戯言シリーズとは、西尾維新による『新青春エンタ』である。講談社ノベルス・講談社文庫より、2002年から2005年(文庫版は2008年から2009年)まで全6作9巻が刊行された。
また2023年2月には最新作「キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘」が発売、前作よりなんと18年ぶりの刊行となった。
概要
宝島社の「このライトノベルがすごい!2006」作品部門第1位。
発行部数は200万部(文庫版含む)。
主人公・語り手である『ぼく』こと「いーちゃん」を中心に、どこか狂ったor終わった人々が繰り広げるミステリーバトル物の小説である。デビュー作でもある『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』から始まる西尾維新の代名詞的作品であり、代表作である。
『ぼく』の一人称視点から時系列順に進行する物語進行は、西尾が尊敬する上遠野浩平の「ブギーポップシリーズ」の特徴である多人数視点で時系列入れ替え進行の逆を打つ、というコンセプトの基に構成されており、西尾曰く「裏ブギーポップシリーズ」を目指して書かれたもの。
他にも、強烈な個性を持った登場人物のキャラクター性やネーミングセンスは清涼院流水や京極夏彦の、一作目『クビキリサイクル』のシチュエーションと展開構成は森博嗣の影響が強く見て取れる。いずれも西尾が「神」として崇めている作家達である。
軽妙な言い回し・言葉遊びや、セリフの端々に散りばめられた他の漫画・ゲーム・小説から引用した演出やセリフが若い世代に受け入れられる。特に言葉遊びはキャラクターの名前ほぼ全員で適用されており、何人かは一見すると読めないし呼べない。
天才、美少女、殺人鬼、世界の終わりを望むもの、絢爛豪華なキャラクターが大量に投入され、過剰な刺激に中毒する。これが戯言シリーズの大きな魅力のひとつである。
なお、作中に登場する「零崎一賊」を取り上げた番外編『人間シリーズ』も存在する。こちらは戯言シリーズにとって「ブギーポップシリーズに対する『ビートのディシプリン』シリーズ」というコンセプトの基に書かれており、多視点での進行が解禁されている(全7巻)。
ところでこのシリーズ濃いファンを獲得し高い人気を誇りながら、いわゆるメディアミックスが全くと言って良い程行われていない。せいぜいが講談社自らの発行の「スクールカレンダー」と、全文著者執筆による解説本「ザレゴトディクショナル」くらいである……と長年言われていたが、2016年に遂にアニメ化が発表され全ファンの度肝を抜いた。
シリーズ第1作『クビキリサイクル』が、OVAとして全8巻で10月26日よりリリース。アニメーション制作は「物語シリーズ」と同じシャフト。
戯言だけどね。
ミステリー?
本シリーズでは度々、読者同士でミステリーなのか人外バトルなのかを語る機会などが見られる。
作者も語っている通り戯言は、本質的にはトリックよりも、叙述的部分や特殊事態(警察がほとんど出ないなど)が成立してる舞台でもって読ませる作品である。その上でいわゆる「犯人と被害者が存在する事件」といった体のものをミステリーと定義しておく場合、4作目『サイコロジカル』まではその形式で書かれている。
また、5作目『ヒトクイマジカル』においても「犯人と被害者」は存在しており、前述の定義には当てはまる。
最終作の『ネコソギラジカル』のみそういったフォーマットからは外れている事になるが、この最終作は3巻構成のため(シリーズの3分の1)、読者には後半ほとんどが人外バトルとしての印象で固まっていると思われる。
因みに西尾自身は投稿時代、講談社のメフィスト賞ではジャンルは問わず「広義のエンターテイメント」を募集していたものの、雰囲気的にミステリが投稿しやすかった旨を明かしており、それに則って送られたのが一作目となるわけである。
そして西尾が更に考えたトリックやストーリー以外で作品の特色を出す手法が「萌えキャラ殺し」である。例えば西尾が尊敬する作家勢はミステリに個性的な探偵役やヒロインなどを登場させ、個々の作家性を強く確立した。西尾はそこから更に、"今まで被害者からなんとなく外されていたタイプのキャラを加えた"のである。
結果キャラ萌えして本を読んだ読者に、かなりの緊張感とトラウマをもたらす事となったのだが…。
そんなのはどちらでも同じことだ。
登場人物
代表的な登場人物は以下である。イエー。
- いーちゃん(ぼく)
主人公にして語り部。本名不明。戯言遣い。19歳。京都の骨董アパートに住む大学生。周囲の一般人からすると近寄りがたいネガティブ中二病なのだが、基本的に一般人の登場しないシリーズなのでただ無力な人に見える。
何もしていないのに自分の周囲をかき乱すという傍迷惑な才能の持ち主であり、特に『クビシメロマンチスト』の後味の悪さはシリーズ屈指。 - 玖渚友(くなぎさ とも)
ヒロイン。青色サヴァン。チームの元頂点。19歳。青い髪と青い瞳を持つ引きこもりの天才少女。風呂嫌い。
元々は主人公の予定だった。実は彼女のみで明らかに1シリーズやれそうな膨大な背景設定が見え隠れしている。 - 哀川潤(あいかわ じゅん)
もう一人の主人公にして本来の意味合い(女性主人公)でのヒロイン。いやヒーロー。人類最強の請負人。推定年齢24歳。赤い髪と超絶的ポジティブ思考、天上天下唯我独尊性の持ち主。上述二人の間に立てる唯一の人。
代表的ではないのに、ニコニコ大百科に記事がある人物は以下である。
- 闇口濡衣(やみぐち ぬれぎぬ)
他にも僅か9冊の間に60名を超える多くのキャラクターが登場している。また、名前が言葉遊びになっていたりと特殊な読みになっている事が多く、初めて見た人が正しく読むことが難しい名前のキャラクターがとても多くなっている。以下にその一例を記す(解答は反転)。
- 零崎人識→ぜろざきひとしき
- 葵井巫女子→あおいいみここ
- 七々見奈波→ななななみななみ
- 紫木一姫→ゆかりきいちひめ
- 萩原子荻→はぎはらしおぎ
- 根尾古新→ねおふるあら
- 匂宮出夢/匂宮理澄→におうのみやいずむ/におうのみやりずむ
- 西東天→さいとうたかし
- 想影真心→おもかげまごころ
未読の方はどのくらい読めただろうか?
世界観設定
戯言シリーズにおいての世界観は以下の4つに分類されている。ここでいう世界というのは、異世界のように次元を隔てて存在する別世界などではなく、いわゆる裏社会という類のもの。
- 表の世界
平和で戦争な世界。一般的な日常世界。ER3システムはぎりぎりここに属する。 - 財力の世界
四神一鏡・神理楽<ルール>が代表的な世界。表の世界に一番近い。 - 政治力の世界
玖渚機関が代表的な世界。一種の結社みたいなものでその力は横向きに広い。 - 暴力の世界
殺し名・呪い名の世界。異形・異端・異能こそが支配する秩序で無秩序な世界。
OVA
キャスト
- ぼく/戯言遣い - 梶裕貴
- 玖渚友 - 悠木碧
- 園山赤音 - 嶋村侑
- 伊吹かなみ - 川澄綾子
- 逆木深夜 - 浜田賢二
- 姫菜真姫 - 遠藤綾
- 佐代野弥生 - 池澤春菜
- 赤神イリア - 伊瀬茉莉也
- 班田玲 - 桑島法子
- 千賀あかり - 桑谷夏子
- 千賀ひかり - 新谷良子
- 千賀てる子 - 後藤邑子
- 哀川潤 - 甲斐田裕子
スタッフ
- 原作:西尾維新(講談社ノベルス・講談社文庫)
- キャラクター原案:竹
- 総監督:新房昭之
- 監督:八瀬祐樹
- シリーズ構成:東冨耶子、新房昭之
- 脚本:木澤行人、中本宗応
- キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
- 総作画監督:鈴木博文
- イメージボード:okama
- 美術設定:大原盛仁
- 美術監督:内藤健
- 色彩設計:日比野仁、渡辺康子
- 3DCGディレクター:越田祐史
- 3DCG制作:オレンジ
- 撮影監督:江上怜
- 編集:松原理恵
- 音響監督:鶴岡陽太
- 音楽:梶浦由記
- アニメーション制作:シャフト
- 製作:アニプレックス、講談社、シャフト
主題歌
関連動画
コアな人気を獲得しているシリーズながら、メディアミックスなどはほとんど行われていない為、ニコニコ動画における戯言シリーズに関連した動画は少ない。が、戯言シリーズを読破した(読んだことがある)ユーザーが多いらしく、手書きMADがランクインする事がある。
傑作だ。
関連コミュニティ
関連項目
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