弾道ミサイル(Ballistic Missile)とは地上/海上から発射され文字通り弾道を描いて飛翔し、地上を攻撃するミサイルである。
概要
厳密には「ロケット式推進システムで打ち上げられ、その慣性の力によって弾道飛翔することで、最小のエネルギーで最大の飛翔距離を得ることができるミサイル」を弾道ミサイルと称している。
弾道ミサイルはその射程距離によって以下のように分けることが出来る。
種類 | 英語名称 | 射程距離 |
---|---|---|
短距離弾道ミサイル | SRBM | 1,000km 以下 |
準中距離弾道ミサイル | MRBM | 1,000 ~ 3,000km |
中距離弾道ミサイル | IRBM | 3,000 ~ 5,500km |
大陸間弾道ミサイル | ICBM | 5,500km 以上 |
弾道ミサイルの飛翔過程は以下の3段階に区分出来る。
段階 | 説明 |
---|---|
ブースト段階 | ミサイルが発射されてからブースター(加速ロケット)が 燃焼し終えるまで |
ミッドコース段階 | ブースター燃焼終了後に宇宙空間を慣性飛行しながら大気圏に再突入するまで |
ターミナル段階 | 大気圏に再突入してから目標に着弾するまで |
弾道ミサイルは一旦発射されると短時間で目標に到達する。弾頭自体も爆撃機に比べるとかなり小さいためレーダ等での追尾は難しくなる。
射程距離が短ければ短いほど着弾までの時間が短いため、迎撃に使える時間が制限される。しかし逆に、射程距離が長ければ長いほど、着弾までの時間は伸びるが降下時の落下速度が増すので、これも迎撃を難しくする。
潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM)
近年の国々で開発が進んでいるものがSLBM(Submarine Launched Ballistic Missile:潜水艦発射弾道ミサイル)と呼ばれるものである。水中を潜航している潜水艦からそのまま弾道ミサイルを発射するもので、通常の弾道ミサイルのように陸上から発射台を使うことなく、海中から発射できるというものである。
これの何が恐ろしいかというと、本拠地から飛ばすと落とされるかもしれないミサイルを、相手の国の鼻先までこっそり潜水艦で持ち運べることである。
通常、監視用の人工衛星はミサイルの動きをモニターしている。しかし、潜水艦で水の中を潜っていけばそれらの動きをモニターしにくくなるため、ギリギリまで相手に近づいてから発射することができるようになってしまう。ただでさえミサイルの速度は上がっていて迎撃が困難になっているというのに、防空圏をかいくぐってド近くでぶっ放されたら悪夢である。
核弾道ミサイルを搭載したSSBN(SLBMを搭載した原子力潜水艦)であれば、敵の先制核攻撃を生き延びて確実に報復核攻撃を実施することができるので、核抑止の手段として非常に有効な存在となっている(長射程の弾道ミサイルを搭載していれば別に敵地に近づく必要はない)。したがって、ほとんどの核武装国はSSBN(とSLBM)を整備しようとする。
弾道ミサイルの種類
- スカッド
- ナチスドイツのV2を元にしてソ連が開発した弾道ミサイルR-11のNATOのコードネーム。TEL(Transporter-Erector Launcher 輸送・起立・発射機) に搭載して使用される。スカッド及びその派生・改良型は多くの国に輸出されている。湾岸戦争でイラクが大規模に使用したことで有名。
- パーシングⅡ
- 誘導機能を持った弾道ミサイル。
搭載された弾頭が目標の上空5万フィート(約15000メートル)まで近づくと弾頭のカバーを外しレーダを作動させる。弾頭のコンピュータはレーダで得られた地上の画像を事前に入力された画像と照合し、弾頭の後部に付いた可動翼で軌道を制御する。CEPは25ヤードになる。[1] - ノドン
- 北朝鮮が開発したミサイル。輸入したスカッドを元に開発した。ノドンはアメリカがつけたコードネーム。
- テポドン(1号)
- 北朝鮮の弾道ミサイル。二段式で、一段目にノドン、二段目にスカッドを使用している。1998年8月31日に北朝鮮はこの弾道ミサイルを発射し、ミサイルは日本列島を越え太平洋に落下した。
- テポドン(2号)
- テポドン1号をさらに発展させたもの…らしい。2006年7月5日に発射実験が行われたがこの時は失敗し、改良されたものが2009年4月5日11時30分ごろに発射された。一段目は日本海に落下、二段目以降は弾頭(搭載した衛星?)ごと太平洋に落下したようだ。
- LGM-118A ピースキーパー
- アメリカが2005年まで運用していた大陸間弾道弾(ICBM)。地下サイロからロケットに点火するのではなく、圧搾空気でサイロから地上に飛び出したあとロケットに点火する「コールドローンチ」方法を初めて採用。これによりサイロの再利用が可能になった。MIRV(マーブ)、多弾頭独立目標再突入方式型で内部に300ktの核弾頭10発を搭載する。
- UGM-96 トライデントI / UGM-133 トライデントII
- アメリカ/イギリスが運用している潜水艦発射型大陸弾道弾(SLBM) 現在使用されているのはトライデントI(C4)の後継であるトライデントII(D5)。ただしC4とD5の基本設計は別物とのこと。LGM-118Aピースキーパー同様MIRV(多弾頭独立再突入ミサイル)ミサイルで、最大14個のW88核弾頭の搭載が可能だがアメリカ=ロシアによる核兵器削減条約の縛りで現状は5つ。性能も同程度とされている。運用しているのはアメリカ・オハイオ級14隻、イギリス・ヴァンガード級4隻。通常弾頭搭載型も計画されているが、ロシア側が反発している。
- SS-18 (R-36)
- ソ連の大陸間弾道弾。SS-18というコード番号は西側が付けたもので、ニックネームである「サタン」もNATO側からつけられたもの。正式コードはR-36。冷戦時代を象徴する大型大陸間弾道弾。0.55Mtの小型核弾頭10発、あるいは最大20Mtの核弾頭1発を搭載可能とした。ピースキーパー同様コールドローンチ方法で打ち上げられる。ソ連崩壊後は緩やかに縮小がつづけられているものの、現在なお100発あまりが残っているとされている。ちなみに民間転用もされており衛星打ち上げにも利用されている。
関連動画
関連静画
SLBM
関連項目
脚注
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