整備新幹線とは全国新幹線鉄道整備法に基づき、政府が1973年11月13日に整備計画を決定した路線のことである。
なお、ここでは整備新幹線に含まれていない基本計画路線についても触れる。
整備新幹線とは
整備新幹線に該当するのは、
- 東北新幹線(盛岡市~青森市)
- 北海道新幹線(青森市~札幌市)
- 北陸新幹線(東京都~大阪市)
- 九州新幹線鹿児島ルート(福岡市~鹿児島市)(※JRの路線名は「九州新幹線」)
- 九州新幹線西九州ルート(福岡市~長崎市)(※JRの路線名は「西九州新幹線」)の5路線である。
このうち北陸新幹線高崎駅~長野~金沢~敦賀駅間(東京駅〜高崎駅間は東北・上越新幹線と共用)、東北新幹線東京~新青森駅間(全線)、北海道新幹線新青森駅~新函館北斗駅間(2016年3月26日)、九州新幹線博多駅~鹿児島中央駅(鹿児島ルート全線)、西九州新幹線武雄温泉駅〜長崎駅間(2022年9月23日)は既に開業済みである。
全国新幹線鉄道整備法に基づいて整備されているが、国鉄改革の際に土光臨調の提言を受けた鈴木善幸内閣により計画は一度凍結された。民営化後に優先順位をつける形で整備計画の凍結が解除となったが、その際運輸省よりミニ新幹線やスーパー特急方式を組み合わせて整備する計画が立てられた。しかし、長野オリンピック開催に伴う高崎駅~長野駅の全区間フル規格化を皮切りに、フリーゲージトレインと組み合わせることとなった西九州新幹線を除いて全線フル規格整備へ格上げされた(西九州新幹線は現在整備方法を調整中である)。
なお、整備新幹線の最高速度は260km/hとなっている。この260km/hは山陽新幹線建設時に対航空機のために設計上の最高速度を東海道新幹線よりも上げた際に設定した速度(ATC頭打ち分の10km/hを含む)をそのまま踏襲したものである。
また、整備新幹線が開業すると同時に並行する在来線は基本として経営分離され第三セクターとなる(これについては譲渡ではなくJR側が鉄道事業の廃止手続きを行ったうえで、経営を引き継ぐ第三セクター側が新たに鉄道事業の許可を受ける形となっており、それまでのJRが発券したものは使えなくなる)。
但し必ず分離する訳ではなく、収益性がある必要な区間はJRで残存する(長崎本線の上下分離方式で維持は例外)。
民営化以降に建設された整備新幹線の地上設備は鉄道・運輸機構が保持している。その為、新幹線路線を運行するJR各社(JR東日本、JR九州、JR西日本、JR北海道)は線路使用料を鉄道・運輸機構に支払っている。
また、整備新幹線の建設主体は鉄道・運輸機構である。
この為、鉄道・運輸機構に払われる線路使用料をそのまま転用し整備新幹線の建設に当てる案が提示されている。
先程、最高速度は260km/hと書いたが、実際は防音壁を高くするなどの環境・騒音対策を行えばそれ以上の速度で走行することは可能であり、実際JR東日本が2014年に東北新幹線の盛岡~七戸十和田間で320km/hでの走行試験を実施する予定である。260km/hとされているのは鉄道・運輸機構に払われる線路使用料の額に影響するためらしい。
なお、整備新幹線を建設するには以下の条件を満たしていることが必要となる。
整備新幹線以外で建設予定のもの
- 中央新幹線(東京都~大阪市)
JR東海が東海道新幹線のバイパス路線として独力での建設を表明しており、現在の東海道新幹線「のぞみ」の役割を持たせる高速路線。建設主体はJR東海。
2011年に整備計画が決定し、建設が行われることが確定した。
→「リニア中央新幹線」
基本計画路線
開業前は不要論もあった東海道新幹線の成功を受けて、「オラがムラにも新幹線を!」の声と、自分の地元が可愛い政治家や官僚の働きを反映して作成されたと言ってもいい(かもしれない)全国新幹線鉄道整備法に基づき国土交通大臣(当時は運輸大臣)が公示したものである。
この辺りの計画策定の事情や着工優先順位の決定経緯などが、整備新幹線が「政治新幹線」と揶揄される理由でもある。
ちなみに、本来は全幹法の条文中に基本計画路線を記載するはずであったが、鉄道官僚出身の佐藤栄作首相が鉄道敷設法の二の舞を危惧し「数字を盛り込むのはまかりならん」と田中角栄を叱って却下したため大臣公示扱いとなった。また、東海道新幹線開業時の総裁でもある石田礼助は「(採算性や費用の問題から)新幹線網を広げるのを国鉄が自腹でやるのは無理」と発言しているほか、生みの親でもある十河信二は「新幹線を東京~大阪以外に造ったらえらいことになる」と忠告している。
なお、この中に東海道・山陽新幹線は含まれていないが、これは国鉄により既に開業済みもしくは建設中だった為(この2線のみは国鉄による純粋な輸送力増強目的で建設された)。
基本計画路線は公示順に以下のようになっている(括弧内は起終点の都市を示す)。詳しい計画内容は各路線記事を参照の事。
- 東北新幹線(東京都~青森市:当初は盛岡市まで)→全線開通済み
- 上越新幹線(東京都~新潟市)→さいたま市~新潟市は開通済み
- 成田新幹線(東京都~成田市)→計画失効
- 北海道新幹線(青森市~旭川市:当初は札幌市まで)
→青森市~北斗市は開通済み、北斗市~札幌市は事業中 - 北陸新幹線(東京都~大阪市)→東京都~敦賀市は開通済み、敦賀市〜大阪市はルート・詳細な駅の位置決定済み
- 九州新幹線(福岡市~鹿児島市、長崎市)→福岡市~鹿児島市、武雄市~長崎市は開通済み
- 北海道南回り新幹線(長万部町~札幌市)
- 羽越新幹線(富山市~青森市)
- 奥羽新幹線(福島市~秋田市)
- 中央新幹線(東京都~大阪市)→東京都~名古屋市は事業中
- 北陸・中京新幹線(敦賀市~名古屋市)
- 山陰新幹線(大阪市~下関市)
- 中国横断新幹線(岡山市~松江市)
- 四国新幹線(大阪市~大分市)
- 四国横断新幹線(岡山市~高知市)
- 東九州新幹線(福岡市~鹿児島市)
- 九州横断新幹線(大分市~熊本市)
このうち成田新幹線は反対運動が激しかった事もあり、計画は失効している。
しかし、既に取得済みだった用地の一部は2010年開業の成田新高速鉄道の路線用地として転用されている。
また、奥羽新幹線は山形新幹線と秋田新幹線の一部区間において重複しているが、両路線は「ミニ新幹線」であり全国新幹線鉄道整備法の定義から外れているため計画自体は現在も有効である。山形新幹線の庭坂~米沢間約23kmの区間に建設予定の「米沢トンネル(仮称)」も奥羽新幹線に対応できるようにする予定である。
※ちなみに、基本計画に入っていない路線として「第2東海道新幹線」がある他、新大阪駅には同じく基本計画に入っていない「紀勢新幹線」用のスペースが確保されている(なお、「紀勢」向けスペースは北陸新幹線と共用し直通運転することも構想として存在していた)。現在、北陸新幹線新大阪駅は網干総合車両所宮原支所エリアが想定されている。そして2024年8月29日に新大阪駅南側、東海道新幹線に並行する形で設置される事が正式に決定した。
関連項目
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