時そばとは、落語の演目の一つである。一言で言うと蕎麦屋の勘定をごまかす噺。
アバウト解説
成功例
客「御馳走さん。生憎と細けえ銭っきゃ持ってねえんだ。落としちゃいけねえ、親父、手出してくれ」
客「一、二、三、四、五、六、七、八・・・親父、今何時(なんどき)でい?」
店主「へい!九つ時でい!」
客「十、十一、十二、十三、十四、十五、十六、御馳走様!」
失敗例
客「御馳走さん。生憎と細けえ銭っきゃ持ってねえんだ。落としちゃいけねえ、親父、手出してくれ」
客「一、二、三、四、五、六、七、八・・・親父、今何時(なんどき)でい?」
店主「へい!四つ時でい!」
客「五、六、七、八、九、十・・・あれ?」
アフリカ版TOKISOBA
客「御馳走さん。生憎と細けえ銭っきゃ持ってねえんだ。落としちゃいけねえ、親父、手出してくれ」
客「1リラ、2リラ、3リラ、4リラ・・・あれ?あそこに見える動物は?」
ジンバブエ版TOKISOBA
客「御馳走さん。いくらだい?」
客「生憎と細けえ銭っきゃ持ってねえんだ。落としちゃいけねえ、親父、手出してくれ」
客「一、二、三、四、五…」
店主「…」
真面目な解説
非常に有名な演目であり、素人でも一度ぐらいは下げや名前は聞いたことあるだろう、江戸落語を代表する噺。上記にあった下げの部分はよくパロディにも使われている。また、初心者向けの噺でもあり、手習いの者が必ず通る道でもある。この演目のために、江戸落語の噺家は駆け出し時代に必ず上手い蕎麦の手繰り方を練習するとまで言われるとも。
なお、舞台の江戸では蕎麦は代表的なファーストフードであり、屋台も多く出ていた。そして、蕎麦の価格はどの店も十六文(約500円ぐらい)と相場が決まっていた。当然、その価格に見合わないぐらい美味い店もあれば、そうでない店もあったとされ、そういう江戸時代の世俗を踏まえておくとよく情景が見えてくる噺である。
あらすじ
ある男が屋台のそば屋に立ち寄る。口八丁の男はべらべらと世間話をしながら蕎麦を食べる。そんなこんなのうちで、蕎麦がすぐ茹であがり、男が賞味すると蕎麦のダシが上等だの、器がいいだのちくわが厚切りだのとべた褒めし、お勘定を取らせる。すっかりご機嫌の店主は「十六文にございます」と伝えると、男は「細かいのしかねえんでよく数えてくんねえ」と伝え、順番に渡し八つ目まで払った直後に、「時に大将、今何時だい」と質問を挟む。ちょうど”九つ”だというので、そのまま「十、十一、十二…」とやり過ごしてしまった。それを一部始終見ていた別の暇な男、あの勘定を誤魔化すやりとりを真似しようと自分もそば屋を捕まえてみようとした。
しかし、待ちきれない男は少し早めに別のそば屋を捕まえ、腰掛けた。そして色々世間話を持ち出すが、どうにも話が合わない。しかも時間がかかってやっと出来た蕎麦はなんとも言えない代物、つゆはだだ辛く、麺の腰もなく、器も欠けており、ちくわも薄くて実はちくわぶ(後述)、男はもういいと勘定を取らせる。そして八つ目の時に「今何時だい?」と尋ねるが、まだ”四つ”だったため、男は「五つ、六つ、七つ…」と余計に金を払ってしまうのだった。
時うどん
この江戸落語の『時そば』を上方落語風にアレンジしたのが『時うどん』である。単に、舞台を大坂に移し、そばに対抗してうどんにしただけではなく、うどん屋に行くのが仲のいい男二人となっている。しかも要領のいい男が、最初の美味い屋台で一人でほぼ食べてしまい、ごちそうにあぶれた男が仕方なく自分もそのやり口を真似るが、やはり同様に外れの屋台を掴まされ、しかも同じ間違いをするというオチである。
その他豆知識
「花巻にしっぽく?しっぽくをあつくしつくねぇかな」
蕎麦屋に何ができる?と聞いた時の台詞。そばのトッピングをさし花巻は焼き海苔、しっぽくは蒲鉾や椎茸等の具をのせた物である。(長崎の卓袱料理が大本とされている)
ちくわぶ
関東のローカル食品で小麦粉を練ってちくわ状に成形して茹でた物。おでんの具に使われるなど決して悪い食品ではないのだが、作中ではちくわもどきとして扱われている。
江戸時代の時刻の呼び方
江戸時代の時刻の呼び方は現代とことなっており、22時→夜四つ 24時→夜九つと呼ばれていた(季節によって多少変化)。後半の男は少し早めに出かけたせいで勘定を行う時間も早くなり、結果、多くの金を払う事になってしまったのだ。
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関連項目
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