揚水発電単語

8件
ヨウスイハツデン
2.3千文字の記事
  • 3
  • 0pt
掲示板へ

揚水発電(ようすいはつでん)とは、電エネルギーをためる方法の一種である。

概要

構造とシステム

揚水発電所は高低差のある2つの貯池とそれらを結ぶ導管およびその中間に設置された揚ポンプを兼ねる水力発電機で構成されている。

まず電需要の少ない時間帯の余剰電を用いて揚ポンプを作動させ、低所の貯池から高所の貯池へ予めをくみ上げておく。電需要ピーク時には高所の貯を低所の貯池へ落下させ水力発電機(これは前述の揚ポンプを兼ねている)を回して電需要を補う。揚水発電所はこのサイクルを繰り返し行う。

いわばの位置エネルギーを利用した蓄電装置といえる。

揚水発電の蓄電効率と化学的蓄電方法(蓄電池)との比較

効率は約70%。つまり100の電を使って上記の方法で電気を貯めた場合、出される電は70となる。

これは化学的な蓄電システムである蓄電池(二次電池)よりも効率が悪い。
例えばリチウムイオン電池では95%ニッケル水素電池で90%蓄電池で87%である。中でもリチウムイオン電池は体積エネルギー密度と重量エネルギー密度が高いため、小軽量が重要視されるスマートフォンノートPCなどモバイル機器用の蓄電池として価を発揮している。

一方、電エネルギー分野(いわゆる強電)の大規模電設備で蓄電池を用いる場合、大量の蓄電池セルが必要となり相対的なコストも上昇する。加えて化学的手法を用いる蓄電池では使用するたびに素材そのものの化学的な変質が起こるため、これによる性劣化と蓄電回数の制約から逃れることができない。

反面、揚水発電の場合は単純に電気を位置エネルギーに変換して蓄積する方式であり、そもそもが水力発電で培われた「枯れた技術」のためノウハウ確立されていた。物理的な経年劣化はあれども適切なメンテナンスを施せば蓄電池のような化学的蓄電方法よりも長寿命で、ライフサイクルコストも低いというメリットが有る。よって日本の電エネルギー分野にいては揚水発電が電蓄電手法の流となっている。

汽力発電(原子力・火力)との起動時間・出力調整能力の比較

揚水発電はに出調整の難しい原子力発電火力発電といった汽発電(蒸気の膨を利用した発電)の電供給量調整に用いられる。例えば8時間の停止状態から発電開始までの起動時間を較した場合、原子力で約5日、石炭火4時間、石油火力3時間、ガスコンバインドサイクル発電で1時間かかる。一方で水力発電や揚水発電では4~5分と非常に短い。

また、出変化速度は1分あたり50~60%であり、即ちそれは発電開始からわずか2分間でフルに達することを意味する。なお、石油火力の出変化速度は高い場合でも1分あたり5%程度でありフルまで約20分かかる。石炭火では1分あたり3%である。

揚水発電の活躍例

以下に2022年3月22日に発された電力需給ひっ迫警報下での揚水発電の活躍例を記す。

前兆

2022年3月16日福島県沖地震により、福島県所在する東京電力の広野火力発電所6号機と相馬共同火力発電の新地火力発電1号機が破損、停止に陥った。

同年3月21日と翌22日に急気温低下を原因とする電需要増加が見込まれた。タイミングの悪いことに前述の発電機損失によって東北電力東京電力管内の総電供給が低下しており、電需要のひっ迫が確実となることも予測された。

そのままでは2018年9月6日北海道胆振東部地震による北海道電力東厚火力発電2号機・4号機停止とこれに伴う北海道全域のブラックアウト(全系崩壊に至る大規模停電)事例と同じことが起こりうる状態となった。

いよいよ電供給が足りなくなった場合、管内全域が停電状態となるブラックアウトという最悪の事態を回避するには、一定のエリアをあえて意図的に停電させ電需要を強制的に削る処置を取りうることも想定しなければならなかった。

電力需給ひっ迫警報発令

このため東北電力東京電力サービスエリア管内を対に「電力需給ひっ迫警報」が日本史上初めて発された。かくして政府経済産業省らび東北電力東京電力から該当エリアに対して強い節電要請が呼びかけられ、同時に西日本エリア北海道の電会社各社からの電融通も行われた。

西日本エリア・北海道からの電力融通とその問題点

しかし、日本の西と東では電周波数が60Hz/50Hzと異なり西日本エリアからの電融通したとしても間に周波数変換設備を挟むため、その総量は最大210万kWであり電需要を補うには足りなかった。

また北海道電力管内は東北電力東京電力と同じ50Hzであるが津軽海峡を渡る北本連系設備(北本とは北海道本州の意)を挟むため最大90万kW(大の発電所1つ分)しか融通が出来ない。

最後の切り札

最後の切り札となったのが予め当日までに揚水発電所に貯められたであった。

日本側で運転可な全ての揚水発電所がフル稼働し不足分の電をギリギリで補った。ブラックアウト回避のための意図的な停電実施は回避され、電消費ピーク時間帯を乗り切ることに成功した。この時点で揚水発電所に残されたの残量は30%であった。

もしも、総節電量が標数値に満たなかった場合、あるいはこの日の低温が2日連続で続いていたならば。発電用揚も底をつき、電供給不足とそれに伴う停電もあり得ただろう。

関連動画

関連商品

関連項目

【スポンサーリンク】

  • 3
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

イグ (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: 66 「Kqam Ttn'nne Ia Kqam Utnn !」
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

お絵カキコがありません

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

揚水発電

1 ななしのよっしん
2023/07/09(日) 12:50:04 ID: +UBbLwfjIg
系統に“冷蔵庫”を付けよう | 日経クロステック(xTECH) <https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/070501322/exit
>実は日本全体では結構大きな規模で導入されています。具体的には出合計は約28GWで、それを約10時継続できることから容量は約280GWhと見積もれます。再生エネルギーの半日分の準化ぐらいは容易にできそうな計算です。
👍
高評価
0
👎
低評価
0