『指輪物語』とは、イギリスの言語学者J・R・Rトールキン著のファンタジー小説である。
九つは、死すべき定めの人の子に、
一つは、暗き御座の冥王のため、
一つの指輪はすべてを統べ、
一つの指輪はすべてを見つけ、
一つの指輪はすべてを捕えて、
(瀬田貞二/田中明子・訳)
概要
指輪物語は1937年から1949年にわたって、トールキンの初期の作品である『ホビットの冒険』の続編として書かれた。原題は「The Lord of the Rings(ザ・ロード・オブ・ザ・リングス)」。
はるか昔の地球を舞台として、トールキンによって創造された神話、歴史、そして言語をバックに、ホビットの一人であるフロド・バギンズが「一つの指輪」を葬るまで、そして冥王サウロンとその従属者、同盟者たちと、サウロンたちに従わない「自由の民」の戦い(指輪戦争)を描いた作品である。
この作品がその後のファンタジーに与えた影響は大きく、またトールキンの創造したエルフ、ドワーフ、オークといった種族はそのほかのファンタジーにも多く登場することとなった。
邦訳
日本語版では、1970年代に評論社より瀬田貞二氏による日本語訳版が刊行され、現在流通しているのは最初の翻訳の際アシスタントを勤めた瀬田氏の弟子、田中明子氏による修正を経た瀬田貞二・田中明子共訳版。トールキン生誕100年の節目に合わせたこの新版は、「力の指輪」の数と合わせたカラー愛蔵版3冊、愛蔵版7冊、文庫版(追補編除き)9冊という体制で出版された。2020年には田中明子を中心に徹底したトールキン教授の指示に基づいた固有名詞の見直しや訳文の修正、原作改訂の反映を行った電子版が刊行され、2022年に「最新版」として文庫版6冊で出版されている。
「ナルニア国ものがたり」を始めとして数々の邦訳を手がけた瀬田貞二氏の翻訳だけあって日本の指輪ファンからは概ね好評を得ており、寺島龍一氏による挿絵と合わさって名訳と名高いが、その反面、初めて読む読者からは、しばしば「古臭い」「読みづらい」と言われることもある。
また、時に「原作の固有名詞の多くが日本語化され漢字の固有名詞になっている」点で批判される。これは指輪本編の補完である「追補編」に言語学者を本業とするトールキン教授自ら書き記した翻訳ルール、すなわち「原作(英語版)は西方語で書かれた「西境の赤表紙本」の英訳(という設定)であるため、『現代英語に訳されている固有名詞は翻訳時もその国の言語にする』こと、『エルフ語などをそのままアルファベットにしている部分は残す(カタカナ化する)』こと」という法則に従っているためである。また、この追補編には西方語ほかの発音ルールも有り、通常のアルファベットの発音と違う翻訳をされている人名などはこの発音ルールによるものである。
映画化
1978年にラルフ・バクシ監督によってアニメ映画で公開されたものの、資金繰りが付かず前編のみで無念の制作打ち切りとなった。しかし、2001年にピーター・ジャクソン監督により三部作で映画化された。
詳しくは→『ロード・オブ・ザ・リング』の項を参照。
RPGと指輪物語
指輪物語はのちの多くの創作家に影響を与えた。エルフ、ドワーフ、オークといったファンタジーの「常連」種族の原型も指輪物語の描写に拠るところが大きい。
特に世界初のRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は本作に影響を受けて作られており、RPGと名前の付くゲームは指輪物語の影響を間接的に受けている物が多い(例:剣と魔法の世界でホビット、ドワーフ、エルフ、オークなどが出てくるなど)。
神話体系
指輪物語は非常に長大な物語であるが、実際はトールキンが創造した巨大な神話体系の一部に過ぎない。指輪物語の序章である『ホビットの冒険』のほか、膨大な遺稿から壮大な背景を補完する作品群をトールキン研究の第一人者としても知られる息子クリストファ・トールキン氏が精力的に編纂しており、神々による世界創造から指輪戦争までの歴史が書かれた『シルマリルの物語』、トールキンの遺稿をまとめた『終わらざりし物語』や『ベレンとルーシエン』、未収録の遺稿や初期原稿をまとめた「The History of Middle-Earth」(HoME、未邦訳/全12巻)などがある。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
作品関連
|
種族・キャラクターなど
- 5
- 0pt