憂国騎士団とは、銀河英雄伝説に登場する市民団体、乃至は政治結社である。
概要
自由惑星同盟において、反戦的、反国家的活動をする者たちに対し、様々な嫌がらせ……というよりは、そうした思想の持ち主の家を襲撃したりなど、犯罪行為を働く過激な国家主義者の集まりである。そのためだれがだれだか判別できないように活動時は白い頭巾をかぶって顔を隠しており、このことから良識派からは「安全な場所で愛国者を気取って戦場に出ない」「やってることが正当ならなぜ顔を隠す」「ピエロ」などと評される。
だが同盟警察組織と深いパイプが存在しているらしく、警察は彼らの犯罪行為を取り締まることに熱心ではないため、憂国騎士団の犯罪行為が日の目に出ることは少ない。見逃すというだけならまだマシなほうであり、憂国騎士団に自宅を荒らされた被害者であるヤンに対し、警察が憂国騎士団を「熱烈な愛国者の団体」と主張してその行為を擁護しだすことすらあるほど。
トリューニヒト政権下において影響力を拡大させ、徴兵の不公平を問題にしたエドワーズ委員会という反戦団体を同盟警察との連携によって、秘密裏に壊滅させたりするなど猖獗を極めた。
経緯は不明であるが、自由惑星同盟滅亡後も組織としては存続しており、団員数も2万4600名ほどの規模があったようだが、そのために宇宙暦800年のハイネセンポリスの失火により大きな被害が出、同盟市民の間で侵略者たる帝国軍の仕業との噂が一定の信頼性を得ていたことを憂慮していた帝国憲兵隊が犯人役作ることにし、憂国騎士団なら占領軍たる帝国軍への反感から放火をしたということにしても納得されるだろうという理由で持って、憂国騎士団の所業の罪とはまったく無関係の理由で検挙された。
まったく身に覚えがない検挙理由に憤慨したのか、あるいは組織理念通り筋金入りの帝国嫌いだったのかは判断に困るが、憂国騎士団本部に乗り込んできた帝国憲兵隊に対して憂国騎士団は激烈に抵抗しており、5200名の団員が帝国中に死亡し、更に1000名の団員は帝国憲兵隊の追跡を振り切って逃亡した。
概して長く戦争が続きすぎたために生まれてしまった同盟社会の歪みの一部を象徴する組織と言える。
噂
「ヨブ・トリューニヒトの強い影響下にあり、憂国騎士団は彼の影の軍隊である」という噂が一部で囁かれており、作中では噂の真偽が明らかにされることはなく、傍証となる要素は多いものの疑問点も複数ある噂である。
疑問点1.同盟軍部との関係が見えてこない
トリューニヒトは国防畑で活躍していた政治家であり、物語開始時点の役職も国防委員長であって、同盟警察が管轄下にあるとは思われない。しかし憂国騎士団はその頃から警察と癒着して反戦派を襲撃したりしていた他、主戦派寄りであっても憂国騎士団に好意的な反応をしている軍人の描写が皆無である。
疑問点2.トリューニヒトが帝国に亡命した後も組織として存続している
一部の市民から熱烈に支持される一方、多くの市民からはその横暴ぶりが嫌われていた憂国騎士団であるが、トリューニヒトが同盟から去った後、バーラトの和約で定められた「帝国との友好および協調を阻害することを目的とした活動の禁止」に正面から抵触しそうな組織でありながら、それなりの規模を保って存続しており、トリューニヒトありきの存在であったとは考えにくい。
疑問点3.憂国騎士団が検挙された後でトリューニヒトが帝国への仕官に成功している
最大の疑問点。帝国憲兵隊が憂国騎士団を強引に検挙するようになった理由は、スケープ・ゴートの意味合いもあったが、帝国にとって公敵と化していた地球教と深い関係性があったためであるが、その事実が明らかになった後でトリューニヒトが帝国の高官となっており、憂国騎士団がトリューニヒトの影の軍隊として運用されていた事実があったならば、トリューニヒトも帝国の検挙対象となっていたはずである。
これらの疑問点のためか、メディアミックス作品においてトリューニヒトと憂国騎士団の関係性の描写はかなりのばらつきが出る傾向がある。ノイエ版では反トリューニヒト政権であった救国軍事会議に参加するような者たちが団員に存在しており、過激な国家主義団体ではあるのだろうが、とてもトリューニヒトの影の軍隊とは言えない様相を呈している。
一方、OVA版ではトリューニヒトと憂国騎士団の幹部が私的に関係があり、トリューニヒトが問題ごとの面倒を見ているような描写があった。藤崎漫画版に至ってはもっと明確に上下関係があり、トリューニヒトが憂国騎士団に出動を命じるなどの描写がある。
関連項目
- ヨブ・トリューニヒト - 事実上の主人と言われるが実態は不明
- ヤン・ウェンリー - 被害者の一人。反国家的言動をしたと襲撃をかけたが、彼が同盟の英雄となった後は掌を返して愛国の名将扱いしていた。
- ジェシカ・エドワーズ - 騎士団が潰したのが彼女の名を冠した団体であった他、OVA版では彼女自身も被害を受けている
- クリスチアン - ノイエ版において憂国騎士団員ということになっていた
- ブルーコスモス - ガンダムSEEDにおける似たような理念の団体であるが、こちらは文民統制など知ったことかと軍を私物化して過激な戦争行為やテロを繰り返し、戦争を激化させ続けているなど危険度が桁違いである。
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