当て馬もしくは試情馬(Teaser Horse)とは、馬の用途のひとつである。
馬以外の動物もまとめて言う場合は当て雄(当て牡)または試情雄(試情牡)という。
概要
牝馬は概ね毎年春に発情し、交配が可能な状態になる。とはいえ、実際には発情期間であっても細かい周期が約3週間おきに巡り、その交配適期にしか牡馬を受け入れない。発情していない状態で牡馬が近づくと、嫌がって暴れることがあり、場合によっては種牡馬にケガをさせてしまう。実際、カネヒキリやネオユニヴァースは交配中に牝馬が暴れたことによる事故によって命を落としている。
人気種牡馬ともなれば種付け料は数千万円にも達し、馬自身の資産価値も計り知れないものとなるため、いきなり牝馬に近づけるのは危険である。
そのため、まずは当て馬を牝馬にあてがい、発情しているかどうかを確認してから本番の馬と交代するのが一般的である。当て馬は交配してはならないため、腹部に「エプロン」などと呼ばれる前張りをする、または壁越しに牝馬に近づけるなどする。もちろん、牝馬の発情が確認されたら直ちに引き離される。
当て馬に採用される馬
基本的には、種牡馬としての価値が低いか、全くない牡馬が採用される。
サラブレッドの繁殖牝馬相手であっても、役目を果たせれば当て馬はサラブレッドである必要もないので、中間種やどさんこ(北海道和種)の当て馬も存在する。たとえば社台スタリオンステーションにはかつて「当て馬のサンデーサイレンス」と呼ばれた中間種の当て馬・栄宝がいた。
サラブレッドの場合、競走馬を引退後にいきなり当て馬となる場合もあるが、種牡馬を引退した馬や、種牡馬としての結果が残せていない馬が当て馬となる場合もある。後者の場合、種牡馬としての登録は続けている場合もある。
例えば、シンコウウインディやヒシミラクルは、種牡馬としては成功できず、引退後に功労馬を兼ねて当て馬を行っていた。ブゼンダイオーは種牡馬としての登録はあるが当て馬としての業務が多かったという。種牡馬登録のない当て馬としては、函館記念勝ち馬マイネルミラノなどが知られている。
当て馬を公的に記録する機関は存在しない。種牡馬から用途変更された時点でジャパンスタッドブックの記録からは行方が追えなくなるため、引き続き当て馬として繋養されていたとしても、繋養先の牧場が公表しない限り行方不明扱いになる。そのため、例を挙げられるような馬以外にも当て馬を経験している元種牡馬はいるものと思われる。
牝馬を傷つけないよう、性格が温和な馬であることが求められる。牝馬が暴れてもなお冷静に任務を全うしなければならない。牝馬を発情させるため、馬の基準で「イケメン」である必要もある。
その性質上、騸馬は基本的に向いていないが、牝馬を発情させられるのであれば採用されることもあるという。
牝馬の当て馬
極めて珍しい例だが、牝馬が種牡馬の「当て馬」にされた例がある。
ウォーエンブレムは牝馬の好みが激しく、気に入った牝馬でないと全く発情しなかった。そのため、彼の好みに合う牝馬を囮として近づけ、発情したところに本命の牝馬とすり替える、という逆当て馬作戦が行われたことがある。
ただし、この作戦はすぐにバレてしまい、短期間しか成功していない。
ちなみにそのウォーエンブレム産駒のオールブラッシュもまた種付けに積極的でなく、特定の牝馬の尿を嗅がせないと発情しないそうである。
当て馬の種付け
当て馬は対象の牝馬と交配することができないが、毎回毎回本番前に引き離されては馬にとってもストレスになる。そのため、たまに牝馬と交配させてもらえる場合もある。
交配相手は繁殖を引退した高齢馬や、サラブレッド以外の馬など。子どもが生まれた場合乗馬になることがある。例えば、シンコウウインディは2006年に種牡馬から用途変更となっているが、2012年生まれの産駒が乗馬として登録されている
。この産駒は当て馬の合間に交配した結果生まれた仔と推測される。
気性が激しすぎて高額種牡馬がつけられない繁殖牝馬に、種牡馬登録のある当て馬が種付けをする場合もある。例えば、ブゼンダイオーは激しすぎる気性の繁殖牝馬スイートドリームに「練習用」として種付けを行った。生まれた産駒コスモドリームはオークスを制する快挙を果たしている。
当て馬を経験したことがある有名な馬
派生した用法
上記から派生して、以下の意味が生まれた。
- 相手の反応や様子を探るため、仮に出してみるもの。
- 採用して欲しい案を選ばせるため、選択肢として用意する採用の可能性が低い案。しかし「超時空要塞マクロス」のようにそっちが採用されてしまうことも稀にある。
- バトルもので、敵の強さを示すためのやられ役。噛ませ犬に同じ。
- 恋愛ものの作品で、本命のカップルを盛り上げるための振られ役。
当て馬を扱った作品
本来の意味
派生した意味
関連リンク
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 3
- 0pt

