日ユ同祖論(にちゆどうそろん、日猶同祖論、Japanese-Jewish common ancestry theory)とは、日本人とユダヤ人は「ヤコブ」という共通の祖先を持っているという説である。
概要
人類の進化を考えれば、科学的事実として日本人とユダヤ人のみならず世界人類すべてが共通の祖先を持っているわけであるが、そういう話ではない。
ユダヤ教の聖典の記述を信じるならば、(改宗によってユダヤ人になった者ではなく)先祖代々ユダヤ人である者は、預言者アブラハムの孫であるヤコブの子孫だとされる。さらに詳しく言えば、ヤコブの十二人の息子たちのうちユダ・レビ・ベニヤミンの3人の子孫であるという。
これは、他の9人の息子の子孫らは、紀元前8世紀に戦争によって北イスラエル王国が滅びた際、離散して行方知れずになっているからである。これを「失われた10支族」などともいう(9人の息子の子孫なのに10支族になっているのは、息子のうちヨセフの氏族がさらに2つの氏族に分かれたため)。
この「失われた10支族」のうちいずれかが放浪の末に日本にたどり着き、現在の日本人の先祖となったという主張がいわゆる「日ユ同祖論」である。
19世紀末にスコットランドの宣教師ニコラス・マクラウド(ノーマン・マクラウド)が提唱したのが発端。神道のユダヤ教の宗教儀式の類似点などが根拠として挙げられることが多い。
佐伯好郎は渡来人の秦氏がネストリウス派キリスト教徒ユダヤ人として日本に来たという説を1908年に発表した。
近年でも超常現象研究家のあすかあきお(飛鳥昭雄)などが日ユ同祖論を主張する書籍を発表し続けている。
ただし、「日本のこの儀式のこの部分が、ユダヤ教のこの部分と似ている」と言ったような「類似点」しか根拠に挙げることができておらず、それが科学的にみてどの程度有意な類似なのかについては割となおざりにされている。比較言語学のような、双方の対応関係の明確な規則などを見出すこともできていない。「偶然の一致でもこの程度の類似点は生じるのではないか?」という批判に耐える論説とは言い難い。
また世界各地の人類のDNA解析などでも現在のユダヤ人と日本人との間での類似性は示されないが、この点も説明しづらい。学術論文などでの扱われ方を見ても、現在では学術的にはほぼ顧みられることがない説となっている。
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