微分とは、数学の分野のひとつであり、積分と合わせて非常に応用分野が広い。某予備校講師の名台詞、接点tも微分の問題の解説から生まれたものである。
微分とは?
概要
例えば、自動車で60kmの道のりを1時間で走ったとする。その時の速さは、ご存じ時速60kmである。しかし、走っている間にスピードメーターを見ると、針は絶えず動いており、常に時速60kmを指しているわけではない。道路の状況を見ながら60kmを走る間に加速、減速、停止を繰り返すためである。では先ほどの「時速60km」という値は何を意味するのだろうか?
我々が小学校で習ったであろう、道のりを時間で割った値は、速さの中でも「平均の速さ」と呼ばれるものである。平均の速さとは、スピードメーターの針が全く動かないように60kmの道のりを1時間で走った時の速さと言える。
では、スピードメーターの針は何を指しているのか。それは、その瞬間の速さである。瞬間の速さも、平均の速さと同様に道のりを時間で割った値として求める。
しかし、「瞬間の速さ」とはどうやって測定するのだろうか?速さを知るには道のりと時間の値が必要だが、「瞬間」だと道のりも時間も0になってしまう。速さを知るには、2つの点を取ってその間に進んだ距離とそれに要した時間を測定しなければならない。
そこでどうするかというと、第2の点を仮に作り、その仮の点を求めたい瞬間に近づけるのである。
ちょっとわかりにくい表現だが、要するに以下の様な操作を行うことである。
- 出発して20分後と21分後の場所の距離を測る。その値を使ってその1分間の平均の速さを算出する
- 出発して20分後と20分30秒後の場所の距離を測る。その値を使ってその30秒間の平均の速さを算出する
- 1と2の操作を繰り返し、2点間の時間をどんどん短くしていくと、その2点から得られる平均の速さも一定の値に近づいてゆく。この値が「瞬間の速さ」である。
グラフで表現するとこんな感じ。2点間の時間を小さくしていくほど、瞬間の速さに近づいているのがわかる。
2つの点をどんどん近づけていくと、その2点から得られる平均の速さもどんどんある一定の値に近づいていく。その値を瞬間の速さというのである。
ちなみにこの場合、2点を結ぶ直線のグラフの傾きがその2点間の平均の速さになる(傾きが大きいほど速度が大きい)。
このように、「瞬間的な変化の割合を求める操作」を微分というのである。先ほどの例で言うと、瞬間の速さは道のりを時間で微分したものといえる。
もっと詳しく!
ここまで、できるだけ数式を使わずに説明してみた。でも、微分というものは紛れも無く数学のモノなので、ちゃんと説明しようとするとどうしても数式が必要になる。
ここから先は高校数学の範疇になるので、高校数学を学んだ人か、中学生以下でも「高校数学?上等や!」というガッツのある人向けに説明していこうと思う。
微分の前提知識、「極限」
ここで「極限」というモノを押さえておいて欲しい。学校では、必ず微分の直前に学ぶものである。というか、ぶっちゃけ微分のためだけに教科書に載っていると言っても過言ではない。
(極限?んなもん知っとるわ!という人はこの項は飛ばしてもらっても構わない)
と言っても、表記が威圧的(使うだけですごくムツカシイ数式に見える)なだけで、考え方としては実はそんなに難しいものではない。さらっとだが解説してみよう。
ここに
f(x)=x+1
という関数があるとする。このxをどんどん大きく、大きく、大きな数字にするとf(x)はどうなるか?
当然f(x)もどんどこ増えていき、無限に大きくなる。
つまり、「xを無限大に近づけるとf(x)は無限大に発散する」ということになる。
これを、数学では
と表記する。つまり、この式の意味するところは「xを無限大に近づけるとf(x)は無限大に発散しますよ」ということ。
大事なことなので2回書きました。
「lim」は「limit(リミット)」、つまり「極限」の略字である。また、「∞」は無限大を表す。(「むげんだい」で文字変換できる)
もちろんf(x)にはどんな関数を入れてもいい。いくつか考えてみよう。
limx→∞x2は無限大に大きくなるxの2乗だから、x2は当然無限大に近づいていく。
よってlimx→∞x2=∞となる。
limx→∞(1/x)は分母のxが無限大に大きくなるのだから1/xは逆にどんどん小さくなっていき、0に近づいていく。
つまりlimx→∞(1/x)=0となる。
ちょっとひねった形のlimx→∞{(x+1)/x}ならどうなるだろう?分母も分子も無限大に大きくなっていくが、どちらも同じペースで増えていくわけだし、xが巨大な数になるのだから分子の「+1」は無視してよい。
たとえばxが10000なら(x+1)/xは10000+1/10000になるわけで、分子の+1はもはや誤差である。
そんなわけで、(x+1)/xは1に限りなく近づいていく。limx→∞{(x+1)/x}=1である。
xを0に近づけるのならlimx→0
xを1に近づけるのならlimx→1
を関数の頭に付ければいいだけだ。
ここでもう少しだけ正確にいうと、limx→af(x) = bというのは、「aとは異なる値を取りながらxをaに限りなく近づけたとき、その近づけ方がどのようなものであっても、f(x)の値がある一定の値bに近づく」ことを表している。
蛇足ながら、もっと正確に言うと「fがAで定義され、a∈(Aの補集合)とする。どんなε > 0に対しても、δ > 0が存在して、|x - a| < δとなる全てのx∈Aに対し、|f(x) - b| < εとなる」ことを表している。
たとえば、limx→0(1/x)を考えてみよう。
分母がどんどん小さくなって0に近づいていくのだから1/xは逆にどんどん大きく、無限大に近づく。
つまりlimx→0(1/x)=∞となる……わけではない。
xはプラス方向から近づける方法と、マイナス方向から近づける方法の2通りある。この場合、プラスから近づけるとプラス無限大に発散するが、マイナス方向から近づけるとマイナス無限大に発散する。つまり、極限が異なる。こういう場合は極限なしとなる。
「極限」をざっと説明すると、こんな感じである。
要は「式の中のx(変数)を0とか1とか無限大に近づけると、式の値はどうなるのだろう?」というコトを考えるのが「極限」であり、それを数式で書き表すときに使うのが「lim」である。
微分とは?
さて、本題の微分に戻ろう。
先ほど、「瞬間の速さ」を求める話の中で、「第2の点を仮に作り、その仮の点を求めたい瞬間に近づける」と書いた。
つまり、「第2の点を作り、それを求めたい瞬間に限りなく近づけていく」という作業が必要になる。ここで上で学んだ「極限」が役に立ってくるのだ。
xの関数f(x)で、x内のある点bをaに限りなく近づける(limb→a)とき、
limb→af(b)-f(a)/(b-a)
をx=aにおける微分係数といい、微分係数を表す関数を導関数という。
導関数を求めることを(関数を)微分する、という。
導関数は元の関数f(x)に対してf'(x)と書き表し、「f(x)を微分するとf'(x)になる」とも言う。
(例:関数f(x)=x2の導関数f'(x)はf'(x)=2xなので、たとえばx=3における微分係数はf'(3)=2×3=6となる)
何やらいきなり難しそうな表記になったが、怯んではいけない。ここが踏ん張りどころである。
式だけ見るとワケワカメだが、グラフで考えるといくらかわかりやすい。
式のb-aは2点の差を表し、f(b)-f(a)は関数f(x)にbを代入した時とaを代入した時の差を表している、ということがわかるだろうか?上で言う「仮に作った第2の点」がbにあたり、「近づけていく求めたい瞬間」がaにあたる。
つまり、limを使って「bをaに限りなく近づけている」を表現しているのである。
上の概要で書いた、
「瞬間的(limb→a)な変化(f(b)-f(a))の割合(f(b)-f(a)/b-a)を求める操作が微分である」
という文章を数式的に書き表していることがわかるだろうか。
もっと使いやすく
でも、式の中に引き算の形が多いと使いにくいし見栄えも悪い。
てなわけで、b-aをΔx、aをxと置き換えて、式を変形させる。
f'(x)=limΔx→0f(x+Δx)-f(x)/Δx
ただし、Δx=b-a,x=a
式が理解しやすいように書き換えているだけで、意味するところは上の式と全く同じ。Δx(でるたえっくす)がxの増加した分(=bとaの差)を示している。
b-aをΔxと言い換えることで、「分母はxの変化量ですよ」ということを強調しているだけである。
ちなみにΔとは、微小な変化量という意味を持つ数学記号である。
実演
概要の例を、上の式を使ってある時点aの瞬間の速さを求めてみよう。
進んだ距離は、時間によって変わる。つまり距離は時間の関数である、と言える。
そこで、時間tの関数(=距離)f(t)を考えると、ある時点aの瞬間の速さf'(a)は
となる。
式内のΔtが概要の2点間の時間を、f(a+Δt)-f(a)がその時間に走った距離を示しているのがわかるだろうか?
つまり、この式が
瞬間aでの速さ=「時間」を0に限りなく近づけたときの、「道のり/時間」
の構造になっていることを理解できれば、この一見複雑な式を攻略したも同然である。
いろんな関数の導関数
- (xn)'=nxn-1
- (sin x)'=cos x
- (cos x)'=-sin x
- (tan x)'=1/cos2x
- (ex)'=ex
- (log x)'=1/x
- (f(x)+g(x))'=f'(x)+g'(x)
- (αf(x))'=αf'(x) ※αはxの関数ではない数
- (f(x)g(x))'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)
- (f(x)/g(x))'=(f'(x)g(x)-f(x)g'(x))/(g(x))2
- (f(g(x)))'=f'(g(x))g'(x)
- (f-1(x))'=1/f'(f-1(x))
以上が高校で習う範囲。数IIでは1個目と7個目と8個目がわかってればいいけど、数IIIでは全部使うよ。最後のはあんまり使わないけどね。
導関数とグラフ
微分係数f'(x)は、その点におけるグラフの接線の傾きでもある。これがプラスならグラフは増加、マイナスなら減少していることになる。0なら傾きが平らであることを意味しているが、グラフが増加から減少に転じる間にあれば極大、減少から増加に転じる間にあれば極小と呼ぶ。極大・極小になってる点がわかればグラフの形が大体把握できるので非常に便利である(例えば、二次関数なら極大・極小になっている点は頂点しかない=極大・極小になっているx座標は頂点のx座標である)。
導関数をもう1回微分することで得られる関数を2階導関数というが、これは傾きの変化の様子を表している。これはグラフが上に膨らんでいるか、下に膨らんでいるかを意味し、プラスなら下に凸、マイナスなら上に凸となる。増減と凹凸を調べることで、グラフの概形を描くことができる。
関連動画
関連項目
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