戦場の絆Ⅱ(正式名称:機動戦士ガンダム 戦場の絆Ⅱ)とは、アーケード設置のオンライン対戦FPSゲームである。2021年11月に稼働終了した「戦場の絆」の続編にあたる
戦場の絆Ⅱの概要
2021年7月27日より全国稼動、2024年3月28日にオンラインサービス終了
機動戦士ガンダムを題材としたアーケードゲームで「君もモビルスーツに乗れる」をコンセプトに約15年稼働した「戦場の絆」だが、あまりに長期稼働したため筐体の老朽化及びパーツの調達も困難となった事を発端に、グラフィックの一新も兼ねて新規に開発された
PODと呼ばれる半球スクリーンを持った大型筐体は廃止[1]され、新たにCOREと呼ばれる高解像度を実現するための大型モニタ3面が旧来のコックピット没入感を出すために傾けてプレイヤーを包み込むように配置されている。操作感覚は旧来のプレイヤーが違和感のないよう、ほぼ同一の規格を用いており追加は新システムに使用する帰還ボタンのみで旧作と遜色ないインターフェースとなっている
登場するモビルスーツは一年戦争中心のラインナップへ戻すというコンセプト[2]に基づき多数が削除され、代わりに武装によって機体特性が変化するというシステムを採用している
他にデッキによる編成システム、帰還システム、カテゴリ毎の新規アクションなどが追加されているが、そちらは公式サイトを参考されたい
数々の新要素を引っ提げて前作を超える稼働を狙った本作であったが、開発がアーケード界で稼働が振るわなかったゲーム[3]を数々作り出したバイキング社への外注に変更されていたり、ゲーム進行不能(所謂フリーズ)となる現象がロケテストや公式配信でたびたび確認されたり、公式サイト内の画像に職場内通話と思われる通話のポップアップが写り込んでいたり数々の誤植も目立っていた等[4]、稼働前より暗雲が立ち込めていた
当時プロデューサーだった塚田夢人は生放送でバグについて問われ「稼働日には大丈夫です」と火消しに走ったりしていたが[5]本稼働時に数多くの欠陥を抱えたままリリースしてしまい、高額なゲーム料金も重なりプレイヤーが全く寄り付かない事態を招きバンダイナムコエンターテイメントの2021年第一四半期報においてアーケード事業の収益基盤と位置づけられた割には悪評を得る結果となってしまった
筐体の様相が遠くからは仏壇に見え常に誰も座ってない事からサイバー仏壇という侮称まで付き、稼働二ヶ月足らずで撤去する店舗が発生した
サービス提供側も問題を抱えている事は承知していて修正も少しずつ加えてはいるのだが、余りに問題点が多いためほとんど解消される見込みがないとユーザー側に見破られてしまい、前作経験者だけでなく今作から初めたプレイヤーの多くから遊戯を敬遠。情報発信するたびに飛び交う悪評に嫌気が差したのか、公式Twitterも口を閉ざすようになった
結局、ラウンドワンといった大手顧客がリース期間更新を契機に筐体撤去の流れが加速し始めた事がトドメとなり、オンライン稼働終了。15年近く愛された前作と打って変わって2年ちょっとという稼働期間であり、コロナ禍の厳しい状況下で導入を決断した多くの遊戯施設の経営を更に苦しめる事となった
稼働初期における問題点
「戦場の絆」は稼働初期には数時間待ちが発生した程で、非常に長期に渡り現役稼働する根強い人気を誇ったアーケードゲームでありガンダム人気と相成って続編も期待されていたのだが、稼働初期という重要な時期で大きな失敗をしたとして有名になってしまった。以下はその主な要因である
- 1.高額なプレイ料金
- 本ゲームのプレイ料金は
トライアル(1戦 + 戦闘報酬1個 + MS開発)
スタンダード(2戦 + 戦闘報酬1個 + MS開発)
プレミアム(2戦 + 戦闘報酬2個 + MS開発2倍)※後に4個+4倍へ変更
と用意されており、それぞれ300円、500円、1000円となっている
大型筐体であり導入費用やメンテナンス費用を鑑みるに致し方ない部分があるとは言え、他のアーケードゲームと比べると1ゲームのプレイ時間は大差ない割には料金は高いと言わざるを得ない
また前作は運用側で電子機器を噛ませる事で料金の引き下げも行うことが出来た(2戦200~300円が相場、100円で提供していた店舗もあった)が、本作はステーションからのエントリーは電子マネー決済のみとなっており、基本的には料金の変更が出来ない
(ターミナル側の硬貨投入口を細工すれば変更することは不可能ではない)
本作の稼働直前で前作を500円でプレイしていたというユーザは皆無に等しい中、完全新作とはいえ続編の実質的料金引き上げはユーザ離れの一因となってしまい、その料金設定もバンダイナムコ側によって一律に管理されているといっていい。前作においても稼働初期は熱狂的人気であったが料金の高さから徐々に廃れ、既存顧客を繋ぎ止めるために設置店舗側が減価償却もままならない中やむなく値下げしたという経緯があり、店舗側が料金を設定できるという点は稼働の上で重要なファクターである
つまりユーザが誰もやっていないからといって料金を下げて客を呼び込むといった設置店舗側の経営努力の機会も奪ってしまい、稼働初期という一番利用者が興味をひかれる時期に多くのユーザを取り込む戦略をも潰してしまった
後に1プレイ300円、プレミアム500円に値下げ。アーケードゲームとしては異例のプレイ無料キャンペーン[6]なども行ったが、後述するゲーム自体の問題によって客足が最後まで戻ることはなかった
- 2.アーケードゲームにおける有料ガチャの導入
- 昨今のソーシャルゲームにあやかって、モビルスーツと武装を手早く支給出来る時短が行えるという触れ込みで「軍備支給」というシステムを本作より導入
いわゆるアイテム課金で経営が厳しいアーケードゲーム業界においては然程珍しくはなくなったシステムなのだが、問題は上記に記載した「そもそものプレイ料金が高額」という点と「ガチャを介さないレアリティの高いMS支給が恐ろしく長い」点である
本作はプレイ終了後に開発するMSを選択でき、その進捗はレアリティとプレイコースに依存する。現状使用出来るMSは全てMS開発によって取得できる。しかし最高レアリティともなると1ゲーム終了時における開発進捗は非常に小さく、具体例を挙げるとスタンダードコースを選択していた場合、MS開発でガンダムを選択すると進捗は2%しか進まない。新規パイロットがスタンダードコースのみで進めた場合、ガンダムを取得するまでは50回100戦を初期MSで戦い続けなければならない訳である。後述するが、高性能MSや特定武装が勝敗を左右しかねない環境においては一切ガチャをしないというのは本ゲームを楽しむ上ではデメリットの方が大きい
加えて軍備支給システム自体も俗に「天井」と呼ばれる確定でピックアップされているアイテムが入手出来るというシステムが採用されておらず、1回300円を10回引けばモビルスーツを確定で入手出来るというものである。狙っている機体どころか初期から持っているジムやザクが出る事もある
10連一括という機能もないため3000円分長い時間かけて1回ずつ回し、欲しくない武装やセッティングを入手させられた挙げ句、この仕打ちである(重複しても無意味ではないが)
ちなみに途中でガチャを辞めてしまうと最初からやり直しで、モビルスーツ確定までまた10連し直さなければならない。この説明は辞めようとする時に警告するポップアップでのみ知り得る事が出来る
公式サイトの記載もなかったため気軽に回し初めてしまい途中で辞めて泣きを見たプレイヤーもいる
しかも当初はガチャに軍という括りすらもなかったため、ガンダムが欲しいのに出撃する予定すらないジオンの武装やモビルスーツばかりが出るという事も普通に起きていた
ピックアップ天井も未だに実装されておらず、ガチャ自体も欠陥を抱えていると言っていいだろう
ゲームだけしてガチャを引かなければ良いと考えたユーザをあざ笑うかのように後述のマッチングシステムの問題があり初期装備では現状どんな熟練者でもゲームを楽しむことが難しい仕様となっている事、前作ではプレイを楽しんでいるうちに新規機体を獲得出来ていた事が本作不評の一因となっている
前作と比べるのは酷だが、続編である以上これではユーザを多く獲得出来ると考える方が無理がある
またマイクロトランザクションを採用しているゲームの多くがゲーム買い切りか基本プレイを無料としており、高額なプレイ料金と並行して採用しているゲームはまず見ないと言っていいということも付け加えなければならない
後にイベント期間中にプレイするだけでも機体が支給できるように修正されたが、最後までガチャ要素はそのまま残したまま稼働終了した
- 3.公平でないオンライン対人マッチングシステム
- 長く稼働しているゲームにはありがちだが、上級者と初心者では当然ながら実力に大きな開きがある
本来なら実力に応じて分けて対人戦が行われるべきなのだが、本作においては適切に運用されていない
これ自体はオンラインゲームならままある話だが、本ゲームは前作引き継ぎ組の多くが准尉、新規スタートが二等兵だが、それらをマッチングさせるのは当たり前で、酷いと初心者と大佐といった佐官をマッチングさせることもある
当然ながら上級者による初心者狩りによって勝敗が決まってしまい、双方にとって有益ではないゲームが稼働初期から最後まで続いた
初心者がみんなすぐに辞めてしまうため、設置店舗側で初めのうちはオンラインを選択せず、トレーニングモードを強く推奨している店も存在した
また自軍4人が操作している人間に対し相手がCPU4人マッチングされる事が多いが、これはまだ良い方で(それも1プレイが高額な事を考えれば不満なプレイヤーがいるだろう)それどころか稼働初期では自軍にCPUがいるのに対し相手は4人とも人間という事も発生していた。しかも相手側が同時出撃で連携に優れている事が多い。今作においても前作同様CPUは弱いため、1人でも混じってしまえばゲームバランスが変わってしまい勝敗に直結してしまう。両軍に1、2人ずつならまだ公平なのだが、人数差が発生してしまうと殆どゲームにならなくなってしまう。
そして、CPUを引き連れて完敗しても関係なく自身の戦績にも通常通り反映されてしまう。このシステムから自衛するにはフルでバースト出撃するしかない。戦術チームバトルを謳っているのにも関わらず、そもそもチームバトルが成り立っていない事の方が多いのである
稼働末期においてはプレイ人口がほとんどいなくなった事も相まって、もはや敵味方が対戦人数MAXでマッチングするだけマシという有様であった。運営側もほとんど改善できず、最後までユーザ側でIDバーストしたり、時間を合わせて出撃[7]して対応せざるを得なかった
- 4.ゲーム進行不能となるバグの多さ
- 商用のアーケードゲームにおいて前代未聞だがゲームが進行不能となるバグが数多く確認された事で有名なゲームであった
しかもそこそこやり込めば進行不能バグに必ず遭遇すると言われる程に発生率が高い
画面内にエラーが表示されるのはまだ可愛い方で、マッチング画面で永久に対戦相手を探しているというバグもある。これでは利用者側としては店員に再起動を依頼するのも難しい(ゲーム画面上は正常に動作しているようにしか見えない)またステーション側だけでなく全ての大元であるターミナルがフリーズすることもある。その場合は当然ステーションを含めた全部を再起動しなければならない
最終バージョンではバグの修正ができなかったので、自動復旧可能な場合には自動的にタイトルへ戻るよう隠し修正されている。これではゲーム開始前と見分けが全くつかないため、いちいちプレイヤーが説明し店員にテストモードを入れて前ゲーム情報を確認してもらわなければならなくなった
ちなみに本作も前作同様ゲーム開始時1プレイ毎に従量課金制をとっており、ゲームが進行不能となってプレイヤーへ1ゲーム分サービスしなければならなくなった場合そのプレイ料金を補填するのは設置店舗側である
店舗が負担している問題に対し、バンダイナムコ側からの説明は最後までなく全て自社の利益として徴収していた
- 5.MS格差及び編成の不自由さ
- 本作は4VS4を基本としている。出撃する戦場はニューヤークのみでありリバースマップも存在しない。主な戦術として拠点攻略組と拠点防衛組に別れ、攻略組にタンクが1人割り当てられる。つまり前衛3人がそれぞれ2組に分かれ個人戦がどこかで必ず発生するのが基本的な戦場の流れである。これによって何が生まれるかというと機体相性や個々の技量差によって生まれた差が勝敗に直結してしまうという状況が多くなる。6VS6などに比べ、1試合における1人の責任が非常に重いということ
例えばザクで野良出撃したが、相手は実力が同等のガンダムで、一騎打ちになったが機動力で圧倒され撃破されてしまい、拠点攻略又は防衛に失敗し相手は帰還、味方は善戦したがザク一機分のコストが最後まで埋められず敗戦してしまい、敗因は自分というケース
コストを抑えて自軍の被害を低減しようと考えても、相手を一度も撃破出来なければマイナスにしかならない。相手との実力が均衡であるならば、高コストの方が当然撃破される可能性は低くなるため、生存して自軍コストを温存する方が良い。帰還ボタンの使用も視野に入れる事が出来る
つまり味方と連携が確約されていない状況下で勝利を目指しているならザクで出撃する事自体が既にリスクのある選択だった、ということになってしまう。加えるなら支援を主だった武装は使用が限られてしまう。運用が限定的で個人戦向きではないためだ
このような環境においても自由にMS選択出来る人は真にチームの勝利に貢献する気はないか、自分本位なプレイヤーだろう。少なくとも本作より別のゲームでの活躍を模索したほうが良い
これでは多少戦場に慣れたパイロットであっても、チーム戦での勝利を目指すのであればセオリー以外の事をするのは躊躇いが生じる。運営が目指すデッキによる自由な機体選択など望めるはずもない。
初心者同士や仲間同士なら全く問題ないが、上記の織り交ぜるマッチングシステムがある以上、味方にセオリーから外れた事をしている様子を見れば、勝利を第一に目指すゲームである以上他のプレイヤーから不満が出るのは必然と言える
また拠点攻略を主とするタンクも武装レベルによって拠点攻略速度が大きく変わってくるため、前衛に自信がないからといって安易に選択すると他のプレイヤーから悪評を得る事になる
その結果、初期デッキやタンクなしといったセオリーとは乖離しているデッキ編成やLVの高い装備を有していないと総じて忌み嫌われる傾向にある。腕がどうであろうがである
回避するには自分がフルバースト出撃するしかない。つまり勝利至上主義であるエースパイロットこそ敵には出てくるが味方で引くことはない(それすらもバースト出撃はCPU戦が非常に多くなる傾向にあり出撃が少ない)引けるのは野良出撃が混じる事によって負けるのを覚悟した上で出撃している人のみである。現に旧作での公式大会出場経験者(2010所持者)で、Ⅱは触る気がないと公言してしまっているプレイヤーも少なくない。古いユーザを戻すために一年戦争中心へ一新したところで、これではいつまで経っても中堅以下の層が厚くならない
前作から大なり小なりあった問題ではあるが、以前はある程度のマッチングの棲み分けやMSとMAPの豊富さ、対戦人数が最高16人と本作の倍だったため展開を変化させる事が出来たが、デッキシステムを採用した要因の一つにしては他の問題と相乗して状況が悪化してしまっている
最終的には方針を転換し、ユーザーが多く見込める週末は6vs6を中心に行われるようになったが、既にユーザーは霧散してしまった状況であったため人数かき集めてマッチングさせるのが精一杯という有様であった。そのため前述の格差は最後まで埋まることはなかった
その他にもPOD廃止に伴う没入感の欠如、画面角度や椅子の違和感といったハードウェアの問題や、MS全般の動きにもっさりとした違和感がある、画質が良くなっただけでゲーム性が何も変化していないどころか劣化した、電子決済音が異常なほど大きくオペレーターも戦闘中に終始喋っていてプレイを阻害するレベルでうるさい等と言った大小様々な意見が報告されており、前作より満足しているプレイヤーは皆無という有様であった。
多くのプレイヤーを取り返せるかは一刻も早い改善がされるかどうかにかかっているのだが、公式Twitterの発信数も鈍く、いずれも解決されることはなかった。新規楽曲という社内でも容易に対応可能な部分まで外注での制作としている事から、どの分野においても迅速な対応が難しくなってしまったと推察されている(楽曲はノイジークローク社が担当)設置店舗数が激減した前作「戦場の絆」の方が新作より人気で稼働していた頃が懐かしまれており、今作の反省点がすべて解消された戦場の絆Ⅲがいつの日か稼働してくれる事が望まれている
脚注
- *プロジェクターでは解像度が低く高画質なグラフィックが出せない事、消防法の関係で旧来の形はすぐに避難できない事から採用が難しかった事、そして一番大きな事として予算削減出来るということでPODは廃止された。しかしこれが最期まで没入感の欠如という最大のデメリットとして残り続ける事となりアーケードゲームとしては致命的な欠点となってしまった
- *ちなみに本作が不評過ぎて、即座に撤回しガンダムシリーズの人気モビルスーツだけをひたすら投入するという末路を辿った。当然そんな事をしても稼働は振るわなかった
- *パブリッシャータイトルとしてはマジシャンズ デッドのみ。これは日曜日の池袋で行ったロケテストで誰も寄り付かないという前代未聞の事態を起こし商業的にも大きな赤字を出した。他に主開発としては稼働当初は散々な評価だったガンスリンガーストラトス、星と翼のパラドクスなどが挙げられる
- *外部サイト:Twitter参照
- *完全に嘘であった。稼働当初はフリーズ連発し、稼働末期においても一人通信状態が悪ければ10分停止するのが起こり得た。しかも一定期間フリーズすると勝手に再起動してタイトル画面まで戻る仕様が追加された。当然料金は帰ってこない。
- *ゲームセンター側が客引き目的で特定のゲームを無料開放するといったオペレーションを行うことはあるが、オンラインサービスを行っているゲームのサービス提供側が客足の見込める週末に自社ゲームを無料開放するといったキャンペーンは古今東西例がない。また本キャンペーンは全プレイヤーが対象のため、一日中遊ぶことも可能であった。しかし実施してみたものの閑散としていて、既存ユーザが少しプレイしている程度でキャンペーンとしては散々な結果であった
- *00,20,40分にゲームモード選択完了しマッチング開始させるというもの。時間がずれると人数不足で高確率で1vs1になってしまうため、それを嫌ったユーザ同士で流行した。前作中期において独立小隊同士で出撃したい場合などで利用された方法だが、この時はマッチングするのが早すぎて狙った友人同士で出撃できないため利用された。今作においては真逆で、人がいなすぎて利用されるようになるという皮肉な復活であった
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