日銀法第4条は日本の法律である。正式には日本銀行法第4条という。
概要
条文
(政府との関係)
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
性質その1 日銀が政府の強い影響を受けることを示す
日銀法第4条は、日銀が政府の強い影響を受けることを示す条文である。
日銀は、日銀法第4条によって政府の経済政策の基本方針に整合的な金融政策だけを実行するように義務づけられている。このため「日銀は日本政府から独立していない」と言うことができる。
性質その2 日本円建て日本国債の安全性を作り出している
日本円建て日本国債は、日本政府が短期金融市場・長期金融市場の参加者から日本円を借り入れる時に発行される。この日本円建て日本国債は決して債務不履行に陥らない債券とされる。
日銀は日本銀行券を発券しているが、この日本銀行券は通貨法によって日本円と定められている。そして日本銀行券は不換銀行券であり、日銀が全くと言っていいほど負担無しに発券できるものである[2]。
日銀は中央銀行預金を発行しているが、この中央銀行預金は実質的な通貨として利用されている。中央銀行預金は、銀行などに向けて発行するときは日銀当座預金と呼ばれ、政府に向けて発行するときは政府預金と呼ばれ、外国中央銀行に向けて発行するときは「外国中央銀行向け中央銀行預金」といった風に呼ばれる。中央銀行預金は日銀の負債であり、中央銀行を差し出されたときに日銀は日本銀行券を発券する必要がある。そして日本銀行券は不換銀行券である。このため、中央銀行預金は日銀が全くと言っていいほど負担無しに発行できるものである[3]。
日銀は、日本銀行券と中央銀行預金の両方を全くと言っていいほど負担無しに発行できる存在であり、日本円を全くと言っていいほど負担無しに発行できる存在である。
そして日銀は日銀法第4条を課せられており、政府の経済政策の基本方針に整合的な金融政策をすることを義務づけられている。政府が「日本円建て日本国債の債務不履行(デフォルト)を絶対に回避する」という経済政策の基本方針を決めた場合、日銀はそれに整合的な金融政策を実行するしかない。
日本円建て日本国債の返済が迫ったときに日本政府の政府預金が不足しているときは、日銀が日本円建て日本国債を買いオペしたり、日本政府の借り換え用日本円建て日本国債が発行される直前に短期金融市場・長期金融市場において資金供給オペレーションをして日本政府が確実に日本円を借り入れることができるように支援したりする。
このため日本政府が発行する日本円建て日本国債は決して債務不履行に陥らず、極めて安全な金融資産と認識されている。
性質その3 日本経済の要となる
日銀法第4条が国会の議決を受けて削除されたら、すべての日本円建て日本国債に債務不履行のリスクが発生し、日本円建て日本国債が不安定な金融資産になり、日本経済が大混乱に陥る。
このため、「日銀法第4条こそが日本経済の要(かなめ)である」と表現できる。
違反したときの制裁
日銀が日銀法第4条に違反した時の罰則は、日銀法に規定されていない。
しかし、日銀が日銀法第4条に違反した場合は、国会において日銀総裁が説明を求められることになる。国会が開催されている期間中ならただちに日銀総裁が国会に呼びつけられるし、国会が開催されていないときならすぐに衆議院財務金融委員会または参議院財政金融委員会の閉会中審査が行われて日銀総裁が呼びつけられる。日銀総裁は国会への出席を求められたらそれに応じなければならない(日銀法第54条第3項)。
日銀総裁が国会に対して説明をして、それに対して国会議員が納得しないのなら、国会が日銀に対する特別法を立法して日銀総裁を解任することが予想される。日本において国会は唯一の立法機関であって国権の最高機関であり(日本国憲法第41条)、国会が立法すれば日銀総裁の解任もすぐに行われる。
関連項目
脚注
- *電子政府の総合窓口e-gov法令検索 日本銀行法
- *『日本銀行(筑摩書房)翁邦雄』100ページによると、日本銀行券1枚を製造するための費用はたったの17円ほどである。日銀は極めて少ないコストで日本銀行券を発券できる。
- *日銀が中央銀行預金を発行するとき、日銀はコンピューターの中の帳簿の数字を書き換えるだけである。このため日銀はコスト皆無で中央銀行預金を発行できる。また、中央銀行預金を日本銀行券に変換して所持する行為は、金額が大きくなるほど窃盗に遭う危険が大きくなる。1兆円の中央銀行預金を持つ者がそのすべてを日本銀行券に変換して所持することは窃盗リスクの高さから考えると現実には起こりにくい。このため、日銀は大量の日本銀行券を発券する可能性が非常に少ない。
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