方程式(ほうていしき, equation)とは、等式の分類のひとつである。
概要
数式の中で、両辺が=で結ばれているものを等式という。この中で、変数/未知数を含み、代入したときに等式を成り立たせる値が限られているものを方程式という。何を代入しても成立するものは恒等式という。
方程式に代入できる値を求めることを「方程式を解く」といい、その値を「解」という。
多くの場合、解を求めることが目的となるが、必ずしもそうとは限らない。
例えば、関数を含む等式のほとんどは方程式だが、式の形さえわかればいいということもある。このとき、xがいくつでyがいくつか、ということは考察の対象にならないことも多い。
漢語の「方程式」は恒等式でないものを指す言葉とされているが、対応する英単語のequationは等式全般を表し、方程式も恒等式も指す。「恒等式でないもの」のみを表す英単語は存在しない。
名称
英語の「equation」はequalの名詞形であり、もともと「等しいと見なすこと」という意味である。
前述の通り等式すべてを含むため、恒等式もequationに含まれる。
例えば、オイラーの等式は恒等式だが、英訳はEuler's equation(Euler's identity)である。
日本語/漢語訳の「方程」は、中国の数学書『九章算術』が出典であり、もともとは連立一次方程式の解法を取り扱っていた。そのような由来もあり「恒等式は方程式に含まない」とされることが多く、高校数学の教科書にもそのように記載されている。
代数方程式
次数が自然数の多項式=0の形で表される方程式を代数方程式という。
1次方程式
中学1年で1元1次方程式、2年で2元1次連立方程式を学ぶ。
基本的に、移項するか、両辺の定数倍を施すことで解くことができる。連立方程式は片方の文字を消去して1元方程式にし、その解を元の式に代入してもう片方の文字について解く。文字の消去には加減法、代入法のいずれかを用いる。加減法とは、2本の式の両辺を定数倍し、片方の文字の係数をそろえて消去するものである。代入法とは、1本の式を片方の文字について解き、それを他方の式に代入するものである。
線形代数の基礎となる方程式なので線形方程式と呼ぶこともある。
2次方程式
中学3年で1元2次方程式を学び、高校1年でさらに詳しく学ぶ。2次方程式の解法は、次の3つに大きく分かれる。
因数分解
左辺を因数分解することにより解を求める方法。ab=0⇒a=0またはb=0という事実を用いる。
例:
x2+x-2=0
(x+2)(x-1)=0
x=-2,1
平方完成
「因数分解なんて何の役に立つんだよ」という厨2病患者のために、整数の範囲で因数分解できない2次式も存在するため、そのような方程式は平方完成により解を求める。因数分解できる方程式に適用してもよいが、因数分解で解くより手数を踏むのでおすすめはできない。
例:
x2+6x+3=0
x2+6x=-3
x2+6x+9=-3+9
(x+3)2=6
x+3=±√6
x=-3±√6
解の公式
平方完成も途中に因数分解を使っているため(上記の例における3行目から4行目)、重度の厨2病患者はそれすらも拒むだろう。そこで、そんな方々のために、平方完成では手数を踏むので、解の公式を使うことで手数を踏まずに解くことができる。係数を代入するだけで解が求められてしまう、チート級の技。
これは、2次方程式の一般形ax2+bx+c=0を平方完成により式変形したものであるため、末期厨2病患者はこれでさえ拒むであろう。
虚数解とは
係数が実数の1次方程式では、解も必ず実数となる。しかし、2次方程式では実数の範囲に解があるものとないものがある。前述した例はいずれも実数解を2つもつが、x2+1=0は、実数解をもたない。そこで登場するのがiである。iは虚数単位といい、-1の平方根のうちの片方である(もう片方は-i)。解の公式に適用するときは、√(-1)=iとしてよい。これを使うことによって、2次方程式はいずれも解を2つもつことがわかる(重解をもつものは、「同じ値をとる解が2つある」と解釈する)。
3次方程式、4次方程式
高校では因数定理等を使ってこれらを解く方法を学ぶが、因数定理が使える方程式は、ごく限られている。
これらも解の公式が存在し、3次方程式はカルダノの公式、4次方程式はフェラーリの公式が有名。
前述した虚数解は、カルダノの公式が導き出されるまでは認められていなかった。というのも、負の数の平方根は当時の人々の感覚からはかけ離れたものであったからである。「負の数?なにそれ意味あるの?」「2乗すると負になる数?ばかじゃねーの」といった感じであった。なので実数の範囲に解が存在しない場合、当時の人々は「解なし」と結論づけていた。
しかし、カルダノの公式では全て実数の3次方程式の解を求める場合でも計算過程に負の数の平方根が出てきてしまう。そのため、方程式を解く際に虚数の概念を避けて通れなくなったのだ。ちなみに、三角関数の3倍角の公式を応用すると、虚数の概念を用いずに実数解を求めることができる。しかし、これが使える方程式は限られている。
5次以上の方程式
5次以上でも複素数の範囲内に解は常に存在する(代数学の基本定理)が、四則演算、べき根を有限回用いて解く方法(代数的な手法)は一般に存在しない。但し、代数的に解けなくても解析的に解ける場合がある。
4次以下の方程式に解の公式が存在し、5次以上の方程式に代数的な解の公式が存在しない理由は、体の拡大に付随するガロア群で説明される。簡単に言えば、解と係数の関係式の、係数を入れ換えるパターンが群の構造(ガロア群)を成し、その群がある程度単純でないと解の公式を作れない、ということになる。
方程式の解の公式に関する謎を明らかにしたガロア理論は、解の公式にとどまらず現代の数学を劇的に発展させる契機となった。
ただし、従来の代数的な解の公式が無いだけなので、より高度な手法を使うことを許せば高次の方程式に解の公式を作ることができる…らしい。
微分方程式
微分方程式とは、未知関数の微分項を含む方程式のことである。より厳密な説明はWikipediaなどを参照してほしい。
微分方程式を解くとは、方程式を満たす未知関数を決定することである。他の方程式のように値を求めるものではないことに注意しよう。数式の操作のみで未知関数を求めることを解析的に解く、と言う。しかし解析的に解ける微分方程式の種類は非常に限られているため、コンピュータを用いて方程式を満たすべき数値の組をはじき出す数値計算という手法が主流である。
基本的なものは大きく陽解法、陰解法に分かれる。アルゴリズムにより解を得られる可能性や収束の速さが異なるので適宜使い分ける必要がある。オイラー法、ルンゲクッタ法が有名。
第一原理計算や電磁場解析、流体解析のような大規模な非線形微分方程式は、各点の差分方程式に変換して行列の計算に還元するのが一般的。
数値計算をする場合、定義域の全空間にまんべんなく計算点を配置すると効率が悪い。界面などの微分値が大きく変化すると予測できるところは点を多く配置し、変化が少ないと予測できる所は大雑把に配置する、有限要素法が使用される。
俗な使い方
「勝利の方程式」「恋の方程式」のように、「一発で答えが求まる何らかの方法」という意味で、または単なる語呂のために無意味に使われることがある。
小学1年生で習う「しき」に比べてなんとなく学術的っぽい雰囲気があるからか、「方程式」の本来の意味を離れて乱用されている節があるが、「それは恒等式じゃ」「それは解法といった方が適切では」などのように突っ込むと非数学クラスタから煙たがられる地獄が待っている。
関連項目
ニコニコ大百科に記事のある方程式
学術
その他
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