心不全単語

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心不全は、心臓に生じた器質的・機異常によりポンプとしての機が低下し、全身の酸素需要に対して十分な血液を供給できない状態である。循環や体循環にうっ血が生ずるため、倦怠感、呼吸困難、浮腫などを呈する。心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈、高血圧糖尿病など、さまざまな疾患が心不全の要因となりうる。心疾患の終末像でもある。

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心不全(しんふぜん)とは、心臓の機が低下し、十分な血液を拍出できない状態である。

概要

心不全は、心臓に生じた器質的・機異常によりポンプとしての機が低下し、全身の酸素需要に対して十分な血液を供給できない状態である。循環や体循環にうっ血(血流の停滞)が生ずるため、倦怠感、呼吸困難、浮腫(むくみ)などを呈する(うっ血性心不全)。心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈、高血圧糖尿病など、さまざまな疾患が心不全の要因となりうる。心疾患の終末像でもある。

化した食生活による虚血性心疾患(狭心症心筋梗塞)の増加、高齢化に伴う高血圧や弁膜症の患者増加を背景として、慢性心不全の患者も増加傾向にある。急性心不全の患者数は十分には調されていないが、心不全発症のリスクを抱えた高血圧糖尿病の患者は数千万人規模で存在する。

分類

臨床経過による分類

  • 急性心不全 - 数分から数日単位で急に進行する。
  • 慢性心不全 - 数かから数年単位で緩徐に進行する。

機能障害による分類

  • 収縮機不全 - 心筋の収縮が低下し心拍出量が減少する。
  • 拡張機能不全 - 心筋の弛緩が不十分で心腔への流入血液量が減少するため心拍出量も減少する。

障害部位による分類

左室駆出率(LVEF)による分類

  • HFrEF(ヘフレフ) - 左室の拡障害があり収縮機も低下している。LVEF 40%未満。
  • HFmrEF - 左室の拡障害があり収縮機も軽度に低下している。LVEF 40%以上50%未満。
  • HFpEF(ヘフペフ) - 左室の拡障害があるが収縮機は保たれている。LVEF 50%以上。

LVEFの臨床経過による分類

  • HFrecEF - LVEFが善した。HFrEF ⇒ HFmrEF ⇒ HFpEF。
  • HFworEF - LVEFが悪化した。HFpEF ⇒ HFmrEF ⇒ HFrEF。
  • HFuncEF - LVEFが大きく変化しない。

症状

左心不全は、から全身への血流が障害されるため、うっ血が起き、腫や胸貯留がみられる。での酸素二酸化炭素の交換が障害され、低酸素血症の症状を呈する。呼吸困難は、横になると増強し上体を起こすと軽減するため、患者は起き上がって楽に呼吸できる姿勢を取ろうとする(起坐呼吸)。自覚症状としては、全身の倦怠感、息切れ、咳、手足の冷感、尿量の減少などがある。

右心不全は、全身からへの血流が障害されるため、末のうっ血が起こる。肝腫大、下肢を中心とした全身の浮腫、体重増加がみられる。また、血流量が減少することで、左心への流入血液量が減少し、左心不全症状を呈することもある。

急性心不全は急に心機が低下するため、呼吸困難ショック症状を引き起こす。

慢性心不全は緩徐に進行するため、血圧調節因子の分泌進や心肥大などの代償機構が働き、心機をある程度維持するものの、長期化すると破綻する。

代償機構

心機が低下すると、交感神経系や内分泌系が進し、血圧を維持しようとする。また、損傷した心筋細胞を修復し、心機の低下を抑制しようとする。こうした代償機構は、短期的には心機を維持させるが、長期化すると最終的には破綻し、心機はより悪化する。

代償機構 機序
交感神経系の α1作用により、血管が収縮し血圧が上昇する。
β1作用により、心収縮が増大し、心拍数も増加する。
RAA系の活性化 RAA系(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)は、ホルモンによる血圧調節システムアンジオテンシンIIは、血管を収縮させ血圧を上昇させる。アルドステロンは、腎におけるの再吸収を促進し、循環血液量を増加させる。
心筋リモデリング 心臓にかかる負荷は、前負荷と後負荷に分けられる。循環血液量増加は前負荷を増大させ、血圧上昇は後負荷を増大させる。増大した前負荷・後負荷に対し、心臓は心筋細胞の肥大化や損傷部位の線維化によって適応する。

診断

心不全の診断にあたり、症状、既往歴、家族歴、身体所見を確認し、心電図検や画像検を検討する。身体所見として、頸動脈怒疸、浮腫などがある。心エコー心臓超音波)や胸部X線検では、心拡大が確認される。聴診では、しばしば余剰の心音III音、IV音)が聴こえる。重症度に応じて血中のナトリウム尿プチド(BNP)濃度が上昇するため、慢性心不全の予後の標になる。

NYHA分類

NYHA分類(ニーハ分類)は、NYHA(ニューヨーク心臓協会)が定めた心不全の重症度分類。自覚症状の程度により、I度からIV度までの4種類に分類される。客観性に乏しい欠点はあるが、簡便であり患者のQOLクオリティオブライフ)を反映しているため、に慢性心不全に汎用される。

I度 心疾患はあるが症状。日常生活が制限されない。
II 安静時は症状。日常的な身体活動で疲労、動悸、息切れを生ずる。
III 安静時は症状。歩行や日常的な身体活動以下の労作で症状を呈する。
IV 安静時でも症状を呈することがある。軽い労作で症状が増悪する。

Killip分類

Killip分類(キリップ分類)は、急性心筋梗塞後の聴診所見をもとにした重症度分類。のうっ血の程度により、I群からIV群までの4種類に分類される。短時間で重症度を把握できるため、急性心筋梗塞だけでなく、急性心不全にも用いられる。

I群 心不全の臨床的徴なし。
II 軽度から中等度の心不全。副雑音(ラ音)やIII音を認める。
III 重度の心不全。50%以上の範囲で副雑音腫あり。
IV 心原性ショック血圧低下(90mmHg未満)や意識障害など。

Forrester分類

Forrester分類(フォレスター分類)は、血行動態の標である心係数(CI)、動脈楔入圧(PCWP)を用いた重症度分類。急性心筋梗塞後の心不全治療に用いられる分類だったが、広く急性心不全の病態把握に用いられている。ただし、カテーテルを挿入する必要があるため、侵襲性が高い。

  • CIの低下は心拍出量の減少を意味する。CIが2.2L/min/m2を下回ると末循環が維持できない。
  • PCWPは左心房圧を反映する。PCWPが18mmHgを上回るとうっ血を生じる。
PCWP < 18 PCWP > 18
CI > 2.2 I群:正常。 II群:うっ血。
CI < 2.2 III群:末循環不全。 IV群:うっ血+循環不全。

Nohria-Stevenson分類

Nohria-Stevenson分類(ノリア・スティーブンソン分類)は、身体所見をもとにした重症度分類。うっ血や末循環不全の有により病態を把握する。侵襲性が低く簡便である。

うっ血なし うっ血あり
循環不全なし Profile A
dry - warm
Profile B
wet - warm
循環不全あり Profile L
dry - cold
Profile C
wet - cold

治療

急性心不全

急性心不全では、破綻した血行動態の正常化と、その維持が治療標となる。心停止に対しては、心蘇生酸素投与を行う。血管的に硝、循環血液量の減少を的に利尿薬、心拍出量の増大を的に強心を投与する。

作用
麻薬鎮痛薬 モルヒネ 鎮静 → 呼吸困難軽減・不穏緩和
ニトログリセリン
イソソルビド
血管 → 前負荷軽減
利尿薬 ループ利尿薬 フロセミ
アゾセミ
循環血液量減少 → 前負荷軽減
hANP カルペリチド 循環血液量減少・血管 → 前負荷軽減
強心 交感神経作動 ブタミン
ドパミン
心収縮増大・血圧上昇 → 血行動
PDE III ミルリノ

慢性心不全

慢性心不全では、心機低下による代償機構の調整、QOLの向上、生命予後の善が治療標となる。塩分制限のほか、物治療としてアンジオテンシン変換酵素阻ACE)、アンジオテンシンII受容体拮抗ARB)、交感神経β受容体遮断β遮断)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗MRA)、アンジオテンシン受容体ネプリラシンARNI)、SGLT2阻などが用いられる。

作用
ACE エナラプリル
シノリル
RAA系抑制 → 前負荷/後負荷軽減
ARB カンサルタンシレキチル
サルタン
アンジオテンシンII拮抗 → 前負荷/後負荷軽減
β遮断 カルベジロー
ビソプロロー
心保護
MRA ピロノラクトン
エプレレノン
循環血液量減少 → 前負荷軽減
ARNI サクビトリルバルサルタン RAA系/交感神経系拮抗 → 心保護
SGLT2阻 エンパグリロジ
ダパグリロジ
循環血液量減少 → 前負荷軽減
腎保護

備考

厚生労働省の発行したマニュアルによれば、死亡診断書において、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全などは、死因統計が不正確となるため、死因として記入しないこととしている。もちろん、明らかな病態としての心不全、呼吸不全などは記入して構わない。

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心不全

8 ななしのよっしん
2019/04/12(金) 20:56:31 ID: XS7fAU86CC
>>5
はよ成仏するか医者に行きなよ
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9 ななしのよっしん
2019/04/15(月) 02:06:52 ID: sP5lsoimeC
>>8
多分自分の事言ってるんじゃなくて>>4をうけて一般的な事について言ってるんだと思うんですけど
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10 ななしのよっしん
2019/04/15(月) 03:11:55 ID: 0hmCAOsXAj
そうです。器質的異常のみられない急性心不全ですね。
>>4をうけて言葉を削ってレスしたため、誤解を与えてしまいすみません。
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11 ななしのよっしん
2019/04/15(月) 06:00:41 ID: la4d/rf3tX
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12 ななしのよっしん
2019/04/28(日) 03:15:34 ID: LfWev0cwZa
>>6
IMPELLAみたいな人工心臓を体内に入れる場合には、そもそも心不全がないと適応にならないし、入れる意味もない。
人工心臓が故障した時点で、自では心拍出量を保てず急性心不全の病態になるわけだし、広義の心不全として良いのではないだろうか。
故障が原因で亡くなって死亡診断書書くとしたら、直接死因急性心不全で原死因は人工心臓不全になるのかな。
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13 ななしのよっしん
2020/02/26(水) 14:55:33 ID: YcGpgzvDIp
何気に怖いと思ったのは、左心不全うっ血に伴う呼吸困難が「左心室の拍動が回復してないのに軽快する」という事があること。
原因はうっ血で負荷がかかり続けた右心室が右心不全を起こしている。
これでへの血流が減るのでうっ血も減少していたという嵐の前の静けさ・・・


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14 ななしのよっしん
2020/06/26(金) 02:52:13 ID: fGGG6NAimN
呼吸困難でチアノーゼ出たりするから、処置が間に合わないとヤバい病気生活習慣見直すべきだろうけど、本人が言う事きかなかったりするからね。
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15 ななしのよっしん
2023/03/02(木) 07:22:25 ID: IR2T0EOYD5
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16 ななしのよっしん
2023/03/02(木) 10:29:52 ID: xwUmAGfAwD
>>15
事中に取材した病院は5年前くらいから増え始めたと書いてあるから新型コロナ関連ではなさそう
単純に他の病気が減っただけの気もする
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17 ななしのよっしん
2023/03/05(日) 21:31:29 ID: 2DCCkUM7jb
>>sm41885726exit_nicovideo
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