日本銀行(にっぽんぎんこう/にほんぎんこう)とは、日本の中央銀行である。略称は日銀(にちぎん)。統一金融機関コードは0000。
概要
日本国の中央銀行である。日本銀行法によって規定される認可法人であり、その歴史は古く開業は1882年(明治15年)である。設立者は明治期の政治家・財政家である松方正義。日本銀行設立以前は三井銀行の為替方が為替決済を担っていた。(中央銀行の役割、歴史、通貨とインフレ、雇用については中央銀行を参照)
日本国の国債保有額が417兆7,114億(2017年3月31日時点 日銀 第132回事業年度財務諸表より抜粋)で国内のすべての金融機関の中で最大の保有主体となっている。
日本銀行は、日本国の通貨発行権を一手に担う銀行(発券銀行)であり、円の番人とも呼ばれる。日銀の最高意思決定機関である政策委員会の構成メンバーは総裁、副総裁、審議委員であり、衆参両院の同意を得て内閣が任命する。他の役員である監事は内閣が、理事と参与は財務大臣が任命する。
政府の国庫金出納は政府の銀行たる日本銀行の政府の口座を経由して行われる。また、銀行の銀行である特性から、個人や一般企業が日銀に口座を作ることはできない。口座は日本政府および金融機関が設けており、日銀の口座間の決算を行うことで銀行間の資金の流通・決済が行われている。
金融政策の決定において、インフレ対策と失業者対策はしばしば背反するが、日銀は伝統的にインフレ対策を重視する傾向にある。主な理由としては、日本はアメリカのような高い失業率に至った経験がないこと、第二次大戦後に急激なインフレーションを経験したこと、日銀の設立趣旨は物価の安定であり失業者対策は政府の仕事であると考えられていることなどが挙げられる。
日本銀行の出資証券は一般人でも買おうと思えば買うことはできるが、通常の株式と異なり日銀が解散を決議した場合でも残余財産の分配はされない。出資証券はジャスダック市場に公開されている。
日銀職員は公務員ではない。日本銀行そのものが分類的には認可法人に該当するため厳密には団体職員となる。ただし、業務そのものの公益性が強いため、職員にはみなし公務員としての義務が課せられている。
出資者
区分 | 出資金額 | 構成比 |
---|---|---|
政府 | 55,008 | 55.0 |
個人 | 39,586 | 39.6 |
金融機関 | 2,209 | 2.2 |
公共団体等 | 171 | 0.2 |
証券会社 | 76 | 0.1 |
その他法人 | 2,946 | 2.9 |
合計 | 100,000 | 100.0 |
※平成26年3月末現在 (単位:千円) 主要株主は日本国(財務省)である。
日銀ネット
正式名称は日本銀行金融ネットワークシステム。日本銀行に口座を持つ金融機関の間での資金や国債の決済をオンライン処理することを目的として構築されたネットワークである。初期からプログラム言語PL/1にて構築された。後述する新日銀ネットの構築プログラム言語は不明である。
全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)と連動しており全銀ネットのデータセンターは金融機関における個々の支払指図を送受信し、同時にそれらを集計した上で、各金融機関毎に受払差額を計算し、その結果を日本銀行にオンラインで送信する。受信した日銀ネット側では午後4時15分をもって金融機関の間の当座預金口座を操作し決済を完了する。日本の金融機関の振込の全てがこの処理に間に合うように処理されており、間に合わなかったものは翌日営業日の決済対象となるのである。
新日銀ネットが開発されており2014年時点で国債系オペ等の受渡関連業務が済んでおり、2015年の修正でISO20022への対応、稼働時間拡大の対応、先日付入力に対する決済業務の変更がなされる。システムの全面再構築でありDB、プログラム言語、処理方式の全てが刷新された。
新しい日銀ネットは通信プロトコルにはTCP/IP、通信インターフェースにはCORBAを使用。電文フォーマットは、XML形式、文字コードはUnicode(UTF-8)となった。
国際決済銀行
日本銀行は、スイス・バーゼルに本部を置く国際決済銀行(BIS)の出資銀行の一つである。出資比重の大きさもあり1994年9月以降、日銀総裁は理事会メンバーとなっている。そのため、日本銀行の意向が世界の銀行のルールであるバーゼル合意に反映されることも多々ある。これは日本の銀行の資金量が多大であることも遠因にある。とくにバーゼルⅡについては日本の都合が強く反映された(含み益の処理)と評される。
通貨制御の技術
日本銀行は物価の安定を最高の目的とする。
その精密制御は職人技といわれており、誘導目標に対しての金利誤差ほぼゼロを頻繁に実現している。通常、金融金利というものは複数の金融要素が複雑に絡むものであり、制御しようとしても仕切れるものではないはず…なのだが、日本銀行は周期的にそれを成し遂げてしまっているのである。また、日本発の経済実験「ゼロ金利政策」を標榜してからはその精度に磨きがかかってしまっており、海外の一部からインフレを恐れすぎている、インフレ馬鹿と呼ばれる遠因となっている。
2013年現在、自民党安倍政権は2%の緩やかなインフレーションを目標としているが、これまでと同じように日本銀行が金利を精密に制御できるかどうか、多くの金融関係者が注目している。
金融危機への対応
日本銀行は銀行の株式を引き受けたり、公的資金を注入(ようするにお金を貸す)したりして、金融危機を未然に防ぐ仕事を金融庁と協働して行っている。ひとたび銀行で取り付け騒ぎが起こると、どこからとも無く日銀の職員が現れ、大量の現金(札山と呼ぶのがふさわしい)を窓口に置いていくらしい、という都市伝説もあるがただの風評である。
実際のところ、東北地方太平洋沖地震のときも物理貨幣が完全に枯渇するということはなかった。大きな理由としては、現代の日本においては家賃や携帯電話、電気ガス水道といった居住を維持する必須料金は銀行口座からの自動引き落としである事が多く、緊急時には帳簿上、もしくは電算上の決算を一次留保すれば事足りてしまうからである。また、銀行破たんの際にも銀行破たんに備えて日本国内の銀行全てが加入している預金保険機構が一行あたり1000万円までは保険保証してくれることからすぐにあわてる必要性はなくなっているのである。むしろ緊急事態であればこそ、無用な混乱を避けることが求められる。
日銀砲
まず初めに日銀砲という言葉はネット由来のスラングである。一般的には日銀が外国為替相場へ大規模に介入することを指す。現在では一部のネットメディアや政治家なども用いている。
2004年に行われた大規模な円ドル相場への市場介入を「日銀砲」と呼ぶことがあるが、この為替介入は正確には日本政府によって行われたもので、日銀が日本政府の政府短期証券の購入を通じて介入資金を政府に供給したためにこう呼ばれている。
2013年に量的・質的金融緩和を黒田総裁が打ち出したことによって為替に変動が出たことも一部では日銀砲と呼ばれるが、このとき日本銀行は為替操作は一切行っておらず、単に物価調整のためのオペレーションを行ったのみである。ここは諸外国と交渉のときにも中央銀行について理解の浅い相手から突っ込まれる可能性のある重要なところなので賢明なる諸氏においては間違えないように注意願いたい。
マイナス金利
2016年1月29日、銀行が日銀に預けている預金の一部の金利をマイナスにするマイナス金利政策を決定した。日本国内の銀行は日銀に一定額の預金を預けておく義務(準備預金制度)があり、その定められた額を超過した分に対してはプラスの利子がついていたが、これに対して2月26日からはマイナスの金利がつくこととなる。
日本銀行総裁
日銀総裁は日本銀行の最高責任者であり、日本の金融政策において主導的な地位を占める。総裁は副総裁、審議委員と共に内閣に指名され、国会の同意をもって任命される。日銀の意思決定は政策委員会(計9名)による合議で決められるが、総裁は政策委員会と別にある役員集会(総裁・副総裁と事務方を担当する理事らによる会合)における独裁権を持ち、政策委員会はその決定を追認する場合がほとんどであるため、総裁の意見は政策全体の方向性に強く影響する。
日銀設立からしばらくは民間の財閥企業経営者と大蔵官僚からの任用が主だったが、日銀生え抜きである井上準之助(のちに大蔵大臣)の総裁就任を契機に、日銀生え抜きと大蔵省出身者が交互に総裁を務める慣行が徐々に定着した。終戦直後の急激なインフレ下では金融政策を担う日銀が一時的に大蔵省を超える絶大な権威を持ち、ときの日銀総裁である一万田尚登(歴代在任期間最長、のちに大蔵大臣)は「法王」とまで呼ばれたが、それ以外の時期は基本的に大蔵省の影響下に置かれた。これは戦時中に制定された国家統制色の強い旧日銀法が戦後も大きく改正されずに据え置かれたことで、中央銀行としての独立性が弱かったことなどが主な要因である。1998年の日銀法大改正で日銀の独立性に法的根拠が与えられ、日銀総裁はアメリカのFRB(連邦準備理事会)議長に匹敵する地位を得た。
名称の読み方
[Q] 日本銀行の呼称はどのように読むのですか?
[A] 「日本銀行」の読み方については、法律などで「○○と読む」と決められている訳ではなく、また、日本の国名を「ニッポン」と読むか、あるいは「ニホン」と読むのかという問題に似て、二者択一的に決めるのは難しいところです。ただ、お札の裏に「NIPPON GINKO」と印刷してあることもあって、日本銀行では「ニッポンギンコウ」と呼ぶようにしております。
要するに「行内では便宜上『ニッポンギンコウ』と呼ぶ習慣にしてるけど、特に決めてないから『ニホンギンコウ』でもいいよ」ということである。当項目名も便宜的に「ニッポンギンコウ」にしている。
なお、紙幣が「NIPPON GINKO」になっているのは、昭和9年発足当時のNHKが放送用語の規定として決めた「正式な国号として使う場合は、『ニッポン』。そのほかの場合には『ニホン』と言ってもよい」という方針の影響である。
関連動画
関連放送
関連リンク
関連項目
- 貸借対照表(バランスシート)
- 民法
- 信用創造
- 準備預金制度
- マネタリーベース(日銀当座預金)
- マネーストック(マネーサプライ)
- ゼロ金利政策
- マイナス金利政策
- インフレーション
- デフレーション
- 短期金利
- 長期金利
- 国債
- 売りオペレーション
- 買いオペレーション
- 中央銀行の国債直接引き受け(マネタイゼーション)(財政ファイナンス)
- ヘリコプターマネー(ヘリマネ)
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