「恵方巻き」または「恵方巻」(えほうまき)とは、
概要
恵方巻きとは、節分に行う行事の一種である。また、その時に食べる長くて太い巻き寿司の事。食べる時には独自の作法で食べなければいけない。
元々江戸時代以前から全国的に「恵方詣り」という習わしがあった。正月にその年の歳徳神が在位する方角(恵方)にある社寺に参拝し、その年の幸福を祈願するのが恵方詣りの形であった。しかし、大正時代以後は「初詣」という恵方とは無関係の社寺に参拝することが一般的となった。
京都・奈良という神社仏閣を多数有する関西地方では、節分の際に「恵方詣り」をする風習があったのだが、やはり「初詣」によって廃れてしまった。しかし、「節分」と「恵方」の結びつきが強かったために、「恵方詣り」が廃れても節分の際に歳徳神を奉る風習が民衆の間に残った。
発祥は大阪だと言われており、長年ローカルな風習であった。筆者の記憶では、少なくとも1970年代には各家庭で恵方巻の風習が伝わっており、豆まきなどをした後に、その年の恵方を向いて巻きずしをかぶりついていたものである。
この風習が大阪近辺以外の地域へ飛び火したのは平成に入ってからのことで、1998年(平成10年)に関東のコンビニチェーンで初めて恵方巻が登場、全国進出を果たすこととなった。
作法
恵方巻きは食べる時に独自の作法で行う。
キチンと作法通りに行えば、もしかしたら歳徳神さまの加護であなたの願い事を叶えることができるかもしれない。
恵方
恵方は九星術の神々の中で数少ない吉神である歳徳神の居る方角をいい、その方角に向かって物事をするのがよいとされる方角である。
恵方は、その年の十干によって知ることが出来る。下表の方位角の度数は、北を0°として時計回りに東が90°、南が180°、西が270°と割り振ったもの。
十干 | 西暦 | 十干 | 西暦 | 24方位 | 方位角 | 16方位 |
---|---|---|---|---|---|---|
甲 | xxx4年 | 己 | xxx9年 | 甲の方角 | 75° | 東北東やや右 |
乙 | xxx5年 | 庚 | xxx0年 | 庚の方角 | 255° | 西南西やや右 |
丙 | xxx6年 | 辛 | xxx1年 | 丙の方角 | 165° | 南南東やや右 |
丁 | xxx7年 | 壬 | xxx2年 | 壬の方角 | 345° | 北北西やや右 |
戊 | xxx8年 | 癸 | xxx3年 | 丙の方角 | 165° | 南南東やや右 |
表から解るとおり、5年で4つの方角をループしている。そして丙の方角が2回出てくる。
よく見るとおのおの90°ずつ開きがあり、東西南北を15°反時計回りずらした形と一致する。これは、22.5°単位で「南南東」などと表される16方位とは7.5°ずれている。方位磁石で方角を調べる場合は、書いてある方位からやや右を向くのがちょうどいいといえるだろう。
スマートフォンが普及している昨今、むしろ方位角で書いた方が正確かつ解りやすい表記ができるともいえる。これはこれでちゃんと補正しないと正しい方位を表示しない物が多く、絶対の信頼を置いてよい物でも無いが。
5年で4つの方角をループする理由
前述のとおり、恵方はその年の十干(じっかん)によって決まる。
十干は十二支とともに「干支」を構成する要素のひとつで、以下のように方位が割り当てられている。
よく見ると「兄」は東西南北を15°反時計回りに、「弟」は東西南北を15°時計回りにずらした方角となっている。
この、「兄」に割り当てられた方角が「兄方」(吉方・恵方)である。
「弟」に対しては干合(かんごう、5個離れた兄)の方角が恵方となり、結果として恵方は5年周期となる。また「中央」には便宜的に直前の兄(丙)の方角が割り当てられている。
五行 | 十干 | 恵方 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
四神 | 方位 | 方位 | 読み | ||||
木 | 青龍 | 東 90° |
甲 | 75° | きのえ(木の兄) | そのまま | |
乙 | 105° | きのと(木の弟) | 干合(庚) | ||||
火 | 朱雀 | 南 180° |
丙 | 165° | ひのえ(火の兄) | そのまま | |
丁 | 195° | ひのと(火の弟) | 干合(壬) | ||||
土 | - | 中央 | 戊 | 中央 | つちのえ(土の兄) | 便宜上(丙) | |
己 | つちのと(土の弟) | 干合(甲) | |||||
金 | 白虎 | 西 270° |
庚 | 255° | かのえ(金の兄) | そのまま | |
辛 | 285° | かのと(金の弟) | 干合(丙) | ||||
水 | 玄武 | 北 0° |
壬 | 345° | みずのえ(水の兄) | そのまま | |
癸 | 15° | みずのと(水の弟) | 干合(戊→丙) |
なお、30°で割り切れる角度には十二支が割り当てられている(0°=子、30°=丑、……、330°=亥)。さらに東西南北から45°ずれた角度には八卦のうち4つが割り当てられ(45°=艮、135°=巽、225°=坤、315°=乾)、十干・十二支・八卦の組み合わせで24方位が完成する。
恵方巻の全国展開
2000年あたりからセブンイレブンなどのコンビニが節分には恵方巻を食べようというキャンペーンを大々的に行うようになり、毎年正月が終わると全国CMから店内ポスターまで一斉に恵方巻をコマーシャルするようになった。
ネット上でも拡散され、そのため大阪やその周辺地域のごく一部でしか知られていなかった恵方巻が一気に全国区に知れ渡ることになる。知られるだけなら問題はなかったのだが…
実は単なる太巻き
恵方巻を実際に買って食べてみた人なら分かるが、恵方巻とは単なる巻き寿司の一種の太巻きである。
現在は、高野豆腐、かんぴょう、椎茸、胡瓜、玉子焼き(または厚焼き卵)、穴子、でんぶなどの7種類の具材を巻いた物が一般的。具材が7種類なのは、七福神にちなんで縁起を担いだもの。
恵方巻の全国展開が始まる遥か前の1980年代に掲載された、美味しんぼの『のり巻合戦(18巻参照)』にあるとおり、桜でんぶ、厚焼き卵、きゅうり、甘辛く煮た刻み椎茸などが入った寿司巻きで巻いたのり巻で、当時はこれを恵方巻などと呼ぶことは無かった。[1]
その太巻きを、節分にその年の恵方を向いて一気に食べるという風習が大阪やその周辺地域の一部の地域にあるだけで、恵方巻というのは単なる商品名と言って良い。
恐らく太巻きに何かセールスに使える要素は無いかと考えた末に恵方巻として売り出すことを考えたのだろう。
この恵方巻キャンペーンは当時インターネットが普及したのを背景にコンビニの広告からネット上で大量に拡散され、そんな風習などありもしない地域にすら恵方巻が全国のコンビニに並んで売り出されたのである。
これほどまでの急速な情報拡散にくわえ、それを待っていたかのように一気に全国に販売網が敷かれていたことからも事前に販売側のステルスマーケティングが行われていたと言っても過言ではないであろう。
膨大な廃棄
しかし大阪やその周辺地域の一部でしか節分に食べる習慣など無かった恵方巻など、たとえ全国展開して販売したところで客がこぞって買うわけも無く、実際にはコンビニ業界が期待していたほど売れ行きは良くなかった。
当たり前である。
そもそも単なる太巻きでしかない代物を一部の地域の習慣でしかない恵方巻として全国展開して販売したところで、風習が全く違う地域で思うように売れるはずがないのである。
恵方など習慣の無い地域で寿司屋のサイズの半分にも満たないサイズで税込み700円~800円の割高価格。どれだけCMが流れて名が知られても買うかどうかは別である。しかも全国に宣伝したためにコンビニだけでなく大手スーパーマーケットまで追随して恵方巻を売るようになったため、節分を前にして恵方巻を目にしないことはないほどに広まってしまった。恵方の信仰など無いのにである。
そんなことをすれば大量の売れ残りが出るのは明らかで、節分前後になると各地のコンビニやスーパーで売れ残った恵方巻の処分に困り果てることになった。
コンビニなどは本部から恵方巻を売るように指示が出ていて加盟店はスーパーバイザーを通して大量に発注をするように指示され、コンビニ店舗は欲しくもない恵方巻を大量に仕入れて売れ残る。
この売れ残りを賞味期限が切れる前に売り上げねばならず、コンビニ店長はもちろん、アルバイト従業員まで買わされてしまうほどで、2ちゃんねるなどで大量に買わされたアルバイト従業員の恨み節が書かれるのは節分の恒例行事となっていた。このあまりのバカバカしさからネット上ではたびたび恵方巻のことを『阿呆巻(あほうまき)』などと呼ばれるほどである。
一行で
政府の販売制限
2017年、廃棄食品の処分場で明らかに恵方巻の廃棄と思われる膨大な量の食品ゴミが何者かによって撮影され、ネット上やSNSに掲載されると瞬く間に拡散されて恵方巻が膨大な食品ロスになっている現状が知れ渡った。
これをきっかけにスーパーやコンビニで毎年のように大量に出る恵方巻の廃棄や、販売される前の材料の段階で食品工場から恵方巻が大量に捨てられている現実、無理な量を売らされている販売店の悲鳴が新聞やテレビで報道されて反響を呼んだ。
恵方巻の広告の仕方や売り方に無理があることがマスコミで取り沙汰されると、戦後の食糧難を経験していた70代以上の高齢者からの苦情が相次いで社会問題化した。
この問題に対して農林水産省が動き出し、2019年にはコンビニやスーパーをはじめとする小売業界に対し文書で通知する行政指導を行い、需要に見合った販売をするように通達を出した。
政府の指導を受けて、ようやくコンビニやスーパーが恵方巻の大量販売の方針を切り替え、2020年になると恵方巻が売り切れるコンビニやスーパーが出てきて、需要と供給に見合った販売が行われるようになり、それまでのような無理な販売展開と大量生産、大量出荷は鳴りを潜めるようになった。
その他の視点
(厳密には恵方巻に限った話でないが)
「ノルマを達成できなかたら買い取るのが当然」など難癖付けて
売れ残った商品をアルバイトや店員に強制買取させる自爆営業も問題となっている。
→ ノルマ ・ ブラックバイト の項目を参照。(厳密にはブラック企業もだが)
↑知識があれば容易に撃退できるため、学生さんは必ず覚えておこう。
本部に逆らえない
チェーン店などは本部の指示に従わなければ契約停止や違約金といった制裁措置が豊富であるため、どんなに売れなそうな商品であってもほぼ強制的に店頭に並べなくてはいけないといった問題はある。…だからといって加盟店や店員・アルバイトに押し付けて良いという意味ではないが。
→ フランチャイズ
関連動画
関連静画
関連項目
- 節分
- 巻き寿司
- 寿司
- 料理の一覧
- 勿体ない / 無駄遣い
- 社会問題
- Charlotte(魔法少女まどか☆マギカ) - 第二形態の見た目が恵方巻きに似ていることから。ただし彼女?が食べる側。
- 巴マミ - その恵方巻きに食べられた人。
- 恵方マミ - そういうこと。
- 違法巻き
2.の概要
多分ニコニコの常連ならこちらを想像した人が多いはず。
節分になると何らかの力が働き上位に躍り出てくる動画で、
サンゲリアのBGMと共に食事風景の映像が流れる内容となっている。
慣れてる人なら構わないが、耐性のない人が見ると非常に危険な動画。
視聴は自己責任で。
関連動画
もう一度言いますが耐性がない人が見ると非常に危険です。
面白半分で見るのはやめましょう。
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- なし
- 12
- 0pt