放射火炎とは、怪獣ゴジラが口から吐き出す炎もしくは光線である。
概要
ゴジラを代表する技で、ほとんどの作品で使用している。吐く時に背びれが発光するのが特徴。なお「ゴジラの逆襲」のみ背びれの発光がない。
多量の放射能を含んでいるので近くに放たれただけで危険である。
街や戦車、戦闘機を破壊し、ゴジラと怪獣が闘うときに重要な武器となる。
「巨大生物が炎(光線)を吐く」というのは斬新で、以降の怪獣のイメージには欠かせないものとなった(ラドンやモスラなど、ゴジラ以降も光線を吐かない怪獣も多いが)。
名称について
「放射火炎」、「放射能火炎」、「放射熱線」など人によって呼び方が分かれるこの技。
VSシリーズ以降はほぼ放射熱線で統一されたため、若い世代にはこちらの方が馴染み深いかもしれない。
実際、筆者はVSシリーズ世代なので放射熱線と覚えていた。
この記事では、
・放射火炎表記の方が古い事
・先に単独記事が存在していたピクシブ百科事典の表記が放射火炎である事
・Google検索結果では放射火炎が最もヒット数が多かった事
などから、記事名を放射火炎とした。
バリエーション
白熱光
「ゴジラ(1954年)」「ゴジラの逆襲」「三大怪獣 地球最大の決戦」で使用。
ゴジラが吐く白い光。接写ではギニョールの口から霧を吹き出す表現がされたため、この光線を「霧状の熱線」とすることもある。
この頃は火炎や熱線ではなく、放射能を含んだ高温の息を吐き出す事で対象を燃え上がらせるという描写で、「ゴジラ(1954年)」にて鉄塔を溶かすシーンは有名である。
後のものに比べるとあまり強くは無い印象だが、上記の様に鉄塔を溶かしたり、街や自動車を炎上させたりするほどの威力を持つ。
放射火炎(昭和シリーズ)
「キングコング対ゴジラ」以降で使用。
シリーズがカラー化したことにより、ゴジラの光線も色が付くようになる。
その色は青色。臨界の際に出るチェレンコフ光を参考にしたといわれる。
温度は10万度。地面に向かって吐いたときは地に沿って少し上反るのが特徴。
次第にフィルム合成によるはっきりとした光線状になり、他の怪獣との闘いの上でゴジラの重要な武器となった。とはいえとどめとして使用されたのは意外と少ない。
放射熱線(VSシリーズ)
VSシリーズから放射熱線の表記が主になる。威力は昭和シリーズより遥かに上昇してその温度は50万度に達する。
「ゴジラ(1984年)」までは昭和風のエフェクトで使用頻度も少なかったが、「vsビオランテ」以降は完全にビーム状になり、通常武器として多様するようになった。
「vsビオランテ」以降のVSシリーズはゴジラに限らず敵怪獣や人間側の兵器が使用する様々な光線技の応酬による派手な演出が特徴で、その中で放射熱線もパワーアップしていき、「vsメカゴジラ」以降はよりパワーアップした赤色熱線を決め技として使用するようになった。
…そのため、VSシリーズは熱線のバリエーションが非常に多い。
- 放射熱弾
- 「ゴジラ(1984年)」で使用。熱線を光弾状にして放つもので、威力は放射熱線に劣る。
- スパイラル熱線
- 「ゴジラvsキングギドラ」で使用。通常の熱線には耐えたキングギドラの首と翼を貫いた。
- ウラニウム・ハイパー熱線(超火炎熱線、赤い熱線)
- 「ゴジラvsメカゴジラ」で使用。ファイヤーラドンと融合した事で放たれた赤色熱線で、通常の2倍、100万度の高温を持つ。ゴジラの限界を超えた技であり、使った後は口が溶けて白煙が上がっている。これは以降の赤色熱線も同様で、ゴジラは常に限界以上の熱線を身体にダメージを与えながら使っていたといえる。
- バーンスパイラル熱線
- 「ゴジラvsスペースゴジラ」で使用。スペースゴジラから奪った宇宙エネルギーをプラスした赤いスパイラル熱線。温度は90万度。劇中で放ったのは前作のウラニウム熱線より少ないが、威力の面では上回るようで、スペースゴジラ、MOGERAの両者を4発で沈めている。
- バーニング熱線
- 「ゴジラvsデストロイア」にて、ゴジラの体内炉心が暴走したために通常の熱線が赤くなり、威力も強くなったもの。
- インフィニット熱線(バーニングスパイラル熱線、ハイパー熱線)
- 「ゴジラvsデストロイア」にてメルトダウンを始めたゴジラが、背びれが溶けるほどの高熱の中放った赤いスパイラル熱線。太さも尋常ではなく、vsシリーズに登場するあらゆる光線技で最も大きく演習されている。ゴジラ自身が融解するまでは無限に威力が上昇するという凄まじい威力でvsシリーズにおけるゴジラ最期にして最強の技。デストロイアの顔半分を焼き落としたほか、数度にわたる直撃も喰らわせ、あまりの高熱故に熱耐性を持つデストロイアが逃げ出すほどであった。
パワーブレス
「ゴジラ(GODZILLA)」で使用。
この作品のゴジラは熱線を吐かなかった。代わりに強い息を吹き出して炎を燃え広がたり、自動車を炎上させるパワーブレスなるものを使用。
この設定は初代の白熱光のオマージュだそうだが、上記のように描写は大きく異なり、また作中2回しか使用しない影の薄い技となっている。
一応補足しておくと、生まれたてで出せなかっただけで熱線の生成器官は当初から存在していたらしい。
また続編アニメに登場した2代目と、初代を改造したサイバーゴジラはちゃんと熱線状のパワーブレスを吐いている。
放射熱線(ミレニアムシリーズ)
ミレニアムシリーズでははっきりと放射熱線表記に統一される。
VSシリーズに引き続きビーム状の熱線だが、使用頻度は少なくなり派手な応酬は無くなった。
「ゴジラ2000 ミレニアム」と「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」では通常の熱線が赤いものとなっている。
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」で色は再び青色に戻ったが、さらに凶悪な威力を持ち、着弾するとキノコ雲が上がるなど原爆を思わせる表現となっている。
機龍二部作でも同様に熱線の色は青だが、背びれが下から段階を追ってストロボのように光る演出となっている。
「ゴジラ FINAL WARS」では必殺技として最強レベルの熱線も披露した。
- 引力放射熱線
- 「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」で使用。キングギドラの引力光線を吸収、熱線に上乗せしたもの。
- ハイパースパイラル熱線
- 「ゴジラ FINAL WARS」で使用。地球に迫る妖星ゴラス(モンスターX)に向けて放ったもので、地上から大気圏外にまで届く。
- バーニングGスパーク熱線
- 「ゴジラ FINAL WARS」で使用。新・轟天号から放たれたカイザーエネルギーを吸収して放った赤色熱線。カイザーギドラを宇宙空間まで吹き飛ばし爆破した。
アトミックブレス(GODZILLA(2014))
「GODZILLA(2014)」で使用。
青い色をした火炎のような描写で、背びれの発光もまず尾からせり上がるという特徴的なもの。
絶大な威力を持つものの使用すると急激に体力を消耗してしまうため、最後の切り札として映画の終盤に初披露された。
以降のモンスターバースシリーズにおけるゴジラは覚醒が進んだ結果、この技を連発できるようになったようで、キングギドラとの対決では頻繁に使用する。しかしこの世界のギドラは宇宙由来のタフさもあってか決め手になるには至らなかった(ギドラ自身かなりの勢いのブレスを喰らっても大したダメージにはなっていない)。
さらにエネルギーを限界までチャージした際には地殻を貫き地底奥深くまで届くほどの出力のブレスとなり、これで地下世界にいたコングを牽制し、彼を地上までおびき寄せている。暴走するメカゴジラとの戦いではコングが持っていたゴジラ(の別個体)の背鰭でできた斧にエネルギーを与える役割を担い、メカゴジラ討伐に貢献した。
なお、メカゴジラ戦においては、メカゴジラのビーム砲に打ち負けているが、この時点でコングとの対決でかなり消耗していることを考慮すると一概に威力が低いとは言えない。
放射線流(シン・ゴジラ)
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この項目は、下記に本作のネタバレを含んでいます。 未鑑賞の方はご注意ください。(要スクロール) |
「シン・ゴジラ」にて使用。劇中では“放射線流”または“熱焔”と呼ばれている。
本作の個体においては多摩川での自衛隊との戦闘では熱線を一切使用しなかった事から最初から熱線放射能力を持っていたわけではないと思われ、米軍のB-2爆撃機から投下された地中貫通ミサイル(MOP2)で傷を負わされた際に自己防衛本能を働かせて発現したものと推測される。
口を大きく広げて、まず黒煙状の超高熱放射性粒子帯焔を吐き出し、そこから着火して膨大な量の熱焔(これだけでも自身を中心に東京都港区から千代田区までを火の海にしてしまうほどの規模)を発生させ、やがてこの熱焔流は集束して巨神兵のプロトンビームみたいな細長い紫色のレーザー状の光線へと変化、今度はピンポイントで対象物を溶断する性質を持つようになる。射程も極めて長く遥か上空を飛ぶB-2爆撃機も正確に撃ち抜き、離れた位置にある建造物もまとめて薙ぎ払ってしまう。
さらに本作では口からだけでなく、同時に背中からも無数の熱線を斉射できるようになっており、体内の生体レーダー器官と併用して空あるいは背後から接近するものを無差別に迎撃する。加えて最終的には尻尾の先端からも熱線を放出できるようになるなど、全方位において隙のない攻撃を可能としている。
反面、これらの熱線の多用はエネルギー消費も非常に激しく、最初に熱焔および熱線を乱射した後には約半月近い休眠状態に陥っている。とはいえ設定上では15分連続で熱焔を吐きつづけ、クライマックスとなるヤシオリ作戦時には1時間も放出してやっとエネルギー切れとなっているので、一概に燃費が悪いともいえない。
本作においては久しぶりのゴジラ単体の映画である事から、この放射熱流の破壊力の描写はシリーズ全体の中でも取り分け派手かつ凄絶なものとなっており、東京都三区が壊滅しその経済機能も崩壊と、都市部(と日本政府首脳部)に与えた被害に関しては歴代でもトップクラスではないかと言われている。
熱線(アニメ映画版GODZILLA)
本邦ではある意味で初となるアニメ媒体という形で制作されたアニメ映画版「GODZILLA」に登場する個体が放つ熱線は今までのような何らかの熱エネルギー体ではなく、超高出力の荷電粒子ビーム砲という定義に基づいているのが特徴。
発射パターンもかなり独特で、今までのように口から直接吐き出すのでなく、背鰭や体全体から発生させた膨大な電磁エネルギーを顔の鼻先辺りに集束し、それをそのまま“青白いレーザービーム状”にして撃ち出すというものになっている。
前日譚小説で描かれた本作の歴史設定によれば世界各地に出現した怪獣達は巨大でこそあれそういった特殊な能力を持つものはほとんどいなかったとされるが、このゴジラはそんな従来の怪獣の常識を覆す恐るべき存在として人類を戦慄させたという。
さらにその小説においてこの熱線は荷電粒子で構成されているにも関わらず水中から撃っても威力がほとんど減衰せず、しかも数年かけてエネルギーを充填して放ったものは巨大な赤色熱線となって地球に接近する月と同質量の小天体を衛星軌道どころか太陽系に入る前に正確に射抜いて粉砕するというシリーズ全体で見ても桁外れな性質を秘めた能力である事が示唆されている。
原子ビーム(ゴジラS.P)
ゴジラの最終形態「ウルティマ」状態にて使用。
まず大きく口を開け、大小合わせて七つの光輪のようなものを顔の前に展開しつつエネルギーをチャージしてから撃ち放つというもの。
原理としては喉奥にある三つの器官からそれぞれ異なる種類の化学物質を放出してそれらを口内で混合させ、その際の化学反応によって生じたエネルギーを重力レンズの光輪で圧縮および収束した原子ビームという事になっている。
2016年版の放つ放射線流のように対象を焼き切るように破壊するタイプで、射程距離も放射持続時間も長く、威力も巨大化に伴って増大していく。
ちなみに「ウルティマ」の前の形態である「テレストリス」ではビームとしてではなくその光輪を飛ばして攻撃する。
放射熱線(ゴジラ-1.0)
大戸島近海に住んでいた巨大生物「呉爾羅」がクロスロード作戦での被爆で突然変異を起こして怪獣化したことで獲得した能力。
行使の際にはまず背びれが尻尾の先にあるものから発光しながらピストンのようにせり上がっていき、最後にそれが全て引き込むと同時に口から膨大なエネルギーを撃ち出すというこれまでにない独特の発射シークエンスを取る。
しかし、それ以上に凄まじいインパクトを放つのがその破壊力で、威力は命中した対象の質量に比例するとされ、質量の大きな建造物に直撃した場合は半径数Kmの範囲のものが完全に吹き飛んでしまうまさに戦術核レベルの大爆発が巻き起こるなど、ゴジラの熱線としては2016年の個体のものをも凌ぎかねないシリーズ随一の破壊規模を誇る。
その反面、熱線発射の時に出る衝撃と高熱はゴジラ自身の皮膚も焼き焦がしてかなりの反動ダメージを及ぼす諸刃の剣であり、体の再生および冷却が済むまで再発射ができないのが欠点となっている。
体内放射(VSシリーズ等)
「ゴジラvsビオランテ」から登場したゴジラの奥の手。
自らの体の中で熱線を増幅させ、至近距離から高熱を全方位に噴射する。
当然ゴジラ自身の体は内側から裂かれる事になるが、すぐに体を再生させるG細胞があるからこそ可能な技。ビオランテの触手やキングギドラの首による拘束を解除したり、モスラの鱗粉フィールドを振り払うのに使っていたほか、メカゴジラのショックアンカーの電流を逆流させるのにも使われるなど、相手に読まれにくい事から起死回生の逆転の手段としての使用が多い。デストロイア戦では背鰭が溶けてから急激に発動したが、もはや破壊のレベルが違っており、周囲一帯を焼き尽くして火の海にするほど威力が上がっていた。
VSシリーズでよく使われた他、「ゴジラ2000 ミレニアム」でも使用された。
余談
・もともと白熱光と背びれの発光は準備稿の段階には無く、ピクトリアルスケッチ(絵コンテに近い)の段階で「かっこつけ」として生まれ、検討用台本にも盛り込まれた。
この光線と背びれの発光は海外輸出の際も高評価だったという。なお、「ゴジラの逆襲」の時のみ背びれの発光が無い。
・「ゴジラ対ヘドラ」では、空を飛んで逃げるヘドラを追うためにゴジラが火炎で空を飛ぶというゴジラシリーズ屈指の迷シーンが存在する。
進行方向に背を向けて火炎の反動で飛び上がり、尾も丸めてCの字のような姿勢で飛んでいくなかなかシュールな場面であり、監督ら現場スタッフが発案し、猛反対する田中友幸プロデューサーが入院している隙に撮ってしまったという逸話がある。田中氏が復帰した時には既にカットする時間は無く、そのまま公開されてしまったのだとか。
……というのがネット上での定説であったが、特撮秘宝vol.4の坂野義光氏(ゴジラ対ヘドラの監督)インタビューで当時のいきさつが明かされた。
もともと台本ではゴジラは最後に飛んではいなかった。最終決戦で、電極板からかろうじて逃げて山の斜面にへばりついているヘドラに、ゴジラが後ろをむいて、熱線を地面に吐き、反動で飛び上がって体当たりをぶちかますというくだりがあるだけである。で、インタビューに坂野氏はこう答えている。
坂野 (前略)ウィキペディアには、田中プロデューサーに無断で飛ばして怒りを買ったと書かれています。友幸さんが入院してるのをいいことに騙し討ちをしたみたいにもね(笑)。それは違います。友幸さんが入院されてたのは確かです。確かだけれど、友幸さんは入院中の判断を、製作部長の馬場和夫さんに全権委任しておられた。僕はゴジラが飛ぶようにも飛ばないようにも、どちらにも編集できるように撮っておいたんです。
――そして馬場さんに判断を仰いだと。
坂野 そう。ゴジラが飛ぶ方を、馬場さんをはじめ、宣伝部長など関係者が選択した。そして「飛ばしていいんじゃないか」「面白いんじゃないか」という意見で、飛ばす方に決定したわけです。
・全編通してよく使われる技だが、民間人に対して直接放つシーンは以外と少なく、「ゴジラ(1954年)」「ゴジラvsキングギドラ」「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」の三作のみ。
当然、毎回戦車や戦闘機がやられる度に大勢の隊員が殉職している。特に「ゴジラ(1984年)」にて戦車隊が全滅するシーンは圧巻。
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