愚地克巳とは、板垣恵介の格闘漫画『グラップラー刃牙』シリーズの登場人物である。
空手家・格闘家。
通称「空手界の最終兵器」。
概要
幼少時には実父と共にサーカスで並外れた身体能力を発揮し曲芸に打ち込むが、愚地独歩に見初められ、実父の事故死を契機に養子として引き取られる。神心会空手の使い手であり、体重116kg・身長186.5cmの巨漢にありながら100mを10秒台で駆け抜け、ベンチプレス300kgをこなす怪力の持ち主。
独歩曰くこれは究極の空手家像であり、その戦闘能力は自分より強いことはもちろん「空手を終わらせてしまった男」とまで言わしめる。
しかし実際には格闘家としては非常にムラがあるようで、苦戦を強いられたファイトも多い。とりわけ「空手界の最終兵器」という呼称については、(作中における)花山に大苦戦、さらに烈海王に瞬殺されたことで一転、眉唾物に成り下がり以後「最強のかませ犬」として役どころが定着したといっても過言ではない。しかしドリアンへの雪辱戦でガソリンまみれになったドリアンに躊躇なくジッポライターを投げつけ火達磨にしたことで、別の意味で本当に空手を終わらせてしまった。
その後もありあまる才能がありながら常に精神面での弱さで遅れをとるファイトを重ねるが、同シリーズタイトルの「範馬刃牙」において劇的な成長を遂げ、最終兵器の名に恥じない歴史に残る死闘を演じた。
戦績(ネタばれあり)
対戦相手(詳細へリンク) | 勝敗 | シーン | 立合いの動機 | 決まり手 | コミック収録巻数 |
竹田とその一味 | ○ | ストリートファイト | 仇討ち | 下段蹴り | 「グラップラー刃牙」21巻 |
夜叉猿Jr. | ○ | 東京ドーム地下闘技場 最大トーナメント戦 |
エキシビジョン | 手刀打ち | 〃 23巻 |
ローランド・イスタス | ○ | 〃 | 1回戦出場 | 上段廻し蹴り | 〃23巻 |
花山薫 | ○ | 〃 | 2回戦出場 | 音速拳(マッハ突き) | 〃27~28巻 |
烈海王 | × | 〃 | 3回戦出場 | 中段左掌打 | 〃34巻 |
ドリアン海王 | × | 神心会道場 | 道場破りへの応戦 | 凶器投てき | 「バキ」2巻 |
〃 | △ | 徳川家 | リベンジ | ドリアンの逃走につき未決着 | 〃 6巻 |
ドイル | × | 神心会道場 | 道場破りへの応戦 | 爆発攻撃 | 〃 14巻 |
〃 | × | 〃 | リベンジ | 立合い放棄 | 〃15巻 |
ピクル | × | 東京ドーム球場 非公式戦 |
挑戦・仇討ち | 右腕喪失 | 「範馬刃牙」 16巻 |
獅子丸 | × | 大相撲対抗戦 | 立合い放棄 | 「バキ道」9巻 |
詳細
- vs 竹田とその一味
- ラガーマン・竹田に神心会女子部の井上がセクハラを受ける。これに制裁を加えるべく、克巳は街中を闊歩する竹田とほか4名にストリートファイトを仕掛ける。5人がかりのタックルにも微動だにしない脚力を披露し、その後4人を空手で仕留める(1人は逃走)。竹田へは右足に下段蹴りを放ち、骨が露出するほどの重傷を負わせた。
- vs 夜叉猿Jr.
- 加藤清澄の1回戦の対戦相手だったが、加藤ではまるで歯が立たず手がつけられない状態に。そこに克巳が試合に乱入し、夜叉猿Jr.を圧倒した。一方的な克巳の攻撃に割って入った刃牙をも翻弄するなど、秘密兵器の片鱗を見せつけた。失態を演じた加藤はその後「この人はよ刃牙・・・オレと違ってちゃんと上まで登ってくる人だ」と克巳を持ち上げた。さすが無頼派空手の雄である。
- vs ローランド・イスタス
- 地下闘技場における公式戦初の対戦相手。関節技を得意とするイスタスに肩と肘の関節を外されるが、素振りして肩を自力修復。始終笑みを浮かべながら余裕の勝利を掴む。
- vs 花山薫
- 「ヤクザめ 武の力を思い知らせてやる」と言い放ったその直後、痛恨の先制攻撃を食らいヤクザの力を思い知ることに。蹴り足ハサミ殺しなど高等技術を繰り出すがまるで通用せず、さらに大技・正中線四連突を放つも再び油断をしてしまい、右足を粉砕される。「克巳 ハハおめェのいったいどこが最終兵器なんだ!?」と自問する克巳に、もはや奢りはなかった。封印していた自身最大の必殺技・マッハ突きを放ち、辛勝。
立合いのさなかに実に4度の反省を経て、克巳を精神面で大きく成長させた屈指の名勝負である。 - vs 烈海王
- 相手は中国拳法の雄。負けたら神心会の看板を降ろすと決意して望んだ試合である。
試合開始直前に「この試合のキャッチコピーを知ってるかい 烈海王君。格兵器 vs 竹ヤリ・・・・」と余裕の軽口を叩くが、直後にまたしても不意を突かれてしまい、やみくもに放ったマッハ突きがカウンターで斬って落され、瞬殺。格兵器などという得体の知れない兵器では勝利を奪うことはできなかった。
この試合でマッハ突きを武器にする克己に対し「君たちのいるところは中国拳法が既に通過した場所だ」と切って捨てたが、後にこの時の心境について烈海王が語ったところによると、「ああは言ったものの、マッハ突きは自分でも出来るが演舞の中のみであり、実戦で使用する所を見て背筋が凍った」とまで述べている。武としての高みは烈海王ですら一目置くほどのレベルであったにも関わらず惨敗を喫したのは、やはり本人の慢心・油断がまだまだ残っていたという事なのだろう。 - vs ドリアン海王
- 神心会を去った父・独歩の後を継ぎ、道場の長に君臨した克巳は自らを屠った烈をコーチに招き、和気あいあいと修行に打ち込む日々を過ごしていた。そんな中、独歩を尋ね道場に現れた死刑囚・ドリアンは不在を知るやいなや、克巳に不意打ちを仕掛ける。正中線四連突も通用せず、投げつけられた凶器(床板)が頸部に刺さり、戦闘不能に。ドリアンは続いて烈にも奇襲を仕掛け、ひるんだ隙に逃走した。
- vs ドリアン海王(リベンジマッチ)
- 前回の立合いで一杯食わされた克巳は、武道と実戦との違いを思い知る。加藤を師と仰ぎ、実戦的な戦い方を模索する。その後、徳川家に侵入しているドリアンと再び対峙することに。すっかり加藤に感化されてしまった克巳は「俺は・・・空手家じゃなくていい」とまで言い放ち、ドリアンにガソリンを浴びせ火を放った。堕ちた最終兵器・克巳はどこへ行く。残念ながらドリアンのダメージはほとんどなく、またしても逃走を許してしまう。誤解されることが多いので補足するがドリアンに火を放った時点では愚地独歩には認められていたが、武器を持参してきた加藤を師匠として仰いだために独歩の怒りを買ったのである。
- vs ドイル
- ドリアンに続き、神心会道場にて克巳と対峙。拳を放つ前に粉塵爆破という意表をついた戦術で道場を焼かれ、克巳は全身に火傷を負った。まだまだ実戦のなんたるかを理解していないことを露呈した。
- vs ドイル(リベンジマッチ)
- 独歩に倒され、神心会道場に連行されたドイル。幾度となく失態を演じてきた克巳に、もはや油断は無かった。ドイルを圧倒し、下段突きで顔面を陥没させてでK.Oした。(コンクリートブロック3枚を粉砕する威力がある)
しかしドイルは降参しなかったため、克巳は「もうこれ以上 そいつを壊せねェ (俺の)負けでいい」と呟きとどめを刺さず、勝負はドイルの勝利となる(ただしドイルはこれを敗北と捉える)。以降、2人の間では固い友情が結ばれた。 - vs ピクル
- 現代に蘇った1億9000万年前の「人類」。恐竜を素手で倒すほどの圧倒的戦力を前に、師・烈海王は脆くも敗れ去る。克巳の胸に去来するのは、仇討ちよりも自分の空手のすべてをぶつけてみたいという強い想いであった。烈海王と郭海皇の支援の下、克巳は新兵器・真マッハ突きを会得し、ピクルに挑む。
会場を埋め尽くすほどの神心会門下生の正拳突きと掛け声による声援に「こんな俺にありがとう」「謝りたいと感じている、だから感謝と言うのだろう。」と心と体を震わされ、かつてないほど高いモチベーションで計3度の真マッハ突きを繰り出すが決定打には至らず、技と引き換えに自らの拳と足に大きなダメージを負った。瀕死の克巳が最後に放ったのは、マッハ突きの最終進化形「当てない打撃」。郭海皇をして「拳法を50年は進歩させおったわ」と言わしめたこの大技で、ピクルから3度目のダウンを奪う。
しかし、音速を超える突きによって右腕の肉体は骨から引きちぎれ、戦闘不能に陥る。骨が剥き出しになった右腕をピクルに噛み千切られ、決着。ピクル自身もこの時に彼を「友」と認識したようで、腕を噛み千切りながらも捕食者として友との別れに涙し、噛み千切った腕を前に祈りを捧げるように両手を合わせていた。
その後、片腕を失ったことを周りに心配されるが、本人は侍の剣術(刀を腕に見立てて、刀一本で戦う達人)を例えに前向きな姿勢と意気込みを見せていた。しかし後に徳川達に烈海王の右腕を移植する事を提案され受け入れ、両腕の空手を復活させた。 - vs 獅子丸
- 大相撲との対抗戦では四陣として関脇・獅子丸と対戦。序盤は獅子丸の怒涛の攻撃に防戦一方となるが、右上段回し蹴りで反撃。本来これで失神KOとなるはずが、大相撲をじっくり堪能するために気付けとして下段蹴りを放ち、試合を続行させる。また、移植した右腕にはまるで烈の魂が宿っているかのようであり、克巳が知らない拳を無意識に形作っていた。一進一退の攻防の末、獅子丸が相撲には存在しない不慣れなマウントポジションを取った隙を付いて睾丸を握りつぶし、顎をサッカーボールキックで蹴り上げ、トドメの下段回し蹴りを顔面目掛けて放つ。しかしこれをまさかの寸止め。そのまま闘技場を後にし試合放棄で克巳の負けとなった。寸止めの理由については「興味本位だけであれ以上はできない」と語っており、もし寸止めしなければ獅子丸を壊してしまっていたかもしれないからであった。この決断には背後の烈も拍手で賛同している。
師事者
格闘へのあくなき探究心のため、しばしば節操無く師事する相手を変えることがある。
- 愚地独歩
- 言わずと知れた神心会の長。神心会の看板を賭け、克巳を地下闘技場へ送り込むが、克巳が烈海王に惨敗を喫したことで館長の座を退くことになった。その後も克巳に対して主導権を握るシーンがあることから、本当に克巳が独歩より強いのかどうかは不明である。
- 烈海王
- 対戦後、中国拳法の奥深さを痛感した克巳が神心会に招いた臨時コーチ。比較的長期間に渡って師弟関係を築いている。
- 加藤清澄
- 死刑囚ドリアンと立合い、武器攻撃に遅れをとったことで、試合と実戦とは違うということを学習した克巳がうっかり師として仰いでしまった人物。武器を使うことを厭わないファイトスタイルでドリアンにリベンジを目論むも、勝利には至らなかった。その後独歩から加藤と共にきつい説教を受けることに。
- 鎬昂昇
- 克巳が新たに神心会に招いた特別コーチ。武器を携行する加藤流ファイトスタイルに見切りをつけ、「武器が駄目なら拳を刃物にすればいいじゃない」と発想のもとに彼に鞍替えした。
しかし昴昇は「今の私なら烈海王にだって勝てる」と豪語していたにも関わらず、その直後死刑囚ドイルに敗北。そしてドイルは烈海王に敗北寸前にまで追いつめられた。 - 郭海皇
- 怪物・ピクルに己の空手の全てをぶつけることを決意した克巳に、稀代のツンデレ拳法家・烈が協力を示し、日本に招いた人物である。27箇所の関節を駆使するマッハ突きを不完全だとし、「関節が足りないなら増やせばいいじゃない」の心を説いた。それを受けた克巳はわずか数日で、己の肉体の多関節化を成功させる。
- 郭に「愚地克巳の天賦の才は恐るべしと言わねばなるまい」とまで言わしめた。
関連項目
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