスポンジを発射する事で、痛みや負傷で目標の行動を阻害し、撃退する。 しかしいかに調整しているとはいえ、発射される弾丸には人に怪我をさせる程度のエネルギーがあり、当たり方、距離によっては十分人を殺害できるだけの威力がある。 その為に代替装置、テイザーガンや音響兵器などへの置き換えも進んでいる。 |
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