徹甲弾とは、弾薬及び砲弾、弾丸の一種である。その名の通り装甲を貫き破壊(殺傷)する目的で使用される。
概要
基本的には発射された弾丸の持つ運動エネルギーで装甲を貫通するものである。どうやって貫通するかは塑性変形とか塑性流動とかの項目をいつかきっとニコ百物理ガチ勢が作ってくれるはず。
なお定義としては、
- 榴弾や煙幕弾、照明弾等の運動エネルギーそのもので目標を貫き破壊するものではない弾薬や、対装甲攻撃を前提としていない葡萄弾やフレシェット弾との区別として
- 運動エネルギーで危害を加える弾薬の中でも特に装甲の貫通に特化した弾薬を指す物として
二種類の意味で用いられる。
主な徹甲弾
時は第一次世界大戦後あたり(アバウト)、現代的な艦砲戦や戦車戦が確立すると「弾がより固くより重くより高初速で、そのエネルギーが狭い範囲に集中すれば(先端を尖らせたり細長い形状にすれば)貫通力が増す」と考えられ(当然)、はじめはそのように発達した。
しかし問題が生じ、その解決の為様々な構造を持ったものが発生した。
- 徹甲弾(AP)
初期の徹甲弾であり後述のAPBCやAPCBCのような中空のノーズコーンや食いつきをよくする軟鉄をかぶせいていない砲弾。(対)戦車砲用/野砲用のものも第二次大戦中後期にはほとんどの国はAPCBCに完全移行したが、日本陸軍やアメリカ陸軍は末期まで使用した。 1000m以内での貫通力はAPCBCやAPBCより高い傾向にあり各国の戦車用鋼板に広く使われていた均質圧延鋼板(RHA)に強いが、空気抵抗がAPCBC/APBCより大きいため減衰率が高く1000m以遠ではAPCBC/APBCとの貫通力が逆転する。 また第二次大戦の一時期に流行った表面硬化装甲(FHA)や傾斜装甲にも弱かった。 - 低抵抗徹甲弾(APBC)
上述の理論の通り初速が向上すれば貫通力は向上するはずだが、硬質な装甲と砲弾は着弾時に角度があれば滑り、直角に近い角度であっても砲弾が衝撃に負け断裂してしまうということが判明した。
その問題の解決の為、砲弾の着弾面を丸めたり、平らに近い形状にしてある程度の着弾面を確保する事で当たりをマイルドにし弾の断裂を防ぎ、弾の食い付きを改善した物が登場した。
しかしそうすると今度は空気抵抗により弾道が不安定になってしまった為、安定化のためにノーズコーン的な物を取り付けた徹甲弾。 - 被帽付き徹甲弾(APC)
砲弾に帽子状の軟鉄を被せ、着弾時に潰れて足がかりとなることで上述の断裂や食いつきの問題を解決したもの。 - 低抵抗被帽付き徹甲弾(APCBC)
APCにAPCBCのノーズコーンをつけたものだがAPCと言えばこのAPCBCとAPC両方を指している場合が多く前者を指している場合がほとんどである。傾斜装甲に強く(貫通力自体は1000m以内では上述のAPに劣る)表面硬化装甲に強い。 - 徹甲榴弾(APHE)
命中後、炸裂することで危害を増大させる徹甲弾。貫徹できなくとも装甲板にめり込んで起爆する。
主に戦艦クラスの主砲に用いられたが、第二次世界大戦中、最も一般的に使用されていた砲弾。現用砲でも機関砲等で使用されており、通常榴弾と兼用で使用されたりもする。被帽付が一般的だが日本陸軍は最後まで被帽の付いてないタイプを使い続けた。 - 焼夷徹甲弾
命中後、激しく燃焼することで危害を増大させる徹甲弾。 - 硬芯徹甲弾(APCR) 高速徹甲弾(APHV)
固く重い弾芯を軽くやわらかい砲弾外殻で包んだ物。
同じ砲から同じ装薬で発射した場合、その砲弾重量が軽いほど速度が上昇する事を利用し、砲弾全体の重量を落とす事で初速を向上させている。(運動エネルギー式 K=1/2mv^2より、重さよりも速さを重視した方が威力が増す。また、早い方が当てやすく、エネルギーを伝える面積が小さい方が貫通力が増す。)
着弾時には上述の被帽のように周りの外殻の軽金属は潰れ、脱落して中央の弾芯だけが装甲を貫く。
第二次世界大戦頃まで戦車砲等に使用されていたが、M61バルカン等小口径機関砲用の徹甲弾としては今でも現役である。 - 装弾筒付徹甲弾(APDS)
硬芯徹甲弾と同じく、砲に対し初速を稼ぐ事で貫通力を高めた物。第二次世界大戦後後述のAPFSDSが普及するまで広く使われており、機関砲や後進国の所有する戦車砲等には未だ配備されていると思われる。
こちらは、発射後に脱落する極めて軽量な装弾筒(サボット・要はただのガワ)に小口径の徹甲弾を組み合わせた物で、更に高い砲口初速を得ることができる。
第二次世界大戦時、西部戦線に於いて連合国軍が保有する戦車の中で唯一ティーガーに対抗することができた「シャーマン・ファイアフライ(17ポンド砲)」に使用されたことでも有名である。 - 小火器用徹甲弾
拳銃弾、小銃弾を問わず硬質な金属製の弾丸を使用し、強力な装薬を組み合わせ貫通力を高めた徹甲弾が存在する。
また、省資源化の為に弾丸に鉛や銅ではなく、鉄を使用した為に意図せず徹甲弾のようになっているもの(トカレフ用の安い7.62mm×25弾)や、通常弾であるが徹甲弾みたいな振る舞いをする(FMJだが弾芯に鉄を使用している5.56mmNATO弾SS109等)も存在する。
材質
着弾の衝撃に耐え、運動エネルギーを効率的に貫通力に変換するため、硬く、ねばり、そして重い物質である事が求められる。
主には鋼鉄、タングステン、劣化ウラン等が用いられてきたが、鋼鉄は他二つの性能に激しく劣り、劣化ウランは性能的には最も優れるが、極めて加工に手間がかかり高価となる上、放射線や毒性に因る人体被害の可能性や世論問題により使用に制限がある。その点最もバランスが良いのがタングステンと言えるが、材料自体高価であり、硬質金属である為に劣化ウランほどではないが加工にも手間が掛かり、結局その価格はどっこいどっこいのようである。
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