日産・グロリアとは、1959年から2004年にかけて日産自動車で販売されていた高級乗用車である。
セドリックと共に長年にわたり日産の高級車の屋台骨を支えてきた。また、セドリックと同じく刑事ドラマでもおなじみの車両であった。
セドリックとクロスオーバーする項目も多いので、日産・セドリックの項目も合わせてご覧いただきたい。
概要
日産系のセドリックに対して、グロリアは旧・プリンス自動車系の設計である。4代目以降はセドリックとボディなど大部分を共有する兄弟車となる。
プリンス自動車が皇族と深いつながりがあり、車名の由来も当時の皇太子明仁親王と正田美智子との成婚を記念して、「栄光」と言う意味のラテン語である「gloria」という言葉から付けられたものである。その為、グロリアは宮内庁への納入が多かった。
前述の通り、4代目以降はセドリックと兄弟車となり、日産プリンス店取扱いと言う部分に旧プリンス系の名残を残すだけであった。
セドリックと同じようにタクシー仕様やパトカー仕様もあったが、パトカーはY31の頃に関しては2000ccのみであり、ロゴが旭日章に隠れている為、ぱっと見はセドリックと区別がつかない。
初代(BLSI型)
1959年発売。初代スカイラインの高級版として登場した。当初、モーターショーでも「スカイライン1900」として出品していたところからも、それがうかがえる。
2代目(S40型)
1962年に発売。当時の潮流にもれず、アメリカ車の影響を色濃く反映したデザインとなっている。そのデザインから「ハチマキグロリア」の渾名がある。
モデルの途中で後にスカイラインGT-Bに搭載され、GT-RのS20型へと進化するG7型エンジンを搭載した「スーパー6」が登場する。そしてグロリアはレースに参戦するや、その生涯のライバルとなるトヨタ・クラウンを圧倒する。
モデルの途中で日産自動車に吸収された為、日産・プリンス・グロリアと名称が変わる。なお、プリンス自動車が宮内庁と強い関係があったため、皇族方は好んでこの車を使用した。
3代目(A30型)
1967年に発売。やはり強いアメリカ車のデザインを受けていたが、この時代におけるアメリカ車のデザインはポンティアック・GTOに代表される縦目が見受けられ、グロリアもまたそれに倣った。
その為、縦目のグロリア、「タテグロ」というあだ名がついた。先代以上に見た目に分かりやすくアメ車の影響を受けていた為、本物のアメ車を買えない人たちから「代用アメ車」として人気が出た。
セドリックがヨーロピアンデザインを採用したのとは全く対照であるのも興味深い。
なお、この頃になると合併の影響が出始めてきて、足まわりが初代から使用されてきた形式を排したり、エンジンも日産製が一部採用されるなど、徐々にその影響が表れ始めてきた。
この頃のモデルになってくるとドラマにおいてもたびたび散見されるようになってくる。「仮面ライダー」において、ショッカーが使用した車として、このモデルがたびたび登場している。初期のEDでも登場し、印象に残っている事であろう。なお、この車はスタッフのもののようである。また、石原プロの刑事ドラマの「大都会シリーズ」にも登場している。
4代目(230型)
1971年登場。この代よりセドリックと一卵性の兄弟車となり、明確な違いはボンネット、グリルやテールランプ、ホイールキャップの形状程度となる。
なお、これがタクシー仕様の場合は、グリルがセドリックと同じなので見分けがますます付かない。4ドアセダン、4ドアハードトップ、2ドアクーペのラインナップだが、ワゴンがないのが違いである。
ライバルのクラウンは後にクジラとあだ名がつく非常に先進的なデザインであったが、それゆえに法人方面での受けが悪く、その分の販売をセドリックとグロリアが持っていった。
その為、現在のフーガにいたるまで、販売台数でクラウンに勝った唯一のモデルとなっている。
オプションを見ると、当時のプリマスなどのマッスルカーに影響を受けたようなものもあり、自動車文化の面では非常に興味深い。
この頃より刑事ドラマでも頻繁に見受けられるようになったが、この車のイメージとしては西部警察や大都会などでの走る死亡フラグ破壊用の車両としておなじみであった。その当時の最新鋭のセドリックが、次のカットでは230に変わっているという場面がたびたび見受けられた。ある時は爆破され、ある時は横転したりと、日本のカーアクションの黄金期を支えたのは紛れもなく230であろう。
セドリックとグロリアの違い
この代より、セドリックとグロリアはボディを共有する兄弟車となったが、230の時点ではまだ目に見えて差別化されていた。
- ボンネットはセドリックはフラットなのに対して、グロリアは真ん中部分が盛り上がっている。
- セダンのフロントグリルのデザインはグロリアの場合は先代のインスピレーションか、「十」の字に似たものとなっている。この「十」の字グリルはセダン系ではY31の最後まで採用されていた。タクシーやパトカーの場合は共通のため、違いはない。
- テールランプはセドリックは大型の赤一色(後にオレンジ色部分追加)なのに対して、グロリアは「一」の字のような小さな形状となっている。
5代目(330型)
1975年登場。先代のコークボトルデザインをより抑揚をきかせた豊満なデザインとなっている。ただし、排ガス規制の影響を受けて、鈍重な走りになっている。この代より、高級仕様のブロアムが追加されている。
そのグラマラスすぎるデザインとクラウンがトラディショナルな方向へ転換したため、再び販売台数を逆転されてしまう。
230に引き続き、刑事ドラマに出演して、激しいカーアクションを披露していった。セドリックとの共通化が進み、グリルやテールランプ形状の違い程度となってきた。なお、セダンは伝統の「十」の字形状のグリルである。
6代目(430型)
1979年登場。この代にいたっては、もはやフロントグリルの形状程度にしかセドリックとの差異を見出せなくなっていた。セダンはここにいたっても「十」の字グリルであるが…。先代までの抑揚の効いた曲線基調から、直線基調のクリーンなデザインとなった。セダンは側窓が6ライトとなり、Cピラー部のオペラウィンドウが見た目上のアクセントとなった。
なお、タクシー仕様やパトカーではCピラー部の窓が埋められている。
そして後期型では日本初のターボエンジン搭載車ともなった。刑事ドラマへの出演も続いたが、西部警察はセドリックだけであり、グロリアとして出演したのは特捜最前線ぐらいなのでやや印象がうすいと思える。
なお、グロリアのみにラインナップされた「ジャック・ニコラウスバージョン」がハードトップに設定された。なお、2ドアハードトップは廃止となった。
ハードトップを中心にシャコタンやチバラギ仕様などのベースとなったものも多い。
7代目(Y30型)
1984年登場。先代からのキープコンセプトながらもガソリンエンジンを長らく続いた直列6気筒からV6型に変更するなど、大きな変更があった。ジャック・ニコラウスバージョンも引き続き採用された。
また、この頃よりパッケージの中にユーロと付くなど、ヨーロッパの影響を徐々に受けてきた面も注目される。
Y30のワゴン&バンはこの後にY31~33に至るまでモデルチェンジをされず、1999年まで生産された。ワゴンは後部に木目調の装飾がされ、古き良きアメリカンステーションワゴンの香りが漂うデザインとなっている。また、荷室部分の窓が電動で下がる面白い形式となっている。クラシカルなデザインで今もってクラウンワゴン&バンと並んで人気のモデルである。
8代目(Y31型)
1987年登場。デザインがY30までの直線一辺倒のものから曲線を加えたモダンなものとなった。
このモデルより走りを意識したグランツーリスモが登場した。グランツーリスモはそれまでの高級車の概念を覆した走りの良さから、幅広い人気を誇った。あぶない刑事にもグランツーリスモが採用され、印象に残ってる事であろう。
そして、兄弟車としてより豪華になったシーマが登場した。初代はセドリック・シーマ/グロリア・シーマと名乗ってる通り、セドグロの兄弟車でもあり、販売店の絡みもあった為にセドグロのネームが付いた。
セダンについては形式をかえずにY32・Y33の登場のタイミングに合わせてマイナーチェンジを行った。
Y32が登場した1991年にCピラーの窓を廃止やテールランプデザインの変更など大幅な変更を行われた。
Y33型登場時は灯火類の変更を行った。この時点におけるセドリックとの差異はエンブレムとテールランプのウィンカーの色程度である(セドリックは透明なのに対して、グロリアはオレンジ)。
なお、1991年のマイナーチェンジの際にセダンはグランツーリスモが廃止されている。グロリアのセダンはセドリックセダンと統合される形で1999年に廃止となっている。
9代目(Y32型)
1991年登場。この代よりセダンとハードトップが完全に分離され、全車両が3ナンバー車両となった。また、ハードトップもこれまでのピラーレスからピラーつきとなり、車体の剛性の強化が図られた。グランツーリスモ系はヘッドランプが丸型4灯となり、これまで以上に若々しさをアピールした。
一方、ブロアム系もより豪華になっていった。当時の潮流にもれず、バブル景気の恩恵を受けたものとなっている。0からの設計やリッチさ、実用性に甚だ疑問符が残る装備が多数設定されてる点に当時の華やかさを窺える。
なお、ライバルのクラウンも同時期にモデルチェンジを行ったが、リアスタイルの形状が不評となり、230程でないにしろ、販売台数を上回る事もあった。
10代目(Y33型)
1995年登場。シャープなデザインの先代から、がっしりとしたデザインとなった。引き続き、グランツーリスモ系の丸型4灯は継続された。
エポックメークな出来事として、ディーゼルと2000cc以外はY30以来のV6型エンジンであるVG型から新設計のVQ型エンジンが採用され、3000ccのターボモデルは270馬力にまで出力が増強された。
その一方でギアが5速から4速になったり、質感の低下などコストダウンの影響が見え隠れする。
1997年のマイナーチェンジで4WDが追加されたが、430以来のガソリンエンジンの直列6気筒が採用された。また、ヘッドランプやグリルが小変更を受け、ブロアム系はヘッドランプがやや小型化され、グリル面積が大きくなった。その為、ややヒラメの様な印象もうける。グランツーリスモ系は内側のランプが小型化され、シャープさを増した。
11代目(Y34型)
1999年登場。ここにきて、セドリックとグロリアの性格の違いが明確にされ、セドリックはブロアム系の流れをくむのに対して、グロリアはグランツーリスモ系の流れを組むことになった。セドリックとの違いはグリルやヘッドランプの形状、テールランプのクリア化などとなっている。
エンジンの構成はY33以来のものとなっているが、ついにVQ30DETは自主規制枠一杯の280馬力に達し、直噴エンジンも採用された。
このモデルのエポックメークは明確な個性の打ちだしの他にもエクストロイドCVTの採用である。従来のベルト式のCVTは耐久性の問題から、大排気量に採用されるケースはほとんどなかったが、エクストロイドCVTはベルトではなくローラーを利用する事で耐久性の問題をクリアした。この変速機の設定はセドリックやスカイラインにもされた。なお、設定されたモデルは本木目パネルの採用など、他のグレードとは差別化されていた。
なお、2002年のマイナーチェンジ後、インフィニティ・M45として北米に輸出が行われた。フロントデザインはグロリアのものであるが、リアは灯火関連の規制の違いのためか、セドリックのものとなっている。他にもインテリアが独自のもの…というよりシーマのものが採用され、エンジンもV8エンジンが採用されるなど国内仕様とは似て非なるものとなっていた。
2004年、セドリックと統合される格好で後継のフーガに後を譲った。フーガはセドリック以来の形式であるY○○型を継承し、北米においてもMシリーズとしてラインナップされる。
関連動画
三本御大によるY31のインプレッション グロリアのCM集(Y30~Y33)
西部警察におけるグロリアの活躍。28:54付近よりグロリア登場。
関連商品
関連項目
- 日産自動車
- 日産・セドリック - 兄弟車
- 日産・フーガ - 後継車種
- 西部警察 - アクション用や破壊用として、多数出演
- 特別機動捜査隊 - 劇中車として出演
- 特捜最前線 - 特命車として出演
- 日産自動車の車種一覧
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