概要
天台宗で信仰されている神の一柱。
かつて存在していた玄旨帰命壇という教団においては本尊として祀られていた。
伝承では大陸の唐で学んでいた天台宗の円仁が帰りの船旅の途中、虚空よりこの神の声を聴き感得したという。
二体の童子神を連れた、三尊一体の神であり、仏法における三毒を象徴し、煩悩その物こそが悟りや叡智の本質である事を意味している。
摩訶伽羅天(マハーカーラー)ともダキニ天ともされ、死者の肝を喰らいその魂を往生させる往生神であり、摩訶伽羅天との繋がりから大黒天と同一視され福の神としても知られる。
後戸(仏堂の背後の戸・入口)の神とされ、阿弥陀如来の背後を護る守護神としても、より真理を体現する秘された神としても扱われ、またこの場では神への芸能の場であった事から芸能の神としての一面も持つ。
特に聖徳太子の側近にして猿楽の祖、芸能の神・大避明神として祀られてる秦河勝と同一視された事から、猿楽の守護神であるとも考えられた。
後戸には守護神や秘神を置く他にも、正統なる者では無いという扱いをされる事から、虐げられし者の神とも言われている。
冠に北斗七星が描かれている事から道教の影響も強く見て取れるなど、兎に角多彩な側面を持つ神であるが、それゆえに一体どこ出身のどんな神なのかというのは全く分かっていない。
江戸時代の僧である覚深はこの神に関して「何処の神なのか解らないが、少なくとも中国や日本の神ではない」としており、昔からこの神の正体を探られているものの、未だに謎が多く、先に述べた様々な神性に関しても肯定意見や否定意見が入り混じる怪しい神である。
現在でも信仰されている神ではあるが、円仁に対して「我こそは障礙の神である、我を祀らねば往生の願いは達せられぬと知れ」と脅迫じみた事を述べている他
連れている童子神が摩多羅神の周囲で「ソソロニソ ソソロソ」「シシリニ シシリシ」と歌いながら踊るとされている。
「ソソ」とは小便を、「シシ」とは大便を、「シシリ」とは男色を意味する言葉であり、これらを謳う摩多羅神は邪神であると糾弾され、摩多羅神を本尊とする玄旨帰命壇は淫祠邪教とされて江戸の中ごろには排斥され滅びた。
現在でも、京都府京都市の広隆寺の牛祭りや、茨城県桜川市の楽法寺のマダラ鬼神祭などでは、摩多羅神が重要な役目を果たしている。ちなみに広隆寺や楽法寺はどちらも天台宗ではなく真言宗の寺である。
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