時計じかけのオレンジとは、アンソニー・バージェスが上梓したディストピア小説、およびそれを基にスタンリー・キューブリックが制作した洋画の1つである。本記事では後者の映画版を主に扱う。
概要
「ロリータ」「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」に並ぶキューブリックの代表問題作であり、「カッコーの巣の上で」と並ぶ精神的狂気を扱った作品である。
他のキューブリック作品同様、この作品を簡単に言い表すことは不可能である。あえて簡単に言うと、この映画の内容は「自由放任主義のしつけ」と「管理社会主義のしつけ」が、同様に価値がないことを示している。
あらすじ
近未来、性的に乱れきったロンドンのどこか。本作の主人公・アレックスはクラシック音楽を好むDQNであり、他の不良仲間と共にホームレスをリンチしたり、困窮を装って作家の家に押し入り、作家の妻を集団でレイプしたりとやりたい放題を繰り返していた。しかし彼も仲間の裏切りにより逮捕され、懲役14年を言い渡される。
服役して2年後、アレックスは「イギリス政府が計画した人体実験「ルドヴィゴ療法」の被験者となる代わりに即時釈放する」という司法取引に応じる。しかし、このルドヴィゴ療法とは「(性的)暴力描写に満ちた映像」を「目薬と嘔吐剤を与えられながら」「目をつぶることを許さずに」「数日間ただ観つづける」という、拷問そのもののような人体実験であった。
偶然にもその実験のBGMにはアレックスが好んで聞いていたベートーヴェンの「第九」が使われていた。
かくして条件反射を植えつけられたアレックスは暴力行為や性暴力に及ぼうとする、または第九を聞くと反射的に吐き気を催して悶絶するようになり、罪を犯せなくなった。実験の成果を目にして喜ぶ政府高官であったが、アレックスの聴罪を担当しまた彼と親しかった教戒師は「罪を犯さないのは吐き気を催すためであり、必ずしも行いを恥じて悔いているわけではない」と指摘。しかし高官は耳を貸さず、あえてこの状態のアレックスを釈放する。
正義感を得たわけでもなく、ただ犯罪行為に対し機械的に無力になったアレックス。彼の苦痛はここから始まる…。
ナッドサット
言語学者でもあったバージェスは、乱れきったロンドンを簡潔に描写するため、アレックスらDQNグループに独特な言語を使わせていた。それが人工言語ナッドサット(Nadsat)であり、ロシア語と英語のスラングから作られている。
例えるならば"キングスイングリッシュ"と"イギリス語(英語ではない)"と"ロシア語"を混ぜあわせて幼稚にさせたという、上等なローストビーフにウォッカをぶちまけたかのようなものである。
日本で似た例を挙げれば業界用語やネットスラングであろうが、「Christ」でさえキリスト(英)とハリストス(露)ということからも分かる通り、ロシア語と英語には大きな溝があり、これらを色々な方法で織りまぜたナッドサットは大変ユニークなものになっている。
このナッドサットも元となったロシア語的には「Nadtsat」と書くのだが、これを英語で発音するとNadt|satと言い分けるためにナッドサットと言われ、ロシア語で発音すると「Nad|tsha|t」と言い分けるためナッツァチと言うことになる。
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関連項目
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